2011年9月30日金曜日

不要な手術を減らす子宮がん新診断法

子宮がん診断に新手法 福井大、薬剤使い画像判別可能に
 子宮にできた腫瘍(しゅよう)が良性の筋腫か悪性の肉腫かを見分ける手法を、福井大学が確立した。これまでは手術で取り出した組織を調べなければ見分け がつかなかったが、同大がつくった新しい検査用薬剤で画像による診断が可能となる。早い段階で肉腫を発見し、不要な手術を減らすことも期待できる。
 同大高エネルギー医学研究センターの岡沢秀彦教授と医学部医学科産科婦人科学領域の吉田好雄准教授らが開発した。同大によると、良性の子宮筋腫はホルモン療法などで治療可能だが、肉腫は進行が早く、子宮外に転移すると生存率も低く悪性度が高い。
 子宮筋腫の患者は国内で200万~300万人とされるが、うち1~3%が悪性の子宮肉腫だといわれている。しかし、両者はこれまで判別しにくく、手術をして組織を調べなければ、診断が遅れ、手遅れになるケースがあった。
 通常、腫瘍を診断するPET(陽電子放射断層撮影)検査は、ブドウ糖に似た放射性の検査薬(FDG)を体内に注入し、検査薬ががん細胞に集まるのを画像 化する。がん細胞が正常な細胞よりブドウ糖を取り込む性質を利用した手法だ。しかし、この検査薬だと肉腫だけでなく筋腫にも集まってしまい、見分けがつか なかった。
 そこで同大は、筋腫は女性ホルモンを取り込むのに、肉腫は取り込む働きが正常ではないことに着目。女性ホルモンに放射性物質を化合させた薬剤(FES)を新しく作って体内に注入し、PET検査をしてみた。
 患者に了解を得て、FDG、FESの双方を使ってPET画像を比較したところ、24人中22人が手術をする前に筋腫か肉腫かを正しく診断できたという。岡沢教授と吉田准教授は、この研究を米国核医学会議で発表し、「腫瘍診断基準部門」で最高賞を受賞した。
 吉田准教授は「この手法が一般的になれば、手術をする人を減らすこともできる。今後は検査の精度を上げるにはどうしたらいいか、子宮肉腫以外のガン検査に応用できないか、研究を進めたい」と話している。
2011年9月29日 朝日新聞