2012年5月31日木曜日

前立腺がん, 胃がん へ新薬開発

胃がんや前立腺のがん細胞の転移に関与する特定のたんぱく質が発見された。抗がん剤新薬の開発に繋がる可能性を秘めている。

発見された物質は「デイプル」と呼ばれるたんぱく質の一種。デイプルを培養した細胞実験は、胃や前立腺がんの転移を促す信号として知られる別のたんぱく質「ウィント」との相関関係が調べられた。その結果、デイプルを培養した細胞では、ウィントがデイプルを活性化してがん細胞が活性化されたが、デイプルの働きを抑えた細胞では、 がん細胞の活性化は見られなかった。つまり、「デイプル」の働きを抑制することで、「ウィント」の働きを抑制でき、それががん細胞の転移・増殖を抑制できるのだ。

さらに、マウスに傷を付けた実験では、皮膚の表面や真皮の中にあるデイプルが傷口の治癒に効果があることも判明した。今後は「デイプル」が人体にどう作用するかを調べ、 がんの予後の回復や転移の仕組みを解明し、胃がんや前立腺がんの抗がん剤新薬の開発が期待される。

研究は、名古屋大が英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。

2012年5月30日水曜日

がん遺伝子に作用の肺がん新薬

原因となる がん遺伝子の働きを阻む作用を持つ世界初のがん治療薬、肺がん治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)は、ファイザーから発売された。

ザーコリ(クリゾチブ)は、がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害することで、肺がんの進行を抑制できる。肺がん患者の多くを占める「非小細胞肺がん」の患者のうち、約3~5%はこの ALK遺伝子を持つという。

ザーコリの発売により、治療効果が見込まれる患者を予め遺伝子検査によって選んでから抗がん剤を投与する「個別化医療」が開始される。

2012年5月29日火曜日

がん治療向けにフルーツ皮の健康食品

フルーツのマンゴスチンの厚い果皮が、ん治療向けの健康食品として普及を図られる。

マンゴスチンの厚い果皮は、抗菌や抗カビ作用があることで知られており、東南アジア地域では古くから伝承薬として用いられてきた。

マンゴスチンの厚い果皮はポリフェノールの一種である「キサントン」という成分を含んでおり、この成分を抽出することで、 がん治療の補完代替医療に役立つ健康食品として実用化したのだ。

培養したヒトのがん細胞と大腸ポリープを発症したラットに対して、抽出したキトサンを加えると、低濃度で48時間後にがん細胞の6~7割が死滅した。

一方、ラットに対しては、0.05%の非常に薄い濃度でエサに混ぜて食べさせたところ、食べないラットにに比べてポリープの数が約半数に減少した。副作用も無かったという。

キサントンには抗酸化免疫活性化の作用があることから、 がん予防やがん再発を抑えるための機能性食品として販売が開始される。

原因の遺伝子特定で肝臓がん新薬へ

肝臓がん向け分子標的薬の開発への基礎研究が前進した。

がんへの特効薬として脚光を浴びている分子標的薬はがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤だが、肝臓がんには、効果的な分子標的薬が開発されてはいなかった。 2007年に米国で再発性や進行性肝臓がんに対して分子標的薬が使われるようになったが、その予後は悪く特効薬とは呼べる効果が発揮されなかった。そのため、肝臓がんの分子機構の解明による新たな治療法や予防法の開発が強く望まれていたのだ。

肝臓がん患者の27例のDNA=遺伝子情報(ゲノム)を解読したところ、 DNA複製に関わるクロマチン制御遺伝子の異常が高率で見つかったのだ。

つまり、肝臓がんの多くは、クロマチン制御遺伝子の異常を抑制することで、がんの発症予防や癌抑制、またはがん転移を阻止できるのだ。いよいよ肝臓がんには、有望な分子標的薬が登場する素地が固まってきたと言える。

研究は、理化学研究所と国立がん研究センターなどの研究チームが実施し、科学誌ネイチャー・ジェネティクスへ発表した。

2012年5月28日月曜日

睡眠時無呼吸症候群とがん死リスク

がん死に関連する睡眠時呼吸障害 - 最大5倍のリスク上昇

睡眠中に一定時間呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などの睡眠中の呼吸障害が、がんによる死亡リスク上昇と関連していることが判った。重度の睡眠時呼吸障害があった人のがんリスクは、障害が無かった人に比べて最大4.8倍のリスク上昇が確認された。

