2011年7月29日金曜日

抗がん剤量1/10で効果100倍の新治療法

東京慈恵医大、水溶性抗がん剤も搭載可能なドラッグデリバリシステムを開発

東京慈恵会医科大学の並木禎尚講師らの研究グループは、異分野技術の融合により、これまで磁気的に送達が困難であった水溶性薬剤を中空磁性カプセルに密封することで、水溶性薬剤の送達を磁力で制御できるがん治療用ドラッグデリバリシステム(DDS)を開発した。開発した中空磁性カプセルは、磁性ナノ粒子を用いる従来技術と比べて5倍以上の薬剤を搭載することが可能で抗がん剤投与量を大幅に削減することが期待されるという。同成果は米国の科学誌「Accounts of Chemical Research」電子版に掲載された。

進行がんの治療法として最も普及している抗がん剤は、通常の薬剤とは異なり、治療効果を発揮する薬剤濃度と、中毒症状が発生する薬剤濃度とが近接する特徴を持っているため、治療効果の向上を目指して抗がん剤の投与量を増やすと、治療の継続を妨げ、時には死を招く有害な副作用が起こり易い問題があり、この「がん病巣における薬剤濃度の上昇」と「正常組織での薬剤分布の低減」による問題の克服を目指したDDS開発が各所で進められているが、さまざまな課題が残されているのが現状である。

従来の磁性ナノ粒子には、水溶性抗がん剤の「粒子内部への密封」、「薬剤搭載スペースの確保」が難しいといった課題が存在していたが、今回研究グループでは、(1)薬剤が自由に出入りできる網目状の隙間、(2)大量の薬剤搭載スペースをもつ「中空磁性カプセル」を開発することで、これらの課題の克服を目指した。

実際に内部に水溶性抗がん剤を密封し、磁気誘導したところ、ヒトがん培養細胞株において磁性カプセルを用いない場合と比較して、抗がん剤単体の 100倍以上の抗腫瘍効果を発揮したことが確認されたほか、薬剤搭載率は、中空スペースを持たない従来型磁性ナノ粒子の5倍以上を達成したという。

研究グループでは今回の技術に対し、中空磁性カプセルの薬剤搭載率が50%以上であること、磁力による磁性カプセルの標的病巣への誘導効果が期待されることより、将来的には、抗がん剤の 投与量を1/10以下に低減できる可能性があるとしており、今後、サイズの最適化などを行い、動物モデルでの治療効果の検証を進めていくほか、中空磁性カ プセルの性能をさらに高めることで、「からだにやさしく、良く効く」がん治療を目指したDDSの開発に取り組んでいくとしている。

2011年7月28日 マイコミ 

オメガ3脂肪酸はがんに効く食べ物

くるみを食べて脱メタボ
メタボ予防セミナーくるみ料理と酒を楽しむ夕べ開催

カリフォルニアくるみ協会

カリフォルニアくるみ協会は7月26日(火)にロイヤルパーク汐留タワーにて、メタボに悩む中高年男性35組70名を招待してメタボ予防セミナーを開催した。

くるみとメタボリックシンドロームにどんな関係が? と思うかもしれないが、くるみにはオメガ3脂肪酸という良質の脂肪酸が豊富に含まれている。これは、動脈硬化を防ぎ、悪玉コレステロール値や中性脂肪値を下げ、心臓病、がん、脳溢血・脳卒中、糖尿病、高血圧、肥満など、いわゆる生活習慣病の予防に効果を発揮し、ほかのナッツ類に比べてもダントツに多くくるみに含有されている。
つまりくるみを日常的に摂取することで、メタボ対策にもつながると言うわけだ。

セミナーではTVなどでもご活躍の山王クリニック院長山王直子先生を招き、メタボ予防についてや、オメガ3脂肪酸のメタボリックシンドロームに対する有用性を講演。
さらに、196年の歴史をもつ新潟上越市に蔵を構える妙高酒造社長の松田治久氏や2007年 日本一のシャンパーニュソムリエを決定する第6回 キュ ヴェ・ルイーズポメリーソムリエコンテストで優勝されたソムリエの田辺公一氏、ロイヤルパーク汐留タワーの君島裕シェフのトークショーも開催し、くるみを ふんだんに使ったメニューや美食に関してのこだわりなどを語った。

会場では、今回のセミナーのために特別にロイヤルパークホテルが開発したくるみメニューがふるまわれた。参加者は、妙高酒造のくるみ料理にぴったりな日本酒や、ソムリエのチョイスしたワインとともに、くるみと酒の相性や新しいおいしさを体験できた。
このメニューは9月にGlenmorangie(グレンモーレンジMHD)と、10月には妙高酒造とコラボレーションしてロイヤルパーク汐留タワーラウンジで実際に味わえるという。

山王直子先生は講演の中で「日本人は欧米人に比べて喫煙率が高く、コレステロール値もほぼ同じにも関わらず冠動脈疾患が遥かに低いのは、日本の食生活に 多く登場する魚が関与しているといわれています。  特に青魚に多く含まれているEPAやDHAといった多価不飽和脂肪酸は、動脈硬化に対して絶大な効果を発揮すると考えられています。くるみに含まれるア ルファリノレン酸もEPAやDHAなどと同じ多価不飽和脂肪酸あり、血流を良くし動脈硬化の改善が見込め、これら3つの脂肪酸を総称して「オメガ3脂肪 酸」とも呼ばれています。
‘くるみが太る’は間違いです。ナッツの中でもずば抜けてオメガ3脂肪酸の含有量が豊富で血流を良くし、メタボ予防にも役立つくるみは、積極的に1日28グラム(手のひらに軽くひとつかみ)を摂取して欲しい食材です」とコメント。
メタボ対策としてのくるみの食べ方のアドバイスなど、医学的見地からのくるみの持つ力の凄さを説いていた。

2011年7月29日 PRON Web

発見が遅れて がん患者が3倍増

年間3000人が死ぬ口腔がんは発見が遅れがち 歯科で診察を

特定の原因がなく舌の縁や頬粘膜などが白くなる白板症や、紅斑が出る紅板症は、口腔がんの前がん症状といわれる。初期ではほとんど無症状だが、白板症で7~14%、紅板症では実に50%以上の確率でがん化する。

欧米では歯科の診察による早期発見で口腔がんの生存率が改善している。一方、日本では、この30年で患者数が3倍も増加しており、しかも進行がんが多く注意が必要だ。

口の中にできる口腔がん患者は、日本ではこの30年間で約3倍に増えており、現在、年間約6000人が新たに発症し、約3000人が死亡している。口腔がんの主なものは舌がんだが、このほかにも舌と歯肉の間にできる口腔底がん、歯肉がん、口の上側にできる硬口蓋がん、頬粘膜がんなどがある。

がん全体における口腔がんの割合は2~4%と少なく、また、口の中の病気は虫歯や歯周病だけだと思われているため、早期発見が遅れるケースが多い。昭和大学歯科病院口腔外科の新谷悟教授に話を聞いた。 「口腔がんの前がん病変として白板症や紅板症があります。白板症は特定の原因がなく舌の縁や頬、歯肉などの一部が白くなるもので、7~14%の確率でがん化する病変です。口の粘膜の一部が紅色になるのが紅板症で、がん化する確率は50%以上と高率なので注意が必要です」

週刊ポスト2011年8月5日号

2011年7月28日木曜日

結腸・直腸がんの末期・再発患者へ新薬

大鵬薬品が新規抗悪性腫瘍薬「TAS-102」の臨床第II相試験結果を発表

大鵬薬品工業(東京都千代田区)は22日、同社が開発を進める新規ヌクレオシド系抗悪性腫瘍薬「TAS-102」に関する臨床第II相試験の結果が、第9回日本臨床腫瘍学会学術集会(横浜)において公にされたと発表した。標準治療不応な進行再発結腸・直腸がん患者に対し生存期間を有意に延長することが示された。

本試験は、フッ化ピリミジン系薬剤、イリノテカンおよびオキサリプラチンを含む2レジメン以上の標準化学療法に不応となった切除不能な進行再発結腸・直腸 がん患者172名を対象とし、プラセボ対照の二重盲検ランダム化比較試験でTAS-102の延命効果を主要評価項目として評価している。

その結果、TAS-102投与群ではプラセボ投与群に比べ全生存期間が延長し[全生存期間 中央値:9.0か月対6.6か月]、死亡リスクも有意に減少した[HR=0.56,p=0.0011]。また、治療関連死は認められず、最も高頻度に認められたCTCAEグレード3以上の薬物有害反応は好中球減少であり、下痢や倦怠感、悪心などは10%以下だった。

2011年7月28日 医療人材ニュース

確実にガン細胞だけを除去する精密機械

 『ガイアの夜明け』では、自らが編み出した独自の医療技術を惜しみなく提供し、世界の患者を救おうと奔走している人々を追う。今も、原発事故の影響で放 射能汚染に苦しむチェルノブイリ。当時体内被曝したため、甲状腺がんを発症した患者が多い。この放射能汚染地域で、一人の日本人医師の医療支援活動に密 着。

【"神の手"を持つ名医、なぜチェルノブイリで...?】
1986年4月26日、チェルノブイリ原発事故が起きた。現場では、様々なガンで数万人の住民が亡くなっている。とくに女性が多く発症する甲状腺ガンは、放射線による影響が最も指摘されている。日本医科大の外科医・清水一雄教授は、12年前からチェルノブイリに通っている。1998年、清水教授は世界で初めて内視鏡を使った甲状腺ガンの手術に成功。内視鏡を使うため手術痕が小さく、完治も早いという利点があった。そして翌99年に教授は、単身チェルノブイリへボランティアとして渡った。事故から13年、そこで見たのは「20年遅れた医療技術では、ガン患 者を診断することさえできない...」という現実だった。そこで、これまで現地にはなかった日本の最新検査システムを導入、ガンの早期発見・早期治療を実 現するため、ロシア人医師たちの指導を始めた。そして「自分の開発した技術で若い女性たちを救いたい!」という思いで2009年からは、日本医科大の医学 生たちを連れて、日本製の機材を持ち込み、現地の病院で内視鏡手術を実施。これまで一般的だったメスを使った手術は大きなキズが残ってしまうため、(現地 ではそれを隠すためタートルネックの女性が多い)内視鏡手術は、20代の女性たちにとってまさに夢のような技術であった。今後は現地でも内視鏡手術ができ るよう、研修を進める予定だ。

【世界の医師が注目...がん患者を救う、ニッポンの"極小技術"】
長野県岡谷市、精密機械工場が集まるこの町に、全国の医師たちが詰めかける会社がある。リバー精工は、大手医療機器メーカーとは違ったアプローチでユニー クな製品を作り出す会社。社長の西村幸氏は元々、モノづくりの世界に身を置いていたわけではない。実は、法務省の官僚だった。地元・長野に戻った西村氏の 目にとまったのが、家内制手工業で作られる医療器具の部品だった。人の為に頑張れるのはこの仕事だと思い、半年間弟子入りし技術の取得に没頭した。その後 リバー精工を立ち上げ、数々の医療機器を開発していくこととなる。製品の特徴は、全国の大学病院の医師と、共同開発をしていくということ。通常、医療機器 メーカーが開発から生産し、その器具を医師たちは使いこなそうと努力する。しかしリバー精工の場合は逆。あらかじめ医師たちから要望を聞き、共同で開発を する。例えば、医師の要望から、ナイフ型だったカテーテルの処置具を、自在に回転するハサミ型のものにした。これまでに比べ確実にガン細胞だけを除去することができ、手術時間を大幅に短縮させることに成功した。そんな折、西村は5年前に大腸や胃など5つのガンがあることが判明した。それ以来、自らもガン患者の身として、患者にとっても負担の少ない器具を作ることを目指している。
リバー精工の医療機器は、最近では海外からも注目され始めている。世界中からその処置具を試してみたいというオファーが来ているのだ。そんな時に起きた震 災。日本製品の風評被害が世界で巻き起こり、興味を示していた中国側の輸入代理店からは、安全性を証明するよう求められた。そこで日本の最先端医療を世界 に広めていくために、西村氏はある作戦を考えていた...

