2012年4月26日木曜日

まいたけ健康食品の臨床試験

まいたけ抽出物と血液がん治療薬を組み合わせにより、多種多様な悪性腫瘍(肺がん, 胃がん, 乳がんなどの固形がん)に対する作用効果が検証される。

まいたけ抽出物は、βグルカンを主成分とした健康食品で、株式会社雪国まいたけ がマイタケ・エキス「MDフラクション」として 製造販売している。

「MDフラクション」は10年間以上の基礎研究を経て、 2008年にニューヨークのスローン-ケタリング記念がんセンターで 元 乳がん患者を対象としたP-I/II臨床試験を実施した。

今回の臨床試験は、米国テキサス州ヒューストンの、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター(University of Texas, MD Anderson Cancer Center)で、進行性悪性腫瘍(腫瘍の種類を限定しない)の臨床試験を行う。この臨床試験で確認されるのは、まいたけ抽出物の各種抗がん剤の効能改善と、副作用の軽減作用だ。

具体的には、抗がん剤のアザシチジン(DNAメチル化阻害剤)によってがんマーカーが顕在化したがん細胞に対して、 免疫を制御するレナリドマイドおよび「まいたけ抽出物」による骨髄細胞の分化増殖促進作用が検証される。また、キラーT細胞やナチュラルキラー細胞などの免疫細胞がマーカーを顕在化したがん細胞を攻撃するというエピジェネティック免疫調節作用(epigenetic Immunomodulation)を検証することも目標とされている。

株式会社雪国まいたけ は、日米で製法特許を有する マイタケ抽出物の健康食品「MDフラクション」を提供し、治験結果から 統合医療がん患者への拡販を期待している。

2012年4月25日水曜日

胃がん, 食道がん の最先端治療病院

胃がん、食道がん の生存率を高める病院

 食道がんや胃がんでは、がんが粘膜の下の方まで進行していると、多くの場合、手術の適応になる。臓器の一部あるいは全部を切除し、がんの進行度合いによってはその周辺のリンパ節も取り除く。治療ガイドラインで定められている治療法で広く普及しているものの、新たな検査方法が確立されれば、どこまで切除すべきかが客観的かつ科学的に示され、より正確な治療法が確立されることになる。

 そんな胃がんや食道がんが、最初に転移しやすいのはセンチネルリンパ節という部分。現在、先進医療として、「センチネルリンパ節生検」という検査方法が行われている。

 がん病巣の近くに特殊な色素やラジオアイソトープを注入して、がんが最初にリンパ節に到達するセンチネルリンパ節を同定し、転移の有無を顕微鏡で調べる。この検査は、すでに乳がんやメラノーマ(皮膚がん)に対しては、広く行われている。それを食道がんや胃がんへ応用するために、世界に先駆けて1998年から研究を進めているのが慶應義塾大学病院 一般・消化器外科だ。

慶應義塾大学病院は 先進医療の検査はもちろんのこと、小さな傷口で手術を可能とした腹腔鏡を用いた低侵襲の治療でもパイオニアである。

「胃がんや食道がんに対して、センチネルリンパ節生検を行うと、取り残しや余分な組織の切除を省くことができるなど、さまざまなメリットがあります。ただし、その検査に基づく治療で、本当に従来の手術と同じ生存率を確保できるか。その見極めの研究を行っています」と副病院長と腫瘍センター長を兼務する同科の北川雄光教授(51)は言う。

北川教授は、胸腔鏡・腹腔鏡手術のスペシャリストだ。食道がんや胃がんでも、患者にメリットがあれば胸腔鏡・腹腔鏡による手術を積極的に行っている。また、胃の良性腫瘍の胃GISTや、機能障害の一種・食道アカラシア、逆流性食道炎の手術では、全国に先駆けてヘソのひとつの穴から行う「単孔式腹腔鏡下手術」を導入。熟練した技術とチームワークで、低侵襲で確実に治療できる最先端技術を研究している。

「胃がんや食道がんに単孔式腹腔鏡を応用するには、医療機器の進歩を待たなければなりません。また、将来的には、腹腔鏡下手術と内視鏡の治療を組み合わせることで、臓器の温存がこれまで以上に可能になると思います。しかし、それにもまだ数年かかるでしょう」(北川教授)

腹腔鏡下手術でセンチリンパ節生検を行い、転移が見られなければ、内視鏡による治療で臓器を温存する。それは、これまで内視鏡の治療では、再発するのではないかと考えられた症例に対して、手術によって胃を部分切除するだけでなく、胃を残すという選択肢も広がることになる。