睡眠時呼吸障害は、心筋梗塞や心血管疾患だけでなく多くの疾患の死亡率を増加させることは既知だったが、これまでは、がんによる死亡率との関連は明確ではなかった。しかし、米国ウィスコンシン州の地域住民が1,522人を対象とした22年間の死亡データを調査した結果として、がん死と睡眠時呼吸障害の関連が明示されたのだ。

実際の調査では、1522人の調査対象者中の365人(24%)が「睡眠時呼吸障害あり」と診断され、この内の222人が軽度、84人が中等度、59人が重度と分類診断された。そして、追跡期間中に50人ががんによって死亡した。

データを分析すると、睡眠時呼吸障害のがんによる死亡と全死亡の関連が見られ、リスク上昇の程度は、軽度のグループで1.1倍、中等度のグループで2.0倍、重症のグループで4.8倍と、症状が重くなるほどにがん死のリスクも高まっていたのだ。この調査データ分析から睡眠時呼吸障害が、がん死リスクを増大させると結論された。

調査研究は、米ウィスコンシン医学・公衆衛生大学院によって実施され、 5月20日付の米医学誌「American Journal of Respiratory Critical Care Medicine」に報告された。

2012年5月25日金曜日

スキルス胃がんを克服した体験談

胃がんは、長らく日本人の死因の上位に位置してきたが、最近は以前に比べて死亡率が大幅に減少している。

早期診断、早期治療の普及に加え、胃がんの最大の原因とされるピロリ菌の検査・駆除が進展したからだ。それでも、胃がんの発生は少ないわけではなく、胃がんを発症すれば命の保証はない。胃がんの中でも最も治療が困難な「スキルス胃がん」(ステルスではない!)から生還した30代男性の体験談。

胃がんの発見は偶然が重なった。

付き合いで酒を飲むことが多い上にプライベートでもほぼ毎日飲んでいた。学生時代からタバコも継続していたため、がんを発病する因子は揃っていたと言える。

少々飲み過ぎた時期があり、胃のもたれや痛みを感じるようになり会社の先輩に相談すると、胃カメラ検査を強く勧められた。その先輩は胃がんのために20代で逝った友人がいたのだ。

現在の胃がん検査は、無痛検査なら苦しまずに受けられるのは驚きだった。胃カメラは口から入れるタイプとは別に、鼻から入れる胃カメラが開発され、検査の負担は格段に緩やかになっているのだ。

そして、その検査で胃がんが見つかった。しかも「スキルス胃がん」。スキルス胃がんは、胃がんの中でも非常に治療成績の悪いタイプのがんなのだ。

ネットでも調べるも、スキルス胃がんの治療の困難さに愕然とし、一度は諦めかけた。しかし、検査をした医師の紹介で大学病院に行き、かなり大規模な手術で切除して助かることができたのだ。

当の執刀医さえも、運の良さを繰り返し強調するばかり。執刀医の手術の技術以上に、胃カメラで早期発見してくれた医師の眼力が感心されたという。

スキルス胃がんの大手術から4年が経過するも、がんの再発・転移ななく、予後は順調。

いくつかタイプのある胃がんの中でもスキルス胃がんの予後の悪さ=治療の難しさ=は突出しているのだが、早期に検査を受け、早期に適切な手術を受けたことが、スキルス胃がんの克服に繋がったと言える。

血便などの明らかな症状が出てからでは、「手遅れう」の可能性がある。喫煙や飲酒などのがリスクを自認しているなら、さらに気になる症状がある時には、年齢に関係なく、一日も早い検査が命を救うのだ。

2012年5月22日火曜日

がん治療で払える費用上限

「がん」の治療費に関わる意識調査の結果が発表された。

全体の6割の人が自身ががんを発症した場合に「保険金なども含めて治療費としては100万円以上は使えない」と答えている。この傾向は、世代・性別の属性別でも、総じて6割と変わらない。概算平均額で見るとがん治療費に使える総額の平均は130万円程度。やはり高齢層の方ががん治療に使える金額は多い傾向がある。

