2011年6月30日木曜日

乳がん治療承認取り消し

FDA諮問委、アバスチンの乳がん治療承認取り消しを支持

米食品医薬品局(FDA)の特別諮問委員会は29日、抗がん剤「アバスチン」に関し、乳がん治療に対する承認を取り消すことを6対0で表決した。製造しているスイス製薬大手ロシュ・ホールディングには打撃になる。

諮問委は、アバスチンに関する2件の重要な研究で、同薬が乳がんの治療薬として有効でないことが示されたと指摘し、胃内部の損傷や出血などといった副作用リスクが効果を上回っていると結論付けた。

表決に先立ち開催された2日間の公聴会では議論が白熱した。公聴会では、乳がん患者が証言し、一部はアバスチンが「奇跡の薬」だと主張。その一方で、反対証言した人の中には、薬の副作用で亡くなった患者の話をする人もいた。

諮問委のメンバーであるクリーブランド・クリニック研究所のMikkael Sekeres氏は、もしアバスチンに効果があるなら、ある程度の副作用を甘受する用意はあるが、効果が「最小」にとどまっているため、これほど強い副作用は受け入れられないと諮問委は判断したと述べた。

FDAで乳がん治療へのアバスチン使用に対する最終的な判断を下すのは、同局のマーガレット・ハンバーグ局長だ。他のがん治療へのアバスチン使用承認は依然として有効であり、今回の表決からは影響を受けない。

ロシュ傘下のジェネンテックは、アバスチンが約5カ月間にわたって乳がん患者の腫瘍の成長を有意に遅らせられると指摘し、患者のクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を改善できると主張していた。

FDAは2008年2月、アバスチンが腫瘍の成長を平均5カ月半遅らせるとの研究結果を受けて、迅速承認制度に基づき、乳がん治療薬として承認した。しかし、承認は2件の追跡研究の結果次第という条件付きだった。この2件の追跡研究の完了後、FDAは結果がアバスチンの効果を裏付けるものではなかったとの結論に達した。そのためFDAの医薬品部門責任者は昨年12月、承認の取り消し提案を行った。それにジェネンテックが異議を申し立てて公聴会が開催された。

2011年 6月 30日 WSJ

2011年6月29日水曜日

3人に2人が『がん』になる

日本人の「3人に2人が『がん』になる」「2人に1人が『がん』で亡くなる」・がんの2015年問題とは

部位は異なれど、最近芸能人や著名人が相次いでがんを原因として亡くなっている。当方も本業でがんの話をよく耳にするため、気にならざるを得ない。しばらく前にたばことがんの関係について何度か記事にしたのもそれが一因だが、先日相次いでがんに関する気になるフレーズを耳にした。一つが「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代」、もう一つが「がんの2015年問題」というものだ。良い機会なのでここで整理してみることにする。

●日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代

このフレーズは、元々秋元康氏の著書で今秋映画化されるのに伴い連載が決まった漫画【象の背中】という作品で、第一回目の扉ページにキャッチコピーとして用いられている。ちなみにこの作品、肺がんで余命半年を宣告された48歳のごく普通のサラリーマンが、自分の死を正面から見据えて過ごす最後の「とき」を描いたもの(主演は役所公司と今井美樹だそうな)。

元々「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」という話は誇張でもなんでもなく、事実以外の何ものでもない。詳しくは【厚生労働省】や【国立がんセンター】の各データが詳しいが、例えば【参議院・厚生労働委員会調査室の3月2日付け資料(PDF)】によると、「日本人の2人に1人ががんに罹(かか)り、3人に1人ががんで死亡している」と明記されている。また、昨年の【厚生労働省資料(PDF)】でも、

・日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになる
・日本人の3人に1人ががんで死亡
(男性19万6603人(全死因に対し33.6%)、女性12万9338人(全死因に対し25.9%))

と明記されている。ここで注意してほしいのは「全人口の1/3ががんで死亡する」という意味ではなく「死因のうち1/3ががんである」ということ。ちなみにトリビア的な話になるが、同資料によると2004年の時点でがん関連の医療費は国民全体の医療費の9.6%にあたる2兆3306億円だという。

また、国立がんセンターの資料にもあるように、40歳を越えた時点でがんの死亡率は上昇し始める。
年齢別がん死亡率(2004年、全部位)
年齢別がん死亡率(2004年、全部位)

日本では人口の減少と共に高齢化が進んでいる。年齢が高いほどがんにかかるリスクも(それだけ生き長らえているから)高くなり、体力の問題も合わせて死亡リスクも増える。よって、死亡率そのものは上昇傾向にある(このあたり、次の項目にも関連する)。これを年齢の構成率を調整した上で再計算した「年齢調整死亡率」で見ると、ほぼ横ばいの形になる。

「がんによる死亡率が増加している」という話はよく聞くが、医学で対処できないがんが急増したり、耐性が弱くなっているわけではない(人工添加物摂取の問題や環境汚染などで多少の悪化はあるかもしれないが……)。基本的には単に高齢化により、日本人全体としてリスクが高まっているから、というのが実情だ。

●がんの2015年問題

「20XX年問題」というフレーズはよく耳にするが、がん関連でもっともよく聞かれるのがこの「がんの2015年問題」。現在は「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」状況にあるというのはすでに説明した通りだが、これが2015年には

3人に2人ががんに罹(かか)り、2人に1人ががんで亡くなる

といった状況になるという。かかる率が16.6%増加し、亡くなる率が16.6%増えるというわけだ。

これは厚生労働省が2002年に発表した「がん生存者の社会的適応に関する研究」2002年報告書に記載されているもので、その一部は【がん生存者の社会的適応に関する研究】にて閲覧できる。また、原文を元にした学術書やレポートは多数製作されているので、そちらでも確認できるだろう。

例えば【2006年に作成された厚生労働省の「がん対策の推進に関する意見交換会」資料(PDF)】によれば、2015年でがん患者は倍増し、以降は2050年まで横ばいで推移する。

ただしこちらも先の項目のように、年齢構成を考慮していない数字であることに注意しなければならない。高齢化が進んでいるため、粗の「がんにかかる率」「がんによる死亡率」は増加しているが、年齢構成を調整した値としては「死亡率は減少」「かかる率は横ばい」傾向にある。

年齢調整についてもっと詳しく知りたい人は、【国立がんセンターの年次推移ページ】を参照してほしい。詳細なデータを確認できる。

ともあれ「がん」は細胞のイレギュラー的増殖というやっかいな病気であるため、他の大多数の病気と違って根本的な解決・根治法が見つかっていない。それだけに、長生きすればするほどかかる率・亡くなる率も高まるため「高齢化が進むと見た目で発病率・死亡率が増える」という現象が起きる。「がんの 2015年問題」もまさにそこに端を発するもの。

もし「がんの発症率や死亡率がこんなに高いだなんて」と思っていた人がいたら、まずは安心してほしい。医学の進歩以上にがんという病気が悪性化しているわけではないのだから。

そして一息ついたら心配もしてほしい。年齢構成による調整は必要だが、現在において「日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」ということや、2015年には3人に2人ががんに罹(かか)り、2人に1人ががんで亡くなる」という状況にいたる推定が出ているのは事実に違いはない (繰り返しになるが意味を取り違えないように。現在なら「死亡原因のうち1/3ががんである」ということ)。

怪しげな民間療法はともかく、今ではがんにかかりにくい生活を過ごすためのアドバイスが山のように存在する。万一(……ではない)がんをわずらってしまうことになっても、早期発見が出来れば生存率はきわめて高い。そのための検査方法も多種多様に用意され環境も整備されている。

さらに治療方法も進歩し、いざとなれば最先端の医療技術を駆使してもらえるだろう。公的保険が利かない高度先進医療を気軽に選択できるよう、金銭的なサポートが受けられる多種多彩ながん保険も用意されている。

まずは事実と情報をしっかりと把握し、現実を見据え、その上で「備えあれば憂い無し」の手を打つ。それが今ひとりひとりができる、最善の対処策といえるだろう。

2007年7月2日 Garbagenews.com

女性が心配をしている がん

女性が「将来かかるかも」と心配する病気、トップは乳がん

アメリカンホーム保険は2011年6月22日、女性の「疲れ」に関する調査結果を発表した。それによると女性から成る調査母体においては、将来自分が発症するかもしれないと心配している病気のトップには「乳がん」がついた。半数強の人が気にしている。次いで「子宮がん」「更年期障害」「認知症」がいずれも過半数の値で続いている。全般的に「がん」への心配度は高いものの、「大腸がん」「肺がん」など一部の部位のがんはあまりリスクを感じていない傾向がある(【発表リリース】)。

今調査は2011年4月22日から25日にかけて全国(岩手・宮城・福島・青森・茨城県をのぞく)に対して携帯電話利用のインターネット経由で、 20~49 歳の女性有職者及び専業主婦に対して行われたもので、有効回答数は1002人。年齢階層比は20代・30代・40代で均等割り当て。

