2012年2月29日水曜日

末期すい臓がんの進行を止める新薬

進行すい臓がんに初の治療薬

国際治験で効果を証明
膵臓がんには多くの種類がある。
膵臓がんの80%以上は膵液を運ぶ膵管の細胞から発生する膵管がんである。しかし、1%程度しか発生しない「膵神経内分泌腫瘍(pNET)」というすい臓がんがある。このpNETというすい臓がんに罹ったのが、米アップルのCEOで昨年10月に亡くなったスティーブ・ジョブズ氏だった。
 膵臓は、胃や肝臓など多くの臓器に囲まれているため、がんが発生しても見つけるのが非常に難しい。そのため発見時には既に末期がんとなって手遅れというケースが多いことから、すい臓がんは難治がんの代表とされるのだ。
すい臓がんの治療は手術が基本だが、がんが進行していると完全な切除ができず、もはや治療の選択肢は無いというのがこれまでのすい臓がん治療の実情だった。しかし、期待の新薬「エベロリムス」で治療環境は好転している。
 エベロリムスは、がん細胞だけを攻撃して正常細胞へのダメージを少なくする「分子標的薬」の一種だ。がんの増殖や成長、血管新生にかかわる「mTOR」というタンパクの働きを選択的に妨げるのが薬効。既に「根治切除不能または転移性の腎細胞がん」に対する治療薬として日本でも10年4月から使われており、すい臓がんpNETの効果効能は追加承認となった。
日本人の膵臓がんに占めるpNETの割合はわずか1.1%で、増加傾向にあるものの国内で治療を受ける患者は年間3千人前後しかいない。これまでこのpNETというすい臓がんに対する治療薬が無かったが、「エベロリムス」(成分名)が初めて2011年12月に承認されたのだ。副作用としては、皮疹や口内炎、感染症、爪の障害、鼻出血、間質性肺炎などがあるが、すい臓がん治療への効果は大きい。
エベロリムスはがんの進行リスクも65%も減少させるされている。さらに、日本人に限ると、「がんが悪化しない期間」を19.45カ月も延長するとされている。つまり2年以上の末期のすい臓がんでさえも2年近い延命が期待できるのだ。実際に治験参加者の中には、すい臓がん発見時に多発肝転移、リンパ節転移、骨転移から切除手術不能=末期がんを宣告されたがん患者だったが、4年近くまだまだご健勝なのである。

最新がん治療機器は痛くも痒くも無い

重粒子がん治療施設が、3年後5カ所へ増加


人材育成が急務
 放射線の一種である重粒子線で、がんの病巣をピンポイントで狙い撃ちする「重粒子線がん治療」の全国的普及に向けた動きが活発化している。治療施設は現在稼働中の3カ所に加え、3年以内に2カ所が新設される予定。治療や機器開発に携わる人材の需要増加が見込まれるため、その育成が急務となっている。

▽高い精度

 「本当に照射中なのかと戸惑うほどで、痛くもかゆくもない」。2005年に前立腺がんで重粒子線治療を受けた千葉市の元会社員、野田隆志さん(79)は、治療室での経験をこう振り返る。
 心臓に病歴があり、主治医から体への負担が大きい手術は避けた方がよいと告げられたため、自宅に近い放射線医学総合研究所 (同市)での重粒子線による治療を選択。約5週間入院し、計20回の照射を受けた。
 照射は週4日で1回につき1分程度。治療のスケジュールに合わせれば外出も自由。照射がない週末は自宅に帰り、入院でたまった仕事を消化するため千葉県内にある勤め先の工場に通うこともできた。治療から6年が過ぎたが、副作用はなく体調も良いという。
放医研の鎌田正・重粒子医科学センター長によると、重粒子線治療は重い炭素の原子核を「加速器」という大型の装置で光速の70%まで加速して照射する。高いエネルギーを持つ粒子を、体の深部にミリ単位の精度で集中照射できる。

 ▽増える希望者

 周囲の正常な組織を傷つけにくいため副作用が少ない。一方、がん細胞を死滅させる作用は強力で、ほかの放射線では治療が難しかった10センチ級の大きな腫瘍や骨肉腫などにも対応できる。
 治療を希望する患者は年々増加。放医研では、治療が始まった1994年度には21人だった登録患者数が、2010年度には691人に上った。 現在、国内の稼働施設は放医研、群馬大病院 (前橋市)、兵庫県立粒子線医療センター (同県たつの市)の3施設だが、13年には九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県鳥栖市)、15年には神奈川県立がんセンター(横浜市)が新たに加わる予定となっている。また、今年1月には山形大が付属病院で重粒子線治療の開始を目指す計画を明らかにするなど、導入を探る動きは各地に広がっている。 加速器を含めた施設の建設費は約120億円。これに伴い治療費の患者負担は300万円前後と高額だが、鎌田さんは「比較的新しい治療法で、今後、技術の向上によってコストが下がる余地は大きい」と話す。

 ▽博士課程

 こうした現状を踏まえて、群馬大は12年度から重粒子線治療の将来の担い手を養成する博士課程プログラムを開設する。専門医だけでなく、関連機器を開発する研究者などの人材も対象だ。中野隆史・群馬大重粒子線医学研究センター長は「各地の施設でリーダーになれる専門家を、少なくとも毎年4人は養成したい」と抱負を語る。
 中野さんによると、重粒子線は高度な治療が可能な分、従来のエックス線やガンマ線を使った治療で蓄積された知見に加え、この治療法に特化した専門技術や知識を多く学ぶ必要がある。だが、重粒子線治療の実施施設は、国内を除けばドイツと中国に各1カ所あるだけ。海外に頼ることはできず、自国で専門家を育てるしかないという。
 中野さんは、重粒子線治療の計画がフランスやイタリア、韓国などでも動いていると指摘。「将来は欧米からも博士課程に応募してくるのではないか。人材育成で日本が世界をリードしていく可能性がある」と話している。
2012年2月29日 共同通信

