2011年10月27日木曜日

肺がん治療に奇跡の新薬

日本発の基礎研究が結実
肺がん治療に奇跡は起こるか
ALK阻害剤─分子標的薬

 いまや、がん治療の主役に躍り出た分子標的薬。力を発揮するには「標的」の絞り込みが鍵を握る。がん特有の遺伝子変異が生み出す分子であること、その働きを封じることでがん細胞に致命的なダメージを与え、正常細胞には影響が少ないことが条件だ。最も成功した例は一部の血液がんに特有の遺伝子変異によるBcr‐Ablタンパクで、これを標的とするイマチニブは慢性骨髄性白血病の治療成績を一変させた。

 一方、より複雑に発症因子が絡む固形がん(一般的な臓器がんなど)では、それ一つですべてを決定づける遺伝子変異と標的があるとは考えられず、分子標的薬の限界を噛み締める日々が続いた。しかし2006年、自治医科大学ゲノム機能研究部の間野博行教授(当時)らのグループが世界で初めて、一つの「標的」で固形がん消滅が期待できる変異と分子を発見したのだ(07年、「ネイチャー」誌発表)。

 その標的はEML4‐ALK。一部の肺がんに存在する遺伝子変異が生み出すタンパクで非常に強力ながん化能を持つ。実際、人為的にEML4‐ ALKを作るように操作されたマウスは、わずか生後数週間で肺がんを発症する。つまり、肺がんの本質的な発症原因であることが証明されたのだ。ヒトのEML4‐ALK陽性肺がんは肺腺がんの約5%に認められ、若年者、女性、非喫煙者に多い。

がぜん製薬企業の反応は素早かった。論文発表の翌08年、ファイザーが他の標的を狙って開発していた化合物の対象を急きょALK陽性肺がんに切り替え、臨床試験を開始。その結果、82例中1例が完全奏功(病変が100%縮小)、46例が部分奏功(50%以上縮小)、奏功率57%という劇的な効果が確認された。今年5月にはこれまでの試験結果を基に日米同時の承認申請を行っている。また現在、初めからEML4‐ALKを標的に開発された、いわば第二世代のALK阻害剤5種類が臨床試験に入っている。

 肺がんは切除不能進行がんで発見されることが多く、治療を薬に頼らざるをえない。日本の基礎研究が、一部とはいえ肺がんの特効薬として結実する日が待たれる。

2011年10月24日 週刊ダイヤモンド   井手ゆきえ [医学ライター],-

2011年10月25日火曜日

膵臓がんに入り込んで増殖を抑える新薬

微小カプセルで抗がん剤届ける 膵臓がんの新たな治療に

高分子でできた微小なカプセルに抗がん剤を閉じ込め、ヒトの膵臓がん組織を移植したマウスに注射、狙い通りにがん細胞に送り込んで増殖を抑えることに東京大の片岡一則教授(臨床医工学)らのチームが成功、23日付の英科学誌ネイチャーナノテクノロジー(電子版)に発表した。
患者を対象にした臨床試験は海外で09年から開始。治療が困難とされてきた膵臓がんに対する効果的な薬になると期待される。
片岡教授らは、ダハプラチンという薬が入った小さなカプセルを作製。マウスに投与すると、カプセルはがん細胞に集まり、数日間にわたって薬を放出した。観察した16日間でがんの増殖は見られなかったという。


2011年10月24日 共同通信

 

東京大学、薬物送達による膵臓がん治療-直径50ナノメートル以下で有効

東京大学の片岡一則教授らはヒト膵臓(すいぞう)がん細胞などを使い、薬物送達システム(DDS)が膵臓がん治療に有効であることを確認した。副作用が少ないがん治療法の実用化が期待される。抗がん剤を内包したナノ粒子の大きさに着目し、直径50ナノメートル(ナノは10億分の1)以下のナノ粒子が、がん組織に集まり、がんの増殖を抑えた。
従来DDSに利用されているナノ粒子は100ナノメートル程度で膵臓がんには効かなかった。難治性がんに対する治療法の開発が期待できる。成果は英科学誌ネイチャー・ナノテクノロジー電子版に24日掲載される。
膵臓がんの組織は物質が漏れにくい血管を持ち、コラーゲンなどで構成される間質という組織で覆われている。ナノ粒子を小さくすることで、「がん組織の血管から抜けやすくなり、間質への透過性も上がる」(片岡教授)ため、膵臓がん組織へナノ粒子が集まりやすくなったとみている。