【案内人】江口洋介 【ナレーター】蟹江敬三
【放送】『ガイアの夜明け』7月26日(火)22:00~22:54(テレビ東京系列・一部地域を除く)

酵素の異常が がん化を促す

酵素異常、がん化促す 東大が解明、先天奇形にも

東京大学の畠山昌則教授らは細胞内にある酵素の働きが異常に活性化することによって、がん化や先天奇形が起きる仕組みの一端を明らかにした。酵素の異常により、本来はがん化を防ぐように働くたんぱく質を、がん化を促すものに転換していた。酵素の制御が可能になれば治療法開発につながる可能性もある。

研究チームは脱リン酸化酵素「チロシンホスファターゼ(SHP)2」に注目した。細胞の中で物質からリン酸を奪い取り、化学反応のオン、オフを制御している。この酵素に傷がつくと異常に活性化した暴走状態になり、がん化や先天奇形が起きることが知られていたが詳細な仕組みは分かっていなかった。

2011年7月27日 日経産業新聞

良性卵巣嚢腫の経過観察中にがん化

卵巣嚢(のう)腫 良性でも定期的に検査を

「沈黙の臓器」とも称される卵巣。腫瘍(しゅよう)ができても、ある程度の大きさになるまで自覚症状はほとんどない。腫瘍の多くは良性である確率が高く、うち最も多いのが「卵巣嚢腫(のうしゅ)」という。妊娠、出産の経験がない若い女性が発症することもあり良性だからといって放っておくと悪化する恐れもある。

卵巣は子宮の両側に1つずつあり、1つの大きさは2~3センチほど。卵巣嚢腫は、その卵巣の一部にできた袋状の腫瘍内に液体や脂肪などがたまった状態を言う。個人差はあるが、卵巣がこぶし大以上の大きさになると、下腹部が膨らんだり、違和感を感じたりすることもある。

「一般的には症状がないので、検診などで偶然見つかる人が多い病気です。嚢腫の部分がねじれたり破裂したりして急激な腹痛や吐き気に襲われ、そこで初め て発症していることを知る人もいます」と、四谷メディカルキューブ(東京都千代田区)の子安保喜ウィメンズセンター長は話す。

卵巣嚢腫は、その腫瘍内にたまった内容物によって、主に三つの種類に分けられる。さらさらとした水のような液体がたまる「漿(しょう)液性嚢胞(のうほ う)」、どろっとした粘り気のある液体がたまる「粘液性嚢胞」、髪の毛や歯、軟骨などがたまることもある「皮様嚢腫」だ。

このほか、卵巣にできた子宮内膜症が出血を含んで腫れた「子宮内膜症性嚢胞(別名・チョコレート嚢胞)」があり、これは不妊症の一因とも言われている。

嚢腫が見つかる年代は10代~高齢者と幅広く、その原因は分かっていない。放っておくと巨大化することもある。また悪性の可能性を否定するためにも、通 常5センチ以上の大きさになると手術で治療し、組織学的な確定診断を行う。子安さんは「卵巣嚢腫と診断されたら、早めに画像診断や腫瘍マーカーの採血をし て、嚢腫の種類や悪性腫瘍の可能性などを診てもらうことが大切です」と話す。

卵巣は絶えず細胞分裂を繰り返しており、その過程で悪性に転化する危険性がある。東京逓信病院婦人科の秦宏樹部長は「良性の卵巣嚢腫ががん化する確率は決して低くはありません」と指摘する。

秦さんによると、2005年から10年までの5年間に同病院婦人科が新規に治療した卵巣がん患者は40人。うち6人が良性卵巣嚢腫の経過観察中だった。特に、チョコレート嚢胞に卵巣がんが発生する頻度が高く、たとえ卵巣嚢腫で良性と診断されても、定期的な観察は必要だという。

腫瘍自体は超音波検査で簡単に発見できる。秦さんは「かかりつけ医などで超音波検査を受ける機会があれば、ついでに下腹部全体を見てもらって、早期発見につなげてほしい」と話す。

2011年7月28日 朝日新聞

国のがん治療データを公表

がん治療データ集計、病院名を初公開 初診患者数に差

全国のがん診療連携拠点病院での治療データを集めた「がん登録」集計が、初めて病院名と共に公開されることになった。初診患者数が8千人以上ある病院から150人に満たない病院まで幅があり、特定の病院に患者が集まる傾向があった。がんの進行度の国際比較も今回初めて実施、日本の乳がん患者は米国の患者より進行した段階で診断される場合が多いこともわかったという。

がん診療連携拠点病院は質の高い治療をどの地域でも受けられること を目指して国が整備している。各施設での患者登録を2007年分から開始、国立がん研究センターが集計している。今回の公表は08年分で約360病院の約 43万人分。同年に診断された国内の全患者の6割ほどを占めると推計されている。

初診患者数が多いのは、がん研有明病院(東京都)の8600人や、国立がん研究センター中央病院(東京都)6684人、同センター東病院(千葉県)4454人、静岡県立静岡がんセンターの4183人など。一方で136人といった病院もあった。

今回初めて、胃や大腸、肺など主要な五つのがんの進行度分類を国際分類に合わせて登録し海外との比較が可能になった。米国のデータと比べると、乳がんでは、早期に見つかった患者が日本は1割だったが米国では2割いた。胃がんでは日本は比較的早期に見つかる人が6割以上いた。米国の2割と比べて多かった。  国立がん研究センターのウェブサイト内にある「がん情報サービス」で公開されている。

2011年7月26日 朝日新聞



360病院のがんデータ公表=部位・治療法に特性、比較容易に-国立センター

国立がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院が登録した患者約43万人の発症部位や治療法などのデータを集計し、26日からホームページに公開 した。個々の病院のデータが明らかになったのは初めて。同センターは「各施設の特性が明確になった。医療の質の向上につながれば」と期待している。
公表されたのは、全国の約360病院で2008年にがんと診断された患者のうち6割のデータ。
集計結果によると、年代別では60代後半~70代の患者が最も多かった。東京や愛知では40~65歳が半数以上を占める病院がある一方、秋田、群馬、新潟、富山、山口では75歳以上が半数を超える病院もあり、地域や施設で差がみられた。

2011年7月26日 時事通信

2011年7月27日水曜日

2割のがん患者が早期0期に発見

日本は世界一のがん大国と言うべきで、2人に1人ががんになる。死亡原因としてのがんも、日本人総死亡数の30%を占めるようになった

先日、国立がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院が登録した患者約43万人の発症部位や治療法などを初めてホームページに公開した。統一的な基準のデータで、海外との比較も容易だ

これを見ると平均で60代後半~70代の患者が最も多いが、東京や愛知では40~65歳が半数以上を占める病院も。がんは突然発病するものでなく、若い時からの養生が大事だ。

また米国に比べ日本は胃がん大腸がん肺がんなどを早期に発見できた割合が高かった。乳がんは逆で、米国では2割の患者がごく早期の0期に発見できたが、日本では1割にとどまった

早期発見、日頃の食養生の大切さが改めて分かる。ただしここでも言えるのは、がん情報はあふれているが、さてわが身のこととなると、検査検診の必要性や時期の判断、患者の支え方などがんに関する正しい知識を身に付け行動するのは案外むつかしいということだ

今回の福島原発事故に関して、国際放射線防護委員会作成の統計から換算すると、計画的避難の基準値年間20ミリシーベルトの被曝による発がん死亡率の増 加は0・6%となる。これを高い数値と見るかどうか、これまた国民一人ひとりの判断に委ねられている。ストレスはたまるばかりだ。

2011年7月26日 上昇気流

乳がん骨転移の検査に必要な原料

放射性物質使うがん検査薬 5年めどに国産化めざす

がん検査に使われる検査薬の原料になる放射性物質「モリブデン 99」について、5年をめどに国産化することを国や製薬企業でつくる検討会が決め、26日に内閣府原子力委員会に報告した。日本は世界で2番目の消費国 で、現在は全量を輸入しているが、日本原子力研究開発機構の試験炉や、電力会社の原子力発電所での生産を検討する。

モリブデン99は乳がんの骨転移の検査など、国内で年間90万件の検査で使われている「テクネチウム製 剤」の原料。注射で体に入れて外に出てくる放射線をカメラで写して体内の様子を調べるのに使う。半減期が66時間と短いため、週1~2回の頻度で空輸して おり、火山噴火などで空輸が止まると検査に影響が出るのが悩みだった。