心臓病や脳血管疾患の治療法が進んだことから、間違いなく日本人の死因第一位となった「がん」。 がん治療には保険適用外の先進医療なども合わせ、多種多様な、そして比較的長い(とはいえ最近では平均入院日数は30日を切っている)治療を要するようになる。自然とその治療費は高額となる傾向があるものの、多くの人が「がんの平均治療費は100万円である」と聞くと「高い」と感じるようである。

がん」を発症した場合、保険金も合わせていくらまで使う事ができるか、という問いには、 6割の人が「50万円未満」「50~100万円未満」の領域に留まっていおり、現状では「100万円以上は少々難しい」というのが現実なのだ。

しかし先進医療などで、陽子線治療、重量子線治療 等を受けるには300万円以上、 免疫細胞療法で150万円前後、サプリメント療法でも月額数万円の治療費が必要となる。お金が無いゆえに、満足な、最先端のがん治療が受けられない「がん難民」の潜在率は6割近くに達していることになる。

米国では富裕層ほどに、先進医療に加え、サプリメントなどと組み合わせた混合医療の取組が顕著で、貧困ががんでの死亡を更に引き寄せる原因となっている。

日本が世界に誇れる唯一の社会制度「国民皆保険」の先進医療への承認が待望される。

2012年5月21日月曜日

胃がん,子宮がん,卵巣がん の手術実績が高い病院・医師

がんの手術は、特に女性特有のがんである子宮がん、卵巣がんなどの場合、術後の患者の生活や精神面を考え、傷口を小さくしつつ、がんだけを完璧に取るかが問われる。

子宮がん、卵巣がんは転移が懸念されるために全摘出手術が多い。しかし、傷痕に心を痛める患者の想いとがんの再発リスクを比べつつ、両立させることが、「がん名医」なのだ。

子宮がん、胃がん、卵巣がんの名医を下記に挙げる。

  • 兵庫医科大学病院:笹子 三津留 医師
    胃がん手術の最前線で執刀しているは、 2007年まで国立がんセンター副院長だった笹子医師は、デスクワークよりも現場での執刀を優先して退職し、現在の兵庫医科大学病院へ異動した。2千件を超える執刀数もさることながら、後継者を育てるという強い気概にも信頼は高い。
  • がん研有明病院(東京):滝澤 憲 医師
    がん研有明病院は子宮がんの手術件数が毎年国内1位。病院全体のモチベーションが非常に高く、技術力も国内トップ。
  • 北海道大学病院:櫻木 範明 医師
    子宮がん手術の『北大式』というオリジナルの手術法を開発したことで有名。子宮摘出の際、残すべき神経組織をていねいに残すことで排尿障害などの合併症防止を図る。患者とのコミュニケーションが密であることも評判が高い。
  • 筑波大学附属病院(茨城):吉川 裕之 先生
    進行したがんや取りにくい場所にできたがんの手術に対して、高い生存率を上げている。高い技術的で評価が高い。
  • 埼玉医科大学国際医療センター:藤原 恵一 医師
    「子宮摘出手術時の神経温存術」をオリジナルでを発案した。卵巣がんの手術にも定評。
  • 倉敷成人病センター(岡山):安藤 正明 医師
    子宮がん、卵巣がんには、保険適用が認められていないために高額な腹腔鏡手術を8千例以上成功させている。治療費が高額(140万~200万円)でも頼る患者が増える技量がある。

2012年5月18日金曜日

腎細胞がんの抗がん剤新薬

開発中の進行性腎細胞がん治療用の抗がん剤新薬「チボザニブ(アステラス製薬)」が良好な治験結果を得ている。

抗がん剤新薬「チボザニブ」は、既に承認を取得している既存の抗がん剤である「ソラフェニブ」より良好な治療効果が示されている。

チボザニブはソラフェニブよりも投薬でがんが悪化しない期間(無増悪生存期間)が長くなり、副作用も少ないという実験結果。

1年以上のがんを悪化させずに現状に留める効果は画期的な抗がん剤新薬との期待が高まる。

2012年5月17日木曜日

最新血液がん検査法が海外で事業展開へ

金沢大学が開発した、血液によるがん検査がインドで事業化される。

この血液がん検査は「マイクロアレイ血液検査」と呼ばれ、がんに関係する遺伝子を載せた「DNAチップ」を使い、患者の血液から抽出した遺伝物質を解析することでがんを早期に発見できる。金沢大学とバイオベンチャー企業「キュービクス」が共同開発し、特許も取得済。

