2012年4月13日金曜日

発がん成分含有の生薬とは

台湾で人気の植物薬、高いがん発症率との関連

台湾で人気の生薬・植物薬に発ガン物質が含まれていることが、米科学アカデミー(Proceedings of the National Academy of Sciences, PNAS)に発表された。問題の植物は「ウマノスズクサ」で生薬としての人気が高いことから、台湾の尿管がん症例の半数以上に関連しているとされた。

ウマノスズクサは生薬として重宝され、実は馬兜鈴と呼ばれ、咳止め、気管支拡張、去痰に効能があるとされ、根は青木香、土木香などと呼び、蛇や虫などの解毒剤、打ち身、炎症止め、禿の防止、腹痛止めに効果的とされてきた。近年は天然由来のダイエット食品としての利用も増えてきていた。

しかし、ヒト発がん性物質のアリストロキア酸がウマノスズクサに含まれることが判明してからは、様々な問題が指摘され始めていた。減量ダイエットや関節痛、胃腸障害の緩和に効果があるとされるが、成分としてのアリストロキア酸がヒトのDNAに作用して、特有のがんマーカーを生じさせることから、発がん物質が取り込まれたことを示す兆候が がん抑制遺伝子内に現れることが確認された。

台湾での研究対象となったのは尿管がん患者151人。がん患者の60%にウマノスズクサ含有薬の使用に関連する特有の変異が確認され、特にアリストロキア酸の摂取後に腎皮質には特有の病変が発生し、がん抑制遺伝子TP53には特有の変異の兆候が生じていた。

台湾では全人口の約3分の1がアリストロキア酸を摂取しており、台湾の尿管がんや腎臓がんの発症率は、アリストロキア酸の摂取が台湾ほど一般的ではない欧米諸国の約4倍だった。

ウマノスズクサに関しては、 1956年にバルカン半島諸国でウマノスズクサ属の種子をパンに混ぜ込む習慣が原因でアリストロキア酸による腎障害の発生が指摘されてた。また、1990年代にはベルギーでアリストロキア酸を含むダイエット減量薬を使用した女性達が、突然に末期状態の腎不全になったと報告された例がある。 2001年には米国でアリストロキア酸を含む植物性製品を使用した2人が深刻な腎障害を発症した。米食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)では既に警告を発している。

ウマノスズクサが、腎臓がん、尿管がんの原因となっていることは、もはや疑いようの無い事実と言える。「天然成分、自然由来の生薬なら安全」と思い込む人間は多いが、天然由来、自然物の方が、危険な物質、成分が多いことを再認識することが必要だろう。