2012年2月28日火曜日

大腸がん末期でも手術可能

大腸がんは結腸と直腸にできるがん。
男性では、胃がんに次いで2番目、女性でも乳がんに次いで2番目に多いがんです。日本では年間約10万人が大腸がんになり、そのうち約4万人が亡くなられています。

早期の大腸がん場合は小さなポリープなので、内視鏡で比較的容易に手術が可能です。しかし、少し大きくなると、腸を20~30cm切除して繋ぐ手術が必要になります。手術後に取り残したがんがある場合や、がんが再発した場合は、抗がん剤による化学療法で治療を行います。

抗がん剤は保険承認されている内外格差が問題になることが多いのですが、大腸がんの抗がん剤は海外との差がなく多くの抗がん剤が承認されているため治療に利用可能です。有効な大腸がん用の抗がん剤は、フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチンの3種類と抗VEGF抗体など分子標的薬2種類、計5種類です。 7年前には大腸がん用の抗がん剤が2種類に限られていたことと比較すると、保険診療が適用できる抗がん剤が5種類に増えたのはがん患者には福音と言えるでしょう。中でも、2005年に「オキサリプラチン」の承認が出たことが大きいと言われています。

大腸がんから、肝臓へ転移がんがあり、一昔前なら大きくて手術できない=末期がんとされた症例でも、抗がん剤を使ってがん病巣を小さくすることによって、手術できるようになる可能性があるのです。それほどに、新しく登場した分子標的薬の抗がん剤は、副作用が少なく、主にがん細胞を攻撃してくれます。抗がん剤治療は、個々人で異なるがん細胞の性格を観察しながら、使う抗がん剤を変えていくことが、医師の技量でもあります。

大腸がんで余命宣告を受けるような、いわゆる末期がんの状態からでも、これらの抗がん剤を使うことによって、半分以上が約2年間以上の余命を全うしています。

日本での大腸がん治療は、保険適用で使える抗がん剤が豊富で、外科手術の成績もよく、結腸がんの治療成績は、世界トップレベルです。それでも早期発見早期治療に勝る治療法は無く、定期的に検診を受けて、早期発見することが重要なのです。

2012年2月27日月曜日

末期の腎臓がん克服した 52歳の体験談

末期腎臓がん克服! 俳優小西さんの がん体験談

 俳優の小西博之さん(52)は、7年前に余命数カ月の腎臓がんと告知されたが、大手術を経て末期がんを克服した。

和歌山県田辺市出身の小西さんは、25日に自身の末期がん克服の体験談を、和歌山市の県立医大病院で講演した。講演は、「がん患者・家族、県民のための講演会」で、「生きている喜び~末期がんからの生還」と題した講演は、がん克服を信じ続けたことをユーモアたっぷりに振り返り、「どんなことが起こっても前向きになればプラスに変わる。病と闘わず、『治ったら何をしようか』と考えましょうと呼びかけた。

集まった がん患者やその家族らを精神面から支えようと、「明るく前向きに完治を信じよう!あきらめず、信じればきっと治る」と力強く語った。

再発リスク少の最新胃がん手術法

胃がん手術でも機能温存の最新内視鏡治療手術「ESD」
日本人の部位別がん罹患数で上位にくるのが、胃がん。胃がんは進行すると、手術ができたとしても半分以上の胃を切除することになり、身体への負担も大きくなる。早期の場合なら、従来の内視鏡治療が進化した「ESD」という新しい治療方法が確立され、保険適応にもなっているのだ。
胃がん手術に適用される最新内視鏡手術は、「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)と呼ばれる。適用は、胃等の消化管にできた早期がんが中心だ。従来の「EMR(内視鏡的粘膜切除術)」と呼ばれる胃がん内視鏡手術よりも比較的範囲の広い病変を確実に一括切除することができるtめ、胃がん再発のリスクも少なくできる。ESDによる胃がん手術は、約2~3時間程度が完了。手術は鎮静剤が処置されて寝ている間に終わってしまう。しかし、翌日から食事が可能で、入院期間も一週間程度で済む。 胃がん最新内視鏡治療手術「ESD」の最大の特徴は、”胃の機能が温存されるので生活の質が保たれること”。
胃がん最新内視鏡治療手術「ESD」の適応となる早期胃がんは、自覚症状が殆ど無いため、健康診断等で発見する必要があることが課題だ。

前立腺がんリスクが1.2倍

前立腺がんの発症に関わる4つの遺伝子多型を新たに発見
-日本人・日系人の前立腺がんをゲノムワイドで遺伝子多型(SNP)関連解析

前立腺がんは、世界中でもっとも発症率の高いがんとして知られています。人種、食事、体内のホルモン環境などがその発症要因に挙げられています。人種別では、アフリカ人、欧米人、アジア人の順で発症率が高く、欧米では男性のがんによる死亡者の約20%に達し、トップを占めるといわれています。また、食事の面では、高脂肪の食事や乳製品の摂り過ぎが発症のリスクになるとされています。アジア人には比較的少ないがんといわれていますが、日本でも食生活の欧米化や高齢化に伴い患者数が増え続けており、2020年には2万人を超えるという予測もあります。

