2012年1月31日火曜日

バイオ後発薬の抗がん剤へ50億円

バイオ開発で積極投資 富山の後発薬メーカー

富山県の後発医薬品メーカーが、バイオ後発薬の開発で積極投資に動いている。陽進堂(富山市)は30日までに、周辺整備を含め、約50億円を投じ、バイオ技術の研究施設などを新設することを決めた。同市に生産拠点を置く富士製薬工業(東京)は不妊治療薬を開発する。バイオ後発薬は世界的な需要拡大が見込まれ、各社が収益源の確保に向けて先陣を争っている。

 陽進堂が研究施設を設けるのは、富山市の本社工場内にある第2製剤棟1、2階。今夏に着工してバイオ医薬品の精製や無菌製剤技術などの基礎研究を行う設備を導入、2014年の完成を予定する。投資額は約15億円を見込む。

 このほか、約30億円で本社敷地内に第2研究棟、第5製剤棟の計2棟を新設し、従来の後発医薬品の生産品目拡大も進める。

 同社はバイオ分野で東京工大、横浜市立大と共同し、がん細胞など変異細胞の発生を抑える新薬研究にも着手している。この研究で培った技術を元に提携先を探し、バイオ後発薬の早期投入を目指す方針だ。下村健三社長は「他社と差別化できるものづくりのため、技術を蓄積する」と話している。

 富士製薬工業は、不妊治療に使用される排卵誘発剤の開発に乗り出す。新薬の「フォリスチム」か「ゴナールエフ」の後発品となる。同社は昨年12月、バイオ後発薬として、 抗がん剤治療の副作用で減った白血球を増やす「造血剤」の製造販売承認を申請したばかり。今後も得意分野であるがん、女性医療の分野に集中投資していく。

 後発薬メーカー各社が開発を急ぐ背景には新薬メーカーの収益の柱が、既に従来の化学合成でつくった低分子品からバイオへシフトしていることがある。今後、大きな売り上げがある新薬の特許が切れた際、その後発品を開発して新たな収益を取り込むには、バイオのノウハウが不可欠になるという。

 リウマチ治療薬を開発する日医工(富山市)は「低分子の大型製品の特許切れはもう数年で途切れる。世界の市場でバイオのウエートが大きくなっており、成長のためには無視はできない」(担当者)とする。

 ただ、バイオの開発には課題もある。開発費用は1品目約30億円とも言われ、従来の低分子品の数十倍はかかる。また、生物由来で新薬と全く同じ薬効を再現するのは難しいため、市場投入には新薬並みの臨床試験を行う必要もある。

 このため、日医工は仏製薬大手のサノフィ・アベンティスとバイオ後発薬を共同開発し、費用負担を軽減する計画だ。近く臨床試験を始める。富士製薬工業も造血剤の開発では新薬メーカーの持田製薬と組み、臨床試験のノウハウで協力を得た。技術、資金面でのハードルを越え、成長分野にいち早く参入することが後発薬各社の将来を左右しそうだ。

2012年1月30日 富山新聞

2012年1月30日月曜日

肺がん生存率の新予測法

肺がんの5年生存率、ぴたりと当てる新たな検査法


肺がん患者の生存率予測に関する米国と中国の臨床試験で、遺伝子に基づいて予測する新たな検査法のほうが、従来の方法よりも予測精度が高かったとする論文が、27日の英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」に発表された。特に、喫煙によって引き起こされる非扁平上皮非小細胞肺がんの予測に優れているという。

肺がんはがんの中で致死率が最も高く、年間死者数140万人は乳がん、大腸がん、前立腺がんの死者数を合わせた数をも上回る。
 現在、早期肺がんはがんの大きさ、場所、顕微鏡データで分類される。米国では、がん患者のうち最も初期のステージで検出される割合は30%程度に過ぎず、ステージ1で検出された患者の35~45%が5年以内に死亡している。
■アルゴリズムを作成

 今回米国で臨床試験が行われた生存率予測法は、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California in San Francisco)が考案し、カリフォルニア州のピンポイント・ジェノミクス(Pinpoint Genomics)社が開発した。

