2012年2月29日水曜日

末期すい臓がんの進行を止める新薬

進行すい臓がんに初の治療薬

国際治験で効果を証明
膵臓がんには多くの種類がある。
膵臓がんの80%以上は膵液を運ぶ膵管の細胞から発生する膵管がんである。しかし、1%程度しか発生しない「膵神経内分泌腫瘍(pNET)」というすい臓がんがある。このpNETというすい臓がんに罹ったのが、米アップルのCEOで昨年10月に亡くなったスティーブ・ジョブズ氏だった。
 膵臓は、胃や肝臓など多くの臓器に囲まれているため、がんが発生しても見つけるのが非常に難しい。そのため発見時には既に末期がんとなって手遅れというケースが多いことから、すい臓がんは難治がんの代表とされるのだ。
すい臓がんの治療は手術が基本だが、がんが進行していると完全な切除ができず、もはや治療の選択肢は無いというのがこれまでのすい臓がん治療の実情だった。しかし、期待の新薬「エベロリムス」で治療環境は好転している。
 エベロリムスは、がん細胞だけを攻撃して正常細胞へのダメージを少なくする「分子標的薬」の一種だ。がんの増殖や成長、血管新生にかかわる「mTOR」というタンパクの働きを選択的に妨げるのが薬効。既に「根治切除不能または転移性の腎細胞がん」に対する治療薬として日本でも10年4月から使われており、すい臓がんpNETの効果効能は追加承認となった。
日本人の膵臓がんに占めるpNETの割合はわずか1.1%で、増加傾向にあるものの国内で治療を受ける患者は年間3千人前後しかいない。これまでこのpNETというすい臓がんに対する治療薬が無かったが、「エベロリムス」(成分名)が初めて2011年12月に承認されたのだ。副作用としては、皮疹や口内炎、感染症、爪の障害、鼻出血、間質性肺炎などがあるが、すい臓がん治療への効果は大きい。
エベロリムスはがんの進行リスクも65%も減少させるされている。さらに、日本人に限ると、「がんが悪化しない期間」を19.45カ月も延長するとされている。つまり2年以上の末期のすい臓がんでさえも2年近い延命が期待できるのだ。実際に治験参加者の中には、すい臓がん発見時に多発肝転移、リンパ節転移、骨転移から切除手術不能=末期がんを宣告されたがん患者だったが、4年近くまだまだご健勝なのである。