2011年7月28日木曜日

良性卵巣嚢腫の経過観察中にがん化

卵巣嚢(のう)腫 良性でも定期的に検査を

「沈黙の臓器」とも称される卵巣。腫瘍(しゅよう)ができても、ある程度の大きさになるまで自覚症状はほとんどない。腫瘍の多くは良性である確率が高く、うち最も多いのが「卵巣嚢腫(のうしゅ)」という。妊娠、出産の経験がない若い女性が発症することもあり良性だからといって放っておくと悪化する恐れもある。

卵巣は子宮の両側に1つずつあり、1つの大きさは2~3センチほど。卵巣嚢腫は、その卵巣の一部にできた袋状の腫瘍内に液体や脂肪などがたまった状態を言う。個人差はあるが、卵巣がこぶし大以上の大きさになると、下腹部が膨らんだり、違和感を感じたりすることもある。

「一般的には症状がないので、検診などで偶然見つかる人が多い病気です。嚢腫の部分がねじれたり破裂したりして急激な腹痛や吐き気に襲われ、そこで初め て発症していることを知る人もいます」と、四谷メディカルキューブ(東京都千代田区)の子安保喜ウィメンズセンター長は話す。

卵巣嚢腫は、その腫瘍内にたまった内容物によって、主に三つの種類に分けられる。さらさらとした水のような液体がたまる「漿(しょう)液性嚢胞(のうほ う)」、どろっとした粘り気のある液体がたまる「粘液性嚢胞」、髪の毛や歯、軟骨などがたまることもある「皮様嚢腫」だ。

このほか、卵巣にできた子宮内膜症が出血を含んで腫れた「子宮内膜症性嚢胞(別名・チョコレート嚢胞)」があり、これは不妊症の一因とも言われている。

嚢腫が見つかる年代は10代~高齢者と幅広く、その原因は分かっていない。放っておくと巨大化することもある。また悪性の可能性を否定するためにも、通 常5センチ以上の大きさになると手術で治療し、組織学的な確定診断を行う。子安さんは「卵巣嚢腫と診断されたら、早めに画像診断や腫瘍マーカーの採血をし て、嚢腫の種類や悪性腫瘍の可能性などを診てもらうことが大切です」と話す。

卵巣は絶えず細胞分裂を繰り返しており、その過程で悪性に転化する危険性がある。東京逓信病院婦人科の秦宏樹部長は「良性の卵巣嚢腫ががん化する確率は決して低くはありません」と指摘する。

秦さんによると、2005年から10年までの5年間に同病院婦人科が新規に治療した卵巣がん患者は40人。うち6人が良性卵巣嚢腫の経過観察中だった。特に、チョコレート嚢胞に卵巣がんが発生する頻度が高く、たとえ卵巣嚢腫で良性と診断されても、定期的な観察は必要だという。

腫瘍自体は超音波検査で簡単に発見できる。秦さんは「かかりつけ医などで超音波検査を受ける機会があれば、ついでに下腹部全体を見てもらって、早期発見につなげてほしい」と話す。

2011年7月28日 朝日新聞