2011年10月24日 日刊工業新聞

糖尿病を完全に克服する根治療法へ

細胞シートで糖尿病根治 東京女子医大など治療法
膵臓の細胞培養し皮下移植


東京女子医科大学の大橋一夫特任准教授と福島県立医科大学の後藤満一主任教授らは、膵臓(すいぞう)の細胞(膵島細胞)をシート状に培養して移植する新しい糖尿病の治療法を開発した。マウスの実験で長期間、血糖値を正常に保つことを確認した。膵島細胞をじかに移植する治療法よりも効果が高いという。将来、iPS細胞(新型万能細胞)と組み合わせれば、糖尿病を完全に克服する根治療法の実現につながるとみている。


ラットの膵島細胞を採取し、特殊な培養皿の上で直径2センチメートル、厚さ15マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのシート状に培養した。糖尿病のモデルマウスの背中の皮膚の下に2枚のシートを重ねて移植し、約4カ月間、血糖値の変化をみた。


11匹すべてで移植後約3日目から血糖値が正常になり、エサを与えた後も糖尿病でよくみられるような異常な急上昇はなくなった。
移植したシートを調べると、膵島と同じように、β細胞が円の中心部分に集まり、外側をα細胞が取り巻いていた。β細胞は血糖値を下げるインスリンを、α 細胞は血糖値を上げるグルカゴンを出す。両細胞が規則正しく存在することで血糖値が高い時は下げ、下がると自然に正常値に戻し低血糖になりすぎるのを防いでいるとみられる。


膵島移植のように、膵島細胞を直接マウスの肝臓の血管に入れた場合、血糖値は少し下がるものの、正常値まではなかなか下がらなかった。「シート化することで一定量の細胞が塊となり、効果を高めた。臨床への応用が十分期待できる」(後藤主任教授)という。


東京女子医大はカナダのアルバータ大とも共同研究を進めており、ヒトの膵島細胞のシート培養に成功した。今後、動物に移植して安全性と有効性を確認した上で、臨床応用を目指す。
また、患者から採取した膵島細胞を一定量まで増やすのは難しいため、iPS細胞から膵島細胞を作製し、シート化していくことも検討する。


2011年10月24日 日本経済新聞

東京女子医科大学

2011年10月20日木曜日

肉腫治療に新薬期待  東大が世界初ゲノム創薬 で新薬治験

肉腫治療へゲノム創薬 世界初 東大が研究、仏で治験

これまで治療薬がなかったがんの一種、肉腫に対する新しい抗体薬を東大医科学研究所の中村祐輔教授の研究室が作り出し、承認に向けてフランスでヒトへの臨床試験(治験)を開始することが16日、分かった。この薬はゲノム(全遺伝情報)解析から標的を見つけたのがきっかけ。中村教授によると、全ゲノム情報を出発点に創薬(抗体薬)が実現すれば、肉腫治療薬の分野で世界初の成果になる。


今回の抗体薬は腕や足などにできる「滑膜肉腫」と呼ばれる肉腫に対するもの。ゲノム研究の第一人者である中村教授が平成14年、ゲノム情報を応用する形で研究に着手。研究室でマウス実験などを繰り返した結果、肉腫治療に応用できる抗体を突き止めた。
仏保健当局から正式承認が下り、臨床試験が仏リヨンの病院、レオンベラールセンターで12月にも始まる。仏以外の欧州連合(EU)各国にも試験を拡大する計画もある。