病気は誰にとっても怖いもの。ましてや経年と共に発症可能性が増加するものとなれば、色々と備えたり、予防策を調べて努力をしたり、定期検診を受けて 早期発見を心がけることになる。今調査母体で「将来(自分が発症するかもしれないと)心配な病気」について複数回答で聞いた結果が次のグラフ。トップは「乳がん」で、過半数の人が心配をしている。

乳がん」は特に女性に多い「がん」で、女性が気にするのも当然といえる。第二位の「子宮がん」 も同様(というより、こちらは女性特有)。第三位の「更年期障害」も女性発症の場合が極めて多く、上位陣、そして過半数の人が気にしている病症はいずれも 「女性が発症しやすい病気」ということになる。もちろん発症リスクが高い病気に対し(通常レベルでの)心配をするのは、ごく普通の現象といえ、心配する行 為自身を気に病むことは無い。

全般に「がん」への懸念度は高めだが、「肺がん」の値が低めなのが気になる。しかしこれはあくまでも全体値での話。煙草を吸っているか否かで見ると、大きな違いが生じている。

喫煙者の「肺がん」への心配度は実に半数近く。これが卒煙者(以前喫煙していたが、今は禁煙している人)になると2割に減り、元々喫煙経験の無い人は1割強にまで減る。今回グラフ生成は略するが、全般的に喫煙者は「肺がん」以外にも「がん」全般への発症リスクを気にする人の割合が大きく、たばことがんの関係を多かれ少なかれ頭に想い浮かべていることが分かる。

余談ではあるが、現時点で最新の【厚生労働省による人口動態統計(確定数)の概況(2009年)】によれば、女性の死因トップは「悪性新生物」。実質的に「がん」がついており、次いで「心疾患」となっている。

【日本人の「3人に2人が『がん』になる」「2人に1人が『がん』で亡くなる」・がんの2015年問題とは】という話もある。正しい知識を持った上で、正しく恐れ、備え、予防策をこなしていくべきだろう。

2011年6月29日 サーチナ

2011年6月28日火曜日

抗がん剤副作用へ救済制度

抗がん剤の副作用 救済検討会

抗がん剤の副作用によって死亡した患者の新たな救済制度のあり方について話し合う厚生労働省の検討会が開かれ、専門家からは、重篤な患者が死亡した場合、薬の副作用との因果関係をどのように判断するのかといった課題を指摘する声が相次ぎました。

この検討会は、重い副作用が相次いだ肺がんの治療薬「イレッサ」を巡る裁判を受けて、厚生労働省が、抗がん剤による副作用で死亡した患者の新たな救済制度をつくるために設置したもので、27日は、がん治 療の専門家や患者代表などの委員が参加して初めての会議が開かれました。この中で委員からは「救済制度があれば、患者の心理的な負担が軽減され、製薬会社 も薬の開発に積極的になるのではないか」という意見が出された一方で、「重篤な患者が死亡した場合、薬の副作用との因果関係をどのように判断するのか」と か、「救済の財源を製薬会社に求めれば、抗がん剤値段が上がるのではないか」といった課題を指摘する声も相次ぎました。

厚生労働省は、検討会での議論を参考にしたうえで、ことし12月をめどに、救済制度の具体的な内容を取りまとめることにしています。

2011年6月27日 NHK

2011年6月27日月曜日

糖尿病薬に膀胱がんリスク

欧州医薬品庁、糖尿病治療剤と膀胱がんの関連性を継続検討 武田薬品が発表

欧州医薬品庁(EMA)は欧州時間6月23日、6月20日から24日まで開催中の欧州医薬品評価委員会(CHMP)の月次会議の結果、2型糖尿病治療剤ピオグリタゾン塩酸塩(以下「ピオグリタゾン」)を含有する製剤による膀胱(ぼうこう)がんの発症リスク増加の有無について、継続検討していく旨を公表した。24日、武田薬品工業が発表した。

ピオグリタゾンと膀胱がんリスクの関連性については、フランス政府の医薬品規制当局が今月9日に問題を指摘。武田薬品工業の糖尿病治療薬「アクトス」などにピオグリタゾンが含まれていることから、同社はその使用方法について注意を呼びかけるとともに、関連性について独自に調査を進めている。

また同社によると、CHMPは、その諮問機関である「Scientific Advisory Group(SAG)」に、7月上旬の会議において、ピオグリタゾンと膀胱がんの発症リスクに関するデータおよび臨床現場における患者のリスク軽減策について検討することを要請。CHMPは、SAGの検討結果を踏まえて、7月のCHMP月次会議で最終的な意見を採択することもあわせて公表している。

欧州では、2011年3月から、CHMPが、欧州委員会(EC)規則No. 726/2004 第20条に基づき、関連する非臨床および臨床データを用いて、ピオグリタゾン投与による膀胱がんの発症リスク増加の有無について、関連する全ての有効性・安全性データ評価を行ってきた。

今回の発表を受け、武田薬品工業は、「当社は患者さんの安全性を最優先に考え、これまでと同様、ピオグリタゾンを含む全ての当社製品に関する安全性と忍容性の評価を継続するとともに、EMAならびに各国の規制当局に全てのデータを提供し、適切な対応をとっていく」とコメントしている。

一方、同社によると、同社が支援している米国でのKaiser Permanente医療保険グループ(KPNC)とペンシルベニア大学による、2002年から10年間の疫学調査の中間解析結果では、主要評価項目である全体解析で、ピオグリタゾン投与と膀胱がんの発症率に統計学的に有意な関連性は認められなかったが、副次評価項目では、24ヶ月以上ピオグリタゾンを投与した場合、膀胱がんの発症率が若干増加することが示されたという。

その中間解析結果は、2011年4月号のDiabetes Careに掲載され、各国の規制当局に既に報告しているという。調査は、2012年末まで継続され、その後、最終結果が報告される予定。また、欧州では、大規模臨床試験PROactiveに参加していた患者を対象として、長期投与時の観察試験(EC455 PROactive extension trial)も実施しており、2015年に最終結果が判明する予定。

なお、日本においては、ピオグリタゾンを含有する製品(製品名:アクトス錠、ソニアス配合錠、メタクト配合錠)の添付文書中の膀胱がんに関する「使用上の注意」の一部改訂を予定しているという。米国においても、同製剤の添付文書の一部改訂についてアメリカ食品医薬品局(FDA)と協議中だという。

2011年6月26日 財経新聞

2011年6月24日金曜日

がん排除する免疫メカニズムを発見

免疫応答開始に必要な免疫シナプスを形成するメカニズムを発見

微小管を伝う分子モーターのダイニンが免疫センサーを運び、細胞活性化を調節

私たちの身体は、外部から侵入したウイルスなどの抗原を除去したり、生体内で発生したがんなどの異物を見つけ出して排除したりする免疫システムを備えてい ます。このシステムに重要な細胞の1種がT細胞で、抗原の細かな違いを認識して特異的に反応する「獲得免疫」を開始させます。この獲得免疫により、再び同 じ抗原と出会った際には速やかに免疫応答を開始することができるため、ワクチンの原理にも利用されています。

T細胞は、抗原の情報を受け取る際に、抗原提示細胞と強固に接着して免疫シナプスを形成します。これまでの研究から、免疫シナプス形成の前には、T 細胞受容体などからなる小さな集合体「ミクロクラスター」が形成され、それらが接着面の中心へ移動することが分かっていました。しかし、この移動のメカニ ズムは不明なままでした。

免疫・アレルギー科学総合研究センターの免疫シグナル研究グループらは、細胞内の管状構造物「微小管」を足場にして駆動するモータータンパク質「ダイニ ン」が、このT細胞受容体のミクロクラスターを運搬することを見いだしました。この発見は、人工の細胞膜を作製して免疫シナプスを再現し、蛍光タンパク質 を融合した生細胞内分子イメージングで詳細に観察した結果によるものです。

さらに、この移動で免疫シナプスの中心に集まったT細胞受容体が分解されると、T細胞の活性化が収束することも突き止めました。これまでダイニンは、細胞 分裂や菌の鞭(べん)毛運動に必要な動力を生み出す分子モーターとして知られていましたが、それ以外にも、免疫応答の基本的なメカニズムである抗原認識と 活性に関わっているという新たな知見は、これまでの概念を変えた免疫調整薬開発につながると期待できます。

