2011年8月25日木曜日

ビタミン剤とがんリスク

ビタミン剤、過信は禁物 女性の循環器疾患は低減

ビタミン剤を飲み続けた女性が心筋梗塞などの循環器疾患になるリスクは、全く飲まない人の6割に下がるが、生活習慣に気をつけることが大前提―。こんな研究結果を、国立がん研究センター予防研究部の笹月静室長らが25日、公表した。

1990年代前半に40~69歳だった男女に5年間隔で2回、ビタミン剤の摂取状況を調査。回答した約6万人を2006年まで追跡し、ビタミン剤摂取と、循環器疾患やがんとの関係を調べた。  

2011年8月25日 共同通信



ビタミン剤1年以上摂取の女性、がんリスク上昇 がんセンター発表

ビタミンサプリメントを過去に摂取した女性はがんになるリスクが高いとの調査結果を国立がん研究センターがまとめ、25日発表した。週に1日以上、1年間 以上摂取した経験のある人は、まったく摂取したことがない人に比べてリスクが17%高かった。ただサプリメントの作用と発がんとの因果関係は明らかではな いという。

過去にサプリメントを摂取した経験を持つ女性は肥満や高血圧、糖尿病治療の割合も多かった。同センターの笹月静予防研究部室長はサプリメントが原因というよりも、「過去に摂取の経験がある人は不健康な傾向がある場合が多く、その影響も出たのではないか」とみている。

調査は1990~2006年に40~69歳の男女約6万3千人を対象にアンケート方式で実施。期間中がんになった人は4501人。90年時点でサプリメントを摂取し、その後5年以内にやめた女性は摂取経験のない人に比べがんになる確率が17%高かった。

男性ではこうした傾向は見られなかった。「(調査時点で)飲酒や喫煙をしている人の割合が高く、(それらに隠れて)サプリメントの影響が見えにくかった可能性が高い」としている。

2011年8月25日 日本経済新聞


ビタミン剤摂取、がんリスク減=女性のみ、生活習慣も重要-がんセンター

国立がん研究センター(東京都中央区)などの研究班は25日、ビタミン剤の摂取を続けた女性ではがんや循環器疾患の発症リスクが低下するとの調査結果を発表した。男性について関連は認められず、同センターは「男性の場合は、喫煙や飲酒の影響があるのでは」としている。  

研究班は全国9地域を対象に、1990年から94年にかけ、40~69歳の調査を開始。このうち、開始5年後にがんや脳卒中などの循環器疾患にならな かった男女6万2629人を追跡調査した。その結果、追跡調査を始めてから7~11年間に4501人は何らかのがんと診断され、1858人が循環器疾患を 発症したことが分かった。  研究班は、対象者をビタミン剤の摂取状況に合わせ
(1)調査開始時・5年後とも非摂取
(2)開始時摂取・5年後非摂取
(3)開始時非摂取・5年後摂取
(4)開始時・5年後とも摂取
-の4群に分類。

摂取の定義は、調査開始時は週1日以上、5年後では週1日以上を1年以上継続とした。  

女性について(1)のがんリスク値を1.0とした場合、(2)が1.17、(3)が1.24、(4)は0.92。同様に循環器疾患は(2)1.08(3)1.32(4)0.60だった。男性は関連性が一切なかった。  女性の(2)は肥満や喫煙、高血圧の割合が高く、(3)はデータを精査した結果、ビタミン摂取を始めた時に潜在的疾患が既にあり、がん発症と関連はないと結論付けた。(4)の摂取継続者は検診受診率が高く、食事によるビタミン摂取量が多いなどの特徴があったという。

同センターの笹月静予防研究部室長は「男性で差が出ないのは飲酒や喫煙により、ビタミン剤の効果が打ち消されたためと思われる。ビタミン剤以外にも、運動や食事などによる生活習慣の改善が重要だ」としている。

2011年8月25日 時事通信

新抗がん剤の候補物質へ乳がん

岡山理科大など、副作用少ない抗がん剤の候補物質を開発

岡山理科大学の濱田博喜教授、岡山大学の妹尾昌治教授、塩水港精糖の研究チームは、薬物送達システム(DDS)を利用した新しい抗がん剤の候補物質を開発した。乳がん前立腺がんなどへの抗がん作用を持つ化合物「パクリタキセル」を改変。ブドウ糖と結合させることで水に溶けやすくし、ナノサイズのカプセルに閉じ込め、副作用が少なくがん細胞のみを標的とした抗がん剤の候補物質を作れた。

今後、動物実験での安全評価などを行い、「5年後には臨床試験に入りたい」(濱田岡山理科大教授)としている。研究成果は9月11日からフランスで開催される日仏合同シンポジウム「メディシナル・アンド・ファイン・ケミストリー」で発表する。

パクリタキセルを水に溶かし、カプセルに封じ込めた例は初めてという。パクリタキセルは既に抗がん剤に使われているが、水に溶けない性質を持ち、白血球が減るなどの副作用があった。

2011年8月25日 日刊工業新聞

放射線腫瘍科の新設

新たに放射線腫瘍科を開設

★東京女子医科大学病院のがん放射線療法

がん治療の3本柱、手術、放射線療法、化学療法は、いずれも近年目 覚ましく進歩している。中でも放射線療法は治療機器の進歩に伴い、腫瘍の部分だけを狙い撃ちにする「定位放射線照射」、照射する個所と強さを自由に変える ことができる「強度変調放射線治療(IMRT)」、小さな針やカプセルを腫瘍部分に刺す、あるいは置いて照射する「小線源治療」など、さまざまな治療法が 登場している。

ただし、それらを行うには高度な技術が不可欠で、臓器や病態などによって使い分けをしなければならない。そんな放射線治療で全国トップクラスの実力を誇るのが、東京女子医科大学病院放射線腫瘍科だ。脳腫瘍や前立腺がん乳がんなどの治療で定評を持つ。

「放射線治療のレベルが向上したことで、病態によっては、手術と放射線の組み合わせではなく、最初から放射線治療のみや化学療法を組み合わせて行う症例 も多い。そういう状況では、以前にも増して、他科との信頼関係の構築による連携が非常に大事になってきます。私たちは、その連携を実現し、患者さんにとっ て最適な治療を提供しているのです」とは、同科の三橋紀夫主任教授(62)。

放射線治療一筋に、最先端の治療法のみならず、腫瘍の性質などの造詣が深い。2001年より現職だが、一昨年5月には、より専門性の高い治療に集中するため、従来の放射線科を画像診断部門と分けて新たに放射線腫瘍科を開設した。

「放射線治療は、ただ患部に放射線を照射すればいいというものではありません。腫瘍の性質を熟知しなければ、きちんとした治療はできないのです。それができる医師を育成するためにも、放射線腫瘍科を画像診断と分ける必要があったのです」(三橋教授)

加えて、放射線治療の進歩で患者にとっても選択肢が増えた。たとえば、前立腺がんのように、IMRTで外部照射、前立腺に針を刺して照射する「高線量率組織内照射」、あるいは、患部に放射性ヨウ素を永久挿入する治療法もあり、どの治療法がいいのか迷う患者もいる。医師は、治療法やがんの性質を理解していないと、患者に最適な治療法は提供できない。以前にも増して放射線腫瘍科の医師の手腕が求められているのだ。

しかし、全国の放射線治療専門医は約900人。国民の2人に1人はがんになるといわれる時代に、専門の医師が少なすぎる。

「すぐに放射線治療医を増やすことは難しい。少数精鋭で私たちは取り組んでいますが、放射線腫瘍科が各大学で広がることを期待しています。また、地域によってセンターを作り、専門性の高い治療を行えるようにしたい」と三橋教授。その夢に向けてまい進中だ。(安達純子)

<データ>2010年実績
☆新規患者数823人(脳/脊髄123人、前立腺192人、乳腺160人、肺59人、頭頸部51人、食道44人など)
☆IMRT治療者数94人
☆前立腺ヨード治療人数48人
☆病院病床数1423床
〔住所〕〒162-8666東京都新宿区河田町8の1
(電)03・3353・8111

2011年8月22日 zakzak

子宮がん、肛門がん の予防ワクチン

子宮頸がんの予防ワクチン、肛門がんリスクも低減

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンが、女性の肛門がん発症リスクも減らすとの研究結果が、23日の英医学誌「ランセット・オンコロジー(Lancet Oncology)」に掲載された。

研究はコスタリカの18~25歳の健康な女性4210人を対象に、HPVワクチン「サーバリックス(Cervarix)」とA型肝炎ワクチンのいずれかを無作為に選んで投与し、4年後に女性たちの子宮頸部と肛門へのHPV16型と18型の感染の有無を調べた。