滑膜肉腫を含めた肉腫は主に10代から20代に発症する命にかかわる難病だが、治療薬の開発はほとんど進んでいない。このため、治療に道筋を示した論文内容を知った欧米の患者から問い合わせが相次ぎ、患者家族が研究室を訪れたこともある。
一方で、日本の対応は冷ややかだ。研究室では日本で臨床試験を行うため、科学技術振興機構の創薬イノベーションプログラムの補助金申請に応募したが、「開発計画の妥当性・実用化の可能性」がないとの理由で却下された。
日本での対応とは対照的に仏の専門医からは、「非常に大きな研究成果だ。ぜひうちで臨床試験をやらせてほしい」と申し出があったという。仏からは補助金も得られることになった。
臨床試験の準備を進めてきた創薬ベンチャーのオンコセラピー・サイエンス(川崎市)の角田卓也社長は「肉腫の治療薬は市場が小さく大手が参入しなかった。臨床試験が成功すれば、世界の患者に治療の道が開ける」と創薬実現に期待を込める。
ただ、中村教授は内閣官房医療イノベーション推進室長を兼ね、本来なら日本発の医薬品開発を推す立場にもある。
中村教授は「私の研究だけでなく、角膜再生医療も日本発のシーズ(技術・情報の種)なのに臨床試験は欧州となった。その理由は創薬や先端的医療は霞が関行政の谷間にあるからだ」と、日本での体制づくりが急務と指摘している。


【用語解説】ゲノム創薬
ヒトゲノム(全遺伝情報)を解析し、疾患や体質の原因となる遺伝子を突き止め、その情報を元に新しい医薬品やより効果的で副作用の少ない薬の研究、開発をする手法。ヒトゲノムのDNAの塩基配列が2003(平成15)年に日米英などの国際チームによって解明されたことで、創薬の動きが加速した。病気の原因に直接作用するため、薬の効果が高まることや、患者の遺伝子情報に基づいた個別の創薬も可能になることが期待されている。

2011年10月17日  産経新聞

2011年10月18日火曜日

大腸がんの原因たんぱく質を解明

理研・東大、たんぱく質の立体構造分析 大腸がんの原因解明に道

 理化学研究所と東京大学の研究チームは、大腸がんの発症に関わるたんぱく質の立体構造を解明した。たんぱく質に変異があると別のたんぱく質と結合できなくなり、細胞のがん化を抑えられなくなることが分かった。発症の原因解明につながる成果で、米専門紙に掲載された。

 大腸がんを抑制する遺伝子の1つに「APC」というたんぱく質の遺伝子が知られ、大腸がん患者の多くでAPC遺伝子に変異が見つかる。これまで、たんぱく質「Sam68」とAPCが結合したたんぱく質複合体が、細胞のがん化につながる情報伝達を制御していることがわかっていた。

2011年10月17日 日経産業新聞

2011年10月14日金曜日

がんリスク17%上昇の栄養素

ビタミンEサプリでリスク17%アップ

 健康・医療情報サイト「Health Day」は11日、ビタミンEのとりすぎは前立腺がんのリスクを高める、という研究結果を報じた。

 米国の泌尿器科専門家や研究者が発表したものfr、ビタミンEのサプリメントの摂取により、前立腺がんを発症するリスクが最大17% 増大するという。

 研究は、米国医師会雑誌10月12日号に掲載された。

 とりすぎは百害あって一利なし

 実験では、3万5,000人を4つのグループに分け、それぞれにビタミンEのみ、セレンのみ、ビタミンEとセレン、偽薬を無作為に与えた。

 5年半にわたる追跡調査の結果、ビタミンEの影響は実験開始から3年目に明らかになった。

 ビタミンEは脂溶性のため、体内に蓄積されやすい。また、必要量は1日あたり22.4IU(国際単位)とされているが、サプリメントで摂取する人の多くは大量に摂取するため、過剰になりやすい。

 前立腺の専門家は「ビタミンEのサプリメントは摂取しても利益はなく、有害の可能性がある」と語っている。

 一方、有用栄養物審査会のダフィー・マッケイ氏は、この実験でセレンとビタミンEを一緒にとった人は前立腺がんのリスクがほとんど変化しなかったことに 注目。「実験結果は栄養素が複合的に働くことを照明している。有害性について、単独の成分だけを対象に分析を行うのは無意味」と批判した。

