2011年8月4日木曜日

解毒酵素の可視化から抗がん剤

がんマーカー「グルタチオン転移酵素」の細胞内蛍光検出法を開発

-がん診断法や投薬前診断法の新手法、基礎から診断まで応用可能-

生体内に入り込んだ異物を解毒する機能の一翼を担うグルタチオン転移酵素(GST)は、グルタチオンと異物の抱合体をつくり、体外に放出し無毒化する作用を持つとともに、がん細胞では過剰発現しがんのマーカー分子の1つとして、その作用が注目されています。しかし、このGSTの過剰な反応が抗がん剤 を速やかに細胞外に放出するため、薬剤耐性の原因ともなっています。そのため、異物を解毒する機能の一翼を担うGSTの量を知ることが欠かせず、高感度で 検出することができるプローブの開発が望まれていました。
基幹研究所伊藤ナノ医工学研究室らは、このGSTの存在や量を多色で可視化することができるイメージングプローブの開発に成功しました。具体的に、 市販の蛍光化合物のアミノ基に求電子性のアニールスルフォニル保護基を導入する手法でGST検出プローブを合成しました。その結果、検出プローブにGST とグルタチオンを加えると、GSTの触媒的な反応でグルタチオンが検出プローブに求核攻撃を行い、検出プローブから保護基が外れ蛍光を発生します。実際に は、青、緑、赤の各蛍光化合物に保護基を導入し、無色状態にした化合物に、GSTとグルタチオンを添加し、それぞれの色に発色することを確認しました。反 応性はGSTが存在しない場合と比べると10の6乗倍~10の9乗倍(発光色によって異なる)と感度が大きく増加しました。ヒト乳がん細胞を使ったモデル 実験では、細胞内のGST量を検出することに成功しました。
この手法を抗がん剤へ応用し、GST量の高いがん細胞に特異的に薬理活性を示すプロドラッグの開発を進めていきます。
2011年8月3日 プレスリリース