結果、サーバリックスの投与を受けていた女性の子宮頸部感染リスクは、ワクチンの投与を受けていた女性よりも76%低く、また肛門感染リスクは62%低かった。

1年間の肛門がんの発症件数は10万人に2例程度と少ないが、女性は男性と比べて2倍かかりやすい。この原因は明らかになっていないが、肛門を使った性交が原因の可能性もある。

人口全体では、男性と性交をする男性が肛門がんにかかりやすく、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染していない同性愛者では10万人のうちで年40例、HIV感染者では10万人に80例ほどとなっている。

これまでの研究で、肛門がんの大半の原因がHPVであることや、HPVに関連した肛門がんでは、症例の80%近くがHPV16型または18型により引き起こされていることが分かっている。

米ミズーリ大(University of Missouri)の専門家、ダイアン・ハーパー(Diane Harper)氏とスティーブン・フィールターレル(Stephen Vierthaler)氏は、ランセット・オンコロジーに掲載された解説で、肛門がんの対策としてのHPVワクチン接種の費用便益ははっきりしないと述べ た。

2011年08月24日 AFP

魚食で糖尿病予防

魚をたくさん食べる男性ほど糖尿病にかかりにくいことが判明

国立がん研究センターなどから成るチームが2011年8月17日に発表したところによると、魚介類を多く食べる男性ほど糖尿病にかかりにくくなる傾向があることがわかった。ちなみに女性では魚の摂取量と発症リスクの間に相関関係は見られないという結果が出ている。

調査は95年と98年に、全国の男女約5万人に対し行われた。調査の結果、1日当たりの魚の摂取量が最も多い171.7gの群の男性では、最も少ない摂取量36.6gの群の男性と比べて3割ほど糖尿病の発症リスクが少ないという。

魚の種類によっても発症リスクの増減には違いが見られ、たとえば脂の多いサケ、アジ、イワシ、サンマなどの魚や小・中型の魚であるアジ、イワシ、サンマ、 サバなどを多く食べる習慣のある男性では、糖尿病の発症リスクが目立って低下する。これに対してマグロやカツオなどといった大型で脂の少ない魚を食べて も、発症リスクは減少しないことが分かった。

DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、ビタミンDなどの魚の脂に多く含まれている成分が糖尿病を予防するインスリンの働きを活発化させているのではないかという。

2011年8月24日 美容健康ニュース

皮膚がんが治る新薬は945万円


7万5千ポンドで皮膚がんが治る? 英国でも新薬登場

皮膚がん患者の新しい治療薬が英国でも承認されることになった。

「メトロ」紙が伝えたところによると、この新薬の名前は「Yervoy(ipilimumabイピリムマブ)」で、使用1年後の皮膚がん患者の生存率はおよそ50%という。

欧州での使用が承認されたものの、英国の医療サービス「NHS」での使用認可はまだ下りていない。

1970年代以来、進行性の悪性黒色腫の治療には主にセラピー(物理療法や心理療法)が用いられるのが一般的で、専用の治療薬が使われるのは今回が初め て。治療にかかる費用は、患者の体重にもよるが、治療1回につきおよそ1万8,000ポンド(約23万円)、治療終了時までに平均で約7万5,000ポン ド程度(約945万円)になるという。

2011年8月23日 Japan Journals

2011年8月23日火曜日

がん治療核酸医薬への期待

ナノキャリア、核酸医薬を京大と研究 がん治療に期待

東証マザーズ上場のナノキャリアは京都大学と核酸医薬について共同研究契約を結んだ。京大が作製する人工核酸を同社が開発したナノサイズのカプセル「ミ セル化ナノ粒子」にとじ込めて核酸医薬候補を開発する。研究期間は来年6月まで。共同研究で得られた成果は両者で特許を出願する方針という。

京大側の共同研究者は「次世代研究者育成センター」の斉藤博英准教授。同准教授は人工的に合成したRNA(リボ核酸)を使って細胞の生死を制御する技術を開発している。この人工RNAをがん細胞に送り込めば、がんの 治療効果などを期待できるという。ただRNAは血中で分解されやすく、患部へ効率的に届けられるかどうかが課題。ナノキャリアはミセル化ナノ粒子の技術を 使えば、人工RNAが分解せずに患部に到達できるとみる。同社は作製した医薬候補の血中持続性や薬理作用の確認にも取り組む考えだ。

2011年8月22日 日経産業新聞

2011年8月16日火曜日

副作用の少ない新抗がん剤治療法


がん細胞狙い薬剤投与 金大グループ

がん細胞だけを狙って薬剤を投与する独自の手法を、金大の研究グループが15日までに開発した。1マイクロメートル(1千分の1ミリ)以下の容器に抗がん剤を仕込んでがん細胞と結合させ、超音波を当てて薬剤を放出させる仕組み。正常な細胞には影響を与えないため、実用化すれば、副作用の少ない抗がん剤治療につながる可能性がある。

体内に入った薬剤を効率的に患部に到達させる「ドラッグデリバリーシステム」の一つで、環日本海域環境研究センター・理工学域自然システム学類バイオ工学コースの清水宣明教授と仁宮一章助教による研究。

抗がん剤は、リン脂質など高分子の人工膜で作った微小な容器内に閉じ込められる。同グループは、この容器が超音波を当てると表面が変形して割れる性質を利用した。従来、抗がん剤を収める容器には熱に反応して壊れるものなどがあった。ただし、熱が届きにくい場所にがん細胞がある場合、相当な加熱が必要で人体に使うには課題が多かった。超音波なら、容器を体内の奥深くまで送り込んでも十分に届き、体への負担も小さいという。

実験では、抗がん剤を封入した容器の表面に、肝がん細胞だけに結合するタンパク質を組み込んだ。これを肝がん細胞を含む培地に入れて超音波を当てると、肝がん細胞に抗がん剤が効いていた。大腸がん細胞を用いた実験では反応せず、肝がん細胞だけを狙い打ちすることが確認された。

今後、マウスなどの動物実験で、生体内で変わらず効果があるかを検証する。容器表面に組み込む生体分子を変えれば、他のがんに応用できると考えられ、肝がん以外のがんに作用する分子を探す。

清水教授は「臨床で実用化されるまでには安全性など多くの検証が必要だが、副作用の少ない治療の実現に向け、研究を積み重ねたい」と話した。

2011年8月16日 富山新聞

2011年8月15日月曜日

ダブルバルーン内視鏡の実用化

世界初、ダブルバルーン内視鏡の実用化に成功

「自治医科大学附属病院」小腸の内視鏡検査

先端についたカメラや医療器具で検査はもとより治療も行える内視鏡。しかし、かつて小腸についてはお手上げだった。口から内視鏡を入れたときには、食道、胃、十二指腸まではスムーズなのだが、その先の複雑に曲がりくねった小腸では進まない。

肛門から内視鏡を入れて大腸を通過しても同じ。無理に押し込もうとすれば小腸を傷つけかねなかった。「内視鏡の死角」といわれた小腸は、がんの発生は少ないものの、出血や潰瘍などで苦しむ患者はいる。内視鏡の治療もできない上に、画像検査でも位置がわからない。結局、手術でしか確かめようがなかった。

そんな状況を一変させたのが、自治医科大学附属病院光学医療センター(内視鏡部)長の山本博徳教授(51)が考案したダブルバルーン内視鏡だ。1999年に世界初の臨床試験を行い、現在、世界約60カ国で小腸の内視鏡検査や治療で使用されているという。まさに世界ナンバーワン。

「小腸は5~6メートルの長さがあり、人間にとって極めて重要な臓器です。小腸に潰瘍を作る病気で腸が狭くなった場合は、以前は手術で小腸を部分切除していましたが、内視鏡的な治療であれば小腸を切らずに済みます。出血も検査をしながら止めることが可能です。それを実現するために、ダブルバルーン内視鏡を考えました」

こう話す山本教授は、95年に出身の自治医科大学に戻り、たまたま小腸の検査がうまくいかない患者に出会った。別の医師が内視鏡を押し込もうとしても、先に行かない。傍から見ながら「なんとかしたい」との思いを強めた。

そんなある日、ひらめいたのが、2つの丸いバルーン(風船)を内視鏡とオーバーチューブにつけた方法。小腸の曲がった部分をバルーンで固定することで、真ん中に通した内視鏡の方向が定まり、スムーズに先に進むことができた。

「工夫することが大好きなのです。でも、最初はメーカーに取り合ってもらえませんでした」(山本教授)