さらに、海外の主な炉が5年後に廃炉になる予定で、生産停止による供給不足が心配されている。

2011年7月26日 朝日新聞

男性にも乳がん発生

乳がんと前立腺がん 性ホルモンが影響

最近、乳がんで若い女優さんが亡くなられました。このようなことがあると、乳がんに対する社会意識が向上し、検診などを受ける方が増加します。がんで亡くなる方を減らすことこそが、この女優さんおよび遺族の遺志でもあると思います。
ところで乳がんは女性だけの病気と思われる男性も多いでしょうが、実は男性にも発生します。ただ、その頻度が低いためにあまり取り上げられることはありません。しかし男性だからと言って安心することはできません。女性の乳がんによく似たがんが、男性の前立腺がんです。
乳がんが基本的に女性の病気であるように、前立腺がんは男性の病気です。つまり乳がんは女性ホルモンに影響を受け、前立腺がんは男性ホルモンに影響を受けます。
乳がんの発生率は女性ホルモンを分泌している期間にほぼ比例して上昇します。前立腺がんでは男性ホルモンの値と発生率が比例するとういう報告があります。
さらに両方のがんとも性ホルモンを利用した治療方法があります。また転移しやすい部位もリンパ節と骨であることも共通点です。
加えて近年増加傾向にあることも似ています。アメリカでは乳がんは女性のがんによる死亡率の2番目です。前立腺がんも男性のがんによる死亡率の2番目です。
日本では2008年現在、乳がんは女性の5番目、前立腺がんは男性の8番目ですが、今後両者ともアメリカのように増加すると予想されています。
しかし最も重要な共通点は乳がん、前立腺がんに限らず、すべてのがんに言えることではありますが、早期発見が大事であるということです。
このように共通点の多い乳がんと前立腺がんですが、異なる点も当然あります。そのひとつが早期発見の方法です。乳がんはマンモグラフィーや超音波検査と いった画像検査で早期発見をしますが、前立腺がんの場合はPSAと呼ばれる腫瘍(しゅよう)マーカーで早期発見ができます。つまり採血だけで早期発見につ ながるので、検査としては前立腺がんの方が簡便です。

2011年7月26日 琉球新報

2011年7月26日火曜日

肺がん新特効薬が57%に効果

ALK阻害剤クリゾチニブは「第2のイレッサ」と有望視 癌研有明・西尾氏

非小細胞肺がん(NSCLC)の特定の患者で劇的な効果をもたらす薬剤として高い期待が寄せられているALK阻害剤クリゾチニブ(ファイザー、国内 申請中)。国内で来年に上市が見込まれているが、7月21日から3日間にわたって横浜で開催された日本臨床腫瘍学会学術集会で、癌研有明病院呼吸器内科副 部長の西尾誠人氏が同剤に対する期待と課題について解説した。その中で、今後のNSCLCの個別化治療は、EGFR遺伝子変異のある患者にEGFRチロシ ンキナーゼ阻害剤(イレッサ、タルセバ)、ALK融合遺伝子陽性の患者にALK阻害剤(クリゾチニブ)を投与するという形に治療アルゴリズム自体が変わる との見方を示した。

ALK陽性進行NSCLC患者82人に対するフェーズ1試験の途中報告(昨年10月のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載) では、奏功率が57%(完全奏功1例、部分奏功46例)、8週間時点での病勢コントロール率(完全奏功(n=1)+部分奏功(n=46)+病状安定 (n=24))が87%と画期的な効果が示されている。
西尾氏によると「イレッサで経験するようなスーパーレスポンダーがいるのと同じ感覚の薬剤で、我々の臨床的な感覚としても『第2のイレッサ』という印象を持っている薬剤」とコメントした。
また、今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表されたフェーズ1の継続試験の結果(投与患者は119人)によると、奏功率は61%、病勢コントロール率 は79%で、ほとんどの患者で腫瘍縮小がみられたという。また、欧州で実施されたフェーズ2試験では、同剤が投与された133人の奏功率は50.4%、病勢コントロール率は85%、無増悪生存期間(PFS)は10カ月、全生存期間は2年生存率が54%であり、西尾氏は「多分、クリゾチニブに前生存期間の中央値は2年くらいになると予想されている」と期待を示した。
一方、ALK阻害剤の投与対象となる患者数は、およそ肺がん患者のうち3~5%とされている。西尾氏によると「ALK融合遺伝子陽性患者は、女性、 腺がん、EGFR遺伝子変異なし、喫煙が少ない、若年者といった人で高くて10%前後。これらの臨床背景で患者選択をするのがひとつの方法」としながら も、必ずしもこれにあてはまらない患者もいるとして、他の方法も考える必要があるとの見方を示した。
また、発表されたフェーズ1試験はALK融合遺伝子の検査法として、FISH法で陽性だった患者のみを対象としたが、その以外の検査法でクリゾチニ ブの投与患者を選択したときに、どの程度の効果があるのか不明だとして、「効率的にALK融合遺伝子陽性肺がんをみつけるための検査法を確立する必要がある」と指摘。加えて、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤と同様に、クリゾチニブに耐性を示す患者が出てきているとため、それに対応するための薬剤開発も課題 になるとした。
肺がんにおけるALK融合遺伝子の存在は、日本人研究者の自治医科大学の間野博行教授らによって07年に初めて報告された。クリゾチニブはALKを 阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要と考えられる数々の細胞内シグナル伝達を遮断する薬剤。国内では複数のALK阻害剤の開発が進行中とされ るが、クリゾチニブはその中でも最初に上市が期待されている薬剤。

2011年7月25日 ミクスONLINE

2011年7月25日月曜日

大腸がん新薬は死亡リスク減少

新規抗悪性腫瘍薬「TAS-102」の臨床第Ⅱ相試験結果を発表-標準治療不応な進行再発大腸がん患者に対し生存期間を有意に延長-

大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、社長:宇佐美 通)が開発を進める新規ヌクレオシド系抗悪性腫瘍薬「TAS-102」に関して、標準治療不応な進行再発結腸・直腸がん患者を対象とした臨床第Ⅱ相試験の 結果が、第9回 日本臨床腫瘍学会学術集会(横浜)において発表されましたのでお知らせします。 (抄録番号10428)

本試験は、フッ化ピリミジン系薬剤、イリノテカンおよびオキサリプラチンを含む2レジメン以上の標準化学療法に不応となった切除不能な進行再発結腸・直腸がん患者172名を対象とし、プラセボ対照の二重盲検ランダム化比較試験でTAS-102の延命効果を主要評価項目として評価しています。その結果、 TAS-102投与群ではプラセボ投与群に比べ全生存期間が延長し[全生存期間 中央値:9.0ヵ月対6.6ヵ月]、死亡のリスクも有意に減少しました [HR=0.56,p=0.0011]。また、治療関連死は認められず、最も高頻度に認められたCTCAEグレード3以上の薬物有害反応は好中球減少 であり、下痢や倦怠感、悪心などは10%以下でした。

大鵬薬品は今回の試験成績を踏まえ、確立された治療法がない大腸がん患者さんに本剤を一日も早く提供できるようグローバル開発を進めてまいります。

2011年7月25日 プレスリリース

がん新薬の有効性を集中で調べる病院

新薬治験の拠点15に集約 「ドラッグラグ」解消めざす

欧米の薬が国内で使えるようになるまでの時間差「ドラッグ・ラグ」の解消を目指し、厚生労働省は、新薬の有効性や安全性を調べる治験(臨床試験)を実施する病院を集約する。がんやアルツハイマー病など、分野ごとに全国15カ所の拠点病院を指定し、集中的に担ってもらうことで治験の効率化を進め、製品化までの時間を短縮する。

日本の病院は、治験にかかわるスタッフが少なく、大規模な治験を実施する体制が整っていない。多数の病院が協力し、1病院あたり数人の患者を分担して実施することが多く、非効率で時間がかかっている。

このため、製薬企業は日本での治験を避ける傾向がある。日本の研究者が新薬の候補となる物質を探し出しても、製薬会社が海外で治験を始め、日本より先に承認を得た例もある。

承認の審査期間は、米国との差が6カ月程度にまで縮まったが、承認申請までの差は1年半のまま変わっておらず、課題だった。

厚労省は、体制の整った拠点病院に治験を集中させる方針を打ち出した。効率化によって、国内の研究成果は欧米よりも先に治験に入れるようにし、治験期間の短縮も図るという。

拠点病院は3年間で15カ所指定する。製薬企業はどの病院で治験を進めるのがいいか判断しやすくなり、患者も、どこの病院で治験に参加できるかがわかりやすくなる。

厚労省は22日、今年度分の5病院を決めた。
  • 国立がん研究センター東病院(千葉県、がん分野)
  • 東京大学病院(東京都、アルツハイマー病など精神・神経分野)
  • 慶応大学病院(東京都、免疫難病分野)
  • 大阪大学病院(大阪府、脳・心血管分野)
  • 国立循環器病研究センター(大阪府、脳・心血管分野の医療機器)
1病院に年間約6億5千万円ずつの研究費と整備費を支給する。

2011年7月25日 朝日新聞

がん細胞を攻撃する免疫を活性化

皮膚がん 新たな免疫療法 京大グループ開発

京都大大学院医学研究科の門脇則光准教授(血液・腫瘍内科学)らのグループは19日、皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)が進行した患者に対し、 がん細胞を攻撃するリンパ球の働きを活性化させる新たな免疫療法を開発したと発表した。今月から患者10人を対象に臨床研究を始め、安全性と有効性を検証 する。
グループによると、メラノーマは、副作用の強い抗がん剤などの化学療法以外に治療法が乏しい。
開発された治療法 は、免疫反応を高める「樹状細胞」がリンパ球を強く刺激するのが特徴。患者の血液を体外で培養して分化させた樹状細胞に、病原性のないメラノーマの細胞を 投与し、さらに免疫を増強する抗がん剤を併用してリンパ球の働きを強める。副作用が少なく、治療効果の長期持続が期待できるという。
門脇准教授は「効果が確認できれば、患者の生存期間の延長につながる」としている。
2011年7月20日 産経新聞

10人に4人が がん発症

英国人10人に4人余りは、何らかのガンを発症?