今のところ「血液がん検査」が対応している がんは消化器系がん(胃がん、大腸がんetc.)だが、今後は肺がんや乳がん子宮がん前立腺がん等のがんへもの適用できる改良を目指している。

血液の遺伝子解析によるがん検査法は昨年2011年8月に商品化され、石川県内では金沢市の北陸病院、七尾市の恵寿総合病院、白山市の公立松任石川中央病院、加賀市の山中温泉医療センターへ導入されている他、砺波市の砺波総合病院などと合わせて国内24施設で約200例への導入実績があり、評価を得ている。

海外では、ドイツに続き、今回のインドへの事業展開が2例目となる。

インドでは、提携した地元企業が、2012年中に臨床性能試験を300例実施し、来年2013年にも検診事業が開始される。その後、中近東やシンガポールへの展開も計画されており、日本からはDNAチップの輸出拡大と検査や解析の手法の指導が期待されている。

2012年5月16日水曜日

通院治療可能な抗がん剤新薬とは

抗がん剤は、「従来の抗がん剤」と、「新規抗がん剤」と呼ばれる分子標的薬の2種類へ大別されつつある。

従来の抗がん剤は、がん細胞のDNAや骨格をつくるタンパク質を直接攻撃し、がん細胞を破壊することで治療効果を狙った。一方の、新規抗がん剤=分子標的薬は、がん細胞が増殖する中で重要な役割をしている分子を標的にして阻害し、 がん細胞の増殖を抑えることを可能とした抗がん剤。がん細胞を養う血管増殖を抑制する分子標的薬もある。

従来の抗がん剤は、吐き気、食欲低下などの消化器症状や、脱毛がほぼ確実に発現したが、分子標的薬はこのような副作用が比較的少ないとされている。

-> 分子標的薬の副作用対処法

また、治療効果を予測した上で、投与する薬を選べるという点も進歩したところです。大腸がん治療の分子標的薬では治療前に患者のがん細胞のKRAS遺伝子(がんの増殖に関わる遺伝子)を組織検査で調べる。KRAS遺伝子に一部変異を認める場合は、ある種の分子標的薬を投与しても治療効果が期待できないからだ。

治療前に検査を行うことで、不要な抗がん剤治療を避けることができることは分子標的薬の大きな特徴だ。現在、消化器がんで使用されている分子標的薬は、胃がんではハーセプチン、大腸がんではアバスチン、アービタックス、ベクチビックス、肝臓がんではネクサバール、膵臓(すいぞう)がんではタルセバなど。

それぞれ、点滴薬や飲み薬があり、分子標的薬の単独だけでなく、従来の抗がん剤との併用でも使用されている。

分子標的薬による抗がん剤治療は、外来通院で実施されることが多く、自宅で過ごしながら抗がん剤治療を受けることができるようになったため、入院することは少なり、生活の質を極力落とさない抗がん剤治療が可能となっているのだ。

全世界では、さらに分子標的薬の研究が進められているので、治療効果が高く、副作用が少ない分子標的薬がさらに開発されることは時間の問題だ。

大腸がん新薬の注意点と対処法

がん治療に登場している新しいタイプの抗がん剤「分子標的薬」。

がん細胞だけで過剰に働いている分子や、増殖や転移にかかわる分子を狙い撃ちするため、従来の抗がん剤に比べ正常細胞のダメージ=副作用が少ないとされる。しかし、実際に分子標的薬タイプの抗がん剤使用が広がると、想定外の副作用も認められるようになってきた。その中でも皮膚障害は非常に顕著な抗がん剤副作用なのだ。