 まず、同大病院に入院している肺がん患者361人で、がん組織内の遺伝子14個の活動を測定し、これを基に、死亡リスクが「低」「中」「高」のいずれなのかを計算するためのアルゴリズムを作成した。なお、361人は全員、非扁平上皮非小細胞肺がんの手術を受けていた。
 次に、同じ種類の肺がんのステージ1の患者433人にこのアルゴリズムを適用し、5年間生存率を追跡したところ、死亡リスクの「低」「中」「高」が正確に予測できていた。
 同大のDavid Jablons教授は、「早期がんが検出できないという従来の問題は、この予測方法で解決できるだろう。毎年数十万人の患者が延命できるようになるかもしれない」と述べた。
 なお、中国で行われた同様の研究でも、同じ結果が確認されているという。


2012年01月29日 AFP

アレルギーでがん転移を抑制

アレルギー起こしがん抑制 「もろ刃の剣」細胞作用 富山大グループが発見

肺に多く存在する細胞が、アレルギー発症の原因となるタンパク質の一種を恒常的に生産する一方、がんの転移を抑える働きをすることを富山大大学院医学薬学研究部などの研究グループがマウスによる実験で突き止め、30日までに米免疫学会の医学誌に掲載された。人体にとって「もろ刃の剣」となるこの細胞のメカニズムを解明、調整できれば「アレルギーだけでなく、がん治療につなげることが期待できる」(高津聖志・富山大客員教授)としている。


 研究グループはマウスを使って調べた結果、免疫にかかわるリンパ球の一種「T細胞」とは別に、好酸球を活性化させるタンパク質の一種「インターロイキン5(IL5)」をより多く生み出す「原始IL5産生細胞」が肺や腸に存在することを確認。必要に応じてこの細胞の活動を抑える方法が見つかれば、アレルギー治療法の開発にもつながるという。


2012年1月30日 産経ニュース 

2012年1月27日金曜日

がん予防、がん治療に運動が有効な理由

運動が健康的である理由の手がかり得る-マウス研究

運動による健康上のベネフィット(便益)の一部を誘発する筋肉細胞内の蛋白(たんぱく)が、マウスを用いた新しい研究で同定された。この蛋白は、ギリシャのメッセンジャーの女神、イーリスにちなみ“イリシン(irisin)”として知られ、化学伝達物質として作用し、最終的に糖尿病や肥満、おそらく癌(がん)の新たな治療法の開発に使用される可能性がある。

米ダナファーバー癌研究所/ハーバード大学医学部(ボストン)細胞生物学教授のBruce Spiegelman氏は、「フィールドでは、運動が体内の様々な組織に‘話しかける’という印象があったが、問題はどのように話しかけるかということであった」と述べている。同氏らによれば、運動によりイリシンレベルは上昇するという。

米国立衛生研究所(NIH)の資金援助を受けて実施された今回の研究では、イリシンが、余分なカロリーを蓄えて肥満の原因となる皮下の白色脂肪の沈着に“強い影響”を及ぼすことが判明。肥満で糖尿病前症状態の運動をしないマウスにイリシンを注射すると、この蛋白は白色脂肪を、運動のみの場合よりもカロリーを燃焼させる“良い”褐色脂肪に変える遺伝子を活性化した。ただし、イリシンは筋肉を作らないため運動に代わるものではないという。

また、イリシンは高脂肪食を与えたマウスの耐糖能を改善し、10日間の投与後、マウスの血糖コントロールとインスリンレベルは改善し、糖尿病の発症が予防され、過剰な体重の減少に有用であった。同氏らは、イリシンをベースとした薬剤について2年以内にヒトを対象とした臨床試験を行う準備が整う可能性があるとしている。研究結果は、英科学誌「Nature(ネイチャー)」オンライン版に1月11日掲載された。

