2011年5月16日月曜日

最先端がん治療設備

最先端がん治療を導入 南和歌山医療センター

和歌山県田辺市たきない町の南和歌山医療センターは、県内で初めて最先端のがんの外部放射線治療を導入した。効果が高く、副作用の危険性が少ないという。辻孝外来診療部長(放射線科)は「がん治療の強力な武器になる。地元の人の利便性も高まると思う」と話している。

放射線治療は、体にメスを入れず、腫瘍部分に放射線を当てることで治療する方法。これまでの技術では、腫瘍だけでなく、その近くにある正常な臓器にも同じ強さの放射線が当たり、副作用の心配が大きかった。そのため、腫瘍への放射線量も抑えられ、十分な治療が難しいという面があった。今回導入した「強度変調放射線治療(IMRT)」では、コンピューター計算し、例え複雑な形の腫瘍であっても、多方向からの放射線量に細かい強弱をつけることで、正常な臓器に当たる放射線量を減らし、高い精度で腫瘍に集中して当てることができる。それにより、副作用の危険性も低下するという。

ただ、IMRTは煩雑な作業が必要になる。患者1人ずつ計算し、実際その通りに、放射線が当たるかを検証するため、患者1人受け入れるためには準備に1週間程度かかるという。装置や周辺機器が高価なことや、高度な技術が必要なことから県内での導入はなかった。IMRTを受けるには、大阪の病院まで行くしかなかったという。

南和歌山医療センターは2009年3月に、IMRTが可能な新装置を導入。放射線治療を進めながら技術を習得、今年2月からIMRTでの患者治療を開始した。中でも直腸やぼうこうなどの臓器が接している前立腺がんなどに多く使われており、同センターでもこれまで前立腺がん患者ばかり10人以上を受け入れた。辻部長は「がんは10年以上経過を見ないと分からないが、高い確率で完治するはず」と話している。

同センターは厚生労働省に「がん診療連携拠点病院」に指定されている。

2011年05月14日 紀伊民報