英国人の10人に4人以上が、生涯のうちに何らかのガンになることが統計で明らかになった。「デイリー・メール」紙が報じた。
ガン患者の数は過去10年間で30%余りも増加しており、専門家らは不健康な生活スタイルが原因として警鐘を鳴らしている。

ガン患者支援団体「Macmillan Cancer Support」が入手した統計によると、英国人の42%が何らかのガンを発症するという。 30年前の32%と比較して大変な増加になっている。
ガン治療は劇的に進歩しているが、ガン患者のおよそ64%はガンにより死亡していることも判明。
肥満、過剰な飲酒、喫煙などの生活スタイルがガン増加の原因になっていると専門家は警告している。一方で、英国人の寿命が延びたことも、発症率があがった一因とされている。

現在、英国でガン患者は200万人おり、今後20年間でこの数は倍になると予想されている。

2011年 7月 14日   japanjournals

がんのリハビリと肺炎死の危険性

がん、手術前後のリハビリで早期回復 後遺症軽減

がんの手術などの前後でリハビリテーション(リハビリ)を導入する動きが本格化している。患者の合併症を防いで回復を早め、後遺症の軽減に効果があることがわかってきたからだ。患者にとっては昨年度から健康保険で受けられるようになったのも追い風となっている。ただ、がん治療のひとつとして定着するには、まだ試行錯誤の部分もあり、リハビリ方法の確立など取り組むべき課題も多い。

6月下旬、静岡がんセンター(静岡県長泉町)のリハビリ室で、4日前に肺がんの 手術を受けた高田和美さん(73)が透明な器具につながるチューブを口にくわえて格闘していた。「はい、吸って」。理学療法士のかけ声に合わせて高田さん が息を吸うと、器具の中の黄色い印が上まで上がる。高田さんは「訓練のおかげでベッドで寝ていてもたんを出しやすい」と話す。

入院期間短縮にも

使っていたのは、深い呼吸ができるよう訓練するリハビリ用器具。高田さんは手術前に使い方の説明を受け、自宅でも練習した。「手術前からリハビリの必要性を理解してもらうと、手術後のリハビリも進みやすい」と同センターリハビリテーション科の田沼明部長。

がんのリハビリの主な目的は、治療による後遺症の予防や、障害を起こした機能の回復。合併症を防ぐ効果もある。

例えば肺がん食道がんなどの手術後に寝たままだと、肺の奥にたんがたまり、放置すると細菌の温床になって肺炎などの合併症を起こしやすい。手術後は肺活量が落ち、傷の痛みなどでたんを出せない患者が多いが、事前にリハビリの意味を伝え、目的を持って訓練すると呼吸機能の回復とたんの排出を促せるという。

静岡がんセンターは2002年、日本で初めてがん治療専門のリハビリ科を設置した。肺がんのほか、胃がんなどの消化器がん、乳がんなどの婦人科がん、咽頭がん、骨のがんなどの患者が対象。呼吸機能の低下や食べ物をうまく飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害、歩行障害などを軽くしたり、早く回復させたりする狙いだ。同センターでは「入院と外来患者の15~20%ぐらいがリハビリを受けている」(田沼部長)。

効果も検証されてきた。食道がんの開胸手術で比べると、他の施設でリハビリをしなかった場合に合併症の肺炎を起こす患者の割合は約32%。 02~06年に同センターで同様の患者にリハビリを実施したところ肺炎の発生率は約9%に抑えられた。合併症にならなければ入院期間の短縮にもつながると いう。

がんのリハビリが重視される背景のひとつに、がんと“共存する人”の増加がある。高齢化などでがんになる人は増えているが、治療技術の進歩で死亡率は減 少傾向。手術や抗がん剤などの治療後も仕事に復帰したり、自宅で療養したりする人が03年の約300万人から、15年には2倍近い530万人を超えるとい われている。

治療で運動まひや機能障害などが起こると、その後のQOL(生活の質)の低下に直結する。がんのリハビリ専門のスタッフの育成を進める慶応義塾大学医学部の辻哲也講師は「患者はリハビリもがん治療の一環と考えるようになってきた」と話す。

米国より20年遅れ

昨年度の診療報酬の改定で、がんのリハビリが健康保険の対象になった影響も大きい。現在本格的に実施しているのは5、6カ所とされるが、全国に約400あるがん診療連携拠点病院のうち半分程度ががんのリハビリ科などの設置の準備・検討を始めているとみられる。

とはいえ、日本のがんのリハビリは米国より20年ほど遅れているといわれ、まだ課題も多い。

そのひとつが、どのような患者にどのようなリハビリを行うのが効果的かが確立されていないことだ。患者の多いがんの種類や治療法などは国によっても違い、歴史の浅い日本ではまだ手探りの部分もあり、病院によってもまちまちだ。

静岡がんセンターでもリハビリを行った患者は、04年ごろは外科の患者が多かったが、最近は呼吸器内科や消化器内科などの患者が増えている。「リハビリが必要な患者を的確に見つける体制づくりは急務だ」(田沼部長)という。

学会も治療法の標準化に乗り出した。日本リハビリテーション医学会でがんリハビリの診療ガイドラインを策定中で、今年度内には試案を公表する予定だ。策 定を進める慶応の辻講師は「リハビリの効果を示す国内の検証結果を増やし、内容の標準化を図ることががんリハビリの定着のカギを握る」と話している。

健保対象になったが…国の支援 不透明 削られる研修補助金

がん患者に対するリハビリは、07年6月に策定した国のがん対策推進基本計画で「積極的に取り組んでいく」と盛り込まれ、昨年度からは健康保険の対象になった。しかし、研修事業への国の補助金は減るなど、国の取り組みの方向性ははっきりしていない。

医療者などに研修事業などを行っているライフ・プランニング・センター(東京・港)は07年度からがんリハビリのセミナーを始めた。受講生は初年度は約 580人だったが、08年度は610人、09年度は710人、10年度は722人と増え、今年度は約1200人に急増する見込みだ。

このセミナーは厚生労働省の委託事業。だが補助金は09年度は1467万円、10年度は1321万円、今年度は1286万円と徐々に削られている。「今年度は研修費を値上げし、受講生に費用を負担してもらっている」(同センター)

がん対策の基本計画は、来年度からの5年間の新計画の見直し論議が正念場を迎えている。だが「がんのリハビリは現時点で検討するテーマに上がっていない」(厚労省)という状況。がんのリハビリを国がどう支援していくかは先行きが不透明だ。

2011年7月14日 日本経済新聞

2011年7月21日木曜日

抗がん剤感受性を高め再発予防する新薬

北大など、マクロファージ発がん活性能を獲得することを発見

がん細胞の中でも悪性度の高い集団「がん幹細胞」が、悪性化、抗がん剤治療への抵抗性に関係しており、その活性にがん細胞周囲の正常細胞が関与することが注目されている。北海道大学(北大)などによる研究グループは、通常はがん細胞排除に働く免疫細胞マクロファージが、がん幹細胞の働きにより逆に発がん活性能を獲得することを同定したほか、マクロファージから「MFG-E8」と「IL-6」と呼ぶ因子の産生を誘導することで、がん幹細胞のさらなる活性化が惹起され、抗がん剤への治療抵抗に 繋がることを明らかにした。 同成果は、地主将久氏、千葉殖幹氏、吉山裕規氏(北大遺伝子病制御研究所・感染癌研究センター)、増富健吉氏(国立がん研究センター・癌幹細胞プロジェク ト)、木下一郎氏、秋田弘俊氏(北大医学研究科・腫瘍内科学)、八木田秀雄氏(順天堂大学・免疫学)、高岡晃教氏(北大遺伝子病制御研究所・分子生体防御 分野)、田原秀晃氏(東京大学医科学研究所・先端医療研究センター)らによるもので、米国アカデミー紀要(Proceedings National Academy of Sciences of United States of America)に掲載された。

正常幹細胞の代表格である造血幹細胞の維持、活性には骨、線維芽細胞など幹細胞の周囲を構成する細胞群との相互作用の重要性が指摘されていた。そこで研究グループは、がん細胞周囲に存在する正常細胞の機能に注目し、がん幹細胞と免疫細胞との相互作用についての検証を行った。

この結果、通常はがん細胞の排除に働くと考えられている免疫細胞の マクロファージが、がん幹細胞との相互作用を介して発がんを促進する機能を獲得することを発見した。その発がん活性に重要な役割を果たすのが、マクロ ファージから産生される「MFG-E8」と「IL-6」と呼ばれる分子で、これらはがん幹細胞に働くことで、その増殖活性や抗がん剤への抵抗能の誘導に重 要な役割を果たすことを同定した。

がん幹細胞を介した発がん促進マクロファージへの形質転換が発がん活性、治療抵抗性に関与するイメージ

今回の研究成果について研究グループは、がん幹細胞が本来腫瘍への拒絶能を有する免疫細胞機能を発がん促進の方向に転換することを明らかにしたことが、重要な意義を有すると考えられるとしている。

なお、研究グループでは、今後、がん幹細胞から特異的に産生され、免疫細胞の機能転換を引き起こす分子を同定し、その役割を検証することで、がん幹細胞と免疫細胞相互作用を標的とする新たなタイプの抗がん剤の開発が可能になると考えられるとしており、このタイプの抗がん剤は、既存の抗がん剤への感受性を高め再発予防につながる可能性を有するため、将来の制がんにおける有力な武器になる可能性があると指摘している。

2011年7月19日 マイコミジャーナル

2011年7月20日水曜日

免疫力検査とがん治療

血液を採取するだけで免疫の状態の良し悪しがわかる検査が、がん免疫治療を専門とするヨシダクリニック・東京(院長:赤出川賢治)でスタート

がん免疫治療を専門とするヨシダクリニック・東京(東京都中央区、院長:赤出川賢治)は、血液を採取するだけで免疫の状態の良し悪しがわかる「NK細胞活性検査」をこのほど開始しました。

<NK(ナチュラル・キラー)細胞とは>
NK細胞は、外部からヒトの体内に侵入してきた異物を迎撃し、健康状態を維持しようとする免疫細胞の一種。特にがん細胞については、健康な人でも毎日 5000個のがん細胞が体内では生まれているとされており、それを常にNK細胞が叩いていることで、がんが育たない状況を維持しています。NK細胞の活性度が低下すると、このバランスが崩れてしまい、体内でがんが育ち始めてしまう危険性が高まります。

<NK細胞活性検査とは>
定期的にNK細胞の活性度を調べ、いま自分の体ががんになりやすい状態なのか――を把握することで、がんの回避や早期発見に役立てることができます。「NK細胞活性検査」は、まさにそれを目的としたものです。
検査は血液の採取のみ。採血した5ミリ・リットルの血液はラボに送られ、その血液中に含まれるNK細胞の活性度が測定され、数値となって表されます。通 常、健康な人の場合は「18-40パーセント」の基準値内に納まるが、これを下回る、つまり17パーセント以下となった場合、その人のNK細胞の活性度は 低いと判断されます。免疫力が低い状態、つまり、がんや感染症のリスクが高いということになります。  検査費用は自由診療のため、全額自己負担で1回6,300円。

<赤出川賢治院長:コメント>
「この検査で基準値を外れたとしても、すぐにがんになるわけではありません。免疫力を高める生活習慣によって、免疫力を上向きに転じることは十分に可能です。要は、この検査からがん予防に注意を向けるきっかけとして役立ててほしい。」

免疫力を高める生活習慣とは、食生活を見直して栄養バランスを整えることや、適度な運動、喫煙者であればタバコを止めること、また当院が力を入れて取り組んでいる「積極的に笑うこと」もその一つ。」

「検査費用6,300円は、本来がん治療の中で行われる精度の高い検査であることを考えれば、決して高い金額ではない。年に一度でも、こうした検査によって“免疫力”に目を向けることが、がん予防を考えていく上で重要なこと。がんになってから考えるのではなく、なる前から意識してほしい。」

2011年7月19日 プレスリリース

乳がん新薬が国内発売

エーザイ、乳がん薬を国内発売

エーザイは19日、乳がん治療薬を国内で発売したと発表した。製品名は「ハラヴェン」で、手術できない乳がんや再発乳がんの患者が投与の対象。自社の研究所で作り出した初めての抗がん剤で米国や英国、ドイツなどに続く発売となる。