2011年6月24日 プレスリリース

2011年6月23日木曜日

次世代型重粒子線がん治療

世界最高速3次元スキャニング照射法を用いた治療を開始-日本発の次世代型重粒子線がん治療,新たな展開へ-

独立行政法人 放射線医学総合研究所

* 新治療研究棟に設置された高速3次元スキャニング照射装置による重粒子線がん治療を2011年5月17日より開始し、6月10日に1人目の患者の治療を終了した。

独立行政法人 放射線医学総合研究所(以下「放医研」)重粒子医科学センターでは、新治療研究棟において、高速3次元スキャニング照射法による新しい治療システムを完成 させました。1例目の患者さんへの重粒子線がん治療を、2011年5月17日より開始し、6月10日に終了いたしました。なお、2例目以降の患者さんの治 療も既に開始しており、半年間程度10数名の患者さんに対して臨床試験を実施した後に、先進医療に移行する予定です。

今回の臨床試験に用いた治療システムは、複雑な形の病巣にも高速(最高で従来の100倍の速度)に照射可能で、さらなる線量の集中性および副作用の低減を実現できることから、日帰り治療の実現に向けた治療期間のさらなる短期化につながるものです。これらの成果は、日本発の重粒子線がん治療技術が世界に展開するうえで、重要なステップになります。

高速3次元スキャニング照射装置を中心とする新しい治療システムを備えた新治療研究棟の治療室の整備が完了したことを受けて、1例目の患者さんへの重粒子線治療を、2011年5月17日より開始し、6月10日に終了いたしました。1例目の患者さんは骨盤領域のがんの 方で、4週間にわたり16回の3次元スキャニング照射法による重粒子線の治療を受けられました。2例目以降では骨盤領域の他、頭頸部領域の患者さんの治療 も開始し、全て順調に治療が進んでいます。今後半年程度を目処に、治療人数が10数名に達するまで臨床試験を実施し、先進医療に移行する予定です。

照射領域が計画通りであることを確認するために、重粒子線照射によって体内に生じ、短期間で消失する放射性同位元素の分布をPETで撮像しました。その結果、1例目の患者さんで計画した領域に重粒子線が照射できていることが確認できました。

3次元スキャニング照射装置による重粒子線治療は国内初であり、国際的にもドイツの2施設(GSIハイデルベルク大学)に次ぐものです。また、重粒子線治療で拡大ビーム照射法と、スキャニング照射法の選択ができる施設は、世界で初めてです。

2011年6月22日 プレスリリース

2011年6月22日水曜日

大腸がんを予防する夏レシピ

「冷やし茶漬け」にお通じ改善、大腸がん予防、節電効果

ご飯を炊くと、米に含まれるでんぷんは、消化しやすくなり、甘みが出る。しかし、ご飯が冷える時に、消化されにくい「レジスタントスターチ」とい う成分がつくられるという。この効果を利用できるレシピが「冷やし茶漬け」。消化に時間がかかると、血糖値の上がり方がゆるやかになり、インスリンという ホルモンの分泌量が少なくなる。
インスリンには、脂肪細胞の中で、余分な糖を脂肪に作り変えたり、すでに蓄積された脂肪が分解されるのを防いだりするはたらきがある。つまり、イ ンスリンの量を減らすことで、「体が脂肪を蓄積しようとするはたらきが抑えられ、太りにくくなる」ということなのだ。消化しにくいでんぷんには、食物繊維 に似た効果があり、お通じの改善や、大腸がんの予防につながる。これだけメリットがあるなら、暑い夏にわざわざご飯を温め直して食べるのはもったいない。
一般に、食品を冷凍する時は急速冷凍した方が良いというが、より太りにくい冷やご飯にしたい時は別。ゆっくり冷ました方が、消化しにくいでんぷん が増えるので、炊いたご飯は常温まで冷ましてから冷蔵庫で保存。冷蔵庫内の温度も上がらないので、他の食品も傷めず、節電にもつながる。

2011年6月21日 Newsポスト

大腸がんリスク2倍,直腸がんリスク4割高の職業

長年のデスクワークとがんの関連性

デスクワークを続けると、心臓病などの慢性的な病気にかかりやすいと長い間考えられてきたが、アメリカン・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー誌に発表された研究によると、デスクワークは大腸がんのリスクを増加させる可能性があるという。ここで言うデスクワークとは、長時間イスにすわったままであるなど、エネルギー消費が非常に低い活動を指す。

10年以上デスクワークをしている人は、そうでない人に比べて大腸がんのリスクが2倍に

これまでの研究でも、デスクワークと結腸・直腸がんのリスクとの関連性の高さが示されていたが、そうした研究の大半はある特定の職種をある一時点だけ観察したものだった。今回の研究では、オーストラリアの科学者が2005年から2007年にかけて、大腸がんの患者918人と1021人の非患者に関して、雇用歴とライフスタイル、身体的な活動の状況などのデータを集めた。職業は身体的活動のレベルによって、軽労働から重労働までランク付けされた。

調査対象者の中で10年以上デスクワークを行ってきた人は、デスクワークに就いたことがない人と比較して、大腸がんのリスクが2倍であり、直腸がんのリスクは44%高かった。またこうした関連性は、余暇時間に行う運動とは無関係だった。肉体的な重労働を伴う職業では、軽労働の職業と比較して、大腸がんのリスクが44%低かった。この結果から、職業による健康管理への示唆が得られると研究者たちは述べた。

2011年 6月 21日 ウォール・ストリート・ジャーナル

がん促進因子を発見

がん8割に共通「促進因子」 九州大グループ発見 横断的な検査法やワクチン開発に道

ヒトの体に、なぜがんはできるのか。この答えは「細胞の働きを決める遺伝子に異常が起きることで起こる」と考えられている。だが、ヒトの遺伝子の数は2万5千あるとされ、がんができる臓器もさまざま。どの遺伝子がどの細胞のがん化にかかわり、どう働いているのかを解き明かすのは容易ではない。世界で研究競争が繰り広げられる中、九州大学の研究グループが、ある遺伝子が日本人のがんの約8割にかかわっていることを発見したと発表した。

発見したのは、九州大学生体防御医学研究所の高橋淳(あつし)講師(血液腫瘍内科学)のグループ。

高橋講師によると、「METTL13」という遺伝子が、肺▽胃▽大腸▽膵臓(すいぞう)▽乳房▽前立腺▽膀胱(ぼうこう)▽卵巣▽子宮体部▽甲状腺▽網膜-にできる11のがんにかかわっていることを見いだした。腫瘍片を調べるなどしたところ、いずれもこの遺伝子がつくるタンパク質が、通常は精巣以外には認められないのに異常に増えていることが分かった。

11のがんは日本人のがんの約8割に及び、高橋講師はこのタンパク質を、英語で「離れ業」を意味する「FEAT」と名付けた。

働きを調べるため、ヒトから取りだした細胞にFEATを加えると、本来は必ず起こる「細胞死」が抑制された。さらにMETTL13をマウスの受精卵に注入して育てると、40匹中33匹に悪性リンパ腫や肝がんなどのがんが現れ、強い腫瘍促進因子であることが分かった。

細胞は日々新しく生まれて死んでいくのを常とし、裏返せば細胞死が滞る異常ががん化と言える。FEATのように多くの種類のがんで増えている因子は、世界で初めての発見という。

米国の分子生物学者でがん研究の第一人者であるロバート・ワインバーグ氏の著書によると、がん細胞は(1)死なない(2)増える(3)周辺の健康な組織内へ浸潤、転移する(4)血管をつくる-ものと定義される。この四つの働きを促すヒトの因子は、これまでに多数見つかり、各因子を狙う「分子標的薬」も次々と開発されている=表参照。しかし、大半は一部の種類のがんに限定して使うものとなっている。FEATの発見は、多くの種類のがんに効く分子標的薬を登場させるかもしれない。

高橋講師はすでに、FEATの増加がみられる各がんに共通して効くペプチドワクチン(免疫療法)の開発に取りかかっており、数年後の臨床試験開始を目指している。

また「FEATが増えている細胞がないかを調べて、がんの早期発見につなげる新たな検査法や、FEATが増えている細胞を標的とした、がん予防の新薬の開発にもつなげたい」としている。

この発見は、14日にインターネット上に創刊された英科学誌「サイエンテフィック・リポーツ」に掲載された。

2011年6月20日 西日本新聞

画像検査で糖尿病診断

画像で糖尿病診断、採血より早期に発見 京大が新技術

京都大学の佐治英郎教授らは、糖尿病の兆候を画像検査で診断する技術を開発した。がん検診などでなじみの陽電子放射断層撮影装置(PET)を使い、血糖値を整える膵臓(すいぞう)の細胞を観察する。動物実験に成功した。採血で血糖値を測るよりも、早期に発病の危険を検査できる原理という。症状が悪化していく様子も分かる。企業と協力して1~2年内に人で有効性を確かめる。

