2011年6月20日月曜日

がんの部位も8割以上の確率で特定

血液で消化器がん検査 金大開発、欧州で事業化

ドイツ企業との事業提携契約について説明する丹野社長=金沢商工会議所
金大が開発し、血液の検査で消化器系のがんにかかっているかどうかが分かる世界初の手法が、欧州全域で事業化される見通しとなった。同大発のバイオベンチャー企業「キュービクス」(金沢市)が19日までに、ドイツの企業と事業提携契約を結んだ。7月から現地で臨床性能試験を実施し、12月にも検診事業が始まる。

この手法は、がんに関係する遺伝子を載せた「DNAチップ」に患者の血液から抽出したRNA(リボ核酸)を垂らし、各遺伝子の反応を解析する仕組み。現在特許出願中で、金大医薬保健研究域医学系の金子周一教授らのグループとキュービクスが共同で研究開発を進めている。

今回契約を結んだのはドイツのバイオベンチャー企業「ZMO社」。ドイツ国内で約200例の臨床試験を実施し、性能を確認した上で欧州各国で検診事業を展開する。キュービクスはDNAチップを輸出するほか、検査・解析の手法を指導する。

日本国内の臨床検査では、がん患者を100%、健常者を87%の確率で識別。胃・大腸、すい臓といったがんの部位も8割以上の確率で特定できた。がんの進行とともに増加する「腫瘍マーカー」を調べる現在の検査と比べて発見率が高く、PET(陽電子断層撮影)などの画像診断よりも手軽に検査できるメリットがあるという。

キュービクスによると、北陸をはじめ日本国内の複数の病院で、検診事業への導入が検討されており、初年度(2012年3月期)は売上高1億5千万円を目指している。丹野博社長は「患者の負担が少なく、より正確な検診が実現できる。事業としてしっかりと軌道に乗せたい」と話した。

2011年6月20日 富山新聞