今後は肺がんや前立腺がんなどにも使えるように臨床試験(治験)を進めて販売を増やし、2015年度までに世界で10億ドル(約800億円)の年間売上高を目指す。

同社が実施した治験では、ハラヴェン以外の治療を施した乳がん患者の生存期間は10.5カ月。これに対してハラヴェンを投与した患者の生存期間は13.2カ月だった。

手術できない乳がん再発乳がんは治療に使える薬剤が少なく、ハラヴェンは医師の選択肢を増やせる。

2011年7月19日 日本経済新聞


エーザイ、日本で抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン」を発売

日本において抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン(R)」を新発売

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、日本において「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果とする、新規抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン(R)静注1mg」(一般名:エリブリンメシル酸塩)を7月19日に新発売します。
本剤は、当社が自社創製・開発した初めての新規抗がん剤であり、2010年3月に日米欧3極同時申請し、2010年11月に米国での新発売を皮切りに、欧州においても2011年4月に英国、ドイツなどで販売を開始しています。

本剤は、前治療歴のある転移性乳がんの患者様において、単剤で統計学的に有意に全生存期間を延長した世界で初めてのがん化学療法剤です。海外で実施した前 治療歴のある進行又は再発乳がんを対象とした臨床第III相試験(EMBRACE試験)において、主治医選択治療群に比べて、2.7カ月間の全生存期間の 延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p 値:0.014)。また、日本で実施した臨床第II相試 験において、「ハラヴェン(R)」単独療法は、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む前治療歴を有する進行又は再発乳がん患者様に対し、良好 な抗腫瘍効果を示すとともに良好な忍容性プロファイルが認められました。

乳がんは依然として、女性のがんによる主な死亡原因の1つであ り、日本では毎年約6 万人の患者様が罹患されています。新しい抗がん剤の開発によりその治療法は年々進歩していますが、手術不能又は再発乳がんでは治療 の選択肢は決して十分とは言えません。このたび、日本における「ハラヴェン(R)」の新発売により、手術不能又は再発乳がんの患者様が本剤にアクセスする ことが可能となります。

今後当社は、「ハラヴェン(R)」を、グローバルにおいてより治療歴の少ない難治性再発性・転移性乳がん、乳が んアジュバント(術後補助療法)などの適応追加や、リポソーム製剤の開発による乳がん患者様への貢献を拡大していくとともに、非小細胞肺がん、肉腫、前立 腺がんなどの適応拡大に取り組んでまいります。また、卵巣がんをターゲットとしたモノクローナル抗体「MORAb-003 」( 一般 名:farletuzumab)、甲状腺がんや子宮内膜がんをターゲットとしたE7080(一般名:lenvatinib)などの開発により、 Women’s Oncology領域の製品の充実化をはかっていきます。

日本国内においては、全MRががん領域での活動に取り組み、がんと共に生きる女性とそのご家族の想いにより添い、QOL向上により一層貢献し、当社のヒューマン・ヘルスケア(hhc)ミッションを果たしてまいります。


以上

<参考資料>

1.製品概要
1)製品名
ハラヴェン(R)静注1mg
2)一般名
エリブリンメシル酸塩
3)効能・効果
手術不能又は再発乳癌
4)用法・用量
通常、成人には、エリブリンメシル酸塩として、1日1回1.4mg/m2(体表面積)を2~5分間かけて、週1回、静脈内投与する。これを2 週連続で行い、3週目は休薬する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
5)薬価
ハラヴェン(R)静注1mg 2ml 1瓶 64,070円
6)包装
ハラヴェン(R)静注1mg(2.0ml):1バイアル

2.グローバル第III相臨床試験(EMBRACE試験)
EMBRACE試験は、多施設、無作為、非盲検、並行2群間比較試験で、ハラヴェン(R)投与群と主治医選択治療群との間で全生存期間を比較するようにデ ザインされました。本試験では、2種類から5種類のがん化学療法剤(アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む)による前治療歴のある、局所再発 性あるいは転移性乳がんの患者様762名が対象となり、ハラヴェン(R)投与群と主治医選択治療群に2:1の比率で割り付けられました。主治医選択治療群 は、がん治療が認可された単剤化学療法、ホルモン療法、生物学的薬剤治療、又は苦痛緩和治療、放射線治療と定義され、大多数(97%)の患者様は単剤化学 療法を受けました。本試験解析の結果、ハラヴェンR投与群は主治医選択治療群と比較し全生存期間を2.5カ月間延長しました(全生存期間:13.1カ月  対 10.6カ月、ハザード比:0.81、p値:0.041)。

また、当社は欧州と米国の審査当局からの依頼によりプロトコールの規定 に加えてEMBRACE試験の結果をアップデートしました。その最新の解析データは、ハラヴェン(R)投与群では主治医選択治療群に比べて2.7カ月間の 全生存期間の延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p値:0.014)。このデータは2010年 12月のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで発表され、ハラヴェン(R)の全生存期間を延長し、安全性プロファイ ルは変化がないことが再確認されました。
ハラヴェン(R)投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球 減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、吐き気、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱 を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)であります。またハラヴェン(R)投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。

3.日本で実施された第II相試験(221試験)について
221試験は、アントラサイクリン及びタキサン系抗がん剤による前治療歴のある進行・再発乳がんの患者様を対象とした、多施設共同による非盲検の試験で す。本試験では、奏効率21.3%(評価対象80例中、奏効例17例)と高い奏効を示すとともに良好な忍容性プロファイルを認めました。

4.「ハラヴェン(R)(欧米製品名:HALAVEN)」(エリブリンメシル酸塩)について
「ハラヴェン(R)」は、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria  okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらに チューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。「ハラヴェン(R)」の合成はきわめて難度が高く、その全合成のス テップ数は62工程あります。また「ハラヴェン(R)」の分子量は826であり、不斉炭素19個を含むため、理論的に立体異性体の数は2の19乗個、すな わち524,000個の可能性があり、その制御が困難を極めます。しかし、当社の技術力によりそのすべての反応を立体選択的にコントロールして「ハラヴェ ン(R)」を商業的に合成することが可能になりました。
本剤は、2010年11月米国、2011年2月シンガポール、2011年3月欧州でそれ ぞれ承認を取得し、カナダにおいて申請中、アジア、ニューマーケットなど多くの国々における本剤の開発を進めています。また、より治療歴の少ない乳がん、 非小細胞肺がん、肉腫、前立腺がんなど、他のがん種についても単剤での後期臨床試験が進行中です。

5.乳がんについて
乳がん は、女性のがんによる死亡原因のトップであり、日本においても毎年約6万人の患者様が罹患されています。また、罹患率は30歳代から増加を始め、50 歳 前後にピークをむかえるという点で、切実な問題となっており、アンメットメディカルニーズ(未だ満たされていない医療上の必要性)の高い疾患であると言え ます。
近年、検診や早期発見の普及により、乳がんの患者様数は増加しており、毎年世界で約100万人が新たに乳がんと診断されると考えられてい ます。なかでも早期乳がんと診断された患者様の約40%が局所進行性または転移性乳がんへと進行するといわれています。転移性乳がんの患者様では、その5 人に1人しか5年生存ができないというデータがあります。
乳がんは、乳房のしこりの大きさ、乳腺の領域にあるリンパ節転移の有無、遠隔転移の有 無によって、8段階の病期(ステージ:0期、I期、IIa期、IIb期、IIIa期、IIIb期、IIIc期、IV期)に分類されます。このうち、 IIIb期、IIIc期、IV期は、転移などにより病変が広範囲にわたるため手術不能な乳がんとなります。また、手術など乳房の腫瘍に対する初期治療を 行った後、他の臓器に転移するなど(転移性乳がん)、手術した乳房の領域に再び発症した場合を再発乳がんといいます。

6.エーザイのウィメンズ・オンコロジー(Women’s Oncology)領域への取り組み
女性のがんによる死亡率は年々拡大しており、世界で毎年約300万人の女性ががんで亡くなられています(WHO統計)。今日、女性の社会的な重要性は益々 向上しており、がんと共に生きる女性を支援しQuality of Life(QOL)を向上させることはきわめて意義の高いことであると考えています。
当社は、「ウィメンズ・オンコロジー(Women’s Oncology」をコンセプトとした、女性の視点を大切にしたがん領域における取り組みを進めることにより、がんと向き合う女性の想いにより添い、希望をお届けし、QOLを向上することに貢献してまいります。
今後、「ハラヴェン(R)」の適応拡大、製剤開発により乳がん患者様への貢献を拡大するとともに、卵巣がんをターゲットとしたモノクローナル抗体  farletuzumab(ファルレツズマブ(*))、甲状腺がんや子宮内膜がんをターゲットとしたlenvatinib(レンバチニブ(*))などの開 発により、がんと闘う女性に一日でも早く革新的な新薬をお届けすることが我々の使命であると考えています。そして、世界中の一人ひとりの患者様に当社の製 品をお届けできるようアクセス・プログラムを実現するとともに、総合的なヘルスケアシステムの改善に全力を尽くしてまいります。
また、女性のがん患者様特有のニーズに対応する取り組みやがん専門ケアマネージャーの養成プログラムを医療機関と連携して開発するなど、診断・標準治療から在宅医療・緩 和ケア・終末期医療までが切れ目なく提供される地域医療体制の構築に貢献することにより、がん患者様とそのご家族のQOL向上と「がんになっても安心して 暮らせるまちづくり」をめざしてまいります。

2011年7月19日 プレスリリース

2011年7月14日木曜日

がん死亡率は男性が高い

がん患者の死亡率、女性より男性の方が高い 米研究

ほとんどのがんで、男性のがん患者は女性のがん患者よりも死亡率が高いとする研究結果が12日、米がん学会(American Association for Cancer Research、AACR)の学会誌「Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention」に発表された。

米国の研究チームは、36種類のがんについて、患者の5年後の生存率を調べた。その結果、男女の開きが最も大きかったのは口腔がんで、死亡の割合は女性 1人に対し男性5.51人だった。次いで開きがあったのは喉頭がんで、女性1人に対し男性5.37人。以下、下咽頭がん(同4.47人)、食道がん(同 4.08人)と続いた。

この傾向は、死亡率が最も高いがんにも見られた。肺がん患者の5年後の死亡割合は女性1人に対し男性2.31人、結腸直腸がんでは女性1人に対し男性1.42人だった。

また、すい臓がんは女性1人に対し男性1.37人、白血病は同1.75人、肝がんでは同2.23人だった。

研究者らは、このような男女差が生まれる原因を特定するのは難しいとしながらも、腫瘍の振る舞いが男女で違う可能性、メディカルチェックを定期的に受ける確率が男女で違う可能性を挙げた。