一方、遺伝的な要因についての研究も進み、前立腺がんの発症に関係する多数の遺伝子や一塩基多型(SNP)が発見されています。ゲノム医科学研究センターの研究者らを中心とした国際共同研究グループは、日本人と、米国カリフォルニアやハワイに在住する日系人を対象に大規模なゲノムワイドSNP関連解析を行いました。その内訳は前立腺がん患者群7,141人と対照群 11,804人です。米国在住の日系人を対象に加えたのは、遺伝的にはほぼ同じ人種でも居住地域を変えた場合に食生活や環境の要因が変わる可能性があり、その影響をみるためです。

SNP関連解析の結果、日本人の前立腺がんと関連がある新たな4つのSNPを発見しました。4つのSNPを持つ人は持たない人と比べ、前立腺がんの発症リスクが1.15~1.2倍に高まることが分かりました。さらに4つのSNPについて詳しく調べた結果、そのうちの1つはビタミンK依存的に働く酵素であるGGCX(γ-カルボキシラーゼ)の発現に関わり、GGCXは ビタミンKの助けを得ながら前立腺がんの増殖を抑制することが分かりました。

こうした研究成果から、前立腺の発がんには、遺伝的な要因とビタミンKなどの食生活(環境要因)とが複雑に関わっていることが分かりました。これらの研究成果は、日本人の前立腺がんの発症リスク評価や予防法の開発に貢献するものと期待できます。 

2012年2月27日 プレスリリース

2012年2月24日金曜日

がん細胞の増殖・転移を防ぐ飲料

お茶でがん、老化を防ぐ

お茶には渋みや苦味がありますが、実はこれらの成分が健康によいのです。代表的な成分は、お茶の渋みや苦味の原因になっている「カテキン」です。

がんの発生や増殖を抑制
 お茶の機能性として最もよく知られているのが、がんに対する作用です。がんは発がん性物質が人の体内のDNAを傷つけて細胞に突然変異をおこし、がん細胞が増えて多くなる(これを「増殖」といいます)ことで発生します。お茶のカテキンには、発がん開始や促進を抑える作用、がん細胞の増殖阻止する作用があり、さらにがんの転移を抑える作用もあります。
血管の病気を予防
たばこの吸い過ぎや激しすぎる運動、お酒の飲み過ぎなどは、人のからだに活性酸素を発生させ、コレステロールや中性脂肪などの脂質が酸化する過酸化脂質を増やします。これにより、体内の細胞が傷つけられ、血管の病気などもおこりやすくなります。緑茶カテキンは、動物実験において、ビタミンEに比べ、体内に作られた過酸化脂質を強く抑える優れた機能をもつことがわかりました。カテキンは、自らが活性酸素をとらえる役割を果たし、老化の防止などにも役だっています。
花粉症も抑制
花粉症には「甜茶」が有名ですが、最近では、緑茶のカテキンも花粉によるアレルギー症の症状をやわらげる効果があることがわかりました。 お茶には健康によい成分がたくさん含まれているのです。

2012年2月23日木曜日

がん細胞を中性子ビームで狙い撃つ新治療法

次世代がん治療普及へ筑波大ベンチャー

がん細胞を中性子ビームで狙い撃ちする次世代がん治療(BNCT)の治療システムを製造販売するベンチャー企業が4月に筑波大学に設立される。治療技術のある同大の研究者が経営に携わり、治療装置や治療に必要なソフトをまとめたシステムを製作し、全国に販売する計画。同技術による治療施設は国内100カ所程度見込まれ、市場性が高い。ベンチャーは、「切らない、痛くない、副作用がない」といわれる放射線治療の普及に一役買う考えだ。

筑波大発ベンチャーは「株式会社アートロン」。同大陽子線医学利用研究センターの熊田博明准教授らが経営する。

同大の研究開発によるがんの治療法「中性子捕捉療法」を基に、放射線計測装置や患者位置の制御装置、治療計画など各種ソフトを商用化し、治療システム「ツクバプラン」として各医療機関や研究機関に売り出す。治療について人材の育成もサポートしていく。

治療法の特許や知的財産権は筑波大が管理し、同社は使用許諾契約を結び、販売事業を行う。

同治療法による治療施設の建設や装置の製造は現在、産学官一体で全国4カ所(茨城、福島、京都、東京)で計画が進められている。大学や国・自治体が治療施設を整備し、装置メーカーが装置を製造。ベンチャーは、装置に組み込むシステムを提供する。

BNCTは一般の陽子線治療よりも治療費や施設建設コストが低く、施設は将来的に国内100カ所程度が見込まれる。新会社はこれらの施設や、国内400機ある現行のエックス線治療施設などにもソフトの納入を目指していく。

BNCTの施設として、東海村に「いばらき中性子最先端医療研究センター(仮称)」が整備される。小型加速器を使って病院内設置に適したBNCT用の中性子発生装置も製作するという。

治療体制は、2015年までには臨床研究や治療の開始、先進医療の承認を目指す。

熊田准教授は「実際の治療用に、個々の患者に適した治療条件を予測するソフトを製作し、世界基準を目指す。普及により多くの患者の治療に役立てられる」と目標を示した。

2012年2月12日

2012年2月22日水曜日

脳腫瘍、皮膚がんへの新型治療機器

悪性脳腫瘍やメラノーマ(悪性黒色腫)など浸潤性や多発性のがんに対して、有効な治療法に有望な新技術が開発された。
周囲の正常細胞に影響することなく、がん細胞だけも細胞レベルで破壊できる特徴を持つ治療法は、「ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)」だ。
BNCTは、治療に際して中性子を発生させることが不可欠で、この中性子発生に「原子炉」が必要だったために都市部への設置は事実上困難だったのだ。新開発された中性子発生装置は、原子炉無し中性子を発生できるため、費用も安く、都市部の病院へも設置が可能となる。
難治性がんへのBNCTの有効性は、古くから日本で研究が継続されており、この中核技術の開発で劇的にがん治療機器と手法が進歩する期待が高まっている。