胃や大腸に比べて患者数の少ない小腸について、メーカーは市場規模が小さいと解釈して乗り気でなかった。山本教授は孤軍奮闘。試作品と実験の繰り返しで有用性を確認し、フジノンとの共同開発が実現した。そして、ダブルバルーン内視鏡の実用化に世界で初めて成功したのである。

「まだ、この方法でも不十分な小腸の病気はあります。より有効性の高い検査方法や治療法を実現したい。また、世界的に患者さんが増えているクローン病(原因不明の炎症性疾患)など、病態の解明が重要な病気もあります。いずれにしても、困っている患者さんに役立ち、将来の医学の進歩にも貢献できればと思います」と山本教授。その取り組みは現在も進行中である。 (安達純子)

<データ>2010年実績
☆上部消化器内視鏡検査8457件
☆大腸内視鏡検査4008件
☆小腸内視鏡検査(ダブルバルーン)361件
☆小腸内視鏡下処置&治療158件
☆病院病床数1130床
〔住所〕〒329-0498栃木県下野市薬師寺3311の1
(電)0285・44・2111

医療現場の大量被ばくに警鐘

『放射線被ばく CT検査でがんになる』近藤誠著 これって原発事故くらい怖いかも 

 CT検査の放射線被ばくの量がこんなにすごかったとは! 原発事故で国が避難の目安にした年間被ばく線量20ミリシーベルトに対し、胸部CT検査1回の線量は10ミリシーベルト。エックス線撮影の200~300倍。これってヤバくないですか?

 著者は「抗がん剤は効かない」「がん検診は百害あって一利なし」と常識を覆す言説で物議を醸してきた放射線科の医師だ。昨秋、雑誌でCT検査の危険性を告発して大きな反響を呼んだ。本書でも医療現場の大量被ばくに警鐘を鳴らし、原発事故による被ばくと発がんとの関連について解説した。

 日本のCT装置の台数は断然世界トップで、そのぶん検査による被ばく線量も、検査が原因の発がん死亡率も世界第1位という。これほど日本が医療被ばくに無警戒なのはなぜ? 著者によれば、国も医療機関も患者・家族に正確な情報を伝えず、健康被害を最小に見せかけるように画策してきた。ん? この構図、最近見かけたような…。

 さらに放射線被ばくに関する医師の意識は低く、「とりあえず」「念のために」と安易にCTをオーダーする。問診や聴診より手っ取り早く、しかも使うほど儲かる仕組みになっている。いや、患者にしたって「最新機器」による検査をありがたがる傾向がある。

 放射線検査は「健康」を理由に生涯にわたって付き合いを迫られる。自己防衛のためには基本的な知識が必須だ。がん検診が原因でがんになったらブラックに過ぎる。

2011年8月15日 共同通信

2011年8月10日水曜日

血液がん骨髄増殖性腫瘍の発症メカニズム

血液がん発症の仕組みを解明 早期診断・治療に道

滋賀県立成人病センター(滋賀県守山市)の入野保臨床検査部主任技師長、内海貴彦血液腫瘍内科科長、同センター研究所の木下和生専門研究員らのチームは、血液のがんの一種である骨髄増殖性腫瘍の発症メカニズムを解明した。早期診断と治療への応用が期待される。米科学誌プロスワン(電子版)に掲載された。

 骨髄増殖性腫瘍では頻繁に、血液の元となる骨髄内の細胞にある遺伝子「JAK2」の変異が見つかる。チームはこの遺伝子中617番目のアミノ酸がバリンからフェニルアラニンに置き換わると、細胞内で「PU.1」というたんぱく質を増やす信号を出すことを確認した。

2011年8月9日 日経産業新聞

水溶性より不溶性が高い抗がん効果

食物繊維の摂取で循環器病リスク低下- 喫煙すると効果は帳消し
国立がん研究センターはこのほど、「食物繊維を多く摂取すると、脳卒中などの循環器病の発症リスクが低下する」との研究結果をまとめた。ただし、その効果は喫煙で相殺されるという。

岩手、秋田、茨城、新潟、長野、高知、長崎、沖縄の9保健所地域に住む男女約8万7000人(45-74歳)について、1995-98年から2004年まで追跡調査。食物繊維の摂取量によって5つのグループに分類し、循環器病の発症リスクとの関連を調べた。期間中に2553人が脳卒中を、684人が虚血性心疾患を発症した。

 調査結果によると、女性では、食物繊維の摂取量が多いほど発症リスクが低下。摂取量が最も多いグループのリスクは、最も少ないグループに比べて0.65倍にまで下がった。しかし、男性では、こうした傾向は表れなかった。
 さらに、喫煙との関連を調べたところ、男女とも、非喫煙者のグループでは、食物繊維の摂取量が多いと発症リスクが低くなったのに対し、喫煙者のグループでは、食物繊維を多く取っても、リスクが下がることはなかった。

 これらから同センターの研究班は、「女性に比べて喫煙率の高い男性では、食物繊維による予防効果が相殺されたものと考えられる」と分析。また、水溶性の食物繊維よりも不溶性のものの方が、高い予防効果が見られたとしている。

  2011年8月10日 日本経済新聞

免疫細胞と乳酸菌とがん

乳酸菌が免疫細胞を活性化するとの研究は、多くの研究機関で実施されている。北海道大学では、さらに乳酸菌とβグルカン(ベータグルカン)を組み合わせることで、効果が倍増されることを実験で検証した。


インフルエンザウイルスや風邪ウイルス、がん細胞等と戦ってくれるナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させる「1073R-1乳酸菌」(以下、 R-1乳酸菌)。その働きを示す調査結果が9日、東京・赤坂のホテルニューオータニにて発表された。R-1乳酸菌を長期間摂取した佐賀県有田町に住む小中学生のインフルエンザ感染傾向などが紹介された。

同調査は、佐賀県有田町、山形県舟形町にて実施。健康増進活動の一環として、2010年(有田町は9月、舟形町は6月)から今年3月18日までの間、保育園・幼稚園児、小中学生全員と関係職員全員にR-1乳酸菌を使用したヨーグルトを給食などで継続的に食べてもらい、インフルエンザや風邪の罹患率や欠席率の変動についての継続調査を行った。

昨年12月末までの中間報告によると、佐賀県はインフルエンザの感染レベルが高い地域にも関わらず、有田町は周辺地域、佐賀県(有田町を除く)と比べてインフルエンザの罹患率、欠席率が抑えられた結果となった。また、舟形町ではインフルエンザ感染の報告はなかった。今回公表された3月18日までの有田町のデータでは、隣接する地区と比較してインフルエンザ(A/B/新型)の感染率が低く、統計学的に有意差があることが明らかになった。

これまでにも両町では、60歳以上を対象にした「R-1乳酸菌を使用したヨーグルトの長期摂取」の効果に関する調査を実施。R-1乳酸菌の入ったヨーグルトと牛乳を飲んだ人で比較したところ、NK細胞の活性が低い人の活性が高まることが確認されたほか、「風邪をひくリスク」が低減することが明らかになった。また、マウスを用いた動物実験では、インフルエンザウイルス(A型H1N1亜型)の感染予防に効果があることが確認されている。

今回の調査に協力し、実際に子どもたちを診察した有田共立病院院長の井上文夫先生が登壇し、調査結果を報告した。有田町の調査結果は、2010年 10月1日から今年3月18日まで、小中学生計1,904名が対象。インフルエンザによる欠席児童数を有田町、有田町に隣接する3市(伊万里市、武雄市、嬉野市)と比較したところ、小中学生ともに摂取期間中のインフルエンザ(A/B/新型)の感染率が低かった。小学校に至っては隣接市に比べて10分の1程度で顕著に差が出ており、特に中学校より小学校の方が、インフルエンザ感染率がより低い傾向にあるとした。また、学年ごとに比較しても隣接市より低いことを説明した。

井上先生は、結論としてR-1乳酸菌を使用したヨーグルトは全般的なインフルエンザウイルス感染に対する予防効果がある可能性を示唆した。また、アンケートにより摂取期間を通じて家族が感じたことも調査しており、プレスセミナーでは保護者からの意見も紹介された。「風邪、インフルエンザにかかりにくくなった」「インフルエンザにかかっても症状が軽い」「鼻炎がかるくなった」など好意的な意見が多く寄せられている事実に触れ、「こういった意見を前面に出すと科学的ではないという意見を持たれる人もいるかもしれないが、臨床の最前線に立つ者にとってはこういう声も大事にしたい」と述べた。