「今後、医療機器などがさらに発達することで、治療方法や検査方法の選択肢は増えるでしょう。しかし、手術で治るがんは再発させてはいけません。それを追求するために取り組むべきことはまだ多い」と北川教授。確実に治るがんを増やすために、今も力を注ぎ続けている。

< 2011年の治療実績 >
☆胃がん治療総数379件
☆胃がん手術件数158件
(内腹腔鏡下手術82件)
☆食道がん治療総数182件
☆食道がん手術件数50件
☆センチネルリンパ節生検64件
☆病院病床数1059床

慶應義塾大学病院
〔住所〕〒160-8582東京都新宿区信濃町35 
(電)03・3353・1211

既存抗がん剤でも 新がん治療法

がん治療へ既存薬を用いた「時間治療」が画期的な効果を上げ注目されている。

「時間治療」とは、がん治療に用いる抗がん剤治療薬を「深夜」に投与するだけの治療方法で、抗がん剤は従来と全く同じ。投与する時間を「深夜」へ変えるだけで、 がん患者の生存期間の延長や、関節リウマチのつらい痛みや腫れがおさまるなどの効果が上がっているのだ。

1.5倍の抗がん剤を深夜に投与してがん縮小

健康診断で肝臓にガンが見つかり、抗がん剤治療を受けていた男性も「時間治療」でがん細胞が収縮した。発見時には、ガンが大き過ぎるために手術は無理とされたが、時間治療を導入している病院に転院し、それまでの抗がん剤の1.5倍の量を深夜に投与された結果、数ヶ月後には がん細胞が収縮したのだ。

関節リウマチに対しても、長年苦しんできた70才の女性が、同じ薬を飲む時間を朝昼2回から"夜寝る前の1回に変更"しただけで痛みの症状が軽減された。

このような病状や症状の改善の背景にあるのは、細胞の中で時計のように働く『時計遺伝子』研究の進歩とされる。

「時間治療」は深夜に実施されるために医療スタッフの確保などの課題があるが、がん患者には試す価値が十分にある新治療法と言えるだろう。

2012年4月24日火曜日

乳がん に抗がん剤新薬が承認

ドイツの独立した医療制度の最高意思決定機関であるドイツ連邦合同委員会(G-BA)が、進行性・転移性乳がんの新薬を承認した。

承認されたのは、エーザイにより創製・開発された抗がん剤「HALAVEN」(一般名:エリブリンメシル酸塩)。

複数の抗がん剤による治療歴のある局所進行性・転移性乳がん患者に対して、追加効能を有していると評価された。

ドイツ連邦合同委員会による評価は、グローバル第III相臨床試験であるEMBRACE試験の結果に基づいたもの。「HALAVEN(ハラベン)」は、単剤のがん化学療法剤として世界で初めて、治験医師が選択した治療法との比較で、統計学的に有意に全生存期間の延長を示したのだ。

局所進行性・転移性乳がんの治療に用いられる抗がん剤新薬として、がん患者の余命延長に寄与するとされた。

2012年4月20日金曜日

前立腺がん, 甲状腺がん に新薬

厚生労働省が がん治療新薬を審議し、下記の抗がん剤を新薬として保険承認を了承した。

前立腺がん新薬: ゴナックス皮下注80mg, 120mg(デガレリクス酢酸塩:アステラス製薬)
「前立腺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。海外55カ国で承認済。
がん細胞の増殖を促す男性ホルモンであるテストステロンの産生を低下させ、腫瘍の増殖を抑える効能。テストステロンの産生に関わるGnRH受容体へのGnRHホルモンの結合を阻害するGnRH受容体拮抗薬である。
4週に1回投与する。

甲状腺がん新薬: タイロゲン筋注用0.9mg(ヒトチロトロピンアルファ遺伝子組換え:佐藤製薬)
「分化型甲状腺がんで甲状腺全摘または準全摘術を施行された遠隔転移を認めない患者における残存甲状腺組織の放射線ヨウ素によるアブレーションの補助」の効能・効果を追加する新効能医薬品。

なお、今回の審議会では、社会問題化しつつあった懸案の「ポリオの不活化ワクチン」も承認を受けた。

2012年4月18日水曜日

がん再発の原因がん細胞を特定

放射線治療後にがんが再発するメカニズムの一端が解明された。

がんは、がん細胞の周囲の血管から酸素の供給を受けることで増殖する。がんが放射線治療後も死なずに再び増殖してしまうのは、血管から少し離れた低酸素環境でも生存できる特定のがん細胞が原因であると断定された。