消化器領域で現在、分子標的薬が使われているのは肝臓、胃、膵臓、大腸のがん。例えば大腸がんで使われているセツキシマブやパニツムマブは、がん細胞の表面に顔を出す「EGFR」というタンパクに結合し、増殖や転移を抑え込む。しかしEGFRは、皮膚や毛包、爪の増殖・分化にも深く関与しているため、その働きも同時に抑制され、皮膚障害が高頻度に現れる。ニキビに似た皮疹、全身の皮膚が乾いて亀裂が生じる乾皮症、かゆみを伴う掻痒症、爪の周囲が腫れて痛む爪囲炎などは、辛い副作用だ。

がんだけで働く分子を探すのはなかなか難しく、分子標的薬もまた正常細胞を傷つけてしまうのが現実。 だが、皮膚障害の強いがん患者ほど、分子標的薬の抗がん効果が高いという事実がある。そこで、副作用の皮膚障害にうまく対処しつつ、抗がん剤治療を継続することが治療の肝になるのだ。

既知の対処法として、抗がん剤治療の開始前から抗生物質の内服や保湿剤の塗布を予防的に開始し、開始後にはステロイドの塗り薬を適切に使うと、皮膚障害が軽減される。この基本的な抗がん剤対処法を知らない医師も多いので、がん患者自身からの啓蒙も不可欠なのだ。

2012年5月15日火曜日

肺がん、前立腺がん、乳がん、の骨転移へ新薬

がんの骨転移で生じる骨病変を抑える新薬が発売された。

がんが骨に転移して起きる骨病変は、病的骨折などの危険を伴う。

骨転移は前立腺がん、乳がん肺がんの三つのがん患者に多く発生する。

新薬は「分子標的薬」で、骨を吸収する破骨細胞の活動を活発化させる仕組みを妨げ、骨の破壊を防ぐ効果がある。多発性骨髄腫の骨病変にも適用できる。

発売された新薬は、デノスマブ(製品名 ランマーク、販売会社 第一三共)。1カ月に1度、皮下注射する。

がんの骨転移で生じる骨病変に対しては、骨粗しょう症治療に使われる骨吸収阻害剤ビスフォスフォネートしかなかった。比較試験で新薬デノスマブは、ビスフォスフォネートを上回る効果が確認された。

2012年5月14日月曜日

膵臓がんを治すための新技術

膵臓がんを早期発見する手法が、定着しつつある。超音波診断画像を用いた診断で、末期で見つかることが多い膵臓がんを早期がんの状態で発見できるという。

膵臓がんは、死亡率が高く、がんの中でも特に治療が難しいとされている、その最大の理由は、発見が遅れることが殆どで、その多くががん発見時点で既に周囲に転移した末期がん となっているからだ。 膵臓がんの生存率を上げるには早期発見に尽きると言われている。膵臓がんの5年後の生存率は約10%と低く「難治がん中の難治がん」なのだ。膵臓は腹部の深いところにあり、厚みもないため画像診断が難しく、胃や腸のように内視鏡で簡単に組織を調べられない。そのため、早期発見が難しかったのだ。

「上腹部の不快感」を胃炎と診断され、数カ月後に黄疸が出て痩せ細り、進行膵臓がんだと分かるケースが多発している。

しかし、ステージ1という早期がんの状態で発見できれば、5年生存率は60%以上と高くなる。早期に見つけることで、再発無しに完治できる患者も多いのだ。

さて、膵臓がんの早期発見法では、超音波診断ですい臓内の「主膵管」を見る。「主膵管」が膵臓の中を走って、膵液を十二指腸に運ぶ管だが、これが、「太く」なっていたり、「袋状の嚢胞」ができていたりすると、膵臓がんへ移行する確率が高いことが判ったのだ。

同手法を開発した大阪府立成人病センターでは1998年から超音波を使った膵臓がん検診を開始し、大きな成果を上げた。人間ドックなどで膵臓が腫れているなど何らかの問題が見つかった人を対象に、通常1.5ミリ程度の主膵管が2.5ミリ以上と太くっていないか、嚢胞ができてないかなどを検査する。検査は、20分前後。もしも、異常があれば、精密検査へ移行し、造影剤を使った超音波検査や、膵液の組織を採取するのだ。

同手法の成果としては、膵管拡張や膵嚢胞の患者1039人を平均5、6年間追跡して経過観察した結果、17人に膵臓がんが発見され、このうち11人のがんが手術で切除された。しかも、17人中7人(41%)はステージ0か1の早期がん状態で発見できたのだ。通常であれば、この早期がん段階でがんが発見されるのは、2%以下であることを考慮すると、膵臓がんの早期発見率としては非常に高い。

