2011年7月20日水曜日

乳がん新薬が国内発売

エーザイ、乳がん薬を国内発売

エーザイは19日、乳がん治療薬を国内で発売したと発表した。製品名は「ハラヴェン」で、手術できない乳がんや再発乳がんの患者が投与の対象。自社の研究所で作り出した初めての抗がん剤で米国や英国、ドイツなどに続く発売となる。

今後は肺がんや前立腺がんなどにも使えるように臨床試験(治験)を進めて販売を増やし、2015年度までに世界で10億ドル(約800億円)の年間売上高を目指す。

同社が実施した治験では、ハラヴェン以外の治療を施した乳がん患者の生存期間は10.5カ月。これに対してハラヴェンを投与した患者の生存期間は13.2カ月だった。

手術できない乳がん再発乳がんは治療に使える薬剤が少なく、ハラヴェンは医師の選択肢を増やせる。

2011年7月19日 日本経済新聞


エーザイ、日本で抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン」を発売

日本において抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン(R)」を新発売

エーザイ株式会社(本社:東京都、社長:内藤晴夫)は、日本において「手術不能又は再発乳癌」を効能・効果とする、新規抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン(R)静注1mg」(一般名:エリブリンメシル酸塩)を7月19日に新発売します。
本剤は、当社が自社創製・開発した初めての新規抗がん剤であり、2010年3月に日米欧3極同時申請し、2010年11月に米国での新発売を皮切りに、欧州においても2011年4月に英国、ドイツなどで販売を開始しています。

本剤は、前治療歴のある転移性乳がんの患者様において、単剤で統計学的に有意に全生存期間を延長した世界で初めてのがん化学療法剤です。海外で実施した前 治療歴のある進行又は再発乳がんを対象とした臨床第III相試験(EMBRACE試験)において、主治医選択治療群に比べて、2.7カ月間の全生存期間の 延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p 値:0.014)。また、日本で実施した臨床第II相試 験において、「ハラヴェン(R)」単独療法は、アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む前治療歴を有する進行又は再発乳がん患者様に対し、良好 な抗腫瘍効果を示すとともに良好な忍容性プロファイルが認められました。

乳がんは依然として、女性のがんによる主な死亡原因の1つであ り、日本では毎年約6 万人の患者様が罹患されています。新しい抗がん剤の開発によりその治療法は年々進歩していますが、手術不能又は再発乳がんでは治療 の選択肢は決して十分とは言えません。このたび、日本における「ハラヴェン(R)」の新発売により、手術不能又は再発乳がんの患者様が本剤にアクセスする ことが可能となります。

今後当社は、「ハラヴェン(R)」を、グローバルにおいてより治療歴の少ない難治性再発性・転移性乳がん、乳が んアジュバント(術後補助療法)などの適応追加や、リポソーム製剤の開発による乳がん患者様への貢献を拡大していくとともに、非小細胞肺がん、肉腫、前立 腺がんなどの適応拡大に取り組んでまいります。また、卵巣がんをターゲットとしたモノクローナル抗体「MORAb-003 」( 一般 名:farletuzumab)、甲状腺がんや子宮内膜がんをターゲットとしたE7080(一般名:lenvatinib)などの開発により、 Women’s Oncology領域の製品の充実化をはかっていきます。

日本国内においては、全MRががん領域での活動に取り組み、がんと共に生きる女性とそのご家族の想いにより添い、QOL向上により一層貢献し、当社のヒューマン・ヘルスケア(hhc)ミッションを果たしてまいります。


以上

<参考資料>

1.製品概要
1)製品名
ハラヴェン(R)静注1mg
2)一般名
エリブリンメシル酸塩
3)効能・効果
手術不能又は再発乳癌
4)用法・用量
通常、成人には、エリブリンメシル酸塩として、1日1回1.4mg/m2(体表面積)を2~5分間かけて、週1回、静脈内投与する。これを2 週連続で行い、3週目は休薬する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
5)薬価
ハラヴェン(R)静注1mg 2ml 1瓶 64,070円
6)包装
ハラヴェン(R)静注1mg(2.0ml):1バイアル

2.グローバル第III相臨床試験(EMBRACE試験)
EMBRACE試験は、多施設、無作為、非盲検、並行2群間比較試験で、ハラヴェン(R)投与群と主治医選択治療群との間で全生存期間を比較するようにデ ザインされました。本試験では、2種類から5種類のがん化学療法剤(アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む)による前治療歴のある、局所再発 性あるいは転移性乳がんの患者様762名が対象となり、ハラヴェン(R)投与群と主治医選択治療群に2:1の比率で割り付けられました。主治医選択治療群 は、がん治療が認可された単剤化学療法、ホルモン療法、生物学的薬剤治療、又は苦痛緩和治療、放射線治療と定義され、大多数(97%)の患者様は単剤化学 療法を受けました。本試験解析の結果、ハラヴェンR投与群は主治医選択治療群と比較し全生存期間を2.5カ月間延長しました(全生存期間:13.1カ月  対 10.6カ月、ハザード比:0.81、p値:0.041)。