この特殊な がん細胞は、血管の周囲のがん細胞が放射線で死滅すると、遺伝子が活性化することで血管の方向へ移動することが観察されたのだ。実験では、治療前のがんには17%しか存在しなかった特定がん細胞が、がんの再発時には60%にまで増えていた。この特定がん細胞を阻害剤で移動抑止すると がんは再発しなかったのである。

将来的な新治療法として、この「低酸素がん細胞」に放射線を集中照射する方法などが検討されており、がん再発の防止は実現にまた一歩近づいた。

がん再発メカニズムは、京都大大学院の原田浩講師らの研究グループが解明し、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表された。

効果的なレーザー光線の がん新治療法

レーザー光線で がん細胞を効果的に破壊する「光治療法」が開発中。

光治療法は、がん細胞が42.5度で死滅する性質を利用し、レーザーを浴びると発熱する「光増感剤」を患部に注射してレーザーを照射することでがん細胞を死滅させる新治療法。がん細胞だけを破壊することで、副作用が少ないのが特徴のがん治療法だ。

しかし、従来の光増感剤が水に溶け難いために人体に吸収効率が悪く、治療効果が落ちる問題があった。そこで、亜鉛フタロシアニンの光増感剤を、太さ数十 ナノメートルの極細ナノ構造で製造したところ、水に溶け易く、人体への吸収率も良好にできたのだ。もちろん、新増感剤は光を浴びると発熱する性質も保持しているので、マウス実験ではがん細胞の除去に成功している。

新光増感剤が実用化されればさらに低価格で製造できるため、がんの光治療法の進展が期待されている。

新光増感剤の研究報告は、科学誌『ネイチャー』発行の『NPGアジアマテリアルズ』に掲載された。

肺がん、乳がんの骨転移に新薬

がん細胞の転移などで骨が弱くなる症状を抑える医療用医薬品が発売開始された。

薬品は「ランマーク(一般名デノスマブ)」。4週間に1回の皮下注射で、骨を破壊する がん細胞の働きを抑制する。

ランマークはバイオ医薬品の一種である抗体薬。 肺がん乳がんなどが骨に転移した場合や多発性骨髄腫の患者は骨を壊す細胞の働きが活性化し、骨が弱くなって痛みを感じるなどの症状が起きることがある。新薬はこの痛みを抑制できるのだ。

第一三共製薬とアストラゼネカが共同で販売。

2012年4月16日月曜日

がん遺伝子を機能させない肺がん新薬

核酸抗がん剤を治験へ

副作用が少なく高い治療効果が期待できるがん治療新薬へ期待の高い「核酸医薬品」の新しい製造法が開発された。

核酸医薬品は病気に関連する遺伝子やたんぱく質の構造に合わせて設計、化学合成される。開発されたのは短いRNA(リボ核酸)の合成法で、「RNA干渉」と呼ぶ仕組みで病気の遺伝子を機能しないようにする。合成したRNAはヘアピンのような構造で、1本の鎖状分子を折り畳んだ。従来の製造法では鎖状の分子を多数作り、その中から使えるものを2本選んで絡める工程が必要だった。さらに従来の手法では、目的のRNAを作ることができる割合は15%に満たなかったのに対し、新技術は5倍以上の効率で目的のRNAを製造できるのだ。

また従来のRNAは効果が発揮する前に、体内の消化酵素などに壊されてしまう問題もあったが、改良された。 RNAを補強することで、酵素が働かないようにしたのだ。これによって、病原体から体を守る免疫機構が見つけにくいRNA構造となり、体内での免疫反応による副作用が低減される。

新製造法のRNAはコストも低下し、目的のRNAの製造コストは従来の数十分の1に低減された。

動物実験では、加齢黄斑変性という目の病気でRNAの治療効果が確認された。 肺がんや糖尿病性網膜症の治療薬も、2~3年内には治験が開始される。

2012年4月13日金曜日

発がん成分含有の生薬とは

台湾で人気の植物薬、高いがん発症率との関連

台湾で人気の生薬・植物薬に発ガン物質が含まれていることが、米科学アカデミー(Proceedings of the National Academy of Sciences, PNAS)に発表された。問題の植物は「ウマノスズクサ」で生薬としての人気が高いことから、台湾の尿管がん症例の半数以上に関連しているとされた。