2011年6月21日 日本経済新聞

がん細胞だけを殺すウイルス技術

ディナベック、イーピーエス子会社にがん治療用製剤技術供与

バイオベンチャーのディナベック(茨城県つくば市、長谷川護社長)は、がん治療用の製剤技術をライセンス供与する契約を医薬品開発支援(CRO)大手のイーピーエスの子会社と結んだ。がん細胞だけを殺すウイルス技術で、悪性脳腫瘍やアスベスト(石綿)による中皮腫延命効果が期待される。3年後をメドに中国でがん遺伝子治療の臨床試験に入る。

2011年6月22日 日本経済新聞

2011年6月21日火曜日

画像に映らない肺がんを触診で発見

肺がん」安全確実で負担少ない術式開発

★帝京大学医学部附属溝口病院

肺がんでは内視鏡によって小さな傷口で治療する胸腔鏡下手術が盛んに行われている。その一方で、従来の大きな傷口の開胸手術にこだわっている施設もある。

胸腔鏡下手術は患者への負担は少ないが、内視鏡を通した2次元の画像を見るため死角が生じることがあり、なおかつ、医師は手で直接臓器を触れることができない。画像診断や内視鏡で捉えることができない臓器の内部の異変を、触診で見極めることはできないのだ。

逆に開胸手術は、医師は肉眼で臓器を確認でき触診は可能だが、傷口が大きく患者への負担は重い。高齢で生活習慣病などの他の病気を合併していると、開胸手術はできないこともある。

そんな2つの術式のメリットは活かし、デメリットを克服した治療を行い、全国に名を馳せているのが帝京大学医学部附属溝口病院呼吸器外科だ。

「自然気胸や早期がんでは胸腔鏡下手術で十分対応できます。しかし、進行がん転移性肺がんのように、腫瘍が飛び散っているような場合は、画像診断の映像だけでなく、実際に手で触れて確認した方が、画像には映らない腫瘍が見つかることもあるのです。術式にこだわるよりも確実性と安全性を常に考えています」

こう話す同科の藤野昇三教授(57)は、滋賀医科大学呼吸器外科時代の1991年から胸腔鏡下手術を導入。手術数を重ねながら、胸腔鏡と開胸手術の適応の見極めを行ってきた。そして、胸腔鏡下手術の欠点を補うため、みぞおちに片手が入る程度の切開を加え、触診が可能となる「HATS」という術式を新たに開発した。

HATSでは、胸腔鏡の画像に加え、体内に入れた片手で左右の肺を触り、臓器に異変がないかチェックができる。そして、傷口は開胸手術より格段に小さいため、患者への負担も少ない。

進行した肺がん転移性肺がんでは、画像に映らない腫瘍を触診で見つけられる利点があります。ただ、病態によって胸腔鏡だけか、HATSが良いのか見極めています。治療の選択肢が多ければ多いほど、さまざまな病態に対応できると思っています」

藤野教授は、人材育成にも力を入れてきた。その手腕が認められ、2007年に移籍して現職となり、同病院に初めて呼吸器外科が開設された。川崎市内で3番目の日本呼吸器外科学会の基幹施設として承認され、その手腕への地域の期待も大きい。

「胸腔鏡下手術ばかりでは、触診や開胸手術の技術は向上しません。患者さんの状態に合わせて使い分けができるように、オールマイティーな診断と治療ができる若手の育成にも力を入れています」と藤野教授。そのための取り組みは今も続いている。(安達純子)

<データ>2010年実績
☆手術総数97件
☆原発性肺がん30件
☆転移性肺がん15件
☆自然気胸25件
☆縦隔腫瘍9件
☆病院病床数400床

〔住所〕〒213-8507川崎市高津区溝口3の8の3 (電)044・844・3333

2011年6月20日 ZAKZAK

2011年6月20日月曜日

抗がん作用フコイダン500円

厄介者、海藻アカモクを食品化 越廼漁協、町おこし救世主に

福井県福井市の越廼漁協が、栄養価が高く抗がん作用があるといわれている、海藻「アカモク」の商品化に成功した。同漁協では「後継者不足や過疎化に悩む同地区にとっては明るい材料。町おこしに一役買ってほしい」と大きな期待を寄せている。

アカモクは、沿岸の岩場に繁殖する褐藻類の1年藻で全国に分布している。ワカメの4倍以上のカリウムとマグネシウムを有し、抗がん作用があるとされるフコイダンも含まれている。東北地方では「ギバサ」などの名称で食卓に並ぶ。

これまで越廼地区では、漁船のスクリューに絡みつき除去に手間がかかることから「ジャマモク」と疎まれてきた。同漁協の庭本仁実さん(60)は「水揚げするとすぐに茶褐色に変色し、とても食べようとは思わなかった」と話す。

そんな“邪魔者”が同地区の救世主として見直されたのは2年前。東北大で海藻の研究をする佐々木久雄講師が生態調査に訪れた際、付近に高品質なアカモクが大量に繁殖していることに目を付け、商品化を目指し開発に乗り出した。

昨年、同市から「ものづくり支援補助金」を受け、同漁協婦人部が中心となり本格的に始動。半年間試行錯誤を重ねた結果、水揚げしたアカモクをすぐに熱湯でゆで、冷水ですすいだ後、冷凍保存する加工法で商品化に成功した。開発に当たった副部長の上野志津子さん(73)は「緑色とみずみずしさを保つのが一番苦労した。日本一おいしいアカモクを使った、いろんな調理方法を考案していきたい」と意欲を見せていた。

4月から「こしのぎばちゃん」の商品名で1パック200グラム、500円で販売を始めた。庭本さんは「東日本大震災の影響で東北地方の収穫量が減ったせいか、県外からの問い合わせが来ている。少人数で生産しているため増産はできないが、いずれは機械化して大量生産していければ」と話している。

問い合わせは、越廼漁協=☎0776(89)2316。

2011年6月18日 福井新聞

がんの部位も8割以上の確率で特定

血液で消化器がん検査 金大開発、欧州で事業化

ドイツ企業との事業提携契約について説明する丹野社長=金沢商工会議所
金大が開発し、血液の検査で消化器系のがんにかかっているかどうかが分かる世界初の手法が、欧州全域で事業化される見通しとなった。同大発のバイオベンチャー企業「キュービクス」(金沢市)が19日までに、ドイツの企業と事業提携契約を結んだ。7月から現地で臨床性能試験を実施し、12月にも検診事業が始まる。

この手法は、がんに関係する遺伝子を載せた「DNAチップ」に患者の血液から抽出したRNA(リボ核酸)を垂らし、各遺伝子の反応を解析する仕組み。現在特許出願中で、金大医薬保健研究域医学系の金子周一教授らのグループとキュービクスが共同で研究開発を進めている。

今回契約を結んだのはドイツのバイオベンチャー企業「ZMO社」。ドイツ国内で約200例の臨床試験を実施し、性能を確認した上で欧州各国で検診事業を展開する。キュービクスはDNAチップを輸出するほか、検査・解析の手法を指導する。

日本国内の臨床検査では、がん患者を100%、健常者を87%の確率で識別。胃・大腸、すい臓といったがんの部位も8割以上の確率で特定できた。がんの進行とともに増加する「腫瘍マーカー」を調べる現在の検査と比べて発見率が高く、PET(陽電子断層撮影)などの画像診断よりも手軽に検査できるメリットがあるという。

キュービクスによると、北陸をはじめ日本国内の複数の病院で、検診事業への導入が検討されており、初年度(2012年3月期)は売上高1億5千万円を目指している。丹野博社長は「患者の負担が少なく、より正確な検診が実現できる。事業としてしっかりと軌道に乗せたい」と話した。

2011年6月20日 富山新聞

2011年6月16日木曜日

大腸がんを1時間で全自動高精度検査

世界初、全自動で大腸がんの遺伝子変異型を検出

凸版印刷(東京都千代田区)などが13日発表したところによると、同社と理化学研究所(埼玉県和光市)ゲノム医科学研究センター(鎌谷直之センター長)、理研ジェネシス(東京都台東区)は、共同研究で、全自動小型遺伝子型解析システムを開発した。

この全自動小型遺伝子型解析システムを用いたシカゴ大学との共同研究で、約140例の大腸がん患者から採取した、がん組織内の遺伝子変異の解析を試みたところ、大腸がんの遺伝子変異を全自動で、しかも1時間以内に高感度かつ高精度に検出できることが明らかになったという。

現在、遺伝子解析手法として一般的なダイレクトシークエンス法では、採取したがん組織中に存在する30%以下の遺伝子変異を検出することは困難とされている。一方、今回のシステムでは高感度なインベーダープラス法を採用し、専用の自動装置と組み合わせることで、大腸がん組織中の5%の変異を安定的に検出できるという。また、その操作も、専門家でなくても比較的容易だとのこと。これにより分子標的薬の奏効性予測が容易になれば、いわゆるオーダーメイド医療の実現に大きく近づくことになろう。

