ニチオン、患者負担少ない腹腔鏡手術 国立がん研と開発
医療器具製造のニチオン(千葉県船橋市、本田宏志社長)は国立がん研究センターと組み、開腹せずに内視鏡で行う腹腔(ふくくう)鏡手術で患者の体への負
担の少ない手法と器具を開発した。特殊なクリップの付いた糸を使うのが特徴。内視鏡と手術用のはさみの穴以外は、直径1ミリメートル程度の穴で済むとい
う。来年中の実用化と器具の販売を目指す。
通常、腹腔鏡手術では手術をする部分が見やすいように、鉗子(かんし)で内臓を持ち上げたり、押さえたりする。鉗子用の穴を開けるため、内視鏡、手術用のはさみのためのものを含めて、直径3~5ミリメートル程度の穴を4~5個開けることが多いといわれる。
ニチオンとがん研究センターは鉗子の代わりに特殊なクリップの付いた糸を使い内臓を引っ張る手法を考案した。まず内視鏡やはさみの穴を使い、クリップで内臓をつまむ。次に、体外から直径1ミリ程度のはりを刺してクリップの糸をかけて引っ張る。
この手法では直径5ミリメートル程度の穴は内視鏡用とはさみ用の2つで、残りは同1ミリメートルで済む。直径1ミリ程度の穴だと自然にふさがるため、術後に縫う必要はないとされ、「今までの腹腔鏡手術より患者への負担が少なくなる」(ニチオン)。
クリップは血管用クリップなど既存品を改良し、長さ5~10センチの3種類を用意した。内臓を引っ張るため、つかむ力を弱めたほか、鉗子が引っかけやすいように溝を付けた。
今後は動物実験を繰り返し、年内の臨床実験を目指す。操作用の鉗子2本とクリップ数本のセットで60万~70万円程度の販売を検討している。
ニチオンは手術器具の製造のほか、手術器具の洗浄装置の輸入、販売などを行っている。2011年5月期の売上高は約12億円。
2011/9/28