2011年7月12日火曜日

世界最高水準の皮膚がん治療

世界最高水準のメラノーマ治療

国立がん研究センター中央病院
〒104-0045東京都中央区築地5の1の1
(電)03・3542・2511

国内の死因トップはがんだが、その中でも皮膚がんの患者数は決して多くはない。しかし、身体の表面の皮膚に生じるがんの種類は多く、悪性黒色腫(メラノーマ)のような非常に悪性度の高いものもある。

また、一見、シミやホクロ、あるいは湿疹のような形をしているため、見極めを誤って治療の手を加えると、進行や再発の原因にもなりかねず、診断と治療には高いレベルが求められる。そんな皮膚がん治療で全国トップの実力はもとより、世界最高水準の治療を行っているのが、国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科だ。

「国内では患者数が少ないため、薬の開発は遅れていました。日本はメラノーマの手術や放射線治療は世界レベルであっても、使える薬の種類や数が世界とは 違う。しかし、メラノーマの患者さんは国内にもいます。そのドラッグラグをずっとなんとかしたいと思ってきました。それがようやく解消されつつあります」

こう話す同科の山崎直也科長(51)は、皮膚がん治療一筋に、国内で最も多くのメラノーマの治療を行っている。その新薬について昨年秋から国際共同治験に参加した。皮膚がんの治療薬で、臨床試験を世界各国と同時に行っているのは史上初めての快挙である。

「新薬の効果が得られればメラノーマの治療は飛躍的に進歩します。まさに治療の転換期ともいえるのです」

もともと小児科医を目指して医学部に進学した山崎科長だったが、研修医時代に皮膚がんの治療に出合った。内臓のがんほど知られていないが、皮膚にできるがんも血管やリンパ管の中に入って流れに乗り、全身の臓器へと転移して命を奪うことがある。種類も多く、性質もがんによってさまざま。患者と向き合ううちに、いつの間にか皮膚がん治療に没頭していたという。

皮膚がんは進行の早い悪性度の高いものばかりではありませんが、小さくても顔にできた場合は、治療による傷跡がQOL(生活の質)を下げる恐れがあります。また、むやみにがんの部分に触れることで、再発や転移につながるため、診断と治療には高い専門性が求められるのです」(山崎科長)

しかし、日本では診断と治療が、まだ普及しているとはいいがたい状況だ。それを打開するため山崎科長は、皮膚がん治 療のガイドラインの改訂版にも着手している。夢は「日本から世界初の治療法を発信したい。私ができるのは、まず遅れている薬物治療の面で世界の最先端治療 に追いつくことです。私たち皮膚腫瘍科はチームワークが良く、メンバーは皆同じ目標を持っています。次世代の若い先生たちとともに、ぜひ世界ナンバーワン を実現したいと思っています」と山崎科長。

その夢に向けてまい進中だ。 

<データ>2010年実績
  • 悪性黒色腫88人
  • 有棘細胞がん52人
  • 基底細胞がん28人
  • 乳房外パジェット病19人
  • 隆起性皮膚線維肉腫10人
  • 血管肉腫9人
  • 病床数18床
2011年7月11日 zakzak