結果として、すい臓内の「主膵管」に拡張または嚢胞のあった人は、異常のなかった人に比べて、膵臓がんの発症リスクは約3倍と判った。さらに、両方の異常のある人では約27倍のがんリスクに高まり、年平均1%以上と高率で膵臓がんを発症することが分かった。よって、主膵管が太い人や嚢胞のある人は膵臓がんが発見されなくとも、高いがんリスクに対して6ヶ月毎の検診が勧められる。

当初は「超音波で膵臓を見るのは難しい」と効果を疑問視する声も多かったが、実用性が証明されたことで今後は膵臓がんの早期発見手法としての定着が期待される。

2012年5月11日金曜日

乳がん原因は化粧品に!?

化粧品や食品に含まれる低濃度のカドミウムでも、乳がんを発症・転移するリスクが高まることが判明した。

カドミウムは体内に入ると、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用を示すことがあるため、特定の化粧品に含まれることがある。低濃度でもカドミウムに慢性的に曝露された細胞は、高レベルのSDF-1というタンパク質が発生することが判明したのだ。このSDF-1というタンパク質は、がん(腫瘍)の浸潤および転移に関連する物質=がんリスク物質として既知なのだ。

化粧品以外にもカドミウムは農業用の肥料に添加されることも多い。食品も、化粧品も、がんリスクを避けるのに越したことは無いだろう。

新たな乳がんリスクに関する研究は、米ドミニカン大学カリフォルニア(サンラファエル)生化学准教授のMaggie Louie氏が、米サンディエゴにて開催された実験生物学(Experimental Biology)学会年次集会で発表した。

2012年5月10日木曜日

抗がん剤の効果を倍増させる新技術

抗がん剤などの薬物を内部に収めて投与すると、抗がん剤の放出持続時間を自在に制御し、薬剤の有効時間を数倍に延長できるカプセルが開発された。新開発のカプセルは、無機物のナノメートル厚のフレーク状物体「ナノシート」でできた伸縮自在のカプセルで、「フレークシェルカプセル」と呼ばれる。物質・材料研究機構(NIMS)が開発に成功した。

がん患者の病理部位だけに薬物を運ぶという仕組みは、ドラッグデリバリシステム(DDS)と呼ばれる。ドラッグデリバリシステム(DDS)では、マイクロメートルもしくはナノメートルサイズのカプセルなどの担体に薬物を封入することで、 がんなどの病理部位だけに薬物を確実に送り込むのだ。

従来の単純な薬物投与では、投与した薬物が体内の途上で吸収・分解されてしまうことが問題で、そのためにがん患部以外に分散してしまい副作用を引き起こしたり、肝心のがん患部への到達できる薬物量が少なかっのだ。

「フレークシェルカプセル」には従来より多くの抗がん剤をカプセル内に封入できると同時に、抗がん剤の放出速度を抑えることができる。従来のカプセルに比べて、抗がん剤放出持続時間が格段に長くなり、1つのフレークシェルカプセルで数日間、持続的に抗がん剤を投与することも可能となった。また、カプセルをあらかじめ適当なpH条件下で処理しておくと、薬物を通す孔の構造が変わり、薬物の放出持続時間や薬物の貯蔵量を微調整することも可能だ。

開発された無機物のフレークシェルカプセルでは、カプセルの大きさが簡単に調節可能であり、薬物を通過させる孔構造も簡単に変えられるという特徴を持つ。結果として、望みの量の薬剤を内部に封入し、かつ、それを望みの速度で持続的に放出することができる。 がんの状態に合わせ、量や持続時間を自在に調節できる優れた抗がん剤物運搬体になり得るというわけだ。

また、表面に特定のがん標的を認識できる抗体を結合させれば、特定の病的部位にのみ薬物を送り込む「がんミサイル療法」への応用も可能だ。

このように構造を自在に調節できるカプセルの開発・利用は、既存の抗がん剤によるがん治療にても飛躍的に効果を高められる可能性を秘めている。

2012年5月9日水曜日

大腸がん治療に効果のある食品

大腸がん治療にカレーのスパイスの有効性が試される。

カレーなどの料理に色や香り付けに使われる香辛料である鮮やかな黄色のターメリック。日本では、「ウコン」としての方が有名だ。このターメリック(ウコン)に含まれる成分が、「クルクミン」だ。このクルクミンを含む香辛料ターメリックは、数百年も前からインド料理やタイ料理で頻繁に使用されてきた。