ウマノスズクサは生薬として重宝され、実は馬兜鈴と呼ばれ、咳止め、気管支拡張、去痰に効能があるとされ、根は青木香、土木香などと呼び、蛇や虫などの解毒剤、打ち身、炎症止め、禿の防止、腹痛止めに効果的とされてきた。近年は天然由来のダイエット食品としての利用も増えてきていた。

しかし、ヒト発がん性物質のアリストロキア酸がウマノスズクサに含まれることが判明してからは、様々な問題が指摘され始めていた。減量ダイエットや関節痛、胃腸障害の緩和に効果があるとされるが、成分としてのアリストロキア酸がヒトのDNAに作用して、特有のがんマーカーを生じさせることから、発がん物質が取り込まれたことを示す兆候が がん抑制遺伝子内に現れることが確認された。

台湾での研究対象となったのは尿管がん患者151人。がん患者の60%にウマノスズクサ含有薬の使用に関連する特有の変異が確認され、特にアリストロキア酸の摂取後に腎皮質には特有の病変が発生し、がん抑制遺伝子TP53には特有の変異の兆候が生じていた。

台湾では全人口の約3分の1がアリストロキア酸を摂取しており、台湾の尿管がんや腎臓がんの発症率は、アリストロキア酸の摂取が台湾ほど一般的ではない欧米諸国の約4倍だった。

ウマノスズクサに関しては、 1956年にバルカン半島諸国でウマノスズクサ属の種子をパンに混ぜ込む習慣が原因でアリストロキア酸による腎障害の発生が指摘されてた。また、1990年代にはベルギーでアリストロキア酸を含むダイエット減量薬を使用した女性達が、突然に末期状態の腎不全になったと報告された例がある。 2001年には米国でアリストロキア酸を含む植物性製品を使用した2人が深刻な腎障害を発症した。米食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)では既に警告を発している。

ウマノスズクサが、腎臓がん、尿管がんの原因となっていることは、もはや疑いようの無い事実と言える。「天然成分、自然由来の生薬なら安全」と思い込む人間は多いが、天然由来、自然物の方が、危険な物質、成分が多いことを再認識することが必要だろう。

2012年4月12日木曜日

最新がん治療装置を大量導入

都立駒込病院、がん治療を拡充 最新の放射線設備を導入

最新鋭の放射線治療装置を新たに4台導入したのは、東京都立駒込病院(文京区)。最新の治療機器でがん患者の治療に寄与することが大きく期待される。

導入された最新治療機器は、脳腫瘍などの治療や肺がんにも適用が進んでいる「サイバーナイフ」や、「トモセラピー」「TM2000(ヴェロ)」と呼ばれる種類の放射線治療装置と、手術中に手術室で放射線治療できる設備一式。それぞれ専用の治療室が設置され、技師や専門家も増員される。

3種類の装置は人体の正常な細胞に照射する放射線を減らすことで副作用を最小化しつつ、、がん組織に集中して大量の放射線を当てることができる。がん患者の体内の様々な位置にあり複雑な形状をしているがん細胞に放射線を照射し、 がんの根治を目指す最新治療機器なのだ。さらに、がん再発防止のための術後照射や抗がん剤と組み合わせた治療などにも活用できる。

がん患者の手術時の負担が軽くなるだけでなく、追加治療や痛み止め、抗がん剤の量を減らせる。さらには、がん放射線治療につき物と認識されてきた副作用のリスクを大幅に減らせるうえ、医療費も軽減できることがメリット。

これだけの最新鋭の治療装置を3種類とも揃えた病院は全国でも稀で、東京都では、がんやエイズ診療の中核病院と位置付け、都民だけでなく全国から がん患者の受け入れる意向だ。

東京都は都立病院の再編と施設の老朽化に対応し、 2008年から民間資金を活用して駒込病院の大規模な改修工事を実施した。改装後は手術室が9室から15室に増え、内視鏡検査のための内視鏡室は7室から10室に増やされた。通院治療用の病床数も26床から50床に増床、病床数は801床、1日当たり1300人の外来患者が見込まれている。