2012年2月22日

2012年2月21日火曜日

乳がん、前立腺がんの抗がん剤が安価に

抗がん剤の後発薬が続々と本格発売

抗がん剤事業を後発薬メーカー各社が本格化する。 乳がんの後発薬を日医工と沢井製薬が2012年内にも売り出す。さらに、前立腺がんの後発薬を富士製薬工業が2014年にも発売する予定。それぞれ2~3年後に年間100億円の売上高を目指す。 各社は生活習慣病の後発薬を収益源としてきたが、有力な抗がん剤の特許が今後相次ぎ切れるのを機に抗がん剤の生産・営業体制を整える。

がん患者にとっては、効果効能が同じ薬が安くなることで、治療費の低減が期待できる。

2012年2月20日月曜日

がんの転移阻害新薬へ

がん転移の原因物質を発見
がん転移阻害新薬の開発が期待される熊本大

がん細胞が離れた場所へ転移したり、周囲の組織へ浸潤する原因となる物質が、発見された。

米がん学会誌電子版に発表したのは、熊本大の尾池雄一教授らのグループ。がん転移の原因物質の名称は「アンジオポエチン様たんぱく質2」で、このたんぱく質の分泌を抑え、働きを阻害できれば、がんの転移は防ぐことができる とのこと。そのような性質の物質を発見することががん転移防ぐ新治療薬の開発に直結できるのだ。

ところで、このたんぱく質自体は既知の成分であり、これまでは肥満体の脂肪組織でこのたんぱく質が慢性炎症を起こし、糖尿病の原因となることが既知であった。今後はがんの転移と糖尿病予防の2つの観点から要観察の物質となるだろう。

2012年2月20日

抗がん剤新薬を短期開発する新手法

スーパーコンピュータで抗がん剤開発
初の商業利用

世界最速のスーパーコンピューター「京」を使った抗がん剤の新薬開発が9月から着手される。

抗がん剤の有力候補を、多数の化学物質から分子構造などを基にして、計算によって探し出すのだ。スーパーコンピューターを利用することで抗がん剤の探索期間を半年~1年とでき、これは従来の10分の1のに短縮することになる。時間だけでなく、開発コストも減らることができる。

実施主体は中外製薬、興和、富士フイルム等で、それぞれに富士通や東京大学と連携している。

2012年2月20日

卵巣がん向け抗がん剤に大問題

抗がん剤に菌混入の可能性
再発卵巣がん向けの抗がん剤「ドキシル」の製造委託先の米企業工場が操業を停止した。
製薬販売会社に改善命令菌が混入する可能性があったとして、厚生労働省からヤンセン社にを薬事法に基づく改善命令が出されたのだ。
抗がん剤「ドキシル」は、米国の工場の製造設備され、製薬会社のヤンセンファーマ(東京)が販売している。
今のところ同工場でつくられた製品の品質に問題は確認されておらず、健康被害の報告もない。
厚生労働省によると、代替の製造工場がない抗がん剤「ドキシル」は卵巣がん向けの供給不足が続いている。
2012年2月17日

2012年2月17日金曜日

切らない胃がん新治療法

胃がんの内視鏡治療―新治療法で適用範囲広がる

 早期胃がんに対しては、体への負担が少ない内視鏡による治療

高周波メスではぎ取る

胃がんの内視鏡治療は、先端にカメラや高周波メスなどが付いた器具を口から挿入し、胃の内部でがんを切除する。以前から行われているのが、内視鏡的粘膜切除術(EMR)。がんのある粘膜をつまんで、スネアと呼ばれる金属の輪を掛けて締め、高周波電流を流して焼き切る。これだと、大きながんは何回かに分けて切除しなければならず、取り残すこともある。

 また、がんの大きさが直径2センチ以下で深さも内側の粘膜までにとどまり、分化型腺がんという“おとなしい”タイプで、がんの部分に潰瘍(かいよう)がないこと、という条件があった。

 新たに開発された内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)では、がんのある粘膜の下に生理食塩水を注入し、がんを隆起させてからメスで粘膜の下の組織ごとはぎ取っていく。がんを取り残すことがなく、2007年4月からは健康保険も適用されるようになった。

 また、粘膜までの分化型腺がんの場合は、潰瘍がなければどのような大きさでも、潰瘍があっても直径3センチ以下であれば可能になってきている。

1週間以内で退院も

 内視鏡治療には、多くの長所がある。第一に、胃の大部分を残すことができるので、腹腔(ふくくう)鏡による手術や開腹手術に比べて、手術後の日常生活への復帰が早く、より快適に過ごせる。また、軽い麻酔で済むので、手術の安全性が高い。手術時間は30分から1時間と比較的短くて済み、1週間以内に退院が可能だ。

 内視鏡手術でも、治療中に出血があったり、胃に穴を開けてしまったりすることもあるが、挿入している器具を使って止血したり、クリップで閉じたりするなどその場での対処ができる。