2011年10月13日 IBTimes

死亡率が高いすい臓がんを予防する方法

唾液ですい臓がんを早期発見
 すい臓がんは死亡率の高いがんとして知られる。5年生存率は10~20%程度とされ、アップル社の前CEO、スティーブ・ジョブズ氏もつい先日この病気で亡くなっている。
 死亡率が高い最大の原因は、早期発見の難しさにある。米国で発見されたすい臓がんのうち、手術が有効な初期に発見されたものはわずか15%といわれる。それ以上に進行したものについては化学療法が行われるが、治療効果は高くない。
 そんなすい臓がんを早期に発見できる検査法を、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校の膵臓病センターの準教授ジェームズJ.ファレル博士らが発見した。米国の健康医療情報サイト「HealthDay」が12日に伝えた。
 研究結果はガット誌オンライン版最新号に掲載されている。
 唾液中の細菌で判定
 研究者が注目したのは、すい臓がん患者の口内に生息する細菌だった。人の口内には、およそ300~400種の細菌が生息している。
健康な人とすい臓がん患者の口内細菌を調べたところ、がん患者に特有の細菌が31種、健康な人のみに生息していた細菌が25種見つかったという。
 こういった細菌構成の違いは、すい臓がんになりやすい慢性すい炎の患者でも見られた。
 口内衛生ですい臓がん予防も?
 研究者はさらに、この細菌構成の違いは、「すい臓がんがもたらした結果」なのか、それとも「こういった細菌がすい臓がんを発症させている」のか、研究が必要と語っている。
 口内環境が心臓病や肺疾患に結びつくことはすでによく知られている。すい臓がんにもその可能性がある、と考えれば新しい研究分野が開ける。
 将来的には、口内衛生を保つことですい臓がんを予防できる時代が来るかもしれない。

大腸がんに良いと実証された食べ物

大腸がん予防にタコ効果 医薬品開発に期待 広島

 ■加藤・広大大学院教授、三原で発表

 タコを食べると腸内の善玉菌が増え、大腸がんや大腸炎の予防につながる可能性がある-と、広島大大学院生物圏科学研究科の加藤範久教授(59)=分子栄養学=が、三原市で研究成果を発表した。「タコのまち」をキャッチフレーズに観光振興を目指す三原商工会議所が、タコと健康との関係についての調査を同大に依頼していた。

 加藤教授らの研究グループは、三原湾で採取したタコを乾燥させ粉末にして餌(えさ)に加え、ラット7匹に3週間、与え続ける実験を行った。この結果、腸 内の善玉菌「ラクトバチルス」(乳酸菌の一種)が約3倍に増加した半面、悪玉菌「クロストリディウム」は約3割減少し、腸内細菌のバランスが改善されたこ とを確認したという。

 ラクトバチルスは大腸がんや大腸炎、アレルギーなどの疾病予防に効果があることが報告されている。改善した成分については、現在研究中という。このほか、タコに多く含まれるアミノ酸の「タウリン」が腸内の炎症を抑制し、大腸炎を予防するメカニズムを解明。動脈硬化の予防など血管系の病気の改善にも効果があるとされている。

 こうした研究成果から加藤教授は「タコが健康に良いとの有用性が実証できた」と結論づけた。そのうえで「有効成分が特定できれば、製薬分野などへの広がりも可能」としている。

 市では「これまでのイメージを覆す研究。新たな利用価値が生まれる」と期待している。

2011年10月12日 産経新聞

がん転移は完全に抑制

がん転移の兆し察知 慶応大など研究続々

 日本人の死亡原因の1位を占めるがんで、転移を抑える研究が相次いでいる。がんは手術などで切除しても、骨やリンパ節など体のあちこちで再発してしまうと治療が難しい。1カ所にとどまるなら、克服できるがんもある。5日まで名古屋市で開いた日本癌(がん)学会では、がんの治療効果を高めるため、転移の兆しをいち早く探しだし、先手を打って防ぐ試みが発表された。