このクルクミンが抗がん剤の持つ大腸がん細胞の殺傷力を高める効果があることは、既に実験室レベルでは確認済みなのだ。

今回は、人間に対する実証実験として、進行性の大腸がん治療に対するカレーのスパイス成分クルクミンの効果を検証する。実験するのは、イギリスのレスター大学(University of Leicester) のがん医療研究センターECMC(Experimental Cancer Medicine Centre)の研究チーム。

大腸がんでは、抗がん剤治療の副作用の負担が大きいために、抗がん治療が長期間続けられないことが多く、 がんの転移が広がった後では治療が難しかった。

クルクミンにがん細胞を抗がん剤の効果を助長する機能が確認されれば、 がん患者へ投与する抗がん剤の量を減らすことができ、それは副作用も減少されるため、治療をより長く続けることが可能となる。

実験の結果を待つまでも無く、大腸がん患者は抗がん剤に平行してターメリックカレーを食べることは有益だろう。

余命延長の質と抗がん剤副作用

「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(幻冬舎新書)の著者であり、医師である中村仁一氏は、「大往生したければ医療と深く関わるな」「がんで死ぬのがもっともよい」と主張する。

京都の社会福祉法人老人ホーム「同和園」の常勤医を務めながら、数百例のお年寄りの自然死を見送った経験からの氏独特の意見だ。ここには、日本の老人医療の問題点と 各自が持つべき死生観が凝縮されている。

「医者が「大往生したかったら医療に深く関わるな」と発現すると、皆から いぶかられる。しかし、病院では、年寄りが 苦痛の果てに死んでいる現実があると。もしも、病院に行かなければ、もしも、医療が濃厚に介入しなかったら。きっと穏やかな死を迎えていたはずなのに 。
病気やケガを治すのは、基本的には、人間が生来持っている「自然治癒力」。医者はそれを助ける「お助けマン」、薬は「お助け物質」に過ぎないと。医療は年老いたものを若返らすこともできなければ、死を防ぐこともできない。生物は当たり前に「老いと死」には無力なのだ。
たとえばがん。「がん」とは すなわち「老化」。研究者によって大小はあるが人間は毎日5000個ぐらい細胞ががん化している。しかし、身体に自然に備わっている免疫の力でがん細胞を退治しているのでがんが発病しないだけだ。ただ、年をとると免疫力が自然と衰えるために、年寄りはがんになる。当たり前のことで、驚くことではない。
がんの予防には「がんに ならないようにする」一次予防と、「がんを早く見つける」二次予防がある。二次予防には「早過ぎる死」を防ぐという目的もある。しかし、繁殖を終え、生きものとしての"賞味期限"の切れた年寄りにとっては、最早「早すぎる死」というものは存在しないはずと笑いながら断ずる。
まだ成すべきライフワークが残っている年寄りは別として、普通の年寄りに「がん検診」は意味が無いと言えるだろう。鮭は産卵後間なしに息絶え、一年草は種を宿すと枯れ、つまりは、繁殖を終えたら死ぬ、という自然界の“掟”は、人間にも当てはまると説く。
"がんは強烈に痛むもの"と一般には理解されており、ホスピスの調査でもがんで痛むのは7割程度。逆の視点では、3割はがんでも痛まないのだ。つまり3人に1人はがんでも痛まない最後を迎えられる。
老人ホームでの実例としては、食が細り、顔色が悪くなってやせてきたので、病院で検査したら手の施しようがない「末期がん」と診断されとされた患者が、そのまま何もしない選択をしたが、最後まで痛まずに往生した。
少なくとも発見時に痛みのない手遅れのがんは最後まで痛まないということは確実に言える。
塊になるがん(固形がん=胃がん・肺がん・大腸がんなど)は抗がん剤を使っても、多少小さくなることはあっても、消滅することは無い。しかし、抗がん剤はいわば"猛毒"なので、正常な身体の組織や細胞に甚大な被害を与え、ヨレヨレの状態になり、QOL(生の質)を激しく貶める。
"繁殖"を終えたら、抗がん剤は使わない方がいい。延命効果はなくとも必ず縮命効果はあるのが抗がん剤。数ヶ月の延命が、果たしてどういう状態の延命と”生”となるのがを考えるべき。青息吐息のヨレヨレの状態で生きることに意味のある人間は少ない。長生きするつもりが、苦しんだ末に命が短くなっているがん患者が多いのだ。
「がんで死ぬんじゃないよ、がんの治療で死ぬんだよ」と。

