2011年8月5日金曜日

肺、肝臓転移の大腸がんから回復

がん患者 鳥越俊太郎著 臨場感ある克明な治療記録

日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人が命を落とす。この事実を知れば、がんはとても人ごとだとは思えない。

著者であるジャーナリスト鳥越俊太郎さんの大腸がんは「ステージ4」だった。ちなみにがんのステージは進行度合によって1から4まであり、手術の結果、「最悪」だったことがわかる。

がんは肺や肝臓にも転移し、著者はこれまで4回の手術を受けている。ステージ4の5年生存率(最後の手術から数えて5年)はわずか10%程度。まさしく「がんと向き合う日々」である。

本書が他の“がん本”と一線を画すのは、がんの前触れに始まり、検査、告知、手術、抗がん剤治療、転移の実態までジャーナリストの視点から克明に、そして客観的に描かれている点にある。著者は取材者としての武器を「好奇心と集中力」と自己分析するが、それが遺憾なく発揮されている。

余談だが著者が手術を受けた病院で学生時代、私は半年ほど看護助手のバイトをしたことがある。臨場感を味わいながら読めたのは、そうした理由にも依るだろう。

2011年8月3日 日本経済新聞