有田町での子どもたちのヨーグルト摂取調査について、順天堂大学医学部特任教授(免疫学講座)の奥村康先生は「個々の小学生、中学生のタイプ、インフルエンザワクチンの接種の有無などバックグラウンドの違いも考えられないことではないが、インフルエンザワクチンの摂取率はどの地区でも差がないということは分かっている。そのことを踏まえて今回の調査結果を評価すると、統計的に非常に意味のある結果」とした上で、「我々のNK活性についての理論、動物実験の結果や基礎的な論文の内容にピッタリ合う結果になっていて、我々が明らかにしてきた内容と矛盾のない結果が得られている」と述べた。
2011年8月10日 マイコミジャーナル

がん対策推進基本計画へがん患者意見

30のがん患者団体 患者の意見に耳を 対策推進基本計画見直しで厚労相らに要望書

全国の30のがん患者団体が、がん対策推進基本計画の見直しに向け、ドラッグ・ラグの解消や治療費などの経済的負担の解消に向けた議論を集中的に行うことなどを盛り込んだ要望書を8月8日付でまとめ、細川律夫厚生労働相らに提出した。

集中議論が必要だとしたテーマは

▽ドラッグ・ラグの解消に向けた議論

▽患者・家族が抱える就労問題、経済的負担の解消に向けた議論

▽科学的根拠に基づくがん検診の普及・啓発・精度管理(偽陽性・過剰診断などの不利益に関する救済を含む)に関する議論

▽サバイバーシップ概念の普及に関する議論(計画内、サバイバーシップの言葉を盛り込む)――。

薬事や就労問題を含めており、省を挙げた取り組みを促す内容。

がん対策推進基本計画は07年度~11年度からの5カ年計画。来年度からの次期計画実施に向け、計画見直しの議論が厚労省のがん対策推進協議会で行われている。しかし団体側によると、その見直しの議論を進めるでは、患者の求めるテーマが議論されることが少ないまま進んでいる。今後の議論にも強い懸念があるとして、議論すべきテーマをまとめ厚労相ほか、同協議会の門田守人会長、同省がん対策室の鈴木健彦室長あてに要望書を提出することになった。
2011年8月10日 ミクスonline

日本に8カ所だけの がん治療施設

 新しいがん治療で注目を集めているのに粒子線治療がある。これまでの放射線治療では困難だった、患部だけを狙い撃ちできるという特長がある

 これだと手術のために入院することなく、患者の負担も少なくて済む。現在、日本に8カ所の治療施設があり、粒子線に必要なレーザー光線が得られれば、全国に展開できるという

 このレーザー光線は「新しい光」と言われ、製作技術で日本は世界のトップレベルをキープしている。がん治療など医療分野だけでなく、最近では金属の表面100万分の1ミリメートル(ナノスケール)を観測するためのレーザー技術の応用も目を見張るものがある

 先日、兵庫県の理化学研究所で開発、公開された世界最短波長のX線レーザー発振装置「SACLA(サクラ)」もその産物だ。全長約700メートルの細長い構造で出口から強いレーザー光線が発射される

 「21世紀の科学技術、想像できないような新産業を支える基盤にしたい」と石川哲也同研究所センター長。原子レベルの超高速運動の観察やたんぱく質、細胞の解析もできる。スーパーコンピューター「京」との連携も発表された

 原子関連技術は今日、原子力発電によるエネルギー供給という面だけがクローズアップされ議論されているが、実は生活環境の細部にまで入り込み生かされている。総合的な技術としての原子力の姿を冷静に見詰め、管理していく必要がある。

2011年8月10日 世界日報

2011年8月9日火曜日

子宮がん、リンパ節転移を手術

子宮筋腫だと思って検査したら子宮頚がんだった

女性特有のがん、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因であることがわかっている。HPVは性体験のある女性なら6~8割の確率で一生に一度は感染するというありふれたウイルスで、ストレスや病気などで免疫力が落ちていると“前がん”状態になり、さらにがんへと変異する場合がある。

 乳がんと同様に、このがんに関しても日本人女性の検診率は低く、無料で検診を受けられるクーポン券の利用者は2年間で24.3%にとどまっている。

 受診を先延ばしにしているうちに、取り返しのつかない経験をした人がいる。女優の洞口依子さん(46)だ。

 洞口さんは2004年、38才のときに子宮頸がんの宣告を受けた。

「その前の年の夏ごろから生理不順が続いていたんですが、夏の疲れやストレスのせいだろうと思い込んでいたんです。そのうちに生理以外のときに出血があり、痛みも出始めました。それでも病院に行くのが嫌で、ネットなどでいい病院を探したりはしていたものの、ずるずると先延ばしにしてしまって。やっと病院に行ったのは年が明けてからでした」(洞口さん)

 自分では子宮筋腫だろうと思っていたが、検査の結果は子宮頸がん。すでに腫瘍がかなり大きくなっており、広汎性子宮全摘手術をすすめられた。

「広汎性子宮全摘手術は、子宮だけでなく卵巣、卵管、膣の一部、骨盤内のリンパ節までを一度に切除してしまう大手術で、医師の説明を聞いていて、思わず固まってしまいました。いつか夫との子供を産めたら、と漠然と思っていましたが、断念するしかありませんでした」(洞口さん)

 2004年2月、洞口さんは8時間に及ぶ手術を受けた。しかし、後にリンパ節への転移が見つかり、放射線治療と抗がん剤治療を続けて受けることに。退院後もホルモンバランスの崩れによって20kgも太ったり、うつ状態やパニック障害にも悩まされたという。

2011年8月9日 女性セブン2011年8月18日号

がん関連遺伝子と腎臓の炎症

腎臓の炎症、がん関連遺伝子が関係 東大チームが解明

 がんの増殖に関わる遺伝子の働きで、腎臓の炎症が進む場合があることを、東京大の永井良三教授や真鍋一郎特任准教授らのチームが、マウスの実験で確かめた。この遺伝子の働きを抑える薬ができれば、慢性腎臓病の新しい治療になることが期待される。

 この遺伝子は「KLF5」といい、永井教授らが2002年に発見。動脈硬化やがんの増殖に関わることが分かっている。慢性腎臓病の炎症が血管の炎症とも似ており、マウスの腎臓での働きを調べた。

 マウスの尿管を縛ると、腎臓では尿を濃縮する集合管という場所でKLF5が盛んに働き、炎症が起きる仕組みを活性化していた。一方、遺伝子操作でKLF5を働きにくくしたマウスでは、尿管を縛っても炎症は起きなかった。

2011年8月9日 朝日新聞

2011年8月8日月曜日

肝臓の解毒力強化して がんに効く食品

肝臓の解毒力
酵素活性化でがんを抑制

肝臓の解毒力強化の鍵を握る「発芽ブロッコリー」の研究は、1990年代の米国で始まった。当時の米国では、がんによる医療費の増大が深刻化しており、そうした社会背景の中で、ジョンズ・ホプキンス大学のポール・タラレー博士がブロッコリーの中にがん予防に寄与する成分「スルフォラファン」を発見した。

人体が食事や呼吸とともに取り込んでいる化学物質の中には、体内で発がん性物質に変化するものもある。そうした発がん性物質を含め、体内の有害物質を無毒化してくれるのが肝臓の「解毒酵素」だ。スルフォラファンはこの解毒酵素を活性化させるため、がん抑制につながる。

発芽ブロッコリーに含まれるスルフォラファンの含有量は、成熟ブロッコリーの約20倍に達することがタラレー博士の調べで明らかになっている。日本でも発芽ブロッコリーを活用してさまざまな肝障害を改善すべく研究が進んでいる。

2011年8月8日 産経新聞

甲状腺がん、乳頭がんが否定できない場合

甲状腺良性腫瘍について

【質問】
40代の女性です。最近、首に膨らみを感じて病院に行くと、3センチの甲状腺の良性腫瘍だと分かりました。腫瘍が徐々に大きくなる可能性があるものの、すぐに手術をする必要はなく、2カ月後にエコーとCT検査をするように勧められました。腫瘍が大きくなる前に手術をする方がいいとも思うのですが、大きくなってからでもいいのですか。現在、物を飲み込んだときに多少違和感があります。  

【答え】
徳島市民病院外科医師 山崎眞一(徳島市北常三島町)

がんの疑いでも慌てずに


超音波検査を用いた頸部(けいぶ)検診の普及によって、甲状腺腫瘍が発見されることが多くなってきました。一方、他人からの指摘や自分で偶然に、甲状腺腫瘍に気付かれる方も案外多いものです。

甲状腺腫瘍も他の腫瘍と同様に良性と悪性に大きく分けられます。診断は、触診、超音波検査、細胞診が三本柱です。触診と超音波検査だけでも、かなりの確率で良悪性の判断が可能ですが、良性のように見えて悪性であることや、その逆もまれではありません。