この研究によると、米国では、がんと診断された時点で、女性よりも男性の方でがんが進行している可能性が高いという。

2011年07月14日 AFPhttp://vsgan.blogspot.com/

肝臓で働くがん抑制遺伝子

がん抑制遺伝子に肝臓硬くする働き 阪大など発見

がんを抑制することで知られる遺伝子p53が、肝炎や肝硬変の原因になっていることを、大阪大などのグループが明らかにした。p53は体中にあり、がん化した細胞を攻撃してくれる一方、肝臓で活性化し過ぎると、細胞を硬くしてしまう物質が多く現れていた。治療が難しい肝硬変を治したり、進行を抑えたりできるようになる可能性がある。

大阪大大学院医学系研究科の小玉尚宏研究員らは、肝臓で働くp53が多いマウスと少ないマウスをつくって比較した。p53が多いマウスは生後6週間で、 すでに肝臓が硬くなり機能が落ちる「線維化」が進んでいた。ヒトの肝細胞でも、重い肝硬変の細胞ほどp53が多く活性化していた。

肝炎ウイルスやアルコールの刺激でp53が活性化されると、CTGFというたんぱく質が多く現れるらしい。このたんぱく質は傷を治したり、軟骨をつくっ たりするのに欠かせないが、増え過ぎると細胞を硬くしてしまう。同研究科の竹原徹郎教授は「p53の発生をコントロールして線維化が抑えられれば、肝硬変 の治療ができるようになるかもしれない」と話している。

2011年7月14日 朝日新聞

2011年7月13日水曜日

NK細胞で がん細胞を撃退

がん細胞免疫逃れる仕組み解明/弘大・鷹揚郷研究グループ

弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座の大山力教授と、鷹揚郷腎研究所生化学研究部部長の坪井滋理学博士を中心とする膀胱(ぼうこう)がんの研 究者グループは、がん細胞がある種の糖たんぱく質を発現させて免疫から逃れるという新たな仕組みを解明した。この仕組みを持つ細胞の有無が悪性度の高いがん細胞の診断や患者の病後予測、治療方針を決める判断材料になるほか、仕組みを利用することで新しいがん治療薬の開発につながることが期待されている。
研究成果は、生化学分子生物学分野のトップジャーナルである「The EMBO Journal」電子版に6月28日付で紹介された。

がん細胞は血液やリンパ液の流れに乗って転移するが、血中にはがん細胞を攻撃するリンパ球の一種「ナチュラルキラー(NK)細胞」が存在しており、通常であればNK細胞はがん細胞の表面に発現するたんぱく質(MICA)を目印に攻撃し、転移を防御する役割を果たす。
しかし、がん細胞の中には目印となるMICAを消したり、切り離してNK細胞の攻撃を逃れて転移するものも存在することが、これまでに明らかになっている。
大山教授と坪井博士らの研究者グループは膀胱がんの転移について研究しており、MICAを消したり、切り離すがん細胞ではなく、酵素の一種「C2GnT」が出ている「特別なタイプ」(坪井博士)のがん細胞に着目した。

研究の結果、このがん細胞はMICAに特殊な形の糖を付けてC2GnTを作り出し、さらにガレクチンというたんぱく質がかぶさることで糖たんぱく質を発現し、NK細胞に認識できなくする“盾”のような仕組みを持って転移することが分かった。
大山教授、坪井博士によると、膀胱がんで膀胱を全摘出した患者への追跡調査で、手術後2000日の生存率はC2GnTを作るがん細胞を持たない患者が約9割なのに対し、C2GnTを作るがん細胞を持つ患者は約3割と大きな開きがあった。
またマウスを用いた実験では、C2GnTを作るがん細胞を移植した場合と、作らないがん細胞を移植した場合では、肺に転移する確率に10倍近い差が表れたという。

現在、研究者グループはがん細胞がC2GnTを作製できなくする試薬の開発を進めており、大山教授は「抗がん剤とは全く違い、自分のNK細胞を使ってがん細胞をやっつける薬となり、副作用はないものになる」と期待する。
研究者グループは、膀胱がん以外のがんにも解明した仕組みが当てはまるか研究を進めるほか、この仕組みを応用して臓器移植の拒絶反応を抑制する研究にも取り組む方針。

坪井博士は「がん細胞が死ぬのは、ある種の拒絶反応。移植の拒絶を抑えるためにこの仕組みを逆利用する」と述べた。

2011年7月13日 陸奥新報

がん細胞による免疫制御に着目

北海道大学、がん細胞による免疫応答抑制の新たな仕組みを解明

がん細胞による免疫応答抑制の新たな仕組みを解明

<研究成果のポイント>
・がん細胞が免疫細胞に作用して,がん拒絶から発がん促進へ機能転換させることを世界で初めて解明。
・免疫細胞が産生する因子を介して,悪性度のより高い癌細胞の活性,抗癌剤抵抗を増強することを解明。
・癌細胞の免疫調節能に着目することで,抗がん免疫活性回復を主眼とした新しい抗がん剤開発に期待。

<研究成果の概要>
がん細胞のなかでも「癌幹細胞」という,より悪性度の高い集団が,悪性化,抗がん剤治療への抵抗性に大きく関係しているが,その活性にがん細胞周囲の正常細胞が関与することが注目されている。本研究では,通常はがん細胞排除に働く免疫細胞マクロファージが,癌幹細胞の働きにより逆に発癌活性能を獲得することを同定した。さらに,マクロファージからMFG-E8とIL-6という因子の産生を誘導することで,癌幹細胞の更なる活性化が惹起され,抗がん剤への治療抵抗に繋がることを明らかにした。以上の結果は,癌細胞による免疫制御に着目した新しいタイプの抗がん剤開発に繋がる画期的な成果です。


<論文発表の概要>
研究論文名:Tumor-associated macrophages regulates tumorigenicity and anticancer drug responses of cancerstem/initiating cells.(腫瘍関連マクロファージは癌幹細胞の腫瘍活性,抗癌剤抵抗性への制御能を有する)
著者:氏名(所属)地主 将久,千葉 殖幹,吉山 裕規(北大遺伝子病制御研究所・感染癌研究センター),増富 健吉(国立がん研究センター・癌幹細胞プロジェクト),木下 一郎,秋田 弘俊(北大医学研究科・腫瘍内科学),八木田 秀雄(順天堂大学・免疫学),高岡 晃教(北大遺伝子病制御研究所・分子生体防御分野),田原 秀晃(東京大学医科学研究所・先端医療研究センター)
公表雑誌:Proceedings National Academy of Sciences of United States of America(米国科学アカデミー紀要)


<研究成果の概要>
(背景)
抗がん剤による治療への抵抗性,再発の大きな要因として,「癌幹細胞」という,とりわけ悪性度が強く治療に反応しにくい特定の細胞集団が存在することが,最近判明してきました。この癌幹細胞の活性化,維持のメカニズムを解明することで新たな制がん法の開発に繋げることが可能となります。
(研究手法)
正常幹細胞の代表格である造血幹細胞の維持,活性には骨,線維芽細胞など幹細胞の周囲を構成する細胞群との相互作用の重要性が指摘されていました。そこで本研究では,がん細胞周囲に存在する正常細胞の機能に注目しました。とりわけ本研究では,癌幹細胞と免疫細胞との相互作用について検証しました。
(研究成果)
通常はがん細胞の排除に働くと考えられているマクロファージという特定の免疫細胞が,癌幹細胞との相互作用を介して発癌を促進する機能を獲得することを発見しました。その発癌活性に重要な役割を果たすのが,マクロファージから産生される「MFG-E8」と「IL-6」という分子で,これらは癌幹細胞に働くことで,その増殖活性や抗がん剤への抵抗能の誘導に重要な役割を果たすことを同定しました。以上より,癌幹細胞が本来腫瘍への拒絶能を有する免疫細胞機能を発癌促進の方向に転換することを明らかにした点で,大変重要な意義を有すると考えられます。
(今後への期待)
今後,癌幹細胞から特異的に産生され,免疫細胞の機能転換を引き起こす分子を同定し,その役割を検証することで,癌幹細胞と免疫細胞相互作用を標的とする新たなタイプの抗がん剤の開発が可能になると考えられます。これは既存の抗がん剤への感受性を高め再発予防につながる可能性を有するため,将来の制がんにおける有力な武器になりうると考えられます。

2011年7月12日 プレスリリース

2011年7月12日火曜日

世界最高水準の皮膚がん治療

世界最高水準のメラノーマ治療

国立がん研究センター中央病院
〒104-0045東京都中央区築地5の1の1
(電)03・3542・2511

国内の死因トップはがんだが、その中でも皮膚がんの患者数は決して多くはない。しかし、身体の表面の皮膚に生じるがんの種類は多く、悪性黒色腫(メラノーマ)のような非常に悪性度の高いものもある。

また、一見、シミやホクロ、あるいは湿疹のような形をしているため、見極めを誤って治療の手を加えると、進行や再発の原因にもなりかねず、診断と治療には高いレベルが求められる。そんな皮膚がん治療で全国トップの実力はもとより、世界最高水準の治療を行っているのが、国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科だ。

「国内では患者数が少ないため、薬の開発は遅れていました。日本はメラノーマの手術や放射線治療は世界レベルであっても、使える薬の種類や数が世界とは 違う。しかし、メラノーマの患者さんは国内にもいます。そのドラッグラグをずっとなんとかしたいと思ってきました。それがようやく解消されつつあります」

こう話す同科の山崎直也科長(51)は、皮膚がん治療一筋に、国内で最も多くのメラノーマの治療を行っている。その新薬について昨年秋から国際共同治験に参加した。皮膚がんの治療薬で、臨床試験を世界各国と同時に行っているのは史上初めての快挙である。

「新薬の効果が得られればメラノーマの治療は飛躍的に進歩します。まさに治療の転換期ともいえるのです」

もともと小児科医を目指して医学部に進学した山崎科長だったが、研修医時代に皮膚がんの治療に出合った。内臓のがんほど知られていないが、皮膚にできるがんも血管やリンパ管の中に入って流れに乗り、全身の臓器へと転移して命を奪うことがある。種類も多く、性質もがんによってさまざま。患者と向き合ううちに、いつの間にか皮膚がん治療に没頭していたという。

皮膚がんは進行の早い悪性度の高いものばかりではありませんが、小さくても顔にできた場合は、治療による傷跡がQOL(生活の質)を下げる恐れがあります。また、むやみにがんの部分に触れることで、再発や転移につながるため、診断と治療には高い専門性が求められるのです」(山崎科長)