2011年6月16日 医療人材ニュース

2011年6月14日火曜日

卵巣がん新治療用薬が承認申請へ

アバスチンに卵巣がん抑制効果

世界的なヒット商品「アバスチン」の新たな効能が分かった

スイスの製薬大手ロシュ・ホールディングの世界的ベストセラー薬「アバスチン」が卵巣がんの進行を遅らせ、死亡率を減少させることが2つの研究でわかった。

片方の研究では、化学療法での治療後に卵巣がんが再発した484人に対し、化学療法と、アバスチン併用化学療法のいずれかを実施し比較した。化学療法の場合、腫瘍増大までの中央値は8.4カ月、併用した場合は12.4カ月と増大速度が4カ月遅くなり、腫瘍の縮小程度も併用者の方が良好だった。もう1つの研究では、高リスクの卵巣腫瘍が初めて認められた1528人のうち、半数に化学療法のみを行い、残り半数には化学療法と1年分のアバスチン投与を併用した。28カ月後、化学療法の女性は200人が死亡したが、併用療法の場合は178人だった。下位集団に属する最高リスクの患者を対象とすると、化学療法の死亡者は109人である一方、アバスチン併用者は79人だった。以上のデータは4日、シカゴで行われた米国臨床腫瘍学会で公表された。

今回の結果により、アバスチンの卵巣がんへの適応承認は副作用や費用の面から有益かという議論が再燃した。米食品医薬品局(FDA)は昨年12月、アバスチンの乳がんへの適応承認撤回を勧告したが、ロシュは反論し、来月ヒアリングが開かれることになっている。米ペンシルベニア大学卵巣がん研究センター長は「アバスチンは非常に高価なため、費用と効果は慎重に検討されなければならない」と指摘する。一方、ロシュのアバスチン臨床開発責任者は「今回公表されたデータは、卵巣がん治療用の承認申請に用いられるだろう」と話した。

腫瘍血管新生を抑制することで、がんの増殖を停止させる初の承認薬として2004年に販売が開始されたアバスチンは、結腸直腸、脳、肺、腎臓の腫瘍の治療薬として、昨年は62億ドル(約4995億円)の収益をあげた。

卵巣がんの早期発見は非常に難しく、発見時にはすでに卵巣の外に広がっている。進行がん患者の腫瘍発見時からの平均生存期間は2年半から3年だという。米国がん協会によれば、昨年、2万1880人が卵巣がんと診断され、1万3850人が死亡した。

卵巣がんの女性にとってはよいニュースだ。(アバスチンによって)卵巣がんは慢性疾患以外の何物でもなくなる」と米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター関係者は語った。

2011年6月14日 ブルームバーグ

がん患者への投与をFDAが禁止

薬食審・第二部会 エポジンの「がん化学療法に伴う貧血」 「承認適切でない」

厚労省の薬食審医薬品第二部会は6月13日、中外製薬のエポジン注(一般名:エポエチンベータ遺伝子組換え)の効能に「がん化学療法に伴う貧血」を追加することについて審議し、「承認することは適切ではない」との結論をまとめた。予後の悪化や腫瘍の増殖の促進というリスクを回避しがたいとし、薬事法の承認拒否事由に該当すると判断した。ただし、新たな治療法としての期待や、患者の同意を得て使用可能ではないかとの意見もあったことから、広く一般から意見を募集(パブリックコメント)し、それも踏まえて、9月にも予定される薬事分科会で改めて審議することになった。

13日は1議題のみで、同剤のシリンジ24000、同36000に「がん化学療法に伴う貧血」の効能追加。09年11月に中外製薬から申請されていた。同省によると、医薬品医療機器総合機構の審査でも第二部会と同様の結論が出ていたが、中外側と見解の相違もあり、部会で審議された。

部会では赤血球輸血以外の治療選択肢の開発への期待があるとしながらも「赤血球造血因子(ESA)製剤の投与により、がん患者では生命予後の悪化、腫瘍増殖の促進という極めて重要なリスクの懸念が報告されており、現時点では投与対象患者をHb濃度等で限定するなど厳重な管理を行ってもこのリスクを回避できることは示されていない」と指摘。「現時点では承認は困難」だとした。

「新たなエビデンスの追加を待って再度の検討が期待される」との意見も付されてはいるが、これは指摘されるリスクを払拭するほどのデータを期待しての意見。中外は「現状の推移を見ていく」(広報IR部)とし追加データを提出することは予定しておらず、当面は厳しい審議環境にある。

中外は同日、「当社は承認取得に向け引き続き努力してまいります」とのコメントを発表した。同社広報IR部は「今後どうするかはコメントできない」としている。

ESAのがん患者の投与を巡っては米国FDAが08年7月に治癒が見込まれるがん患者やHb濃度10g/dL以上の患者への投与を禁止した。当時、武田薬品と米アフィマックス社ががん化学療法による貧血の効能で日米でフェーズ1を進めていたヘマタイド(エリスロポエチン受容体に作用する合成ペプチド)は、その投与制限のあおりで被験者確保が難しくなり開発中断。日本には同効能を持つESA製剤はなく、今回のエポジンのほか、協和発酵キリンのネスプが承認審査段階(08年11月に申請)にある。

2011年6月14日 ミクスONLINE

2011年6月13日月曜日

病勢コントロール率95%の肝臓がん新薬

化学剤とSIRT併用の肝がん治療を臨床試験=豪サーテックス


肝臓がん標的治療薬開発大手の豪サーテックスは、肝がん患者を対象に同社製 マイクロスフィア「SIRスフィア」を使用したSIRT(選択的内部放射線療法)とカペシタビンを併用した第1相臨床試験の結果が米国臨床腫瘍学会で報告されたと発表した。試験と報告は米フォックスチェイスがんセンターが実施。試験に参加した患者は21人で、病勢コントロール率は95%だった。最低濃度グループで毒性と関連している可能性のある高ビリルビン血症などが認められたものの、併用化学療法で一般的な用量のカペシタビンはSIRスフィアと安全に併用できるとしている。

2011年6月13日 時事通信

安価な抗がん剤の処方

後発品使用促進 医療機関に後発品OKと変更不可の二極化傾向 薬価研調査

日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会は6月10日、保険薬局での後発品使用状況に関する調査結果を発表した。調査方法は保険薬局の薬剤師との面談による聞き取り調査で、21都道府県の保険薬局110施設を回った。後発品使用促進のボトルネックは薬剤師と指摘され続けているが、今回の調査では、薬剤師は総じて後発品使用促進に取り組んでおり、むしろ後発品に慎重な医師や医療機関の変革を求めなければ後発品の更なる使用促進が望めないとの結果だった。同調査を実施した薬価研の担当者は、「薬剤師は熱心に取り組んでおり、薬局でやれることはやり尽したのではないかとの印象を持った」としている。

調査は2010年10月~11年1月に実施した。薬価研の同調査の担当者が、所属する製薬企業の営業などを通じて面会のアポイントが取れた保険薬局を訪ね、ヒアリングした。

「後発品への変更不可」とされている処方せんの割合(個別品目の変更不可含む)を聞いたところ、「0~20%未満」との薬局が53.7%と半数以上だった。ただ、10年4月以前とこの傾向に「変化なし」との回答は6割強にのぼり、全体的な印象として、医療機関によって後発品OKと変更不可という二極化が進んでいるとの声も多く聞かれたという。また、変更不可が「減少した」は25%、「増加した」は1割未満だった。

変更不可との処方せんが少なくなった理由では、「近隣医療機関の協力を得ることができたため」との回答が多く、医師・医療機関への積極的な働きかけなどによるもの。一方、変更不可との処方せんには傾向があり、「特定の施設や開業医の処方せんに変更不可が多い」ようで、また「(それらが)特定の診療科の処方せんである」との声が多かった。

後発品の更なる使用促進に向けた意見を求めたところ、「変更不可の処方せんは、薬局ではどうすることもできない」など、医師・医療機関の意識変革が必要との意見が多く寄せられたとしている。また、ある地方の複数の薬局では、高齢患者を中心に、全幅の信頼を寄せている“お医者様”の処方通りの調剤を望み、薬剤師が後発品に変更することに抵抗を感じる人が少なくない現状の紹介もあったという。

そのほか、更なる使用促進に向けて、▽後発品への変更不可や後発品の銘柄指定の処方せんの原則禁止▽一般名処方の推進▽自己負担のないもしくは少ない患者への制度上の措置――などが必要との意見もあった。このうち後発品銘柄指定の原則禁止や一般名処方の推進は、その背景に、薬局の在庫管理負担があるようだ。

◎積極的に後発品に変更する薬剤 長期処方の薬剤や慢性疾患の薬剤

また、薬剤師が後発品に積極的に変更している薬剤や、積極的に変更していない薬剤を聞いたところ、積極的に変更している薬剤は「自己負担額が軽減される薬剤」との回答が多く、具体的には長期処方の薬剤や慢性疾患の薬剤との回答が多かった。これに続いて「治療の主軸とならない薬剤」が多く、ビタミン剤や胃腸薬などが挙がった。

