2011年6月14日火曜日

卵巣がん新治療用薬が承認申請へ

アバスチンに卵巣がん抑制効果

世界的なヒット商品「アバスチン」の新たな効能が分かった

スイスの製薬大手ロシュ・ホールディングの世界的ベストセラー薬「アバスチン」が卵巣がんの進行を遅らせ、死亡率を減少させることが2つの研究でわかった。

片方の研究では、化学療法での治療後に卵巣がんが再発した484人に対し、化学療法と、アバスチン併用化学療法のいずれかを実施し比較した。化学療法の場合、腫瘍増大までの中央値は8.4カ月、併用した場合は12.4カ月と増大速度が4カ月遅くなり、腫瘍の縮小程度も併用者の方が良好だった。もう1つの研究では、高リスクの卵巣腫瘍が初めて認められた1528人のうち、半数に化学療法のみを行い、残り半数には化学療法と1年分のアバスチン投与を併用した。28カ月後、化学療法の女性は200人が死亡したが、併用療法の場合は178人だった。下位集団に属する最高リスクの患者を対象とすると、化学療法の死亡者は109人である一方、アバスチン併用者は79人だった。以上のデータは4日、シカゴで行われた米国臨床腫瘍学会で公表された。

今回の結果により、アバスチンの卵巣がんへの適応承認は副作用や費用の面から有益かという議論が再燃した。米食品医薬品局(FDA)は昨年12月、アバスチンの乳がんへの適応承認撤回を勧告したが、ロシュは反論し、来月ヒアリングが開かれることになっている。米ペンシルベニア大学卵巣がん研究センター長は「アバスチンは非常に高価なため、費用と効果は慎重に検討されなければならない」と指摘する。一方、ロシュのアバスチン臨床開発責任者は「今回公表されたデータは、卵巣がん治療用の承認申請に用いられるだろう」と話した。

腫瘍血管新生を抑制することで、がんの増殖を停止させる初の承認薬として2004年に販売が開始されたアバスチンは、結腸直腸、脳、肺、腎臓の腫瘍の治療薬として、昨年は62億ドル(約4995億円)の収益をあげた。

卵巣がんの早期発見は非常に難しく、発見時にはすでに卵巣の外に広がっている。進行がん患者の腫瘍発見時からの平均生存期間は2年半から3年だという。米国がん協会によれば、昨年、2万1880人が卵巣がんと診断され、1万3850人が死亡した。

卵巣がんの女性にとってはよいニュースだ。(アバスチンによって)卵巣がんは慢性疾患以外の何物でもなくなる」と米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター関係者は語った。

2011年6月14日 ブルームバーグ