2011年8月25日木曜日

放射線腫瘍科の新設

新たに放射線腫瘍科を開設

★東京女子医科大学病院のがん放射線療法

がん治療の3本柱、手術、放射線療法、化学療法は、いずれも近年目 覚ましく進歩している。中でも放射線療法は治療機器の進歩に伴い、腫瘍の部分だけを狙い撃ちにする「定位放射線照射」、照射する個所と強さを自由に変える ことができる「強度変調放射線治療(IMRT)」、小さな針やカプセルを腫瘍部分に刺す、あるいは置いて照射する「小線源治療」など、さまざまな治療法が 登場している。

ただし、それらを行うには高度な技術が不可欠で、臓器や病態などによって使い分けをしなければならない。そんな放射線治療で全国トップクラスの実力を誇るのが、東京女子医科大学病院放射線腫瘍科だ。脳腫瘍や前立腺がん乳がんなどの治療で定評を持つ。

「放射線治療のレベルが向上したことで、病態によっては、手術と放射線の組み合わせではなく、最初から放射線治療のみや化学療法を組み合わせて行う症例 も多い。そういう状況では、以前にも増して、他科との信頼関係の構築による連携が非常に大事になってきます。私たちは、その連携を実現し、患者さんにとっ て最適な治療を提供しているのです」とは、同科の三橋紀夫主任教授(62)。

放射線治療一筋に、最先端の治療法のみならず、腫瘍の性質などの造詣が深い。2001年より現職だが、一昨年5月には、より専門性の高い治療に集中するため、従来の放射線科を画像診断部門と分けて新たに放射線腫瘍科を開設した。

「放射線治療は、ただ患部に放射線を照射すればいいというものではありません。腫瘍の性質を熟知しなければ、きちんとした治療はできないのです。それができる医師を育成するためにも、放射線腫瘍科を画像診断と分ける必要があったのです」(三橋教授)

加えて、放射線治療の進歩で患者にとっても選択肢が増えた。たとえば、前立腺がんのように、IMRTで外部照射、前立腺に針を刺して照射する「高線量率組織内照射」、あるいは、患部に放射性ヨウ素を永久挿入する治療法もあり、どの治療法がいいのか迷う患者もいる。医師は、治療法やがんの性質を理解していないと、患者に最適な治療法は提供できない。以前にも増して放射線腫瘍科の医師の手腕が求められているのだ。

しかし、全国の放射線治療専門医は約900人。国民の2人に1人はがんになるといわれる時代に、専門の医師が少なすぎる。

「すぐに放射線治療医を増やすことは難しい。少数精鋭で私たちは取り組んでいますが、放射線腫瘍科が各大学で広がることを期待しています。また、地域によってセンターを作り、専門性の高い治療を行えるようにしたい」と三橋教授。その夢に向けてまい進中だ。(安達純子)

<データ>2010年実績
☆新規患者数823人(脳/脊髄123人、前立腺192人、乳腺160人、肺59人、頭頸部51人、食道44人など)
☆IMRT治療者数94人
☆前立腺ヨード治療人数48人
☆病院病床数1423床
〔住所〕〒162-8666東京都新宿区河田町8の1
(電)03・3353・8111

2011年8月22日 zakzak