中村医師の言には、確かに一理あるだろう。

生物としての生死の摂理と抗がん剤の功罪は熟考にも余りある。たしかに「がんの余命延長」と引換に がん患者のほぼ全員が直面する痛みと辛さは、その時間と質を考えざるをえない。家族のエゴと言われる場合さえあるかもしれない。

しかし、それでも人類はがんを克服するべく研究を重ねている。副作用の少ない、がんを完治する新薬は、遠からず開発されるはず。そまでの数年間~数十年間は、生への"業"の深さと、達観した死の受け入れとの天秤に、個々人の人生観が問われるのだ。

ただ、がん回復への渇望を誰しもが持ち続けることには変わりない。

がん利用方針の選択する際の参考にはなるだろう。

2012年5月7日月曜日

胆管がん遺伝子解析から特効薬/新薬へ

胆管がんは、全世界の肝臓がんの10~25%を占めており、命の危険があるがんの一種である。

この胆管がんは、特にアジアでは肝吸虫感染が原因で罹患する確率が高い。肝吸虫が感染しているコイやフナを食することで、人間に感染することが判っている。

肝吸虫が原因とみられる胆管がんに関して、DNAの解読が完了された。選ばれた15個の遺伝子に関して、46症例でスクリーニングを行い、がん発病と関連する遺伝子変異の出現率が調べられた。その結果、がんとの関連が知られている数個の遺伝子の体細胞変異が同定され、さらには、胆管がんにおける変異に関与すると考えられる10個の遺伝子が新たに同定された。

がん発病遺伝子が特定されることは、そのがんの特効薬となりうる分子標的薬の開発へ繋がる研究成果だ。

胆管がんへの新薬開発に期待が高まる。

2012年5月2日水曜日

肺がんの最新治療法を承認

非小細胞肺癌に対する重粒子線1回照射による治療が、「先進医療」として承認されたことから、保険診療との混合診療が認められることになった。

非小細胞肺癌に対する重粒子線1回照射は、放射線医学総合研究所 重粒子医科学センターで約9年間の臨床試験で実績を上げている。そして、ついに3月16日の重粒子線治療ネットワーク会議にて先進医療への移行が認められたのだ。

日本での肺がんのがん死亡者数は年々増加し、 1998年に胃がんを抜いて1位となった。肺がんの既存治療は、手術や、抗がん剤や放射線照射の組合せで行われており、早期の肺がんならば、ピンポイントの放射線治療は手術と同程度の成績が得られる。

重粒子線は放射線の一種であり、体の中の一定の深さで線量が最も強くなるようにコントロールできるのだ。さらに、集中性も優れているので、体外からの照射でも、体の表面や正常組織への影響を最小限で、深部のがん病巣だけに集中的に照射できる。

「日帰りの肺がん治療」が実現することになり、さらにその5年生存率が70%にまで高められている。

肺がん患者の肉体的・経済的負担の軽減と早期社会復帰が実現するだろう。

大腸がんの予防/治療に効果のある新薬

大腸がん発症後のがん治療にアスピリンの効果が示唆された。

アスピリンと非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の大腸がん予防効果は知られているが,大腸がん診断後のアスピリン使用により死亡率が改善したことを発表した。

オランダのライデン大学医療センターが、一般人口ベースのがん登録データを用いた大規模な観察研究を実施し、 大腸がん(結腸がん)の診断後の補助療法としてのアスピリン効果に可能性を示唆された。

なお、治療効果は、結腸がんのみで確認され,非使用者と比べ死亡率は35%低かった。