一方で、積極的に変更していない薬剤では、最も多かったのが精神科用薬との回答で、全体の約3割にのぼった。「患者が不安に思う」「薬の効き方が違ってくる場合があるので変更し難い」とのコメントがあった。次いで「使用感が異なる可能性のある外用剤」との回答が多く、これに続いて抗がん剤や循環器用剤となった。具体的なコメントでは、「不整脈治療薬や抗がん剤などハイリスク薬は積極的には変更していない」「糖尿病薬などコントロールを要する薬剤」との内容が見られた。先発品と後発品との「効能違い」が変更しない原因との回答も散見されたという。

なお、訪問した保険薬局の処方せん受付枚数は1か月当たり平均1867枚、医薬品備蓄品目数は平均1098、後発品の備蓄品目数は平均178。また、後発品調剤体制加算の算定状況は、算定していない薬局が34.5%、同加算1(6点)が24.5%、同加算2(13点)が23.6%、同加算3(17点)が 17.3%――だった。

2011年6月13日 ミクスONLINE

2011年6月10日金曜日

切除不能再発大腸がんに新薬

メルクセローノ、「アービタックス」が全生存期間を有意に延長することを証明

ASCO 2011:アービタックス(R)は切除不能再発大腸がんで非肝限局転移症例でも全生存期間を5.1カ月改善

●CRYSTAL試験の解析データにより、非肝限局転移KRAS野生型症例で、アービタックスが全生存期間を有意に延長したことを証明

●アービタックスがKRAS野生型症例の根治切除率を改善し、それによる治癒の可能性を高めることも明らかに

【米シカゴ、独ダルムシュタット】
Merck KGaA(ドイツ ダルムシュタット市)の医薬品部門であるメルクセローノは、CRYSTAL試験のレトロスペクティブな解析により、アービタックス(R) (セツキシマブ)がKRAS野生型の切除不能再発大腸がん(mCRC)で、非肝限局転移症例における治療成績を有意に改善したことを発表しました。

この解析では、KRAS野生型症例におけるアービタックスと標準化学療法(FOLFIRI)による一次治療の有効性を転移部位ごとに検証しました。この結果によれば、非肝限局転移症例(non-LLD)において、アービタックスをFOLFIRIに併用した化学療法を行った群では、化学療法単独群と比較して有意な改善が得られ、全生存期間が5カ月以上延長しました(22.5カ月対17.4カ月、p=0.013)。mCRC症例の約70%はこのように進行した非肝限局転移症例であり(※1),(※2)、今回の結果は、KRAS野生型mCRC症例において、アービタックス併用化学療法は主要な治療目標の達成をサポートすることを示しています。

また今回の解析においては、アービタックス併用化学療法の肝限局転移症例における根治切除(R0切除)の可能性も検証されました。その結果、R0切除率は、アービタックスとFOLFIRIの併用化学療法を行った肝限局転移群で最も高くなりました。統計的な有意差はなかったものの、化学療法単独群と比較してR0切除率はオッズ比で2.58倍改善されました(13.2%対5.6%、オッズ比2.58、p=0.125)。(※1)これらの結果は、CRYSTAL試験やその他のアービタックスの主要な試験から、(※ 3)KRAS野生型症例においてアービタックス併用化学療法が奏効率を増加させ、それに伴ってR0切除率も増加した、既に発表されている結果を支持しています。

ASCOで発表された報告の主著者であるドイツ、オルデンブルク病院(Klinikum Oldenburg)のクラウス・ヘニング・ケーネ教授(Professor Claus Henning Kohne(*))は次のように述べています。「進行がんの多くの患者さんに治療がもたらす最も重要なベネフィットとは、より長く生きること、さらには治癒することです。そのため、今回のCRYSTAL試験による新たな知見は、アービタックス併用化学療法は肝限局転移症例と、肝限局以外の転移症例のどちらにとっても重要で、両方の患者群に有効であることを明確に示唆しました」

2011年6月10日 プレスリリース

すい臓がん,前立腺がんの新薬開発

アステラス製薬、米国で子会社とベンチャー企業がADCプログラム「ASG-22ME」を共同開発開始

ADCプログラム『ASG-22ME』の共同開発のお知らせ

アステラス製薬株式会社(本社:東京、社長:野木森 雅郁、以下「アステラス製薬」)の子会社である米国アジェンシス社(英名:Agensys, Inc.、社長:Sef Kurstjens )と米国のバイオベンチャー企業であるシアトルジェネティクス社(英名:Seattle Genetics, Inc.、CEO:Eric L. Dobmeier)は、両社間で締結された、抗体医薬の関連技術である抗体-薬物複合体(ADC:antibody-drug conjugate)技術(*) に関するライセンス契約に基づき、シアトルジェネティクス社が「ASG-22ME」(旧プログラム名称:AGS-22M6E)について、アジェンシス社と共同開発を行うオプション権を行使しましたのでお知らせします。

シアトルジェネティクス社とアジェンシス社は、2007年1月にADC技術に関するライセンス契約を締結し、2009年11月に一部修正しました。当該契約では、ADCプログラムの一つである「ASG-5ME」について、共同開発・商業化を行い、費用および利益を両社で折半することになっており、現在、両社ですい臓がん前立腺がんを対象とした第I相臨床試験を共同で進めています。また、アジェンシス社は、そのほか複数個のADCプログラムについて、単独で開発・商業化を行うための独占的ライセンスを取得しており、その対価としてシアトルジェネティクス社に対し、開発マイルストンに応じた一時金および売上に応じた一桁台半ばのロイヤリティ等を支払うことになっています。但し、シアトルジェネティクス社は、「ASG-5ME」を除く2個のADCプログラムについて、費用および利益を折半することを条件にアジェンシス社と共同して開発・商業化を行うことのできるオプション権を有しており、今回「ASG-22ME」について、このオプション権を行使したものです。

「ASG-22ME」は、膀胱がん乳がん肺がんすい臓がんなどの多発性がんに発現するネクチン-4(Nectine-4)に作用する完全ヒト型抗体に、ADC技術を加えたものです。本抗体は、シアトルジェネティクス社の独自技術である細胞内酵素により分解されやすいリンカ―を介して、強力な合成毒素である(monomethyl auristatin E、以下「MMAE」)を結合しています。このADCは血液中では安定でありながら、ネクチン-4を発現するがん細胞では細胞内に取り込まれた後MMAEを放出し、狙ったがん細胞のみを死滅させるよう設計されています。

アジェンシス社は、前期(2011年3月期)第4四半期に米国食品医薬品局(FDA)に対して、「ASG-22ME」の第I相臨床試験に関する治験許可申請を提出しました。この第I相臨床試験は、米国の多施設で行われ、50名までのがん患者へ「ASG-22ME」を単剤で用量漸増投与した際の安全性、忍容性、薬物動態、制がん作用を検証します。

今後アジェンシス社は「ASG-5ME」と「ASG-22ME」について、シアトルジェネティクス社と共同で開発・商業化を行い、費用および利益を両社で折半します。なお、本オプション権行使により、アジェンシス社はシアトルジェネティクス社よりこれまでに発生した「ASG-22ME」の開発費用の半分を受領しますが、アステラス製薬の当期(2012年3月期)の業績へ与える影響は軽微です。

アステラス製薬はアジェンシス社とシアトルジェネティクス社共同で、画期的で最先端のADC技術を活用したプログラムの開発を進めることにより、がん治療に新たな選択肢を提供できるものと考えています。


*抗体-薬物複合体(ADC:antibody-drug conjugate)技術:がん細胞表面の抗原に結合する抗体に毒素を付け、細胞内で毒素を放出させることで、がん細胞を死滅させる技術。

2011年6月10日 プレスリリース

最先端がん治療も自己負担無し

陽子線がん治療が特約対象に 民間保険で負担軽減

福井県立病院陽子線がん治療センターは8日、厚生労働省が認める先進医療に同センターの陽子線治療が適用されたと発表した。民間保険会社が扱う医療保険の先進医療特約の対象となる。加入者は高額な治療費の自己負担分が軽減されるため、同センターは利用者の増加に期待している。

同センターは3月7日に治療開始。適用要件となる10症例の治療実績を重ね、厚生労働省に1日提出した届け出が8日までに受理された。

陽子線治療費は照射20回以下が240万円、21~25回250万円、26回以上260万円。同センターによると、各保険会社の先進医療特約の給付上限額は一般的にこれらを上回るため、ほとんどの加入者は陽子線治療に対する自己負担が不要になるという。