 国立がん研究センターは、がん細胞から微小な分子が血管に流れ込んでいることに着目した。ヒトの乳がん細胞をマウスの乳腺に移植し、がん細胞の酵素の働きを抑えてみた。がん細胞が「マイクロRNA(リボ核酸)」と呼ぶ分子を出さなくなると、転移しやすい肺やリンパ節に3週間たってもがんができなかった。「転移は完全に抑制できた」(小坂展慶研究員)

 マイクロRNAが血液を通じて離れた場所にある細胞の遺伝子に入り込むと、そこにがんができやすくなるとみている。がんを呼び寄せる仕組みがあるようだ。

 慶応大学の工藤千恵講師は、がん細胞の遺伝子「HERV―H」が転移に関わっていることを突き止めた。この遺伝子が働くとたんぱく質などががん細胞から 出てくる。免疫細胞を弱め、がん細胞がほかの臓器に移るきっかけになるという。たんぱく質を壊すと転移を抑えられることがマウスの実験で分かった。

がん転移対策の研究例 研究対象主な成果

▼転移を防ぐ 東京大学医科学研究所、順天堂大など 血液凝固たんぱく質が血液がんの転移を制御する酵素に作用する現象を発見。白血病マウスで治療実験に成功 国立がん研究センター がん細胞から出る微小分子を抑える 慶応大 がん細胞が作るたんぱく質などの働きを抑え、免疫力を正常化 ▼転移を予測 東京医科歯科大 大腸がん患者で特定遺伝子「PDGFC」が過剰に働くと転移確率が高まることを発見。診断に応用へ ▼転移を可視化 三重大 特殊な顕微鏡で転移を診断

 工藤講師は、ほとんどのがんでみられるリンパ節への転移を防ぐ治療薬を開発したいという。

 一方、転移しても小さいがんなら治療しやすい。三重大学チームは、組織の奥深くを観察できる特殊な装置「二光子レーザー顕微鏡」を使い、内臓を切らずに転移を調べる技術を開発した。

 血液中の血小板や白血球が緑色に光る遺伝子改変マウスの脾臓(ひぞう)に、赤い蛍光を放つようにしたヒトのがん細胞を注射した。がん細胞の一部が血管を通って肝臓に移動し、1~2カ月後には転移がんが育つ様子などが観察できた。抗がん剤の投与でがんが縮む様子も見えた。

 東京医科歯科大学のチームは特定の遺伝子を目印に再発や転移のリスクを測るのが目標だ。血液検査で遺伝子を調べ、予防的に抗がん剤を投与できる可能性がある。

2011年10月12日 日本経済新聞

2011年10月12日水曜日

大腸がんの進行が早い性別と年齢

大腸がん、男性の方が進行が早い オーストリア研究

大腸がんの男性患者は同年代の女性患者よりもがんが進行している傾向があるとする研究結果が、前月27日の米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association、JAMA)に発表された。

 大腸がんは死者数ががんの中で4番目に多く、世界では毎年61万人が亡くなっている。現在、50歳以上の男女は大腸内視鏡検査を受けることが奨励されている。

 研究では、オーストリアで2007~2010年に全国規模で実施された大腸内視鏡検査プログラムの参加者、4万4350人のデータを分析した。

 プログラムでは、ポリープや良性腫瘍(しゅよう)などの腺腫と特に進行した腺腫、および大腸がんの有無を検査した。

 その結果、すべての年代において、病変の進行度は男性が女性をはるかに上回った。例えば、進行腺腫の割合は50~54歳男性が5%だったのに対し、同年代の女性ではわずか2.9%だった。55~59歳男性の大腸がんの割合(1.3%)は、10歳年上の65~69歳女性の割合(1.2%)とほぼ同じだった。