しかし、日本では診断と治療が、まだ普及しているとはいいがたい状況だ。それを打開するため山崎科長は、皮膚がん治 療のガイドラインの改訂版にも着手している。夢は「日本から世界初の治療法を発信したい。私ができるのは、まず遅れている薬物治療の面で世界の最先端治療 に追いつくことです。私たち皮膚腫瘍科はチームワークが良く、メンバーは皆同じ目標を持っています。次世代の若い先生たちとともに、ぜひ世界ナンバーワン を実現したいと思っています」と山崎科長。

その夢に向けてまい進中だ。 

<データ>2010年実績
  • 悪性黒色腫88人
  • 有棘細胞がん52人
  • 基底細胞がん28人
  • 乳房外パジェット病19人
  • 隆起性皮膚線維肉腫10人
  • 血管肉腫9人
  • 病床数18床
2011年7月11日 zakzak

2011年7月11日月曜日

がん細胞発生の仕組み解明へ

染色体中心部の謎に迫る=たんぱく複合体の構造解明-がん研究進展に期待・早大など

ヒトの染色体の中心部「セントロメア」にあるDNAとたんぱく質の複合体の立体構造が初めて解明された。早稲田大と大阪大、横浜市立大の研究チームが 10日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。この複合体が染色体になかったり、中心から外れた所にあったりすると、細胞分裂などの際、染色体が正しく 2本に分離しない。
研究成果は、染色体数の異常で起きるダウン症などの病気や、染色体がちぎれてがん細胞ができる仕組みを解明する重要な手掛かりになるという。

2011年7月11日 時事通信

2011年7月7日木曜日

胃がん新薬で入院長期化

高額新薬「平均+1SD」ルールを緩和へ- DPC分科会が骨子案了承

厚生労働省は、新たに承認されたり効能が追加されたりした高額薬剤を当面はDPCの対象外にし、出来高算定にする際の判断基準となる、現行のいわゆる「平均+1SD(標準偏差)」ルールを緩和する方針を固めた。抗がん剤などの高額薬剤をDPC対象病院で使いやすくするのが狙い。来年4月に予定している診療報酬改定で対応する方針だ。

7月6日のDPC評価分科会に対応の骨子案を提示し、了承された。同省は、8月1日に予定している次の会合に見直しの具体案を示す。

新規に薬価収載された医薬品は、DPCの診療報酬点数に反映されないため、一定の基準に該当する医薬品などを使用した患者については包括評価の対象外と し、次の診療報酬改定までは出来高算定することになっている。具体的には、「新薬を使用した場合の標準的な費用の見込み額」が、その診断群分類における薬 剤費の分布の平均値+1SDを超える場合に出来高算定する。

点数表に反映されていない高額薬剤を使用することにより、DPC対象病院の持ち出しが発生することに配慮した措置だが、現場からは「基準が厳しすぎる」との指摘がある。分科会が6月に行った関係者からのヒアリングでは、胃がんの治療に使う「トラスツズマブ」の使用に支障が生じ、治療が制限されているとの声が上がっていた。

この日分科会が了承した骨子案によると、こうした状況を防ぐため現行の判断基準を緩和するとともに、出来高評価にする新薬の適応・効能や、それらを使用 する診断群分類を明確化する。一方で、薬剤の費用をカバーしようと入院期間を長引かせるのを防ぐため、点数設定上での工夫を検討する。

判断基準の見直しについて分科会の委員からは、標準偏差の代わりに「パーセンタイル値」を使うべきだとの意見があった。

2011年7月6日 キャリアブレイン

がんの新温熱療法

磁性ナノ粒子による「癌の温熱療法」

韓国延世大学の Jinwoo Cheon 氏の率いる研究チームは、磁性ナノ粒子を癌組織に注入し、電磁場で磁気発熱させることで腫瘍局所を加熱してがん細胞を死滅させる「磁性ハイパーサーミア」をネズミで実験したところ、細胞を死滅させることに成功したとのこと (ScienceNOW の記事、本家 /. 記事より) 。

細胞は 43 度以上の環境で死滅させる治療法「ハイパーサーミア」は今に始まったことではないが、に侵されていない正常な細胞に影響することなく如何にして癌細胞を加温するかが課題となっていた。

研究チームは、ネズミ 3 匹の腹部に人間の脳腫瘍細胞を移植し、そこへコアシェル型ナノ粒子を注入。電磁場を作るコイルの中にそのネズミを置いたところ、コイル内の電磁場は腫瘍を 推定 43 ℃から 48 ℃にまで発熱。10 分のこの治療を 4 週間続けたところ、ネズミの細胞を死滅させることが出来たのだそうだ。これに対して、抗がん剤治療を一回受けたネズミは一時的に癌組織が縮小したものの、最終的には組織が 4 倍にまで広がってしまったという。

2011年07月06日 SLUSH Dot

陽子線治療がん治療費を減免

「水平照射」で前立腺がん治療開始 県立病院陽子線センター

福井県立病院陽子線がん治療センター(福井市四ツ井2丁目)は6日、前立腺がんを対象に水平方向から陽子線を照射する「治療室1(水平照射室)」での治療を開始した。3治療室のうち2室が稼働したことになり、1日に受け入れ可能な患者は2室で計35~45人程度に倍増した。

同センターは3月7日、360度どの角度からも陽子線を照射できる「回転ガントリー」を備えた「治療室2」1室で治療を開始。受け入れ可能な人数は1日15~20人程度だった。5日までに20人が治療を受け、うち17人が治療を終えている。

治療室1は照射装置が固定されており、主に前立腺がんが対象。装置 の調整や技師の訓練が終わったことからこの日、治療を始めた。県内の60~70代患者4人が事前に体に合った固定具などを準備し、1回目の照射を受けた。 今後2カ月弱かけ、毎日1回計37回の照射を行う。治療費は260万円で、県内患者は25万円の減免措置がある。

「治療室3」は、がん病巣の断層画像を活用し、より正確に照射できる「積層原体照射システム」などを構築中。2013年度中の治療開始を目指している。

2011年7月6日 福井新聞

2011年7月6日水曜日

がんと認知症を予防する一杯

たった1杯のコーヒーと侮ることなかれ「認知症」「がん」を抑える驚異の効能

また、二日酔いの朝、頭がズキズキと痛んだら、まずは1杯のコーヒーを飲んでほしいというのは、新東京病院顧問の清瀬潤先生。
「二日酔いのときに起こる頭痛は、アセトアルデヒトと呼ばれる物質が原因。この物質を外に追い出し、血液の循環をよくすれば、頭痛は解消される。その際に有効なのがカフェインです」

さらに、パーキンソン病は50歳を過ぎて発症する脳神経障害で日本には100万人以上の患者がいると推定されている。北米では1980年代に麻薬製造工場でパーキンソン病が流行し、その原因が麻薬副産物ではないかとの説が有力になった。
そして、2000年前後に、相次いで米国医学誌と神経学会誌に「コーヒーを飲む人は、飲まない人に比べてパーキンソン病の30%のリスクの低下がある」という論文が発表された。パーキンソン病の原因である脳のドーパミン神経細胞の死をカフェインが防ぐ、というもの。
米国のカイザーパーマネント病院では、この臨床実験を重ねながら研究を続行中である。同病院の話では、パーキンソン病におけるカフェインの働きは、抗炎症薬やガン治療薬にもなる可能性があるとしているので、臨床実験の結果が待たれる。
さらにアルコールやその他の肝臓に毒となるものを飲んでも、カフェインを同時に摂れば、肝炎にならないという事実もあるそうだ。

2009年に一躍注目を浴びたのは、アルツハイマーをはじめとした認知症の予防にカフェインの効果がある、と米医学誌に発表された研究だった。埼玉医科大 学の森隆准教授とアルツ米フロリダアルツハイマー研究センターとの共同の成果だが、内容はアルツハイマー病を発症したモデルマウスを使ってのカフェインと の関係を調べたものだ。
実験はまだマウスの段階で、人間にどこまで効果があるかは未知数の部分があるが「コーヒーは漢方薬とよく似ている」というのは、女子栄養大学の石川俊次客員教授である。
「コーヒーにはカフェインだけではなく、ほかにも体にいいとされる複数の物質が含まれている。それらの総合的な作用が、がんや糖尿病、アルツハイマー病抑制効果となって表れるのではないだろうか」

コーヒーにはカフェイン以外に、クロロゲン酸も含まれ、それは色や苦みの元になっている。老化を防ぐ抗酸化作用があり、動脈硬化にも効果があるとされている。  以前、コーヒーには発がん性があるといわれたことがあったが、もはやその心配はない。むしろ大腸がんに対するリスクは“退化”しているとのデータもある。  現在もコーヒー成分の研究は続けられていて、まだ定説とはいかないものの、「良質のコーヒーは健康にとって有効」と認められるのも、そう遠い話ではなさそうだ。  もともとコーヒーは薬として飲まれるようになった歴史を考えれば、酒ならぬ「コーヒーは百薬の長」というのも至極当然といっていいだろう。

2011年7月4日 週刊実話

2011年7月5日火曜日

ゴボウの種がすい臓がんに有効

ごぼうの種ですい臓がん治療

漢方薬として使われてきたごぼうの種の成分が、すい臓がんの治療に役立つ可能性があることが富山大学などのマウスを使った実験で分かり、治療薬の開発を目指して臨床試験が始まりました。

この研究は、富山大学の和漢医薬学総合研究所と、国立がん研究センター、それに富山県高岡市の製薬会社が、共同で取り組んでいるものです。研究グループは、自覚症状がほとんどなく、手遅れになることが多いすい臓がんの治療に漢方薬を利用できないか調べるため、500種類以上の漢方薬の成分を試験管の中のすい臓がんの細胞に直接、投与したところ、解熱剤として使われてきたごぼうの種に含まれるアルクチゲニンという成分にがん細胞を小さくする効果があることが分かりました。

また、すい臓がんを発症させたマウスにアルクチゲニンを口から与えたところ、およそ1か月後には投与しなかったマウスに比べてがん細胞の成長が3分の1ほどに抑えられたほか、アルクチゲニンを与えたマウスでは与えないマウスの倍の100日程度生きていたケースもあったということです。

実験結果を受けて研究グループは、先月下旬から、すい臓がんの患者に顆粒状にしたアルクチゲニンを服用してもらう臨床試験を始めており、安全性や有効性を確認できればすい臓がんの治療薬として開発を進めることにしています。富山大学和漢医薬学総合研究所の門田重利教授は「ヒトに対しても治療効果があることを証明し、すい臓がん患者を助けられるよう新しい薬を作りたい」と話しています。

2011年7月5日 NHK

大腸がん抑制効果の物質発見

タテホ化学、有機マグネシウムの大腸がん抑制効果を確認

タテホ化学工業(兵庫県赤穂市、湊哲則社長、0791・42・5041)は東海細胞研究所(岐阜市、太田義和社長、058・273・4399)と共同で、有機マグネシウムが大腸がん発生を抑制することを突き止めた。