 胃がんと診断されたら、内視鏡で治療できるかどうか、医師に確認するとよい。

2012年2月16日木曜日

家庭薬でがんの転移を抑制

アスピリンでがんの転移を抑制
アスピリンなどの家庭薬は、腫瘍に栄養を送り込む「幹線道路」の遮断を助けることにより、がんの拡散を阻害できる可能性があるとする論文が、14日の医学誌「Cancer Cell」に発表された。
 これまでも、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬にがんの転移を抑制する可能性があるとの指摘はあったが、その仕組みは分かっていなかった。今回、論文を発表したオーストラリア・メルボルン(Melbourne)のピーター・マッカラムがんセンター(Peter MacCallum Cancer Centre)の研究チームは、がんの転移に重要な役割を果たすリンパ管ががんに反応する仕組みを説明する上で、生物学上の進展があったとしている。
■リンパ管の拡張を抑制するアスピリン
 研究チームは、リンパ管内の細胞の研究により、ある特定の遺伝子ががんの転移時には発現するが転移していない間は発現しないことを見出した。分析の結果、この遺伝子が体中のリンパ管で炎症と拡張を起こすことが可能と考えられるため、腫瘍(しゅよう)の成長と転移経路との関連が示された。
 いったん拡張されたリンパ管は、転移巣への「補給ライン」としての能力が増し、がん細胞が転移する効率的なルートになってしまう。以上のことから、リンパ管の拡張を抑制する働きを持つアスピリンは、「リンパ管の拡張を抑えることでがん細胞の拡散抑制に効果的に働く可能性がある」と、研究者は述べている。
 今回の発見は、乳がんや前立腺がんなどの固形がんの抑制を可能にする新薬の開発につながる可能性がある。また、がんが転移を始める前の「早期警報システム」としての役割も期待できる。
■長所と短所
 前年、英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」には、アスピリンを毎日服用すると大腸がん、前立腺がん、肺がん、脳腫瘍、喉頭がんの発症率が低減するとした研究結果が発表されている。
 現在、多くの医師が、心臓病、脳血栓、その他の血流障害のリスクを下げる目的で、アスピリンの定期的な服用を推奨している。ただしこれには、胃疾患のリスクが高まるという欠点もある。
    2012年02月15日 AFP

肺がん新薬に有効成分が無い贋物

偽の抗がん剤出回る
腸がんや肺がん、腎臓がんなどの治療薬「アバスチン」の偽物が米国で抗がん剤として、出回っている。スイスの製薬大手ロシュが発表した。偽物の抗がん剤「アバスチン」には有効成分が含まれず、当然に治療効果は無い。
偽物には
  (1)製造番号の先頭に文字が含まれる(本物は数字で始まる)
  (2)ラベル表示がフランス語
-などの特徴がある。
米食品医薬品局(FDA)などと協力し、偽物の出所の特定を進めているという。
アバスチンは、がん細胞に酸素や栄養を送る新生血管ができるのを抑える新しいタイプの点滴薬。日本ではロシュ傘下の中外製薬が販売している。

2012年2月15日水曜日

がんワクチンの注意点

子宮頸がんワクチン「接種後30分は立ち上がらないで」
失神66件報告でメーカーが発表
子宮頸がんの予防効果が期待されている4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン「ガーダシル」を販売するMSDは2月14日、日本でこれまで同ワクチンを接種した約33万7,000人(推定)のうち、接種後の失神例が66件報告されていることなどから、接種後30分はなるべく立ち上がらないことなどを呼び掛けた。失神例が発生している背景には、HPVワクチンは若年女性が主な対象であること、「筋肉注射が痛い」との印象が先立ち、痛みへの恐怖感が増大することなどがあると考えられている。
8割は接種後5分以内に発生
 10歳代の予防接種機会が増えるに従い、国内でも失神例の報告が目立つようになっている。2010年、日本小児科学会は「予防接種後に失神に対する注意点について」の声明を発表した。
 MSDの発表によると、昨年末時点で約33万7,000人の接種例のうち、66例がガーダシル接種後に失神していたことが報告されていたという。同社は同ワクチン接種後の注意点を以下の通り呼び掛けている。

失神に備えて、接種後の移動の際には医療従事者あるいは保護者等が付き添うようにしてください
接種後30分程度は体重を預けられるような場所で、なるべく立ち上がることを避けて待機していただくようご指導をお願いいたします
 同ワクチン接種後に失神が認められた10歳代女性は、1回目の接種では特に問題がなかったが、2回目の接種で妹、母親と来院。その際に「学校で2回目の接種がとても痛い」とのうわさがあったことや、「妹が来院時に痛そうだ、と騒いでいた」のだとか。女性は接種直後、妹に席を譲って立ち上がったところで突然失神、顔面を強打し前歯を折るなどのけがをしたという。
 実際、インターネット上で検索してみると、痛みには個人差がある、過度に恐れる必要はないとの情報が見られる一方、医療関係者が同ワクチン接種時の痛みについて「かなり痛い」と表現している相談掲示板や、一般の人の間では「筋肉注射なので、筋肉のある利き腕に接種した方がより痛い」「失神するくらい痛い」といったコメントも見られる。また、報道にも「(HPVワクチンの)『重い副作用として』強い痛みが報告されている」の文言もあるなど、「HPVワクチンは痛い」と思わせるような情報がかなり多いようだ。
 同ワクチン接種後の失神の80%が接種直後あるいは接種後5分以内に起きているほか、失神例の過半数を10歳代が占めている。失神への対策としては「下肢(脚)を軽く挙上し安静臥床(がしょう=横になる)させる。必要に応じて輸液や酸素投与を行う」という。
 なお、ガーダシルに先行して発売された2価HPVワクチン「サーバリックス」についても、厚生労働省の資料および発売元のグラクソ・スミスクライン公式サイトで詳しい情報を見ることができる。
2012年2月15日 健康百科