細胞診は、細い針で腫瘍から細胞を採り、顕微鏡で良悪性を判定する検査です。精度は高いものの、やはり100%の診断率ではありません。

ご質問では、良性腫瘍との診断がなされているとのことですので、今回は、良性腫瘍の取り扱いや治療方針について述べたいと思います。

日本甲状腺外科学会などが昨年秋に刊行した「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」では、良性と思われる甲状腺腫瘍の手術治療の目安として
▽腫瘍が大きい
▽経過とともに増大する
▽圧迫などの症状がある
▽飛び出していて目立つ
▽がんが否定しきれない
-などが挙げられています。大きさについては、3~4センチを超える腫瘍は手術適応としている施設が大部分です。

それ以下の大きさか、大きくても本人が経過観察を希望された場合は、3~6カ月に1度くらいの頻度で経過を診ることが多いです。急に大きくなることはま れで、1年以上の経過で腫瘍径が50%以上大きくなるのは4~22%。一方、小さくなるのも0~20%との報告もありますが、長期間にわたったデータの集 積はありません。

腫瘍があると分かった途端、「そういえば違和感などの症状があった」と思われることは、よくありますが、心理的な要素も多分に影響しているかと思われま す。実際は、かなり大きな腫瘍でもなんらかの症状を来すことはあまりありません。ただ、逆に小さくても首の前方に飛び出て目立つこともあり、ご本人が気に される場合は手術の適応となります。

問題になるのが、がんが否定できない場合です。甲状腺悪性腫瘍の90%強を占める乳頭がんは、超音波検査や細胞診で術前診断が可能なことが多いのですが、先に書いたように、診断の精度は100%ではありません。

また、数%を占める濾胞(ろほう)がんは、超音波検査でも良性腫瘍との鑑別が非常に難しく、細胞はがんの顔つきをしていませんので細胞診でも診断不能です。3~4センチ以上の腫瘍が手術適応となるのは、大きいほど濾胞がんの確率が高くなることが一つの理由です。

手術適応がある良性腫瘍と診断されても、慌てる必要はありません。十分にご家族で相談され、家庭や仕事の都合を考慮して、治療を検討してください。乳頭がんや濾胞がんの疑いを持たれても、通常は性質が非常におとなしいので、治療を急ぐ必要はありません。

日常の診療では、実際に触り、超音波画像を見て、患者と相談しながら治療方針を考慮しています。今後の方針については、以上のことを参考にしながら、主治医と相談していただければ幸いです。

2011年8月7日 徳島新聞

良性腫瘍と診断されて

甲状腺良性腫瘍について

【質問】
40代の女性です。最近、首に膨らみを感じて病院に行くと、3センチの甲状腺の良性腫瘍だと分かりました。腫瘍が徐々に大きくなる可能性があるものの、すぐに手術をする必要はなく、2カ月後にエコーとCT検査をするように勧められました。腫瘍が大きくなる前に手術をする方がいいとも思うのですが、大きくなってからでもいいのですか。現在、物を飲み込んだときに多少違和感があります。  

【答え】
徳島市民病院外科医師 山崎眞一(徳島市北常三島町)

がんの疑いでも慌てずに


超音波検査を用いた頸部(けいぶ)検診の普及によって、甲状腺腫瘍が発見されることが多くなってきました。一方、他人からの指摘や自分で偶然に、甲状腺腫瘍に気付かれる方も案外多いものです。

甲状腺腫瘍も他の腫瘍と同様に良性と悪性に大きく分けられます。診断は、触診、超音波検査、細胞診が三本柱です。触診と超音波検査だけでも、かなりの確率で良悪性の判断が可能ですが、良性のように見えて悪性であることや、その逆もまれではありません。

細胞診は、細い針で腫瘍から細胞を採り、顕微鏡で良悪性を判定する検査です。精度は高いものの、やはり100%の診断率ではありません。

ご質問では、良性腫瘍との診断がなされているとのことですので、今回は、良性腫瘍の取り扱いや治療方針について述べたいと思います。

日本甲状腺外科学会などが昨年秋に刊行した「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」では、良性と思われる甲状腺腫瘍の手術治療の目安として
▽腫瘍が大きい
▽経過とともに増大する
▽圧迫などの症状がある
▽飛び出していて目立つ
▽がんが否定しきれない
-などが挙げられています。大きさについては、3~4センチを超える腫瘍は手術適応としている施設が大部分です。

それ以下の大きさか、大きくても本人が経過観察を希望された場合は、3~6カ月に1度くらいの頻度で経過を診ることが多いです。急に大きくなることはま れで、1年以上の経過で腫瘍径が50%以上大きくなるのは4~22%。一方、小さくなるのも0~20%との報告もありますが、長期間にわたったデータの集 積はありません。

腫瘍があると分かった途端、「そういえば違和感などの症状があった」と思われることは、よくありますが、心理的な要素も多分に影響しているかと思われま す。実際は、かなり大きな腫瘍でもなんらかの症状を来すことはあまりありません。ただ、逆に小さくても首の前方に飛び出て目立つこともあり、ご本人が気に される場合は手術の適応となります。

問題になるのが、がんが否定できない場合です。甲状腺悪性腫瘍の90%強を占める乳頭がんは、超音波検査や細胞診で術前診断が可能なことが多いのですが、先に書いたように、診断の精度は100%ではありません。

また、数%を占める濾胞(ろほう)がんは、超音波検査でも良性腫瘍との鑑別が非常に難しく、細胞はがんの顔つきをしていませんので細胞診でも診断不能です。3~4センチ以上の腫瘍が手術適応となるのは、大きいほど濾胞がんの確率が高くなることが一つの理由です。

手術適応がある良性腫瘍と診断されても、慌てる必要はありません。十分にご家族で相談され、家庭や仕事の都合を考慮して、治療を検討してください。乳頭がんや濾胞がんの疑いを持たれても、通常は性質が非常におとなしいので、治療を急ぐ必要はありません。

日常の診療では、実際に触り、超音波画像を見て、患者と相談しながら治療方針を考慮しています。今後の方針については、以上のことを参考にしながら、主治医と相談していただければ幸いです。

2011年8月7日 徳島新聞

2011年8月5日金曜日

5倍効率的な抗がん剤

DDS: Drag Delivery System つまり「薬を運ぶ機能」を意味します。同じ抗がん剤でもがん病巣に集中して抗がん剤を運ぶことで、副作用を低減し、効果を倍増することができるのです。

慈恵医大など、抗がん剤を5倍運べるカプセル 水溶性に向く

東京慈恵会医科大学などの研究チームは、水に溶けやすい抗がん剤を病巣に届ける新しいDDSを開発した。「中空磁性カプセル」と呼び、カプセル を構成する微細な粒子が適度な隙間を作る。従来のカプセルより5倍以上の薬剤を運べるという。海外の製薬企業と連携し、製品化を目指したい考えだ。
東北大学、東京工業大学との研究成果。新開発のカプセルは直径が300ナノ(ナノは10億分の1)メートルで、微細な粒子が網の目のようにつながってできている。
2011年8月4日 日経産業新聞

超党派の国会議員の がん対策評議会

がん対策は「一段と高速のギアに」- 超党派議連・尾辻氏

 

来年度予算編成の概算要求を前に、超党派の国会議員でつくる「国会がん患者と家族の会」(代表世話人=尾辻秀久・自民党参院議員)は8月4日、国のがん対策推進協議会(会長=門田守人・阪大理事・副学長)や患者団体などからヒアリングを行った。冒頭、あいさつに立った尾辻氏は「いよいよ、一段と高速のギアに入れなければならない時が来ている」と述べ、今後、がん対策の取り組みを加速させる意向を表明した。
門田会長は現行のがん対策推進基本計画について、
  • 医療データの不足
  • 国民のがん教育
  • 施設完結型の医療提供体制
の3つの問題点を指摘した上で、長期的視野に立った計画の必要性を強調。それらの問題を解決へと導くため、国民や医療者に対する教育の見直しや、地域にシフトした医療提供体制の構築、そして全国民を対象としたがん登録制度の確立を求めた。
一方、同協議会の下に設置されたがん研究専門委員会の野田哲生委員長(がん研究会・常務理事)は、来年度のがん研究関連予算について、
  • 臨床試験の統括・調整の役割を担う「がん臨床試験統括支援機構」の設立
  • アカデミア創薬の支援強化と創薬支援機構の設立
  • がんバイオバンクの設立とゲノム・エピゲノム解析拠点の整備
を要望。小児がん専門委員会の原純一委員長(大阪市立総合医療センター副院長)は、小児がんの情報を集約化した「小児がん情報センター」(仮称)や高度な診療機能を持つ「小児がん拠点病院」(同)の設置、小児がん用薬剤の治験を推進するための制度について提言した。
また、緩和ケア専門委員会の江口研二委員長(帝京大医学部附属病院副院長・内科学講座教授)は、
  • 緩和医療外来
  • 院内の緩和ケアチーム
  • ホスピス、PCU(緩和ケア病棟)の役割
を早期緩和 ケアを推進する診療・連携体制の「3本柱」に位置付け、緩和医療外来については、拠点病院への専任医師・看護師や緩和ケアチームにおける教育担当スタッフ の配置などを要望。また、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどによる「定期ネットワーク会議」を開くことで、地域の緩和ケアで顔の見える関係の構築 や、24時間体制で緩和ケアを行う「在宅緩和ケア専門診療所」(仮称)の設置も求めた。

