2012年2月23日木曜日

がん細胞を中性子ビームで狙い撃つ新治療法

次世代がん治療普及へ筑波大ベンチャー

がん細胞を中性子ビームで狙い撃ちする次世代がん治療(BNCT)の治療システムを製造販売するベンチャー企業が4月に筑波大学に設立される。治療技術のある同大の研究者が経営に携わり、治療装置や治療に必要なソフトをまとめたシステムを製作し、全国に販売する計画。同技術による治療施設は国内100カ所程度見込まれ、市場性が高い。ベンチャーは、「切らない、痛くない、副作用がない」といわれる放射線治療の普及に一役買う考えだ。

筑波大発ベンチャーは「株式会社アートロン」。同大陽子線医学利用研究センターの熊田博明准教授らが経営する。

同大の研究開発によるがんの治療法「中性子捕捉療法」を基に、放射線計測装置や患者位置の制御装置、治療計画など各種ソフトを商用化し、治療システム「ツクバプラン」として各医療機関や研究機関に売り出す。治療について人材の育成もサポートしていく。

治療法の特許や知的財産権は筑波大が管理し、同社は使用許諾契約を結び、販売事業を行う。

同治療法による治療施設の建設や装置の製造は現在、産学官一体で全国4カ所(茨城、福島、京都、東京)で計画が進められている。大学や国・自治体が治療施設を整備し、装置メーカーが装置を製造。ベンチャーは、装置に組み込むシステムを提供する。

BNCTは一般の陽子線治療よりも治療費や施設建設コストが低く、施設は将来的に国内100カ所程度が見込まれる。新会社はこれらの施設や、国内400機ある現行のエックス線治療施設などにもソフトの納入を目指していく。

BNCTの施設として、東海村に「いばらき中性子最先端医療研究センター(仮称)」が整備される。小型加速器を使って病院内設置に適したBNCT用の中性子発生装置も製作するという。

治療体制は、2015年までには臨床研究や治療の開始、先進医療の承認を目指す。

熊田准教授は「実際の治療用に、個々の患者に適した治療条件を予測するソフトを製作し、世界基準を目指す。普及により多くの患者の治療に役立てられる」と目標を示した。

2012年2月12日