 全体的に見て、大腸がんの割合は男性が1.5%と、女性の0.7%の約2倍だった。

 論文は、大腸内視鏡検査の指針を性別と年齢について調整する必要があるかもしれないと述べている。

2011年10月11日  AFP

2011年10月5日水曜日

乳がん治療費用を安くする方法

抗がん剤でこそ安価な薬剤が求められる

 野村証券は「産業アウトルック(10月号)」でジェネリック薬の使用は、降圧薬、糖尿病治療薬などの慢性疾患治療薬より、抗がん剤で進む可能性が高いと解説。

 乳がん治療の1stライン治療薬であるpaclitaxel(一般名)では、ブランド薬とジェネリック薬でほぼ同数の患者に投与されている。  paclitaxel は注射時にゴム手袋の着用が必要であり、取り扱いが難しい薬剤。それでも、ジェネリック薬が多用されている背景には、安価なことがある。
 一治療期間(1クール)の薬剤費用は、ブランド薬で42万円ジェネリック薬で31万円となっている。がん治療では、その他にも多種の薬剤を用いるため、さらに費用がかかる。抗がん剤では、治療効果の高い薬剤も必要であるが、安価な薬剤も必要とされる。

 ジェネリック薬専業メーカーが、抗がん剤のジェネリック薬を単発で提供するより、ブランド薬メーカーが新薬の抗がん剤と併用のジェネリック薬を提供する展開が予想されるので、この観点からは日本化薬が勝ち組と紹介。

2011年10月4日 日本証券新聞

第4のがん治療の治療効果を検証

第4のがん治療、ノーベル賞を追い風に 石川県内関係者、普及へ期待

 3日発表されたノーベル医学生理学賞で「樹状細胞」の発見が授与理由の一つに挙がったことで、同細胞を使ったがんの 最先端医療に携わる石川県内の医療関係者から「普及に向けた大きな一歩」と期待する声が上がっている。金沢先進医学センターでは、金大と連携して患者の治 療効果や検査データの解析研究が進行中。技術面や患者の費用負担など多くの課題があるが、治療機会が増えるよう着実に研究を進める構えだ。

 樹状細胞を使ったがん治療は、手術、放射線、化学療法に続く「第4の治療法」と呼ばれる免疫細胞療法に分類される。がん細胞の目印の情報を持つ「司令官」役の樹状細胞を増やし、がん細胞への攻撃を強化する。

 金大附属病院敷地内にある金沢先進医学センターでは、昨年9月から樹状細胞療法を含む免疫細胞療法を開始し、これまで160人を超える患者を治療してきた。

 「国内ではまだ評価が定まっていない免疫細胞療法が一般化するための大きな一歩になる」。樹状細胞発見者のノーベル賞受賞について、同センターの和田道彦個別化医療センター長は、先端医療に対する理解が深まるきっかけになると指摘する。

 現在、免疫細胞療法は公的保険が適用されておらず、患者は費用を全額負担する必要があるなど、ハードルは高い。同センターはこれまでに、50人以上に樹状細胞を使ったがん治療を行っており、同時に治療効果の検証も進める。

 金大でも、01年以来、樹状細胞療法の臨床試験が30例程度行われてきた。07年には樹状細胞療法を応用すれば肝臓がんの再発を抑える力が高まることを金子周一教授らの研究チームが突き止めている。

 今春、附属病院内に整備された「トランスレーショナルリサーチセンター」でも樹状細胞療法の研究が進められる計画で、副センター長の水腰英四郎講師は、「今後の臨床応用への期待も込められていると思う。研究の励みとしたい」と話した。

2011年10月5日 北國新聞

粒子線を使ったがん先端治療施設の新規開業

粒子線治療施設の開業支援 兵庫県が三セク設立 

 兵庫県は4日、国内外で粒子線を使ったがん先端治療施設の新規開業を支援するため、装置メーカーと共同で治療技術や情報を提供する第3セクター「株式会社ひょうご粒子線メディカルサポート(仮称)」を11月に設立する、と発表した。世界最高水準とされる県立粒子線医療センター(たつの市)で蓄積した技術を生かし、同治療の普及促進を図る。

 県によると、国内で粒子線治療ができるのは同センターのほか、開設予定の施設も含めて計15カ所。治療装置の低価格化で導入拡大が見込まれるが、専門の医師や放射線技師らの不足で、治療開始まで数年を要しているという。

 このため県は、粒子線治療装置の大手メーカー三菱電機(東京都)など5社と新会社を設立。三菱電機が装置を販売する新規施設に、新会社から専門スタッフ を派遣し、治療技術や機器の調整などのコンサルタント業務を請け負う。また、同センターで技師らの研修も行い、スムーズな開業を支援する。