高額療養費の上限額は「所得に応じて軽減を」

このほか、患者団体からは、高額療養費制度の負担上限額を所得に応じて軽減するなど、長期治療を受けるがん患者に対する経済支援を求める意見のほか、小児がんに関するデータの蓄積などを目的とした「小児がん登録」を推進するための法整備などの要望があった。
2011年8月4日  キャリアブレイン )

肺、肝臓転移の大腸がんから回復

がん患者 鳥越俊太郎著 臨場感ある克明な治療記録

日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人が命を落とす。この事実を知れば、がんはとても人ごとだとは思えない。

著者であるジャーナリスト鳥越俊太郎さんの大腸がんは「ステージ4」だった。ちなみにがんのステージは進行度合によって1から4まであり、手術の結果、「最悪」だったことがわかる。

がんは肺や肝臓にも転移し、著者はこれまで4回の手術を受けている。ステージ4の5年生存率(最後の手術から数えて5年)はわずか10%程度。まさしく「がんと向き合う日々」である。

本書が他の“がん本”と一線を画すのは、がんの前触れに始まり、検査、告知、手術、抗がん剤治療、転移の実態までジャーナリストの視点から克明に、そして客観的に描かれている点にある。著者は取材者としての武器を「好奇心と集中力」と自己分析するが、それが遺憾なく発揮されている。

余談だが著者が手術を受けた病院で学生時代、私は半年ほど看護助手のバイトをしたことがある。臨場感を味わいながら読めたのは、そうした理由にも依るだろう。

2011年8月3日 日本経済新聞

2011年8月4日木曜日

がん増殖防ぐがん抑制遺伝子の制御

九大など、がん抑制遺伝子の制御分子を発見 - 新たながん治療薬開発に期待

九州大学(九大)生体防御医研究所の鈴木教授らのグループは、大阪大学(阪大)の森正樹教授(九州大学客員教授)らのグループと共同して、がん抑制遺伝子として重要なp53遺伝子を制御する分子「PICT1」を発見し、その分子機序を明らかにした。同成果は米国の科学雑誌「Nature Medicine」に掲載された。

p53遺伝子などの 「がん抑制遺伝子」は、がん細胞を 自爆死させたり 、がん細胞の増殖を防ぐ役割を果たしている。これまでに、放射線照後のDNA障害やがん遺伝子の過剰発現によって、p53遺伝子が活性化されることが知られていた が、近年これらに加え、リボソーム形成を標的とする薬剤などによる核小体ストレス経路刺激によってもp53が活性化されることが知られてた。

2011年8月3日 マイコミジャーナル

解毒酵素の可視化から抗がん剤

がんマーカー「グルタチオン転移酵素」の細胞内蛍光検出法を開発

-がん診断法や投薬前診断法の新手法、基礎から診断まで応用可能-

生体内に入り込んだ異物を解毒する機能の一翼を担うグルタチオン転移酵素(GST)は、グルタチオンと異物の抱合体をつくり、体外に放出し無毒化する作用を持つとともに、がん細胞では過剰発現しがんのマーカー分子の1つとして、その作用が注目されています。しかし、このGSTの過剰な反応が抗がん剤 を速やかに細胞外に放出するため、薬剤耐性の原因ともなっています。そのため、異物を解毒する機能の一翼を担うGSTの量を知ることが欠かせず、高感度で 検出することができるプローブの開発が望まれていました。
基幹研究所伊藤ナノ医工学研究室らは、このGSTの存在や量を多色で可視化することができるイメージングプローブの開発に成功しました。具体的に、 市販の蛍光化合物のアミノ基に求電子性のアニールスルフォニル保護基を導入する手法でGST検出プローブを合成しました。その結果、検出プローブにGST とグルタチオンを加えると、GSTの触媒的な反応でグルタチオンが検出プローブに求核攻撃を行い、検出プローブから保護基が外れ蛍光を発生します。実際に は、青、緑、赤の各蛍光化合物に保護基を導入し、無色状態にした化合物に、GSTとグルタチオンを添加し、それぞれの色に発色することを確認しました。反 応性はGSTが存在しない場合と比べると10の6乗倍~10の9乗倍(発光色によって異なる)と感度が大きく増加しました。ヒト乳がん細胞を使ったモデル 実験では、細胞内のGST量を検出することに成功しました。
この手法を抗がん剤へ応用し、GST量の高いがん細胞に特異的に薬理活性を示すプロドラッグの開発を進めていきます。
2011年8月3日 プレスリリース

薬剤耐性を回避できる肺がん治療新薬

ヤクルトと米プロアクタ社、共同研究開発対象に低酸素活性型プロドラッグ「PR610」を追加

抗がん剤の共同研究開発と商業化に関する契約の変更

~非臨床・初期臨床試験の共同実施の対象に「PR610」を追加~

プロアクタ社(最高経営責任者:John C, Gutheil)と株式会社ヤクルト本社(社長:根岸 孝成)は、本年2月に締結した、がん治療薬のため の低酸素活性型プロドラッグ(低酸素状態で活性型に変換される化合物)「PR509」の共同研究開発と商業化に関する契約(原契約)に、プロアクタ社が保 有し、「PR509」と同様の効果が期待できる低酸素活性型プロドラッグ「PR610」を含むよう内容を変更しました。原契約では、(株)ヤクルト本社 は、日本における「PR509」の研究、開発および商業化する権利を付与されています。

【PR509およびPR610について】
PR509およびPR610は、ニュージーランドにあるオークランド大学のオークランドキャンサーソサエティリサーチセンターで発見された、プロアクタ社が所有する低酸素活性型の不可逆的なマルチキナーゼ阻害剤(複数のリン酸化酵素の阻害剤)です。

現在、様々ながんの治療に際して、可逆的なマルチキナーゼ阻害剤が使用されていますが、薬剤耐性がしばしば発現します。また、副作用によって高用量の使用が制限される場合があります。

PR509およびPR610は、大部分の固形がんで特異的に見られる、極めて低酸素な状態でのみ活性型に変換される低酸素活性型であることから、その活性型の濃度が、がん細胞で高濃度となります。このため、有効性が改善され副作用が軽減されることが示唆されています。また、これらの薬剤の作用は不可逆的で あることから、可逆的な阻害剤に見られる薬剤耐性を回避することができると期待されます。

なお、PR509およびPR610は、可逆的 なチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブやゲフィチニブ耐性の非小細胞肺がんに対する開発を当面の目標としております。エルロチニブやゲフィチニブ耐性の非小細胞肺がんにおける効果的な抗がん剤治療は未だ確立されていません。プロアクタ社は、将来的には、これらの薬剤について非小細胞肺がんに加えて、 胃がん乳がん膵臓がんのような他のがんについても検討を行う予定です。

2011年8月3日 プレスリリース

2011年8月3日水曜日

肺がん治療実績が多い病院

自覚症状なく治療困難な肺がん患者 受け入れ数トップ10病院

肺がんは自覚症状がなく転移しやすいため、治療が難しいがんのひとつとされる。肺は「肺葉」から成っていて、手術ではがんのある肺葉と周囲のリンパ節を切除するのが一般的。しかしその手術方法も、「開胸手術」と「胸腔鏡下手術」とでは大きく異なる。  そこで本誌は、7月26日に国立がん研究センターが発表した「がん診療連携拠点病院 院内がん登録2008年全国集計 報告書」をもとに、「がんに強い病院」のランキングを作成した。ランキングにするうえで、基準に置いたのは「患者の受け入れ数」である。医療ジャーナリストで現役医師でもある森 田豊医師は、
「1年間の受け入れ数が20人の病院より、100人の病院のほうが診療実績があるので、患者さんも安心できるはずです。がんの部位ごとの“患者の受け入れ数”は病院選びの一つの指標になると思います。
ただし、多ければ多いほどいいというわけでもない。100人より250人のほうがいい病院かというと、それだけで判断はできない。一定数を超えていれば問題ないでしょう」
と、解説する。それでは肺がん患者受け入れ数の多い病院のトップ10を紹介しよう。
1位:国立がんセンター中央病院 東京都中央区
2位:国立がんセンター東病院 千葉県柏市
3位:がん研有明病院 東京都江東区
4位:静岡県立静岡がんセンター 静岡県駿東町長泉町
5位:国立病院機構姫路医療センター 兵庫県姫路市
6位:国立病院機構四国がんセンター 愛媛県松山市
7位:広島市立広島市民病院 広島県広島市
8位:大阪府立病院機構大阪府立成人病センター 大阪府大阪市
9位:新潟県立がんセンター新潟病院 新潟県新潟市
10位:NTT東日本関東病院 東京都品川区
2011年8月3日  週刊ポスト2011年8月12日号

