2012年4月3日火曜日

がん治療分子標的薬の前日対応

がん治療に用いられる分子標的薬とは、従来の抗がん剤のように正常細胞にも打撃を与えることで脱毛や吐き気などの副作用を起さず、 がん細胞に特有の分子をピンポイント攻撃することで、がん細胞の成長を止めたり、殺したりする。特定の分子を狙うため、がん細胞の遺伝子のタイプによって効果の有無が違う。

分子標的薬は、がん細胞を増やしたり、がん組織に血管を引き込んだりする特有の分子(主にタンパク質)の機能を止めて、がんの成長を抑える。大腸がんの治療では、がん増殖に関わるタンパク質の働きを抑える分子標的薬が、四年前から複数登場。手術が難しいがんや再発がんの治療に使われ、生存期間の延長に著しい効果が得られている。

がん細胞だけ狙って攻撃する新しいがん治療薬「分子標的薬」は、大腸がんや肺がんなどのがん患者への治療効果が極めて高く、新薬も相次いで登場している。
しかし、分子標的薬は、まだ発展途上であることから、皮膚細胞など正常な細胞も一部攻撃してしまうことへの周知が浅い。分子標的薬特有の副作用が出やすい薬も複数あり、対策が課題になりつつある。

分子標的薬の標的となるタンパク質が皮膚や爪を作る細胞にも存在するために、これらの細胞も同時に薬の打撃を受け、副作用が皮膚などに炎症として出るのだ。腎臓がんや肝臓がんの薬ネクサバールは、手足の皮膚が腫れて痛む「手足症候群」が出やすい。また、慢性骨髄性白血病の薬グリベックは、かゆみを伴う赤い発疹が出やすい。

分子標的薬の副作用で最も多いのは、顔などに出るにきびのような発疹。新しい皮膚がうまく作れないため皮膚が薄くなって乾燥し、かゆみがひどくなったり、指先が割れて痛んだりする。酷い場合には、手足の爪の周りが腫れ、靴を履くことや手仕事が難しくなる場合もある。

皮膚障害の治療法はほぼ確立されているので、早めに正しい処置で対処することで治療を継続できる。にきびのような発疹には炎症を抑える効果を期待してミノサイクリンなどの内服抗生剤やステロイドの塗り薬を使う。適切な薬や保湿剤を使ったスキンケアに努め、日焼け止めや、炎症を抑えるステロイド薬を塗ることで、皮膚障害の重症例の発生が大幅に減るのだ。爪の周囲に炎症が起きた場合には、皮膚科医によるテーピングで痛みを和らげられる。また、足が腫れて痛みのある場合には、履物選びでも症状が改善し、がん患者の生活の質が大幅に上がることもある。
最も重要なのは、症状が出てから対応するより、分子標的薬を投与する前日から内服抗生剤を飲むことだ。

「分子標的薬は、皮膚障害が強いほど生存期間が長い」との研究報告が複数ある。副作用を抑えることで、がん治癒に対する抗がん剤の効果を少しでも享受するのだ。