がん治療は最新機器の病院で受けることが副作用は最小化、治療効果は最大化できる。

女性が毎日食べると がんリスク増の食品

海藻食べ過ぎでがんリスク増

海藻を毎日食べることでがんリスクが高まることが研究で実証された。国立環境研究所と国立がん研究センターの研究チームが調査結果を纏め欧州のがん専門誌に発表したのだ。

研究調査では、1990~2007年の20年弱の期間に渡り、 10府県の40~69歳の女性約5万人を対象に追跡調査した。調査開始後に甲状腺がんになった閉経後の女性は111人で、海藻をほぼ毎日食べる女性は、週2回以下の女性に比べて2.4倍がんリスクが高いことが判明した。さらに、甲状腺がんの一種である乳頭がんでは3.8倍の差があった。 

閉経後の女性が海藻を食べ過ぎると、甲状腺がんのリスクが高まる可能性があることが明白になったのだ。

海藻に含まれるヨウ素の過剰摂取ががんリスク高の原因であると分析されている。ヨウ素自体は必須栄養素の一つであり、ヨウ素が不足すると皮膚の乾燥やひび割れ・しゃがれた声、皮膚の浮腫、精神異常などの症状が懸念される。

あくまでヨウ素の"過剰摂取"が、がんリスクだという認識が大事だ。

2012年4月10日火曜日

培養免疫細胞のがん療法が臨床研究開始

NK細胞用いたがん治療の臨床研究

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を用いたがん免疫細胞療法の臨床研究が開始される。同社の独自技術で培養したNK細胞を標準治療では対応できない消化器がん(胃がん, 大腸がん, 食道がん) の患者に反復投与して、がん治療効果と安全性を評価するのだ。

NK細胞はウイルス感染や細胞のがん化から生体を防御する働きを持つことが判っている。たんぱく質や抗体と遺伝子組み換えたんぱく質「レトロネクチン」を併用する培養法で培養したT細胞を利用することで、約90%と高純度のNK細胞を大量に培養できるのだ。 NK細胞が、がん細胞株に対して細胞障害活性を持っていることは既に確認されており、マウスを用いた動物実験でもがんの縮小とがん転移抑制作用を示すことも確認できている。

臨床試験は、約2年間、2014年3月31日まで実施し、培養免疫細胞を用いたがん免疫細胞療法の効果が検証される。試験の実施主体は、タカラバイオと京都府立医科大学の共同。

さらには、NK細胞だけでなく、今後は、ナイーブT細胞、抗体医薬との併用などでより効果的な治療法の開発が期待される。

糖尿病の治療薬でがん治療

糖尿病治療薬、がんに有用の可能性

糖尿病の治療薬「メトホルミン」(商品名「メトグルコ」など)が、多くのがん患者に対して有用性を示す研究成果が発表された。糖尿病とがんに密接な関連があることは既知であり、メトホルミンを使うことで糖尿病患者のがん発症が抑制されるという研究結果は、主に大腸がんを中心に報告されてきた。今回の発表では、膵臓がん、前立腺がん、肝臓がん、口腔(こうくう)がん、メラノーマ(悪性黒色腫)と、種類の異なるがんに対しての有効性が検証され、結果が得られた とされている。

膵臓がんに対しては、メトホルミン使用により32%の死亡リスク低下が得られた。前立腺がん患者への安全性を確認が確認された。また、肝臓がんへの投与では、保護的作用の可能性が示唆された。さらに、口腔がんへの進展は最大で90%も抑制されたのだ。

メトホルミンと抗がん薬の併用療法が、治療後の経過があまり良くないメラノーマに対する新たな選択肢となる可能性は高まっている。

研究論文は、3月末の米国がん研究協会(AACR)へ発表された。

胃がんの転移を容易に発見する新治療法

転移微小がん を光らせ早期発見 

胃がんから転移した肉眼では見えない小さな転移がんを、蛍光物質で光らせて腹腔鏡で早期に見つけ治療する新治療法開発に大阪府立成人病センターが成功した。

進行した胃がんは、がん患部を切除しても再発することが多く、術後5年間の生存率は約30%と非常に低い。 がん再発の原因は6割以上が腹膜への転移とされるが、転移した病巣が非常に小さいために、手術時に肉眼で見つけるのは困難だった。

開発された新手法では、蛍光物質を投与することで微小な転移がんが赤く光って発見が容易になった。小さながんの転移を早く発見でき効果的に抗がん剤治療ができるため、転移癌に悩む多くの患者を救える新しい治療法となるだろう。

胃がんだけでなく、他のがんにも使える可能性がこれら模索される。

2012年4月9日月曜日

遺伝するがんのリスクとは

乳がん、早期発見で治療に選択肢 

卵巣がんの予防切除も

遺伝の影響を強く受ける乳がんがある。
「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」と呼ばれる乳がんだ。