母乳感染がんウィルスを予防する方法

かつて九州地方で“風土病”と恐れられた血液のがん
母乳の授乳制限で防げることがわかってきた

血液のがんの一つに成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)という病気 がある。年間の発症数は約700例と多くはないが、治療が難しく、多くの患者が亡くなる病気だ。実はこのATLの原因は、HTLV-1というウイルスで、 最も多い感染経路が母乳による母子感染であることがわかってきた。母乳を飲ませないことで、乳児のウイルス感染をある程度防ぐことができるのだ。そこで、 昨年10月には厚生労働省は、妊婦健康診査の項目の一つに「HTLV-1抗体検査」を追加した。母親がHTLV-1を持っているかどうかを検査し、必要に 応じて授乳制限することで子供への感染を防げる環境が整ったといえる。ATLとは何か、なぜ授乳制限が有効なのか。

現在、骨髄移植以外に 治療法のない難病

白血病には、様々なタイプがあるが、その中の一つが成人T細胞白血病(ATL)である。ATLは、HTLV-1というウイルスが原因で、国内の患者数は約2000人、年間の発症数は700人とされる。

ATLの最大の特徴は、きわめて予後が悪いこと。長崎大学医学部産婦人科の増﨑英明教授は、「1996~2000年に発症した患者の5年生存率は、男性が約22%、女性が約17%。残念ながら、今のところ、ATLは骨髄移植以外の治療法がない」という。

HTLV-1が原因とはいえ、HTLV-1に感染してもATLを発症しない人の方が圧倒的に多い。HTLV-1に感染しているが、ATLを発症していない人を“キャリア”と呼ぶが、キャリアのうち、ATLを発症するのは2.5~5%に過ぎない。

また、HTLV-1キャリアは地域に偏在しており、かつては沖縄や鹿児島、宮崎、長崎県に多かったために“風土病”として扱われたこともあった。しかし、近年、人口の流動化によって、都市部でもキャリアやATL発症者が増えている。

HTLV-1の感染経路は主に3つ。一つは輸血や注射針の使い回しなど血液を介したもの、二つ目が性交感染、三つ目が母から子への感染だ。

輸血の際にはウイルスのチェックをしているため、現在は国内での輸血などによる感染はほとんどない。また、ATLは、感染から発症までに50~60年という長い潜伏期間があり、ある程度の年齢になってからの性交による感染で発症した例はない。

つまり、ほとんどのATLの発症は、母から子への母子感染によるものである。中でも母乳を介した感染が主な経路と考えられている。

昨年10月から公費負担による 妊婦健診の項目に

「母乳には、ウイルスに感染したリンパ球が含まれており、これが感染の原因となる。実際、長崎県でHTLV-1キャリアの妊婦さんを対象に行った調査で は、人工乳しか飲ませなかった子供でHTLV-1キャリアになったのが2.4%だったのに対し、6ヵ月未満母乳を授乳した子供では8.3%、6ヵ月以上母 乳を与えた子供がキャリアになった率は20.5%だった」と増﨑教授は説明する。なお、人工授乳でも2.4%で感染が起こってしまうのは、分娩時の産道な どでの感染が原因と考えられている。

このように、妊婦がキャリアでも母乳をのませないことによって、子供への感染を97%以上防げることから、厚生労働省は、昨年10月から公費負担となる 妊婦健康診査の項目の一つに「HTLV-1抗体検査」を追加した。これは、血液検査でHTLV-1キャリアであるかどうかを調べる検査で、妊娠30 週ごろまでに行う。

一方、「この検査の難しさは、妊婦が自分がキャリアだとわかることによる精神的な苦痛にある」と増﨑教授。これがもとで夫婦関係や縁戚関係などの家族関係が悪化することもあるからだ。

そうした問題をはらんでいるものの、この検査でHTLV-1の子供への感染を防げることを考えれば、大切な検査といえるだろう。しかし、母親にとって母乳の授乳は特別な行為であるとともに、母乳に含まれる様々な抗体が、乳児の免疫を強くするという面もあるため、母乳を捨てがたいという人も少なくない。

その場合には、一度母乳を凍結させてウイルスを破壊した上で、温め直して与えるという方法や、多少リスクは上がるものの、最初の3ヵ月だけ母乳を与えるという選択肢もある。

なお、現在はATLの治療法が確立されていないが、今年4月には協和発酵キリンが開発中のATLに対する医薬品の国内医薬品製造販売承認を厚生労働省に 申請した。これは、ATL細胞表面にあるタンパク質に結合する抗体を使った抗体医薬だ。今後はこうした医薬品の承認でATL治療の幅が広がると考えられ る。

2011年8月3日 DIAMOND ONLINE

新生血管阻害作用のすい臓がん新薬

オンコセラピー・サイエンス、新生血管阻害作用を期待したがん治療用ワクチン「OTS102」が一般名取得

新生血管阻害作用を期待したがん治療用ワクチンOTS102 一般名取得に関するお知らせ

当社が臨床試験(治験)を実施中の新生血管阻害作用を期待したがん治療用ワクチンOTS102について、医薬品一般名を取得しましたのでお知らせいたします。

医薬品一般名取得は、承認申請に必須であり、臨床試験(治験)終了後の早期承認申請を視野に入れ取得したものです。

OTS102は、現在、膵臓がんを対象とした第II/III相臨床試験(PEGASUS-PC study)および胆道がんを対象とした第II相臨床試験 を実施しております。特に、PEGASUS-PC studyにつきましては、既に予定された患者さんの登録は終了しており、現時点で本年12月末までに 終了する予定となっております。世界初のがん治療用ペプチドワクチンの承認取得を目指し、契約提携先である扶桑薬品工業株式会社および大塚製薬株式会社と 承認申請の準備を進めております。




JAN(Japanese Accepted Name)(注1):(和名)エルパモチド (英名)Elpamotide
INN(International Nonproprietary Name)(注2):elpamotide


(注1)薬事・食品衛生審議会日本薬局方部会の下に設置されている医薬品名称調査会が定めている国内における医薬品一般名

(注2)世界保健機関(WHO)が設定する医薬品の非独占的・一般的名称


2011年8月3日 プレスリリース

2011年8月2日火曜日

ビフィズス菌で抗がん剤を効率化

がん治療にビフィズス菌、米で第1相治験へ 信州大発創薬VBアネロファーマ

信州大学発の創薬ベンチャー、アネロファーマ・サイエンス(東京・中央、三嶋徹也社長)は同社が開発した抗がん剤候補を使った治療法について、第1相臨床試験(治験)を来年初めにも米国で始める。がん組織の深部に集まるビフィズス菌の性質を利用して抗がん剤を送り込み、高い治療効果を見込む。製品化できればピーク時の年間売上高で400億~500億円以上を見込めると期待する。
「APS001F(開発番号)」は生きたビフィズス菌の一種で、「シトシンデアミナーゼ」という酵素を生産するように遺伝子組み換え技術で生み出した。

2011年8月1日 日経産業新聞

がん細胞を殺傷する免疫細胞

NK細胞の新培養法開発

バイオベンチャー「テラ 」(東京都千代田区)は九州大と共同で、免疫細胞の一種「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞)のがん攻撃能力を高める培養方法を開発、特許出願したと発表した。
この方法を使うと、がん細胞などを殺傷するNK細胞中の酵素の活性を約4~10倍に高めた上に、NK細胞の数を数百倍に増やすことができる。これまで報告されている方法よりもがん細胞殺傷効果が数倍高いという。
テラはこれとは別に、NK細胞を約6千倍に大量培養する方法を開発しており、これらの方式を組み合わせて、NK細胞を体外で培養して体内に戻し、がんを退治する免疫療法を実用化したいとしている。