2012年2月14日火曜日

陽子線がん治療の保険適用について

陽子線治療の公的保険適用見送り 新年度、福井県は費用減免制度継続
厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)による2012年度の診療報酬改定の答申で、福井県などが国に要望していた陽子線がん治療の公的医療保険適用は盛り込まれず、新年度からの適用は見送られた。福井県は県立病院陽子線がん治療センターで設けている県民向けの治療費の減免制度を継続する。
 同センターの治療費は照射20回以下が240万円、21~25回250万円、26回以上260万円で、高額な費用負担がネックとなっている。公的医療保険の対象に認められれば自己負担分は3割ですむため、12年度診療報酬改定での適用が期待されていた。
福井県によると、陽子線がん治療の保険適用について、中医協の先進医療専門家会議は妥当と判断したものの、中医協として10日にまとめた答申には反映されなかった。外科手術など他の治療方法と比較した有効性や費用対効果の実績データが不足しているためだという。次回以降の改定で検討は継続される。
福井県はこれまで、西川知事が会長を務める全国粒子線治療促進協議会として昨年11月に要望活動を行うなど国への働き掛けを重ねてきた。次回の14年度改定に向け県地域医療課は「全国の施設の治療実績からデータを集め、さらに訴えを強めたい」としている。
福井県は昨年3月の同センター開所に合わせ、県民に限り1治療当たり治療費25万円を減免、嶺南在住者の通院交通費1回当たり3千円を助成するなどの優遇制度を設けており、12年度も継続する。照射治療に付随する検査、投薬、入院料などは昨年6月から公的医療保険の対象となっている。
2012月2月14日 福井新聞

2012年2月13日月曜日

末期がんで腹水20リットル

「腹水=死」の常識が変わる
余命告知から治療再開の例も
KM-CART(腹水ろ過濃縮再静脈注法)

がん性腹水は抜いたら死期を早めるだけ──がん専門医の99%はそう考える。実際、単に腹水を抜くと身体に必要なタンパク質も体外に出てしまい、さらに腹水がたまるという悪循環を起こす。患者は我慢するしかない。これががん医療の常識だった。

 ならば、抜いた腹水から身体に必要な成分だけを分離濃縮して、再び体内に戻せないのか。この素直な発想は難治性腹水を治療する「腹水ろ過濃縮再静脈注法(CART)」として実現、1981年に保険適用もされている。しかし「肝硬変の腹水には有効だが、がん性腹水には使えなかった」と東京都・要町病院腹水治療センター長の松崎圭祐氏は言う。

 がん性腹水には多くの血球成分やがん細胞が含まれるため、ろ過メンブレン(膜)が直に目詰まりし「無理にろ過するとつぶれた血球成分から炎症物質が放出され、体内に戻す際にリスクが生じる」のだ。がん性腹水の治療は隅に追いやられてしまった。

 一方、CARTに可能性を見た松崎氏は製造元と改良に着手。膜の構造やろ過法、目詰まりした膜の洗浄法を考案し、新たに「KM-CART」を完成。2008年からがん性腹水の治療を開始した。その結果は劇的だった。 寝たきりで松崎氏の前任地に来院した60代の膵がんの男性は20リットルもの腹水を抜いて退院。3ヵ月後には仕事再開の電話で松崎氏を驚かせた。8.7リットルを抜いた4日後に、ゴルフで18ホールを回って「楽しかった」と報告してきた乳がん末期の女性もいる。松崎氏は「腹水治療の真骨頂は闘病する意欲が再びわき上がること」だという。

 余命を告知された人が再び口から好物を食べ、ぐっすり眠れるようになる。腹水の圧迫から解放された臓器の血流が回復し、消化排泄機能が戻ってくる。そのまま穏やかに死と向き合ってもいい。しかし気力と体力が甦れば、もう一度抗がん剤治療を、という気持ちも出てくる。余命1週間を告知された70代の卵巣がんの女性は腹水治療後に抗がん剤治療を再開。1年後も元気な声を聞かせてくれた。

「抜いたら弱る」から「抜いたら元気になる」へ。この新常識は医者のあいだでも未だ普及途上だ。症例を積み重ね、「新」の文字が不要になる日が待ち遠しい。
2012年2月12日 

2012年2月10日金曜日

がんを弱体化する食事療法

「断食」はがんを弱体化させる、米マウス研究
がんを患っているマウスに絶食させたところ、腫瘍が弱体化し、化学療法の効果も上がったとする研究結果が、8日の米医学誌「Science Translational Medicine」に掲載された。
 人間でも同様の結果が表れるかどうかは分からず、安全性も不明だが、がん治療の効果を高める研究に、有望な新しい道が開けるかもしれないと研究者らは期待している。
 論文を発表した米・南カリフォルニア大(University of Southern California)のバルター・ロンゴ(Valter Longo)教授(老人学・生物科学)らは2008年に、絶食は正常細胞を化学療法から守るとした研究成果を発表している。ただし、対象は1種類のがんと1種類の化学療法薬に限定されていた。
 同教授のチームは今回、絶食によってがん細胞が脆弱になることを示すため、がんの種類を乳がん、悪性黒色腫(メラノーマ)、神経膠腫(グリオーマ)、ヒト神経芽細胞腫に広げてマウスで実験した。
 その結果、すべてのがんで、絶食と化学療法を組み合わせた場合は、化学療法だけの場合よりも生存率が高く、腫瘍の成長が遅く、さらに(または)腫瘍の転移の程度が低かった。
 2010年には、乳がん、尿路がん、卵巣がんなどの患者10人を対象にした研究で、化学療法の前2日間と後1日間に絶食した場合、化学療法の副作用が少なかったとする自己申告データが報告されている。
 ロンゴ氏は「がん細胞を打ち負かす方法は、がん細胞を狙い撃つ薬を開発することではなく、正常細胞だけが直ちに順応できる絶食などで極端な環境を作り、がん細胞を混乱させるということなのかもしれない」と述べた。
2012年2月10日 AFP

がんとアルツハイマーに効く新薬

アルツハイマー病に抗がん剤が効果?