HBOCは、BRCA1、BRCA2という二つの遺伝子の変異と密接な関係がある。海外の調査を分析すると、BRCA1に変異があると約4割の人で、BRCA2の変異では約1割で、 70歳までに卵巣がんになるリスクが高まると報告されている。 乳がんリスクは、BRCA1で約65%、BRCA2で45%だ。また、女性だけでなく、男性に関しても 乳がんや膵臓(すいぞう)がんのリスクが高まると指摘されている。

女性の20数人に1人が発症する乳がんの5~10%程度が、遺伝で乳がん、卵巣がんを発症し易い遺伝子を持っていることになる。 200人に1人程度は、かなり高い確率だ。

しかし、近年は遺伝子の検査を受けることで、 HBOCの遺伝子に変異が無いか調べる検査を受けることができる。公的医療保険の対象外なので、少し高価で二十数万円とされている。
遺伝子の変異が検査で発見された場合には、 3カ月~半年おきに検診を受けることで、がんのリスクを減らすことができる。 がんが発症し易いことを前提に早期発見早期治療に努めるのだ。
では、一部の病院でこの予防的な卵巣摘出手術を行っている。ただし、この手術には公的医療保険が適用されないために、自費で80万~100万円を負担しなければならない。遺伝子検査と治療は、カウンセリング態勢が整った病院で受けるのが賢明な理由でもある。

HBOCの遺伝子検査は、2011年末までの8年弱で


乳がんに関しては早期発見が比較的容易で、発見された場合にでも治療の選択肢は多い、しかし、卵巣がんは自覚症状が出難いために、治療が難しい例が多いことが問題なのだ。健康な卵巣を手術で切除することも選択肢の一つとされている。国内

、国内では約500件の検査が行われた。
HBOCの可能性があると分かれば、専門医がいる病院では、医師や認定遺伝カウンセラーが、遺伝カウンセリングの外来で患者の相談に応じる。治療の選択肢のほか、遺伝情報の意義や取り扱いの注意点なども示される。

姉妹を卵巣がんで亡くした女性(43)は病院で乳がんと診断され、遺伝子を調べてもらうと、結果が「BRCA1遺伝子に変異あり」とされたことで、乳房の全摘を決断した。卵巣の切除も希望したが、主治医から諭され、 3カ月に1度、超音波と血液で卵巣がん検診を継続している。

遺伝子レベルでのがん予防、がん治療が実用域へ達したことで、がん患者と一人一人のリスク管理とメンタルケアの重要性も増してきている。

2012年4月7日土曜日

体内マイクロチップで抗がん剤を自動投与

体内にチップ、自動で投薬 米チーム成功、注射不要に

自動的に薬を放出するマイクロチップを体内に埋め込み、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)患者に安全な治療をすることに米ハーバード大などの研究チームが成功した。16日付の米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン電子版で発表した。注射が不要になり、患者の生活の質を重視したがん治療などへの応用も期待される。
このチップ(13ミリ×5ミリ)は、一種の小型コンピューター。外部からの無線通信か内部のプログラムの指示でチップの穴から薬を体内に放出する機能を持つ。今回は骨粗鬆症の治療に応用し、骨を作る働きを活発にする注射薬テリパラチド20日分を1日分ずつ放出できるように工夫。複数のチップがUSBメモリーほどの大きさの容器に入れてある。
 65~70歳の女性患者7人の腰回りに埋め込み、様子をみたところ、薬は想定通り放出され、副作用もみられなかった。注射と同様に骨を作る働きを活発にする働きがみられたという。
2012年2月17日

2012年4月6日金曜日

がんの激しい痛みに新薬開発へ

がん・糖尿病の激しい痛みの原因物質を特定

これまで有効な治療法が無かったがんや糖尿病によって、神経が損傷して起きる慢性的な激しい痛みの原因となるたんぱく質が特定された。発見したのは、九州大の井上和秀教授と津田誠准教授らのグループ。

がんや糖尿病による慢性的で激しい痛みは「神経障害性疼痛(とうつう)」と呼ばれ、発症の詳しい仕組みが不詳で、治療法も確立していなかった。当該研究では、神経が損傷して慢性的な激しい痛みを起こすモデルマウスの脊髄を詳しく調べた。すると、「インターフェロン調節因子8(IRF8)」というたんぱく質が、 免疫を担う細胞「ミクログリア」の中だけで急激に増えることを発見したのだ。