マウスを使った実験で濃度175ppm(ppmは100万分の1)の有機マグネシウム投与時にがん発生を50%抑える効果を確認した。今後作用メカニズムの解明にも着手する。
マウスの実験には岐阜大学の協力を得た。生後4週間の野生型雄マウス80匹を20匹ずつ4グループに分けて16週間調査。すべてのグループに基礎食とともに大腸がん誘発物質、発がん物質を投与した。そして第2グループに7ppm、第3グループに35ppm、第4グループに175ppm濃度の有機マグネシウムを投与、投与しなかった第1グループと比較した。

2011年7月5日 日刊工業新聞

2011年7月4日月曜日

がん移を抑制する効果の飲みもの

コーヒーがアルツハイマー予防になる可能性 ― 南フロリダ大学

科学者たちは痴呆やアルツハイマーを予防するものを探しているが、朝一杯のコーヒーはその1つであるかもしれない。
アルツハイマーの進行には様々な要因が複雑にからみあってると見られているが、コーヒーはその進行を止める手がかりになるかもしれないことを発見した。
南 フロリダ大学の研究者グループはトランスジェニックマウス(大雑把に言うと遺伝子組換えマウス)にそれぞれカフェインとコーヒーとカフェイン抜きコーヒー を混ぜた水を飲ませ、違いを調べた。このグループは以前にもコーヒーがアルツハイマーに対して効果があることを発見していたが、それがカフェインによるものなのか他の物質によるものかわからなかったため、今回の実験を行った。
結果はカフェインとカフェイン抜きコーヒーの両方がカフェイン入り コーヒー程の効果がないことがわかったという。このことから研究者たちはカフェインがコーヒー中の未知の物質と作用して、GSCFという物質の血中濃度を 高めていることを発見した。GSCFは脳内で神経細胞をつくるのを助ける働きをもつ成長因子で、アルツハイマーを発症してる人はGSCFの量がすくない。 また、動物実験からこの成長因子は記憶の向上に役立つと示唆されている。
アルツハイマー病に対する治療法は今のところないが、この未知の物質を明らかにすれば初期症状での治療に役立つ可能性があるという。それでも、コーヒーがアルツハイマーを予防する確実な方法である保証はない。
「我々は毎日の適度なコーヒーが完全にアルツハイマー病から人々を守るということは言っていない」と主任研究員Chuanhai Cao氏。「しかし、我々は適度なコーヒーがこの恐ろしい病気のリスクをかなり減らすか、その発症を遅らせることができると信じている。」
コーヒーには抗酸化作用などが知られている一方、発がん性が疑われているなど様々な効果があり、注目を集めている。発がん性が疑われる一方で、コーヒーの芳香成分にがん細胞の転移を抑制する効果があることを東京農工大の研究グループが発見している。
2011年7月4日 スゴモリ

タバコで前立腺がん死

喫煙で前立腺がん死増加

喫煙者は非喫煙者に比べて、前立腺がんで死亡する危険性が61%高いとの研究結果を、米ハーバード大などのチームが米医師会誌に発表した。10年以上の禁煙で、危険性は非喫煙者と同程度に下がるという。チームは、1986~2006年に前立腺がんと診断された約5400人を追跡、死因と喫煙との関係を分析した。その結果、診断時にたばこを吸っていた人は、吸ったことのない人に比べ、前立腺がんによる死亡のリスクと、治療後の再発リスクが、ともに61%高かった。

2011年7月4日 産経ニュース

C型肝炎から肝がん移行の危険性が2倍

C型肝炎のがん移行、遺伝子変異で危険性2倍に 理研など発見

C型肝炎にかかった場合に、悪化して肝がんになる危険性と関係のある遺伝子変異を発見したと、理化学研究所や広島大などのチームが3日付の米科学誌ネイチャージェネティクス(電子版)に発表した。

遺伝子変異は、個人によって遺伝子の塩基配列が1カ所だけ異なる一塩基多型(SNP)。特定のSNPがあると、ない場合に比べ、C型肝炎から肝がんに移行する危険性が約2倍になるという。チームは「肝がん発症の仕組みの解明や診断法の開発につながる」としている。

日本では年間3万人以上が肝がんで死亡。7割はウイルス感染によって起きるC型肝炎が原因という。国内のC型肝炎ウイルスへの感染者は、肝炎を発症していない人も含め150万人以上とも推定されている。

チームは、C型肝炎患者で肝がんを発症した922人と、発症しなかった2390人の計3312人の遺伝子を比較し解析。発症する危険性は、女性よりも男性で、また65歳以上の高齢者で比較的高いことが分かった。

2011年7月4日 共同通信

末期すい臓がん の新薬承認

中外製薬、抗悪性腫瘍剤「タルセバ」について「治癒切除不能な膵癌」に対する効能・効果および用法・用量の追加に関する承認を取得

抗悪性腫瘍剤「タルセバ(R)」
「治癒切除不能な膵癌」に対する効能・効果、用法・用量の追加承認取得および適正使用の推進について

中外製薬株式会社[本社:東京都中央区/社長:永山 治](以下、中外製薬)は、「切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌」を効能・効果として販売を行っている抗悪性腫瘍剤エルロチニブ塩酸塩(販売名『タルセバ(R)錠25mg、同100mg』、以下、「タルセバ(R)」)について、2011年7月1日に厚生労働省より「治癒切除不能な膵癌」に対する効能・効果および用法・用量の追加に関する承認を取得したことをお知らせいたします。

中外製薬は、国内第II相臨床試験および海外で行われた主要な第III相臨床試験(PA.3試験)の成績を基に、「治癒切除不能な膵癌」に対する承認申請を2009年9月に行いました。PA.3試験では、「タルセバ(R)」を標準的な化学療法であるゲムシタビンと併用することで、主要評価項目の全生存期間ならびに副次的評価項目の無増悪生存期間が統計学的に有意に延長することが示されました。このPA.3試験の成績により米国では2005年11月、欧州でも2007年1月に膵がんを効能・効果として承認されています。

膵がんに対する「タルセバ(R)」とゲムシタビンの併用療法は、国内外の臨床試験において有効性が確認されていますが、重大な副作用である間質性肺疾患 の発現率が非小細胞肺がんの治療に用いる場合より高いこと、国内での間質性肺疾患の発現率が海外に比べて高いこと、海外では間質性肺疾患による死亡例が認 められていることが報告されていることから、中外製薬は極めて慎重な安全対策を厳重に行い、患者さんの安全性が確保されるよう適正使用の推進を最優先に取 り組むこととしております。

中外製薬は、「タルセバ(R)」が治療選択肢の極めて限られているアンメットメディカルニーズの非常に高い疾患である「治癒切除不能な膵癌」の新たな治療選択肢として、患者さんの治療に貢献できると確信しております。

2011年7月1日 プレスリリース

2011年7月1日金曜日

前立腺がん とタバコ

喫煙で前立腺がん死増加 危険性61%高

喫煙者は非喫煙者に比べて、前立腺がんで死亡する危険性が61%高いとの研究結果を、米ハーバード大などのチームが米医師会誌に発表した。10年以上の禁煙で、危険性は非喫煙者と同程度に下がるという。

チームは、1986~2006年に前立腺がんと診断された約5400人を追跡、死因と喫煙との関係を分析した。その結果、診断時にたばこを吸っていた人は、吸ったことのない人に比べ、前立腺がんによる死亡のリスクと、治療後の再発リスクが、ともに61%高かった。

喫煙によって、より悪性のがんが発生したか、免疫が低下したことなどが考えられるという。

2011年6月30日 ZAKZAK

メラノーマ(悪性黒色腫)の生存期間を延長

悪性黒色腫の個別化治療候補品Lenvatinibの「臨床効果は確実」

エーザイは6月29日に開いたプロダクトリレーション(R&D)ミーティングで、医薬品開発と並行してバイオマーカーの研究を加速し、子会社エーディア (旧三光純薬)と戦略的に診断薬の開発を目指す方針を明らかにした。同社の個別化治療薬の候補品として注目されている Lenvatinib(E7080)に関し、遺伝子変異と臨床効果との相関関係の知見が得られている甲状腺がん悪性黒色腫などでの診断薬の実用化も視野に入れて研究を進める。

同社は現在、マルチキナーゼ阻害剤Lenvatinib(E7080)のフェーズ3、フェーズ2試験を実施中だが、そのうち最も進んでいるのが分化型甲状腺がん。フェーズ2試験で行った同剤の遺伝子バイオマーカー解析では、KRAS/NRASの遺伝子変異のある患者のPR(部分寛解)は100%(変異のな い患者は36%)、KRAS/NRASあるいはBRAFの遺伝子変異のある患者のPRは91%(変異のない患者は27%)など、遺伝子変異のある患者で高 い治療効果があることが分っている。無増悪生存期間(PFS)でみても、RAS変異群では有意に延長した。

さらに、メラノーマ(悪性黒色腫)の臨床試験(遺伝子バイオマーカー 解析)でも、BRAF遺伝子が正常な患者ほど高い効果が得られており、現在、BRAF の遺伝子変異のない患者、およびPlexxikon社と提携先のロシュグループが開発中のベムラフェニブで効果のなかった患者に対するフェーズ2試験が進 行中で、バイオマーカーの候補の有用性を検討する方針だ。

米国では今年3月に切除不能・転移性悪性黒色腫全生存期間を初めて延長さ せた抗CTLA-4抗体YERVOY(一般名:イピリムマブ、BMSが開発)が承認され、大きく悪性黒色腫の治療が大きく前進した。加えて、第一三共が買 収したPlexxikon社と提携先のロシュグループが開発中のベムラフェニブのP3試験結果が今年の米国臨床腫瘍学会で発表され、BRAF遺伝子変異の ある転移性悪性黒色腫患者群で化学療法群と比較して、死亡リスクを63%、有意に低下させたことを発表している。

エーザイのオンコロジー プロダクトクリエーション ユニットの大和隆志氏は「この2つの化合物(イピリムマブとベムラフェニブ)は悪性黒色腫の治療体系 を完全に変えた。ただし、今年のASCOで発表したデータでも分かるように、当社のLenvatinibの臨床効果は確実。当社にとって重要なのは、転移性悪性黒色腫で 特にアンメットニーズの高いBRAF遺伝子の変異のない患者。もうひとつは、ベムラフェニブが効かなくなった患者に対する可能性。これらの患者で非常に見 るべきデータが出れば、当社のLenvatinib の可能性はまだあると思う」と力説し、個別化治療薬としての実用化に期待を示した。

2011年7月1日 ミクスONLINE