米ケース・ウエスタン・リザーブ大(オハイオ州)によるマウスの実験で、抗がん剤にアルツハイマー病の原因と考えられている異常なたんぱく質を減らす効果があることが判明した。

 アルツハイマー病の原因物質は「ベータアミロイド」や「タウ」と呼ばれる異常なたんぱく質であり、これが脳内の神経細胞に蓄積することが原因と考えられている。

実験では、アルツハイマー病を発病するマウスに対して、抗がん剤の"ベキサロテン"を投与した。結果として、脳内に蓄積したベータアミロイドは72時間で約半分に減少した。さらに、14日間の継続投与によって、最終的にベータアミロイドは約75%も減少する効果が確認された。

論文は10日付米科学誌サイエンスに掲載された。

2012年2月9日木曜日

放射線がん治療の満足度

がん患者に対する「放射線治療に関する調査」結果発表。
放射線外科医療の日本アキュレイ(東京都千代田区)は3日、がん治療の経験者を対象とした「放射線治療に関する調査」結果を発表した。
それによると、自身の罹患したがんに対する放射線治療の適応の有無を「知らない」と回答した人が45.4%に上り、放射線治療の認知度が依然として高くないことを示す結果となった。同調査は無作為に抽出された全国のがん治療経験者618名(男性:309名、女性:309名)に対しインターネットを通じた調査で行われた。期間は2011年8月29日~8月30日。
半数近くが放射線治療の存在を知らないことが明らかになったほか、実際に放射線治療を受けたことがあると回答した人は全体の19.9%に止まった。従来からわが国では、欧米諸国などに比べ放射線治療経験者が少ないと指摘されており、これを裏付けるものとなった。
一方で、がんの3大治療(外科・化学療法・放射線)について、それぞれの経験者に満足度を聞いたところ、「満足」と「どちらかといえば満足」を合計した割合は、放射線治療で83.7%、外科治療で89.9%、化学療法で 73.7%となり、放射線治療の満足度が外科治療に次いで高いことも明らかになった。
今後の各治療についての期待値も、放射線治療は63.6%となり、外科治療の72.6%に次いで患者の期待が高いことも明らかになった。この結果を受け、埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター放射線腫瘍科の土器屋卓志教授は、調査結果から放射線治療について患者の理解が進んでいないことがうかがわれ、「QOLの高いがん治療のためにも…放射線治療を浸透させ、患者さんの選択肢を広げることが大事」とコメントしている。
2012年2月8日 医療人材ニュース.

2012年2月8日水曜日

熱が がんを死滅させる新治療機器

がん細胞は高温になると死んでしまうものの、正常細胞も高温過ぎると死んでしまう。
がんに対する温熱療法は細胞が死なない程度に体温を上げることで、免疫細胞の活性を向上させる癌治療法と言える。その意味においては、がん患部を温める熱源は何でも良く、磁力を用いなくとも、遠赤外線でもお湯でも体温を上昇させられればがんの治療効果は上がる。古来から人類が実践してきた癌治療法の代表である「湯治」の本質は、温泉で体温を上げることで免疫力が強化され、病変部に対して免疫細胞が作用することが有効なのだ。
問題は、全身を暖め過ぎるた場合の疲労だ。ゆえに機器を使った癌患部周辺だけの効率的な加熱法は有用なのだ。逆の視点からすると、疲労しない程度の入浴による過熱でもがん治療には良い影響を与えることができる。湯治となると大げさになり、覚悟と準備が必要だが入浴の際に疲れない程度に「温まる」ことは今日から始められるがん治療・がん予防なのだ。

子宮頸部の前がん病変、熱で細胞死滅 アドメテックが治療装置愛媛大で臨床試験
 愛媛大学発ベンチャーで医療機器開発のアドメテック(松山市、中住慎一社長)は、子宮頸(けい)がんになる一歩手前の異常細胞を温度を上げて死滅させる治療器を開発した。治療は日帰りが可能で、入院が必要となる切除に比べ患者の身体的負担を軽くできる。医療機器の治療効果を検証する臨床試験(治験)を始めており、2015~16年の発売を目指す。
治療器「ATMC400」は患部を温め異常細胞を死滅させる
 治療器「AMTC400」が死滅させるのは、子宮入り口の表皮にできるがんの前段階の異常「前がん病変」を持つ細胞。この細胞を放置すると、表皮の内側に潜って拡大、子宮頸がんを発症する可能性がある。異常を早く見付け、がん化を防ぐのがこの段階での治療の基本とされる。
 日本では前がん病変の治療法として、前がん病変を含む子宮の一部切除やレーザー照射による細胞死滅などがある。しかし、子宮を傷付ける切除は入院が必要で体への負担が重く、レーザー照射は異常細胞が残る可能性があるという。
 同社が開発した治療器は、患部に刺す小さな針と磁場発生装置の2つで構成する。治療器を使う医師は患部に針を刺し、刺した部分に装置の磁場発生部「アプリケーター」を近づける。
 針を磁場によって温め、患部の温度を異常細胞が死滅するとされるセ氏43度を上回る同50~60度にする。
 原理はIHクッキングヒーターと同じ。アプリケーターがヒーター、針が鍋に相当する。レーザー照射も加温によって細胞を死滅させるのは同じだが、磁場による加温は異常細胞の取り逃しが少ないことが期待できるという。
 治験は前後半に分かれて実施、愛媛大学医学部付属病院で前半をこのほど開始した。12年中に同病院で6人の被験者に対して実施する。後半は全国の複数の病院が手掛ける。治療器は厚生労働省の承認を得たうえで、販売する。価格は現時点で450万~500万円を計画している。
 今後は腎臓がんなど、ほかのがんの前がん病変にも対応できるよう研究開発を進める。
 同社は愛媛大医学部と工学部の研究者らが03年に設立。医学(Medicine)と工学(Technology)が持つ技術の融合を掲げる。11年3月期の売上高は3200万円。現在は動物向けがん治療器が主力。