 新会社は同センター内に置き、資本金は計900万円(県720万円、三菱電機135万円など)。10月下旬に取締役会を開き、社長を選ぶ。

 同センターは2001年4月に開業し、03年から先進医療をスタートさせた。陽子線、炭素線両方を利用できる医療機関としては世界初の施設で、03~09年度の患者数は全国の約4割に当たる約3千人。

 三菱電機は、電力システム製作所(神戸市兵庫区)が治療装置を生産。同センターを含む国内8カ所で受注実績がある。

【粒子線治療】 放射線治療の一種。エックス線など従来の治療とは違い、陽子線や炭素線というミクロの粒子ビームを照射、がん細胞を破壊する。手術が困難 な頭頸部や体内深部の病巣をピンポイントで狙うことができ、痛みや副作用が少ない。当初は整備に約100億円を要した陽子線の装置は現在、30億円程度。 ただ、照射費用は健康保険適用外で、患者負担は約300万円という。

2011年10月5日  神戸新聞

水溶性マグネシウムが大腸がん発症を抑制

水溶性マグネシウムが発症抑制 炎症性大腸がん

 大腸に炎症を起こさせ、がんを発症しやすくしたマウスに水溶性マグネシウムを与えると、大腸がんの発症が抑制されたと岐阜大大学院の久野寿也准教授と東海細胞研究所(岐阜市)の田中卓二所長の研究チームが突き止め、名古屋市での日本癌学会学術総会で4日、発表した。

 久野准教授らは「潰瘍性大腸炎などに由来する大腸がんの抑制に有効で、人でも検証したい」という。

 大腸に炎症を起こす薬と発がん物質を与えたマウスに、有機物と合成して水に溶けやすくしたマグネシウムを一定期間投与。マグネシウムを与えたマウスは与えなかったマウスに比べ、がん細胞の増殖を最大4分の1に抑えられたという。

2011年10月4日共同通信

2011年10月4日火曜日

リンパ腫・白血病に新しいタイプの分子療法

東大、悪性度の高いリンパ腫・白血病でも生体内増殖を抑制できる薬剤を開発

東京大学(東大)は、組織内浸潤を促進するタンパク分解酵素「マトリックスメタロプロテイナーゼ」(MMP)の活性を抑制し、悪性度の高いリンパ腫・白血 病の生体内増殖を抑制できる、血液線維素溶解系因子「プラスミン」の阻害剤の開発に成功したと発表した。東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター幹細 胞制御領域の服部浩一特任准教授らの研究グループによる成果で、9月20日付の「Leukemia(電子版)」に発表された。

悪性リンパ腫・白血病は血液系細胞の悪性化によって生じるがんの一種で、近年日本でも増加してきている。数多くの新薬が開発されてはいるものの、組織型によって未だに致命率の高い予後不良の難治疾患であることが特徴だ。

研究グループは、生体内の血液凝固能を制御する線維素溶解系(線溶系)の因子プラスミンが、がん細胞の転移、MMPの活性化を制御することに注目。神戸学 院大学と順天堂大学との共同研究により、プラスミンの阻害剤を悪性度の高いT細胞型リンパ腫および白血病を発症させたマウスに投与してみたところ、がんの 増殖を抑制することに成功した。

プラスミンは、生体血液中において、血液凝固系の亢進による血栓形成を制御する役割を担う機構である「線維素溶解系」の中で、中心的役割を担う生体因子の 1つ。前駆体である「プラスミノーゲン」から、組織型あるいはウロキナーゼ型「プラスミノーゲンアクチベータ」の作用により活性化されて生成し、血栓形成 の核となる「フィブリン」を分解するほか、近年はがん細胞の生体内での転移、組織内浸潤といった動態を制御するMMPの活性化を制御することが明らかとなってきた。