2012年1月11日 HealthDay News

2012年1月26日木曜日

がんの進行リスクを65%減少させる治療薬


治療薬なかった膵神経内分泌腫瘍の標準薬としてアフィニトールに期待

九州大学病態制御内科の伊藤鉄英准教授は1月25日、ノバルティスファーマが開いたミディセミナーで講演し、国内で膵神経内分泌腫瘍(pNET)治療薬と して初めて適応を取得したアフィニトールについて、「進行性膵内分泌腫瘍の患者を対象にした過去最大規模のフェーズ3試験(国際共同治験)で、がんの進行リスクを65%低下させた。有害事象も非常に少ない薬剤」と述べ、今後日本で標準治療薬になりえるとの期待を示した。

同剤は10年4月に転移性腎細胞がんの治療薬としてノバルティスが発 売したmTOR阻害剤。昨年11月に追加適応を取得した進行性膵内分泌腫瘍では国内初。伊藤氏によると、アフィニトールのpNET患者を対象にした国際共 同治験(フェーズ3)では、同剤とベスト・サポーティブ・ケア群と、プラセボとベスト・サポーティブ・ケア群と比較した場合の有効性と安全性を検証した結 果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値を4.6カ月から11.0カ月に延長し、がんの進行リスクを65%減少させることが実証された。日本人(治験に40人参加)のみを対象としたサブ解析の結果では、PFSはプラセボ群+ベスト・サポーティブ・ケア群の2.83カ月に対し、アフィニトール+ベスト・サポーティブ・ケア群は19.45カ月と、さらに大きな有意差が出た。

有害事象は「減量や投与中止につながるグレード3/4が少なく、扱いやすい薬」とされるが、日本人における全グレードでみると、皮疹(87.0%)、口内 炎(73.9%)、感染症(65.2%)、爪の障害(52.2%)、鼻出血(43.5%)、間質性肺炎(43.5%)などの発現頻度が高い。特に、同剤は 間質性肺炎や感染症については注意が必要となる。間質性肺炎に関しては高熱や空咳が続く場合は、聴診や超音波などで調べるなどして、治療する医師が呼吸器 内科の専門医などと連携し適正に使用する必要があるほか、同剤は免疫抑制剤のため結核の既往歴がある患者では顕著化する可能性があり注意が必要だ。

pNETは消化器がんのなかでも予後が悪いがんで、国内で受療している推定患者数は年間3000人弱だが、 73年から03年までの30年間で発症率が約2倍に増えているという。最近では米アップル社の元CEOのスティーブ・ジョブズ氏が罹患していたことでも知 られる。発生頻度が稀で診断までに時間のかかるケースが多く、64%は診断時に手術ができない、または遠隔転移している。切除不能の遠隔転移のある pNETはNET(神経内分泌腫瘍、膵臓、消化器、呼吸器など様々な臓器に発生)の中でも予後が悪く、平均生存期間は20~22カ月という報告もある。国 内ではこれまで治療ガイドラインがなかったが、現在作成中という。

2012年1月26日 ミクスONLINE

2012年1月25日水曜日

がん治療薬の「後発薬」に特化

「後発薬」というのは、同じ効果効能を持った安い薬のこと。 先発企業の特許が切れるために、他社が安く同じ成分を作れることから安くなる。 「ジェネリック薬」とも呼ばれる。