また、陽子線治療に付随する検査、投薬、注射、入院料などは今回、公的医療保険の対象となった。これらの費用のうち7割が各健康保険制度から給付を受けられる。

利用者にとって陽子線がん治療は、治療費が高額な点がネックとなっていた。同センターは7日までに県内外の35人を受け入れ、本年度末までの患者目標数は110人。今回の適用を受け「大幅な負担軽減が図られた点を広くアピールし、受け入れ増加につなげたい」としている。

県は、県民に限り1治療当たり治療費25万円を減免、嶺南在住者の通院交通費1回当たり3千円を助成するなどの優遇制度も設けている。今後は照射治療に対する公的医療保険の適用を国に働き掛けていく方針。

2011年6月9日 福井新聞

2011年6月9日木曜日

TS-1とゲムシタビンの併用膵臓がん療法

進行膵癌を対象としたTS-1臨床試験(GEST)結果を米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表

大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、社長:宇佐美 通)は、米国時間の6月7日、第47回米国臨床腫瘍学会(ASCO)において、進行膵癌症例を対象としたTS-1臨床試験(GEST*1)の結果が口頭発表されましたのでお知らせします。

膵がんの標準治療薬であるゲムシタビンに対して、経口抗がん剤であるTS-1が非劣性であることが検証され、TS-1とゲムシタビンの併用療法は優越性を検証できませんでした。

- 試 験 結 果 -
・主要評価項目である全生存期間は、ゲムシタビン単剤が8.8ヵ月、TS-1単剤が9.7ヵ月であり、同等であることが示されました(HR=0.957,p=0.0003)。TS-1とゲムシタビンを併用する治療法では10.1ヵ月であり、ゲムシタビン単剤よりも優れていることは統計学的に証明されませんでした(HR=0.875,p=0.1496)。
・無増悪生存期間は、ゲムシタビン単剤が4.1ヵ月、TS-1単剤が3.8ヵ月であり、同等であることが示されました
(HR=1.094,p=0.0237)。TS-1とゲムシタビンを併用する治療法では5.7ヵ月であり、ゲムシタビン単剤よりも統計学的に優れていることが証明されました(HR=0.660,p<0.0001)。
奏効率では、ゲムシタビン単剤が13%に対してTS-1単剤が21%(p=0.0242)であり、TS-1とゲムシタビンを併用する治療法が29%(p<0.0001)であり、いずれの治療法もゲムシタビン単剤よりも統計学的に優れていることが証明されました。
・安全性についてはいずれの群も認容可能なものでした。ゲムシタビン単剤、TS-1単剤、TS-1とゲムシタビンを併用する治療法において特徴的なものは、グレード3以上の血液毒性として白血球減少は19%、4%、38%、好中球数減少は41%、9%、62%、血小板減少は11%、2%、17%でした。グレード3以上の非血液毒性として下痢は1%、6%、5%でした。
・QOLについては、EQ-5D*2により評価した結果、ゲムシタビン単剤に対してTS-1単剤は差がなく(p=0.61)、TS-1とゲムシタビンを併用する治療法では統計学的に優れていることが証明されました(p=0.003)。
*2 EQ-5D:Euro-QOL 5D 健康水準の変化を基数的に評価するためのQOL質問票

本試験結果において、ASCO発表演者である大阪成人病センター 井岡 達也先生は「膵がん治療の標準療法であるゲムシタビン単独に対して、TS-1が非劣性を示したことは大きな意義がある。経口剤による標準治療を受けることが可能になる」とコメントをされています。
大鵬薬品は、今回のGEST試験の結果は膵がん治療に大きく貢献するものであったと考えております。さらなる検討を進め、膵がん領域における治療法の開発を進めてまいります。


【ティーエスワンについて】
フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤であるティーエスワンは、吸収後、抗がん剤フルオロウラシル(5-FU)に変換される代謝拮抗物質のテガフール、体内で 5-FUの分解を阻害するギメラシル(5-chloro-2,4-dihydroxypyridine,またはCDHP)、消化管で5-FUのリン酸化を阻害するオテラシルカリウム(Oxo)3化合物の配合剤です。胃がんの治療薬として開発され、1999年に国内で最初に承認されて以来、胃がんの標準治療薬となっています。日本においては、他に結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌および胆道癌の6つの追加効能を取得しています。海外では、韓国、シンガポール、中国、台湾と欧州で胃癌の適応で承認されており、今日まで、ティーエスワンは日本とアジアで870,000人以上の患者さんに使用されています。

【GEST試験について】
本試験は日本と台湾の共同試験であり、80以上の医療機関が参加し行われました。2007.7~2009.10月の間に834例が登録されました。対象は切除不能進行再発膵癌の患者さんで、ゲムシタビン単独で治療する群と、経口抗がん剤であるTS-1単独で治療する群、TS-1とゲムシタビンを併用して治療する群の3つの群に割り付けて比較したものです。評価項目は全生存期間、無増悪生存期間および安全性等としております。ゲムシタビン単独で治療する群は、1,000mg/m2のゲムシタビンを1日目、8日目および15日目に点滴静注し、22日目は休薬する28日を1コースとしたスケジュールでした。 TS-1単独で治療する群は体表面積に合わせて規定された投与量(80mg、100mg、120mg/日)を1日2回、28日間連続経口投与し、その後 14日間休薬する42日を1コースとしたスケジュールでした。また、TS-1とゲムシタビンを併用する治療群は1,000mg/m2のゲムシタビンを1日目と8日目に点滴静注し、TS-1は体表面積に合わせて規定された投与量(60mg、80mg、100mg/日)を1日2回、14日間連続経口投与し、その後7日間休薬する21日を1コースとしたスケジュールでした。いずれの治療群も規定された中止の基準に該当するまで治療薬投与が繰り返されました。
2011年6月8日 プレスリリース

2011年6月6日月曜日

転移性皮膚がんに新薬

皮膚がん治療薬 数十年の成果

シェリル・ストラトスさん(46)は、最も悪性の皮膚がんであるメラノーマ(悪性黒色腫)が転移し、医師から余命6~8カ月と告げられている。   広告会社を経営するストラトスさんは、メラノーマ治療薬「PLX4032」(一般名:ベムラフェニブ(vemurafenib)の臨床試験を2010年2月に開始。今年4月には、肝臓や肺の腫瘍が検出できない程度に縮小した。ストラトスさんは「生き返ったようだ」と語る。
スイスの製薬会社ロシュ・ホールディングと日本の第一三共が開発した同治療薬は、がん生物学における革命的な治療の一つだ。転移性メラノーマは長い間、致命的疾患とされ、 米国では年間8700人が死亡している。現在、ロシュ、第一三共、米製薬大手ブリストルマイヤーズ・スクイブ、英製薬大手グラクソスミスクラインの医薬品の治験が進められ、ストラトスさんのような患者の予後が改善しつつある。
米ダナ・ファーバーがん研究所のメラノーマ部門、ステファン・ホ ディ氏は「科学は進歩している」と述べ、「メラノーマの治療は新たな局面を迎えている。新薬の登場で治療の併用や、生存期間の延長が見込まれる」と述べた。これらの治療で治癒することはないが、腫瘍の遺伝子を標的とし、がん細胞の侵入を阻止する抵抗力を持つことで、治療にどれほどの進歩がみられるか示されている。
グラクソスミスクラインの「GSK2118436」と組み合わせて利用する研究も進められている。同医薬品はメラノーマの転移を促進する変異タンパク質を阻害する。
ストラトスさんの担当医であるカリフォルニア大学の腫瘍専門医、アントニー・リバス氏は、新たな治療法によって、今後5~10年で進行したメラノーマの患者の生存期間が10カ月から20カ月へと2倍に延びるかもしれないと予測する。
今回の研究は、何十年にも及ぶ失敗の歴史が生んだものだ。今年に至るまで、進行したメラノーマの治療薬として承認された医薬品はわずか2種類であり、いずれも延命につながるとは証明されていなかった。米製薬大手ファイザーや独製薬大手バイエル、グラクソスミスクラインなどの企業のメラノーマ治療薬は、最終開発段階でつまずいていた。

2011年6月6日 ブルームバーグ

2011年6月3日金曜日

がんに負けない食材5選

身体をガンから守る食材5選


若いうちはガンという病気の恐ろしさについて真剣に考えることは少ないかもしれません。しかし、人間なら老化やそれに伴う様々な病気についていつか必ず直面する日が訪れます。
ガンはとくに生死にかかわる深刻な病気ですが、日々の食生活によってこの病気のリスクをかなり防げることが多くの研究から明らかになっています。自分の健康 管理は自分の責任で行うべきもの、ガン予防に効果があるといわれている食材たちをご紹介するので、毎日の食生活のなかにうまくとり入れて、病気に負けない強い体づくりを目指しましょう。