そしてMMPは、共通のアミノ酸配列を有し、細胞外マトリックスを基質とする亜鉛などの金属を活性中心に有する金属要求性タンパク分解酵素で、その多く は、「潜在型酵素プロ酵素」として産生され、プラスミンやMMP相互間で活性型MMPへと変換される。生体組織中にがん細胞が浸潤、転移する際は不可欠な 因子と考えられており、これまで多くの阻害剤が報告されているが、欧米の臨床治験、動物実験でその深刻な副作用が明らかとなって以来、MMPを標的とした 分子両方の研究開発自体にも支障を来しているという状況だ。

前述したように、従来の抗がん剤は細胞殺傷作用などの副作用が あるが、今回の薬剤はそれらが存在しないことが大きな特徴。動物実験の結果からは、現在のところは有意な副作用も認められていない。こうした結果から、線 溶系因子を新しい標的とした今回の薬剤は、リンパ腫・白血病に対する従来にない新しいタイプの分子療法の可能性を示したものと考えられている。

また今回の研究は、がん増殖過程における、線溶系を起点とした造血系細胞の動員と血管新生の促進機構を提示したことで、がん病態の新たな一面を明らかにした形だ。

2011年10月4日 マイコミジャーナル

がん抑制遺伝子を発見

福島県立医大、がん抑制新遺伝子発見 放射線障害と関連

 福島県立医大は3日、がんを抑える新しい遺伝子「NIRF(ナーフ)」を発見したと発表した。細胞内のがん抑制機能の中心的なタンパク質を合成する遺伝子で、他のがん遺伝子やがん抑制遺伝子と相互に作用して働きに影響を与える。他遺伝子と幅広く相互作用するタンパク質を合成する遺伝子が確認されたのは世界初。

 同大看護学部生命科学部門の森努准教授(47)によると、NIRFはサイクリンD1などがんの発症を促すがん遺伝子に作用し、がん化を抑える。pRBなどのがん抑制遺伝子にも働き掛け、機能を促進する可能性もある。  がんは細胞分裂を止めることによってがん細胞の増殖を抑え、発症を防ぐことができる。NIRFは細胞分裂を停止する機能の中心因子に位置付けられ、個別の遺伝子の働きを調整する。
 研究の結果、実際に特定の肺がんでNIRF遺伝子の染色体がわずかに失われていたことが判明し、NIRFの異常が肺がんの原因になっていることが裏付けられた。

 森准教授は「これまで個別のがん遺伝子やがん抑制遺伝子は発見されていたが、これらの遺伝子の階層構造の頂点に位置し、幅広く相互作用する物質が見つかったのは初めて。放射線障害と関連する遺伝子で、福島第1原発事故の健康被害を最小限に食い止めるためにはNIRFの機能解析が欠かせない」と話している。
 研究成果は1日付の米国の科学誌「セルサイクル」に掲載された。

2011年10月04日 河北新報

2011年10月3日月曜日

微量血液から初期がんを発見

がん診断、微量血液で 国立がんセンター

 国立がん研究センター研究所と東レの研究チームは、血液中の「マイクロ(微小)RNA(リボ核酸)」を手掛かりに、がんかどうかを診断する手法の開発にメドをつけた。新たに開発した試薬とDNA(デオキシリボ核酸)チップを使う。今後、がんの種類ごとにどのマイクロRNAが目印(マーカー)になるかを調べ、早期の実用化を目指す。3日から名古屋市で始まる日本癌学会のセミナーで発表する。

 現在、血液中の特定のたんぱく質を目印にがんを診断する検査はあるが、がんの初期段階にきちんと判断するのは難しい。血液検査で分かるとされる前立腺がんの場合も、実際には前立腺肥大と区別できないケースが多い。

 たんぱく質を作る遺伝子の働きを制御するマイクロRNAを目印に使えるようになれば、微量の血液からがんが診断できるようになり、患者の負担も軽くなる。

 研究チームの新手法では、血液の上澄み(血清)が300マイクロ(マイクロは100万分の1)リットルあれば、従来の約4倍にあたる300~700種類のマイクロRNAを調べることができるようになった。

 実際に健康な人と乳がん患者の血清を測ったところ、がん患者に特有の2種類のマイクロRNAを検出できた。胃がん肺がんなどでも調べると、別の種類のマイクロRNAが出ていることも分かった。

2011年10月2日 日本経済新聞