がん治療は総力戦。無駄なお金を使わず、同じ治療ならなるべく安く済ませることが、その後の先進医療=高額医療の可否に繋がる可能性もある。

「後発薬」を積極的に利用すること、少しでも安く治療することを、がん患者だけでなく、医師も意識して欲しいものだ。

後発薬抗がん剤、ヤクルトが強化
 ヤクルト本社は後発薬事業を強化する。2014年3月期までに医薬情報担当者(MR)を現在より約2割多い220人体制にするなどで営業体制を強化。後 発薬での抗がん剤の取り扱いも増やし、20年3月期には後発薬の売上高を200億円と、12年3月期見込みの約5倍に引き上げる。
 同社は新薬の開発・販売ではがん治療薬に特化しているが、後発薬でも同分野に力を入れている。現在は膵臓(すいぞう)がん治療薬や、主力の大腸がん治療 薬と併用する抗がん剤の助剤など後発薬3種類を販売している。今後は白血病など血液がんの治療薬や、経口剤も取り扱う。将来的には副作用が少ないとされる バイオ医薬品の後発薬にも品ぞろえを広げる。
 ヤクルト本社は12年3月期に後発薬の売上高が40億~50億円になるもよう。抗がん剤の分野では医療機関の評価も高く、MRの増員などを通じて新薬の営業で築いた販路を生かしながら後発薬も拡販する。
 国内の後発薬市場は10年度で約8500億円。市場規模は06年度比で約2倍に拡大したが、イスラエルの後発薬世界最大手が国内企業を買収し、競争も激化している。

2011年1月25日 日本経済新聞

2012年1月24日火曜日

白血病治療薬を止める臨床試験


 “血液のがん”で最先端の治療を提供

がん・感染症センター都立駒込病院  「血液のがん」は、血液中の白血球ががん化して異常に増える急性白血病が代表格だが、最初はほとんど自覚症状がない慢性白血病、高齢者に多い骨髄異形症候群などさまざまなものがある。
 そんな血液のがんに対して、がんを狙い撃ちにする分子標的薬の登場や、新たな血液を作り出すための骨髄液や末梢血、臍帯(さいたい)血を用いた移植法など医学は確実に進歩し続けている。その最先端の治療を行っているのが、がん・感染症センター都立駒込病院血液内科だ。
 移植では、強力な放射線化学療法や移植特有の合併症に対応するため、循環器、消化器、呼吸器、腎臓内科、歯科などの臨床各科ばかりでなく、臨床心理士、歯科衛生士や薬剤師などの連携によるチーム医療を実現しているのも強み。
 「移植医療では総合力が不可欠です。移植体制を万全なものに整え、新薬の登場によってこれまで移植の難しかった症例でも行えるようになり、治療の選択肢は増えているといえます」
 こう話す同科の坂巻壽副院長(63)が、現在、最も力を入れているのは「慢性骨髄性白血病」と「骨髄異形成症候群」の新薬の研究である。慢性骨髄性白血 病では、かつて急性白血病に転化してしまうと、抗がん剤治療は困難を極めた。ところが、2001年に登場した分子標的薬「イマチニブ」は慢性骨髄性白血病の治療法を根本から変え、2009年には新たに2つの薬も登場。それらの薬によって、慢性骨髄性白血病そのものが飲み薬で治る可能性も出てきたという。
 「分子標的薬はこれまで、飲み続けなければいけないとされてきましたが、2010年秋にフランスで『イマチニブ』がよく効く患者さんで薬の服用をやめる臨床試験を行ったところ、約4割の患者さんが治ったと報告されました。新たな分子標的薬の効果も高いので、飲み薬だけで治る症例が増えることを期待しています」(坂巻副院長)
 一方、高齢の男性が発症しやすい骨髄異形症候群でも、2010年1月に「アザシチジン」という分子標的薬が承認された。この場合は、薬だけで病気を治すというのではなく、移植治療への懸け橋となる。これまで状態が悪く移植が適用されなかった人も、新薬の登場で移植が可能になるケースが増えるそうだ。
 「『アザシチジン』に関しては、薬の効果を科学的に検証中です。骨髄異形症候群の患者さんには移植しか治る手立てがないだけに、より多くの人が移植の適 用になれるようにしたい」と坂巻副院長。夢は「将来、飲み薬だけで血液のがんを治すこと」。現在、さまざまな新薬が登場しているとはいえ、最大の武器が 「移植」であることに変わりはない。その現状を打破するために、今も力を注ぎ続けている。(安達純子)
<データ>2011年実績
☆急性白血病患者数154人
☆慢性白血病患者数46人
☆骨髄異形成症候群患者数59人
☆多発性骨髄種患者数41人
☆移植82件
☆病院病床数906床
〔住所〕〒113-8677東京都文京区本駒込3の18の22
 (電)03・3823・2101

2012年1月8日 zakzak