2011年8月2日 短信

2011年8月1日月曜日

腎細胞がん、皮膚がんへ新分子標的薬

第2世代の腎細胞がん薬アキシチニブ 「ファイザーが狙うのはセカンドライン」

今年6月に米シカゴで開催された「ASCO(米国臨床腫瘍学会)2011」では、悪性黒色腫腎細胞がん肉腫といった難治がんな どで、分子標的薬などの有望な臨床成績が発表された。このほど、サイニクス社と米ヘルスケアコンサルタント企業Kantar Health共催の「ASCO 2011キーハイライト・セミナー」で来日したKantar Healthのオンコロジースペシャリストのゴードン・ゴコナワ氏(シニア・コンサルタント)が本誌のインタビューで、ASCOでの報告を踏まえ、注目さ れる開発品の臨床試験の結果や上市後のインパクトなどを語った。

アステラスの腎細胞がん薬チボザニブ 「市場でのポテンシャルは大きい」

腎細胞がん(RCC)は患者数が少ないながらも、国内で既に分子標的 薬4剤(ネクサバール=バイエル、スーテント=ファイザー、アフィニトール=ノバルティス、トーリセル=ファイザー)が上市され、薬剤が込み合ってきた市 場。しかし、大手外資や内資によって、これに続く分子標的薬が開発中で、アキシチニブ(ファイザー)などが効果や安全性の面から臨床現場から期待されてい る。

同剤はスーテントやネクサバールと同じマルチキナーゼ阻害剤だが、VEGF1、2、3を選択的に阻害する第2世代の分子標的薬といわれる。転移性RCC患 者に対するセカンドラインにおけるネクサバールと比較したフェーズ2試験(AXIS1032)では、主要評価項目のPFS(無増悪生存期間)が優れている ことが分っている(4.7カ月対6.7カ月)。毒性プロファイルを見ても大きな違いない。

ただし、セカンドラインの標準薬になり得るかどうかについては課題もあるものの、ゴードン氏によると、mTOR阻害剤アフィニトールの臨床試験結果 (RECORD-1試験)と比べても、患者背景は異なるものの、PFSはアキシチニブの4.8カ月に対し、アフィニトールは4.9カ月であり、「それほど 大きな差は出ていない」という。毒性に関しては、「大きな差は見られないが、日本人ではアフィニトールを投与した患者に間質性肺炎が出るということで懸念している」と解説。

これらを踏まえ、同氏は、アキシチニブ以外に、スーテント、トーリセルを有するファイザーの戦略について、患者の臨床的背景で薬剤の使い分けを進めるので はないかとの考えを提示。予後の良い患者では、ファーストラインでスーテント、セカンドラインでアキシチニブ、サードラインでトーリセル、予後の悪い患者 ではファーストラインでトーリセル、セカンドラインでスーテントもしくはアキシチニブという形で、患者の臨床背景によらず、アキシチニブをセカンドライン として位置付けるような戦略をとる可能性があるとの見方を示した。

アキシチニブ以外にも新規の分子標的薬の開発が進行中で、ゴードン氏はそれらの薬剤の特徴や想定される位置づけについても説明。FGFR/VEGFR阻害 剤ドヴィチニブについては開発元のノバルティスが、アフィニトール、スーテントの2剤を投与しても効果が期待できない患者のサードラインとしてのポジショ ニングを目指すのではないか、との考えを提示。一方、アステラス製薬が米アヴェオ社と開発中のVEGFR阻害剤チボザニブに関しては、外科手術後の予後の 良い患者を対象にしたフェーズ2試験で、PFSは14.8カ月という結果が得られている。現在ネクサバールと効果や安全性などを比較するフェーズ3試験が 行われているが、同氏は「PFSを改善するような有効性を示すデータが出れば、RCCの市場でポジショニングが可能。国内ではRCCのステージ4の患者の 6~7割が手術を受けるので、市場のポテンシャルはかなりある」と解説した。

大きく前進したメラノーマの治療 激化する大手外資による開発競争

メラノーマ(悪性黒色腫)の新薬の展望についても語った。メラノーマの治療をめぐっては、今年のASCOの会長が開催期間中に「今年はメラノーマの年である」と発言したように、今年最も注目されているがんと いっても過言ではないだろう。背景には、米国では今年3月に切除不能・転移性メラノーマで全生存期間を初めて延長させた抗CTLA-4抗体 YERVOY(一般名:イピリムマブ、BMSが開発)が承認され、大きく治療が大きく前進したことが挙げられる。加えて、第一三共が買収した Plexxikon社と提携先のロシュグループが開発中のベムラフェニブのP3試験結果が今年の米国臨床腫瘍学会で発表され、 BRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマ患者群で化学療法群と比較して、死亡リスクを63%、有意に低下させた。

ゴードン氏はこれら2つの薬剤が揃って使用可能になった場合のBRAF遺伝子変異のある転移性メラノーマに対する使い分けについて、「ベムラフェニブは約 50%という非常に高い奏効率が得られているので、腫瘍が大きく、早い奏効を求める患者には有効。エルボイは奏効率がベムラフェニブよりは低いが、長く持 続する特徴があるので、腫瘍サイズは小さく、低悪性度のがん患者に対して有効なのではないか」とコメント。一方、BRAF遺伝子変異のない患者(野生型)に対しては、ファーストラインでエルボイと化学療法を行うことになるのでは、との見方を示した。日本では両剤ともにメラノーマに対しての開発はまだ行われていない。

転移性メラノーマの新薬開発は競合が激しく、BRAF遺伝子変異型の患者をターゲットとした新薬がGSK(フェーズ3)やノバルティス(フェーズ1/2) などにより、複数開発されている。また、BRAF以外をターゲットとするMEK阻害剤の開発が、GSK(フェーズ3)、アストラゼネカ(フェーズ2)が進 めているほか、さらに一歩進み、分子標的薬同士の併用療法の開発も活発化している状況。MEK阻害剤とRAF阻害剤の併用療法をGSK、ノバルティスが実 施しているほか、ロシュがベムラフェニブとMEK阻害剤の併用療法、さらにはロシュ/中外製薬がRAFとMEKのデュアルインヒビターの開発を進めるなど 「BRAF変異のある患者での効果を増幅する効果を狙った新薬」の開発は激戦の様相を呈し始めているという。

2011年8月1日 ミクスONLINE

抗がん剤の吐き気を抑える新薬

薬食審・第一部会 制吐剤の新薬を審議、承認を了承

厚生労働省の薬食審医薬品第一部会は7月29日、抗がん剤投与に嘔吐などを抑える小野薬品の制吐剤を承認することを了承した。9月にも正式承認となる運び。

プロイメンド点滴静注用150mg(一般名:ホスアプレピタントメグルミン、小野薬品):「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。

経口のNK1受容体拮抗型制吐薬イメンドカプセル(一般名:アプレピタント)のプロドラッグ。がん患者の中には経口剤の服薬が困難な人がいるほか、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤が多い。こういった医療現場からの注射剤へのニーズに応えるため、今回の注射タイプの制吐薬の開発を進めてきた。

2011年8月1日

がん治療ができる外来化学療法室

高齢者の診療機能強化
化学療法室も設置へ 千葉大病院の新外来棟

千葉大付属病院(千葉市中央区亥鼻、宮崎勝院長)は、2011年度に着工する「新外来棟」の施設内容を明らかにした。県内初となる高齢者医療センターでは、患者は移動せずに各診療科の医師がセンターを訪れて診察に当たる。通院でがんなどの治療ができる外来化学療法室を設置するなど、急速な高齢化の進展に対応して、外来診療の機能を強化する。

県内の65歳以上の高齢者の人口は、団塊の世代が高齢期を迎えるのに伴い05~15年の10年間で増加率が50%に上り、30年後の2045年には高齢者人口は200万人に達する見込み。

こうした状況を踏まえ、新外来棟には高齢患者の診療強化に向け高齢者医療センターを新設。これまで複数の疾患を抱える高齢患者は、各診療科を自ら移動して受診していたが、同センターでは各医師が出向いて患者を診察する。

がんなどの化学療法に通院で対応する外来化学療法室では、患者は日常生活を送りながら治療が受けられる。

2011年07月31日 千葉日報

タンパク質のがん抑制メカニズム

九大、がん抑制メカニズムを解明 特定タンパク質が関与

細胞核内の特定のタンパク質が減少すると、がんを抑制するタンパク質が活性化するメカニズムを、九州大生体防御医学研究所の鈴木聡教授らのグループが解明し、7月31日付米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。がんの新薬開発や、高度な予後予測につながる可能性がある。

鈴木教授らは人間の細胞核内にある「PICT1」というタンパク質の性質を解明。PICT1の量が減ると、がんを抑制する別のタンパク質「p53」が著しく増加することを発見した。

PICT1はこれまで全容が分かっておらず、がんを抑える作用があると予想されていた。

2011年8月1日 共同通信