2011年9月13日火曜日

口腔がんの早期治療

口腔がん早期治療で歯科開業医と連携

★日本大学歯学部付属歯科病院

話をするだけでなく、食べ物を噛んで飲み込む上でも重要な口。顔の表情にも影響を与える器官であり、この口の中にできるがんを「口腔がん」という。口という大切な器官だけに、早期発見であっても、治療は腫瘍部分を切除するというだけでは済まないケースもある。

  がんを取り除くためには、周辺の歯や歯茎、顎、頬なども取り除くことがあるからだ。以前のように食べ物を噛んで飲み込み、スムーズに話し、見た目を変わら なくするなど、「再建」技術も不可欠。そんな口腔がんの診断・治療、そして、再建まで、チーム医療で定評を持つのが日本大学歯学部付属歯科病院口腔外科 だ。歯科インプラント科や、顎顔面補綴(ほてつ)科、摂食機能療法科などとタッグを組み、口腔がんに挑んでいる。

 「人間は、歯や顎の骨 が少しずれただけでも、食べ物を噛めなくなる、あるいは、話しづらくなることがあります。繊細な器官ゆえに、私たちは、がんを取り除くだけでなく、インプ ラント、頬や顎の再建など、専門医の集団によるトータル的な治療を実践しています」とは、副院長を兼務する大木秀郎教授(58)。長年、口腔がんや顎変形 症などの手術をこなすエキスパートである。

 がんは進行した状態で見つかるほど、当然のことながら、治療は難しくなる。口腔がんも同じ だ。しかも、口腔がんは、顎の骨などに悪影響を与えやすい放射線治療は適用しにくい。化学療法も今のところ確かな決め手に欠く現状にある。治療の柱は手術 となり、早期であっても発生する場所によっては高度な技術が求められる。その治療を大木教授は、各分野の専門医とタッグを組んで行っているのだ。

  「最近では、かかりつけの歯科で早期の口腔がんが見つかる患者さんが増えました。開業医の先生が、口腔がんかどうか迷うケースでも、病院ではさまざまな検 査でがんを確定することが可能です。そのため、現在、開業医の先生方との『病診連携』のネットワークを強化しようとしています」(大木教授)

 開業医が迷ったときには、メールで相談できるシステムを構築中という。専門領域の歯科医師や医師が中心となり、メールの相談をクリニックから受けたときに、複数の専門の歯科医師や医師がアドバイスを行う仕組みだ。

 「がんかそうでないのかを見極めることで、患者さんだけでなく、開業医の先生方もスムーズに治療が行われるようになればと思っています」と大木教授。院内のチーム医療を外部にも拡大し、口腔がんの早期発見・早期治療に貢献するため、今も力を注いでいる。(安達純子)

<データ>2010年実績

☆手術総数354件
☆外来手術数115件
☆入院患者数411人
☆病床数24床
〔住所〕〒101-8310東京都千代田区神田駿河台1の8の13 
(電)03・3219・8080

 2011年9月12日 zakzak