IRF8が大量に発生すると、ミクログリアの活動が高まり、神経細胞を異常に興奮させる様々な生体分子を放出し、痛みを発生させていることが判った。 がん患者が悩まされてきた「神経障害性疼痛」は服が肌に触れただけでも痛みが発生する程の痛みだが、 IRF8を作れなくした改造マウスの痛みの度合いを比べると、50~60%も痛みが抑えられた。

神経障害性疼痛の患者は、がんや糖尿病で世界で2千万人以上。特定されたたんぱく質IRF8の働きを抑える新薬の開発で、 がん患者の痛みを緩和する道が開けるだろう。

研究成果は5日付の米科学誌「セル・リポーツ」電子版に発表された。

2012年4月5日木曜日

ノーベル賞理論のがんワクチン

2011年のノーベル医学・生理学賞は「樹状細胞の発見とその働き」へ授与された。この「樹状細胞」は、がん細胞を攻撃する役割のリンパ球にがんの印を教えて、より正確にがんを攻撃するように指令を出す司令官役を果たすのだ。最近はテレビや新聞などのマスコミでも取り上げられるなど、その「樹状細胞」を利用したがん治療には高い関心が寄せられている。

がん患者のなかには、手術や抗がん剤治療などを受けながらも「他の治療法がない」「副作用がつらい」など、治療の悩みを抱えている患者が多い。自己免疫力を高めて、 がんを攻撃する「がんワクチン」治療を受ける患者が増えているそうだ。

樹状細胞を用いたがんワクチン治療は、「樹状細胞ワクチン療法」と呼ばれている。大腸がんや胃がん、肺がんなど、幅広い部位のがんを対象としているこの治療は、がん細胞だけを攻撃することを目的とする。正常な細胞はほとんど傷つけないので、副作用が少ないのが特徴とされる。

2012年4月4日水曜日

肺がん新薬は90%に顕著な効果

2007年に発見された肺がんの原因遺伝子「EML4-ALK」に作用する肺がん新薬の製造販売が国内で承認された。

承認されたのは、ファイザーの新治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)。消化器がんの治療薬として開発が始まったが肺がん原因遺伝子「EML4-ALK」にも作用することが判明し、開発の対象を肺がんへ転換したことから開発に成功した。 2012年3月30日に厚生労働省が新薬として承認した。

肺がん新薬 ザーコリ(一般名クリゾチニブ)は、「EML4-ALK」を持つ患者の約90%に顕著な効果があったとされる肺がん特効薬。この肺がん新薬は、原因遺伝子EML4-ALKを持つ患者の命を今後10年で全世界で50~60万人は救うとされる。

ただし、特定の原因遺伝子を直接抑えるタイプの治療薬、いわゆる分子標的薬に類する新薬なので、その原因遺伝子を持った患者にしか効果がないことに留意する必要がある。

分子標的薬は、その治療前にがん患者の遺伝子検査を実施し、適合性つまりは分指標標薬が攻撃目標とする異常遺伝子を持っているかを検査してから使用する必要がある。

末期すい臓がん の手術とは

「膵臓がん」は、国内で年間2万8000人以上の命を奪っている。胃や大腸などの他の臓器と違い、腫瘍の発見が遅れがちで、また悪性度が高いため最も治療が困難ながんなのだ。

一般的に膵臓がん診断後の手術適用は2割程度。その手術も、膵臓が他臓器や太い血管と神経に隣接しているため非常に難易度が高い。一歩間違えば患者は術中に命を落とし、一見うまくいったかに見えた術後にも激しい下痢や栄養不良に悩まされるといったことも起こる。膵がん患者の命とQOL(生活の質)を確保することは非常に困難なのだ。

膵臓がんは、診断された時点で局所に がん が留まっていることが少なく、他臓器へ転移しているゆえに、いわば全身病なのだ。しかも、膵臓がんには有効な抗がん剤が少なく、また他のがんで効果のある分子標的薬も、有望な新薬はまだ登場していない。

さらに、がん患者が高齢で合併症を持つ症例も多いため、さらに難易度は高まってしまう。
大腸がんなどによる転移性肝がんや原発性肝がん、胆管がん、胆嚢がんの手術も積極的に行っている経験ある病院・医師による治療が重要でなのだ。