2012年2月8日 日本経済新聞

2012年2月7日火曜日

すい臓がん新薬

すい臓がん新薬が治験最終段階へ

標準治療が効かない、いわゆる末期のすい臓がん患者に朗報だ。すい臓がんへ栄養を供給する新生血管を抑制することで余命の延長が期待できる すい臓がん新薬が治験の最終段階へと進んでいる。
治験が最終段階(第III相臨床試験)に突入した癌新薬は、がんペプチドカクテルワクチン療法剤「OCV-C01」。オンコセラピー・サイエンスと大塚製薬が共同で治験を実施している。
「OCV-C01」は、ゲノム包括的解析などの技術が生み出した新薬。正常組織には殆ど影響しないために副作用が少なく、膵臓がん細胞だけに作用する。がん細胞の腫瘍抗原と腫瘍新生血管内皮細胞を標的とした効力が有効な新薬。複数のペプチドワクチンを混合して製剤されている。
末期のすい臓がんには有効な抗がん剤が少ない。一日でも早いすい臓がん新薬の発売が待たれる。

速いがん転移の原因を発見

がん増殖制御の酵素発見=転移防ぐ治療に有用-東京医科歯科大
 がん細胞は一般の細胞に比べて細胞分裂のサイクル(細胞周期)が異常に速く増殖するが、東京医科歯科大の研究チームは、細胞周期を制御する酵素を発見し、6日付の米医学誌電子版に発表した。がん細胞の速い増殖は死亡に至る転移の原因にもなっており、仕組みの解明は新たな治療法開発に役立つという。
 細胞分裂の周期はG1、S、G2、Mという4段階からなり、がん細胞ではG1期が異常に短いことが分かっている。
 東京医科歯科大の吉田清嗣准教授らはこれまでの研究で、細胞核の中でがん抑制遺伝子を働かせるスイッチの役割を果たしていることが分かった酵素「DYRK2」に着目。核の外側での働きを調べるうちに、DYRK2を人為的に取り除くと、細胞周期のうちG1期だけが短くなり、細胞の増殖が活発になることが分かった。
 また、DYRK2のない細胞をマウスに移植すると腫瘍が大きくなることも判明。初期のがんよりも進行したがん細胞でDYRK2が少なくなっていた。
2012年2月7日 時事通信

2012年2月3日金曜日

脳に免疫細胞を入れる がん治療

免疫細胞 神経侵入の仕組み解明

血液の中にある免疫細胞が、脳や脊髄に侵入し炎症を引き起こす仕組みを、大阪大学の研究グループが世界で初めて解明し、アルツハイマー病やパーキンソン病など、免疫細胞が症状を悪化させる病気の新たな治療法の開発に役立つと注目されています。

免疫細胞は、体内に侵入した病原体を殺す一方、脳や脊髄などの中枢神経に入り込み、アルツハイマー病やパーキンソン病などの病気を悪化させたりしますが、どのようにして神経に入り込むのか、その仕組みは分かっていませんでした。大阪大学大学院の村上正晃准教授らの研究グループでは、マウスを使った実験を繰り返し、足などの末しょう神経が刺激されると、脳や脊髄の周辺にある血管に穴が出来て、免疫細胞が中枢神経に侵入していく「入り口」になることを突き止めました。免疫細胞が中枢神経に侵入する仕組みが解明されたのは世界で初めてで、免疫細胞が症状を悪化させるアルツハイマー病やパーキンソン病などの新たな治療法の開発につながると期待されています。研究を行った村上准教授は「入り口が分かったので、人為的に閉じたり広げたりすれば、免疫細胞の出入りをコントロールできるようになる。免疫細胞が脳に入り込み症状を悪化させる病気を防いだり、逆に脳に免疫細胞をたくさん入れて、がんなどの治療ができたりするかもしれない」と話しています。

2011年2月3日 NHK

2012年2月2日木曜日

がん細胞への新生血管に新薬が効かない理由

がんを養う血管においても薬剤耐性が起こることを発見

がんを養う血管においても抗がん剤の薬剤耐性が起こることが発見された。
北海道大学によると、
 ・がん細胞へ栄養を供給する新生血管が,抗がん剤に対して抵抗性を持つ。
 ・がん新生血管が抗がん剤に抵抗性を持つのはある種の遺伝子が原因
 ・過剰な遺伝子の働きで抗がん剤が がん細胞の外へ排出されてしまう。
 ・がん細胞の薬剤耐性の仕組みが解明されたことで、抗がん剤新薬が期待できる。
とのこと。
 がん細胞への「新生血管」は、がん細胞に栄養や酸素を供給することでがんの進展を促進する。さらには、がん細胞の転移にも関与していることが解っている。
近年認可された抗がん剤新薬の「ベバシズマブ」等の血管新生を抑制する抗がん治療は,新たながんの治療法として注目を集めていたが、この抗がん剤の効果が無い、少ない場合の仕組みが解明されたと言える。

がん細胞への新生血管を抑制する新たな抗がん剤の開発が期待される。