2011年10月5日水曜日

第4のがん治療の治療効果を検証

第4のがん治療、ノーベル賞を追い風に 石川県内関係者、普及へ期待

 3日発表されたノーベル医学生理学賞で「樹状細胞」の発見が授与理由の一つに挙がったことで、同細胞を使ったがんの 最先端医療に携わる石川県内の医療関係者から「普及に向けた大きな一歩」と期待する声が上がっている。金沢先進医学センターでは、金大と連携して患者の治 療効果や検査データの解析研究が進行中。技術面や患者の費用負担など多くの課題があるが、治療機会が増えるよう着実に研究を進める構えだ。

 樹状細胞を使ったがん治療は、手術、放射線、化学療法に続く「第4の治療法」と呼ばれる免疫細胞療法に分類される。がん細胞の目印の情報を持つ「司令官」役の樹状細胞を増やし、がん細胞への攻撃を強化する。

 金大附属病院敷地内にある金沢先進医学センターでは、昨年9月から樹状細胞療法を含む免疫細胞療法を開始し、これまで160人を超える患者を治療してきた。

 「国内ではまだ評価が定まっていない免疫細胞療法が一般化するための大きな一歩になる」。樹状細胞発見者のノーベル賞受賞について、同センターの和田道彦個別化医療センター長は、先端医療に対する理解が深まるきっかけになると指摘する。

 現在、免疫細胞療法は公的保険が適用されておらず、患者は費用を全額負担する必要があるなど、ハードルは高い。同センターはこれまでに、50人以上に樹状細胞を使ったがん治療を行っており、同時に治療効果の検証も進める。

 金大でも、01年以来、樹状細胞療法の臨床試験が30例程度行われてきた。07年には樹状細胞療法を応用すれば肝臓がんの再発を抑える力が高まることを金子周一教授らの研究チームが突き止めている。

 今春、附属病院内に整備された「トランスレーショナルリサーチセンター」でも樹状細胞療法の研究が進められる計画で、副センター長の水腰英四郎講師は、「今後の臨床応用への期待も込められていると思う。研究の励みとしたい」と話した。

2011年10月5日 北國新聞