また、当社は欧州と米国の審査当局からの依頼によりプロトコールの規定 に加えてEMBRACE試験の結果をアップデートしました。その最新の解析データは、ハラヴェン(R)投与群では主治医選択治療群に比べて2.7カ月間の 全生存期間の延長が認められました(全生存期間:13.2カ月 対 10.5カ月、ハザード比:0.81、p値:0.014)。このデータは2010年 12月のSan Antonio Breast Cancer Symposiumで発表され、ハラヴェン(R)の全生存期間を延長し、安全性プロファイ ルは変化がないことが再確認されました。
ハラヴェン(R)投与群で高頻度(頻度25%以上)に認められた有害事象は、無気力(疲労感)、好中球 減少、貧血、脱毛症、末梢神経障害(無感覚、手足等のしびれ)、吐き気、便秘でした。この中で、特に重篤な有害事象として報告されたのは好中球減少(発熱 を伴う症例が4%、発熱を伴わない症例が2%)であります。またハラヴェン(R)投与中止に至った主な有害事象は末梢神経障害(5%)でした。

3.日本で実施された第II相試験(221試験)について
221試験は、アントラサイクリン及びタキサン系抗がん剤による前治療歴のある進行・再発乳がんの患者様を対象とした、多施設共同による非盲検の試験で す。本試験では、奏効率21.3%(評価対象80例中、奏効例17例)と高い奏効を示すとともに良好な忍容性プロファイルを認めました。

4.「ハラヴェン(R)(欧米製品名:HALAVEN)」(エリブリンメシル酸塩)について
「ハラヴェン(R)」は、新規の作用機序を有する非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤です。海洋生物クロイソカイメン(Halichondria  okadai)から抽出されたハリコンドリン類の全合成類縁化合物であり、微小管の短縮(脱重合)には影響を与えずに伸長(重合)のみを阻害し、さらに チューブリン単量体を微小管形成に関与しない凝集体に変化させる作用を有しています。「ハラヴェン(R)」の合成はきわめて難度が高く、その全合成のス テップ数は62工程あります。また「ハラヴェン(R)」の分子量は826であり、不斉炭素19個を含むため、理論的に立体異性体の数は2の19乗個、すな わち524,000個の可能性があり、その制御が困難を極めます。しかし、当社の技術力によりそのすべての反応を立体選択的にコントロールして「ハラヴェ ン(R)」を商業的に合成することが可能になりました。
本剤は、2010年11月米国、2011年2月シンガポール、2011年3月欧州でそれ ぞれ承認を取得し、カナダにおいて申請中、アジア、ニューマーケットなど多くの国々における本剤の開発を進めています。また、より治療歴の少ない乳がん、 非小細胞肺がん、肉腫、前立腺がんなど、他のがん種についても単剤での後期臨床試験が進行中です。

5.乳がんについて
乳がん は、女性のがんによる死亡原因のトップであり、日本においても毎年約6万人の患者様が罹患されています。また、罹患率は30歳代から増加を始め、50 歳 前後にピークをむかえるという点で、切実な問題となっており、アンメットメディカルニーズ(未だ満たされていない医療上の必要性)の高い疾患であると言え ます。
近年、検診や早期発見の普及により、乳がんの患者様数は増加しており、毎年世界で約100万人が新たに乳がんと診断されると考えられてい ます。なかでも早期乳がんと診断された患者様の約40%が局所進行性または転移性乳がんへと進行するといわれています。転移性乳がんの患者様では、その5 人に1人しか5年生存ができないというデータがあります。
乳がんは、乳房のしこりの大きさ、乳腺の領域にあるリンパ節転移の有無、遠隔転移の有 無によって、8段階の病期(ステージ:0期、I期、IIa期、IIb期、IIIa期、IIIb期、IIIc期、IV期)に分類されます。このうち、 IIIb期、IIIc期、IV期は、転移などにより病変が広範囲にわたるため手術不能な乳がんとなります。また、手術など乳房の腫瘍に対する初期治療を 行った後、他の臓器に転移するなど(転移性乳がん)、手術した乳房の領域に再び発症した場合を再発乳がんといいます。

6.エーザイのウィメンズ・オンコロジー(Women’s Oncology)領域への取り組み
女性のがんによる死亡率は年々拡大しており、世界で毎年約300万人の女性ががんで亡くなられています(WHO統計)。今日、女性の社会的な重要性は益々 向上しており、がんと共に生きる女性を支援しQuality of Life(QOL)を向上させることはきわめて意義の高いことであると考えています。
当社は、「ウィメンズ・オンコロジー(Women’s Oncology」をコンセプトとした、女性の視点を大切にしたがん領域における取り組みを進めることにより、がんと向き合う女性の想いにより添い、希望をお届けし、QOLを向上することに貢献してまいります。
今後、「ハラヴェン(R)」の適応拡大、製剤開発により乳がん患者様への貢献を拡大するとともに、卵巣がんをターゲットとしたモノクローナル抗体  farletuzumab(ファルレツズマブ(*))、甲状腺がんや子宮内膜がんをターゲットとしたlenvatinib(レンバチニブ(*))などの開 発により、がんと闘う女性に一日でも早く革新的な新薬をお届けすることが我々の使命であると考えています。そして、世界中の一人ひとりの患者様に当社の製 品をお届けできるようアクセス・プログラムを実現するとともに、総合的なヘルスケアシステムの改善に全力を尽くしてまいります。
また、女性のがん患者様特有のニーズに対応する取り組みやがん専門ケアマネージャーの養成プログラムを医療機関と連携して開発するなど、診断・標準治療から在宅医療・緩 和ケア・終末期医療までが切れ目なく提供される地域医療体制の構築に貢献することにより、がん患者様とそのご家族のQOL向上と「がんになっても安心して 暮らせるまちづくり」をめざしてまいります。

2011年7月19日 プレスリリース