2012年4月3日火曜日

がん再発防止の新薬を開発へ

がん再発防止にがんが生き残る仕組みを解明

現在のがん治療は抗がん剤地路湯や放射線治療によって、がん細胞を死滅させるのが主流だ。しかし、がん幹細胞が生き残れば、がん細胞が再び増殖することが多く、がん患者は常にがん再発に脅かされていた。がんが再発するのは がんの基となり、体内でがん細胞を造り続ける「がん幹細胞」が存在するからである。乳がんが治療の10~20年後に再発する原因は、抗がん剤も放射線も効かないがん幹細胞が存続し続けることにある。

今回は、体内のがん幹細胞が生き残るのに必要なタンパク質を自ら分泌していることが発見された。細胞膜に「ヘレギュリン」と呼ぶたんぱく質が付くと、がん細胞内の遺伝子に信号が伝わり、NFκ(カッパ)Bという物質が増加することでがん増殖やがん転移に適した環境を整えていた。実際に再発率の高い乳がん患者ではヘレギュリン濃度が高い傾向があるのだ。

抗がん剤や放射線治療でもなかなか死滅しないがん細胞では、この特定のたんぱく質が細胞膜にくっつき、がん増殖やがん転移、がん再発を起こし易くなっていると断定された。
この がん細胞が体内で増殖能力を維持する仕組みを妨害できれば、全く新しい乳がん治療法が開発できだけでなく、がんの再発をも高い確率で防止できるのだ。

東京大医科学研究所の後藤典子准教授(がん生物学)らのチームが乳がん患者から手術で摘出したがん細胞を培養し、観察した結果、発見した。研究の詳細は、2日付の米科学アカデミー紀要電子版に発表された。

がん治療分子標的薬の前日対応

がん治療に用いられる分子標的薬とは、従来の抗がん剤のように正常細胞にも打撃を与えることで脱毛や吐き気などの副作用を起さず、 がん細胞に特有の分子をピンポイント攻撃することで、がん細胞の成長を止めたり、殺したりする。特定の分子を狙うため、がん細胞の遺伝子のタイプによって効果の有無が違う。

分子標的薬は、がん細胞を増やしたり、がん組織に血管を引き込んだりする特有の分子(主にタンパク質)の機能を止めて、がんの成長を抑える。大腸がんの治療では、がん増殖に関わるタンパク質の働きを抑える分子標的薬が、四年前から複数登場。手術が難しいがんや再発がんの治療に使われ、生存期間の延長に著しい効果が得られている。

がん細胞だけ狙って攻撃する新しいがん治療薬「分子標的薬」は、大腸がんや肺がんなどのがん患者への治療効果が極めて高く、新薬も相次いで登場している。
しかし、分子標的薬は、まだ発展途上であることから、皮膚細胞など正常な細胞も一部攻撃してしまうことへの周知が浅い。分子標的薬特有の副作用が出やすい薬も複数あり、対策が課題になりつつある。

分子標的薬の標的となるタンパク質が皮膚や爪を作る細胞にも存在するために、これらの細胞も同時に薬の打撃を受け、副作用が皮膚などに炎症として出るのだ。腎臓がんや肝臓がんの薬ネクサバールは、手足の皮膚が腫れて痛む「手足症候群」が出やすい。また、慢性骨髄性白血病の薬グリベックは、かゆみを伴う赤い発疹が出やすい。

分子標的薬の副作用で最も多いのは、顔などに出るにきびのような発疹。新しい皮膚がうまく作れないため皮膚が薄くなって乾燥し、かゆみがひどくなったり、指先が割れて痛んだりする。酷い場合には、手足の爪の周りが腫れ、靴を履くことや手仕事が難しくなる場合もある。

皮膚障害の治療法はほぼ確立されているので、早めに正しい処置で対処することで治療を継続できる。にきびのような発疹には炎症を抑える効果を期待してミノサイクリンなどの内服抗生剤やステロイドの塗り薬を使う。適切な薬や保湿剤を使ったスキンケアに努め、日焼け止めや、炎症を抑えるステロイド薬を塗ることで、皮膚障害の重症例の発生が大幅に減るのだ。爪の周囲に炎症が起きた場合には、皮膚科医によるテーピングで痛みを和らげられる。また、足が腫れて痛みのある場合には、履物選びでも症状が改善し、がん患者の生活の質が大幅に上がることもある。
最も重要なのは、症状が出てから対応するより、分子標的薬を投与する前日から内服抗生剤を飲むことだ。

「分子標的薬は、皮膚障害が強いほど生存期間が長い」との研究報告が複数ある。副作用を抑えることで、がん治癒に対する抗がん剤の効果を少しでも享受するのだ。