生姜

洋の東西を問わず、生姜は古くから優れた健康食材として利用されてきました。近年では、強力な抗炎症作用のあるジン ジェロール、ショウガオール、パラドルといった成分が含まれていることが明らかとなり、ガン細胞の成長を抑制するといわれています。とくに動物実験では、 大腸ガン卵巣ガン乳ガン胃ガンの成長を阻むことが確認されています。

キノコ類

シイタケ、シメジ、マイタケ、日本では数多くのキノコ類が食用されていますが、これらには免疫作用を高めるβグルカンや、抗酸化物質が豊富です。中国の最近の調査では、新鮮なキノコ類を毎日少なくとも10グラム以上食べている女性は、乳ガンのリスクが64%も低下したといいます。

緑茶

日本人に深いなじみのある緑茶は、優れた抗ガン作用がある飲み物として海外でも大きく注目を浴びています。緑茶に含ま れるカテキンはとりわけ、皮膚ガン、肺ガン、卵巣ガン乳ガン前立腺ガン膀胱ガン肝臓ガンの防止に効果があるといわれており、毎日3杯から5杯くらいを目安に飲むことが推奨されています。

ぶどう類

ぶどう類には抗酸化物質として知られるレスベラトロールが含まれており、この物質は正常な細胞を傷つけることなく、ガ ン細胞だけを破壊する特徴があります。ブドウジュースや、赤ワイン、とくにピノ・ノワールという種類から作られているワインなどから摂取するとよいでしょう。

ニンニクやタマネギ

ニンニクやタマネギに含まれる硫黄化合物には、優れた抗炎症作用があり、デトックス効果抜群です。とくに、ニンニクに 含まれる化合物は、体内の重要な抗酸化酵素系の主成分となるグルタチオンの生産を活発化させ、細胞の老化を防いでくれます。また、美容面でも、シミ、ソバカスの生成を阻むというメリットがあります。

ほかにも、トマトキャベツブロッコリーベリー類、などがガン予防効果のある食材として、注目されています。これらの食べ物 は、美肌効果に優れていることでも知られているので、まさに一石二鳥のうれしい食材ばかり。ぜひ、健康と美容、両方で効果を出してみましょう。

2011年6月2日木曜日

奏功率59%の甲状腺がん新薬

エーザイ、マルチキナーゼ阻害剤「Lenvatinib(E7080)」の第II相臨床試験の予備的解析結果を発表


「Lenvatinib(E7080)」 が進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん
対象とする第II相臨床試験で59%の奏功率を実証


エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、開発中のマルチキナーゼ阻害剤「lenvatinib(米国一般名、当社開発番号:E7080)」 が、進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者様を対象とする第II相臨床試験の予備的解析結果で、治験医師評価によるアップデート客観的奏効率 (Objective Response Rate:ORR)が59%(58例中34例、95%信頼区間:45-71)であったことを発表しました。本試 験の結果は、2011年6月6日に、第47回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会で口頭発表されます。

マルチキナーゼ阻害剤「lenvatinib(E7080)」のグローバ ル、非盲検、単群第II相臨床試験は、過去12カ月で疾患が進行した放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者様58名を対象としました。疾患進行は RECIST評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors:固形がんに対する効果を判定する際 に用いられる評価基準)に基づいて評価されました。

治療抵抗性分化型甲状腺がんは、治療が困難で生命にかかわる疾患であり、その治療選 択肢は限られているため、アンメット・メディカル・ニーズが非常に高い領域です。「lenvatinib(E7080)」は現在、米国において、進行性放 射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者様を対象とする第III相臨床試験が実施されています。

本試験において、最も頻繁に報告され た有害事象は、高血圧:74%(Grade 3:10%)、タンパク尿:60%(Grade 3:10%)、体重減少:57%(Grade 3:7%)、 下痢:55%(Grade 3:10%)、けん怠感:53%(Grade 3:7%)、でした。患者様の35%は、減量により毒性の管理が可能になりまし た。また、最終的に23%の患者様が有害事象により投与中止に至りました。

当社は、米国、欧州、日本で承認を取得した自社創製の新規抗 がん剤「ハラヴェン」をはじめとして、「lenvatinib(E7080)」、「farletuzumab(MORAb-003)」など、乳がん卵巣がん甲状腺がん子宮内膜がんなどのウーマンオンコロジー(女性特有のがん)分野における製品群の充実化に集中して取り組んでいます。これらの取り組み により、がん患者様とそのご家族、医療従事者の多様なニーズの充足とベネフィット向上により一層貢献し、当社のヒューマン・ヘルスケア(hhc)ミッショ ンを果たしてまいります。

2011年6月2日 プレスリリース

7分で全身のがん検査

「全身のがんをわずか7分で被ばくなしに検査可能」、Philipsの業界初の“フル・デジタルMRI”が国内で稼働


オランダRoyal Philips Electronics社の日本法人であるフィリップス エレクトロニクス ジャパンは2011年5月26日に都内で記者会見を開催し、業界初をうたうPhilips社製の“フル・デジタルMRI(磁気共鳴断層撮影法)”装置「Ingenia(インジニア) 3.0T」の国内1号機が、東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)で稼働したことを発表した。

このMRIでは、従来のアナログ方式のMRIに比べて信号強度比が大幅に高まることから、検査時間を従来比で約1/4に短縮できるという。例えば、全身の悪性腫瘍(がん)をスクリーニングする際などに用いる MRI画像(全身拡散強調画像)を7分程度で取得できる。この結果、全身のがん検査を行う手法として、PET(陽電子放射断層撮影)に代えてMRIを利用できるようになるという。

Ingenia 3.0Tの稼働は全世界で5台目、アジア太平洋地域では初めてである。

2011年06月01日 日経BP

2011年6月1日水曜日

抗がん剤副作用に救済策

抗がん剤副作用救済策を検討、政府に提言へ- 民主WTが初会合

民主党厚生労働部門会議の「抗がん剤総合対策ワーキングチーム」(WT、座長=長浜博行参院議員)は5月31日、初会合を開いた。同WTでは、抗がん剤の副作用による健康被害の救済や医薬品安全対策の強化などについて、党の意見を集約する。厚生科学審議会の医薬品等制度改正検討部会などの薬事法改正に向けた議論の進ちょくを見ながら、政府側の結論が出る前に適宜、提言していく方針だ。

冒頭、あいさつした長浜座長は、「抗がん剤の安全対策などを含めて、総合的な対策が必要だ」と指摘した上で、「がん対策推進基本計画の見直しや、薬事法改正などに党内の議論を反映させていきたい」と述べた。

事務局長を務める本多平直衆院議員によると、同WTでは、厚生労働省が6月にも検討を始める「抗がん剤副作用死救済制度」と、「医薬品安全対策の強化」の2本柱で議論を進める。必要に応じて、医療関係者や製薬会社などからヒアリングを実施するという。
副座長の柚木道義衆院議員は会合後、記者団に対し、「安全対策が非常に大きな柱だ。ただ、薬事法改正に絡む部分でいえば、新薬の承認・審査体制(の強化)をもう一つの柱として、まさに表裏一体で(検討を)進めていくことになると思う」と述べた。

本多氏によると、初会合では、抗がん剤の使用に関する政策課題について同省から説明を受け、それを基に議論したが、がん医療体制の現状を踏まえて議論すべきとの指摘が出たことから、次回会合では、がん医療の政策全体について同省から再度ヒアリングすることになった。

同WTは、肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐる訴訟を受け、抗がん剤の副作用による健康被害の救済策の検討などを目的に設置された。3月に設置が決定したが、東日本大震災の発生で初会合がずれ込んでいた。

2011年05月31日 キャリアブレイン

携帯通話に脳腫瘍リスク

携帯通話に脳腫瘍リスク WHO専門組織が可能性認める

世界保健機関(WHO)の専門組織の国際がん研究機関(IARC)は31日、「携帯電話の電磁波が脳腫瘍を発症するリスクを増大させる可能性がある」とする調査結果を発表した。IARCはこれまでの調査では電磁波とがん発症について「因果関係は確認できない」との見解を示していたが、その可能性を初めて認めた。

14カ国、31人の専門家から成る研究グループが24~31日に会合を開き、調査結果をまとめた。

全体として発症のリスクがどの程度増えるという数値は出していない。ただ、携帯電話を1日平均30分で10年以上使用した場合、脳腫瘍のリスクが40%増えるという調査結果も一部にはあるという。IARCは「携帯を頻繁かつ長期間使用する人に対する追加的な調査が必要」と指摘した。

発症リスクを減らす対策として、頭部に携帯を近づけずに通話できるヘッドセットの使用のほか、通話ではなく携帯メールに切り替えることを勧めた。

ロイター通信によると、米国の携帯電話の業界団体である移動体通信・インターネット協会(CTIA)は「IARCの分析は携帯電話ががんを引き起こすことを意味しない」と反発。「新たな研究は何も行われていないのに、判断が変更された」と批判した。

2011年6月1日 日本経済新聞