2011年5月25日水曜日

抗がん剤などの薬剤が効くのか

3次元がん細胞培養に成功  福井大高エネ研など

福井大高エネルギー医学研究センターなどは24日、ナノ(ナノは10億分の1)単位で加工されたプレートを用いて3次元(立体)がん細胞の培養に成功したと発表した。簡単、均一に高い再現性でがん細胞を培養できる世界初の手法で、がん治療法の開発、向上が期待される。

同センターや放射線医学総合研究所(千葉県)、バイオテクノロジー事業などを手掛ける会社「SCIVAX」(サイヴァクス)などの共同事業。昨年度まで同センター助教だった吉井幸恵・同研究所研究員が中心となり研究してきた。

従来のがん研究は、一般的に培養器底面の平面上で培養した2次元がん細胞を使っていたが、実際は立体構造である体内のがん細胞と多くの点で違いがあり、研究上の問題になっていた。3次元がん細胞も培養はされていたが、細胞の生存率や再現性が低いなど、抗がん剤開発には欠点が多かったという。

今回の研究では、ナノサイズの網目状のプレート上に、がん細胞をまき培養。がん細胞が自発的に移動、接着を繰り返し1週間ほどでがん細胞の塊が形成できた。増殖は2次元がん細胞とほぼ同じ速度で、高い生存率を維持。均一性や再現性も確認された。

この3次元がん細胞により、実際に体内でできる腫瘍のような立体的ながんが再現できた。塊の内部まで抗がん剤などの薬剤が効くのかなどの実験ができるようになる。

また、体内ではがん細胞が増殖し低酸素領域ができ、この領域では抗がん剤やエックス線治療の効果が少なくなるとされる。3次元がん細胞の塊の内部は、低酸素領域のがん細胞と似た性質を持つことも確認され、治療法の開発に有効としている。

吉井研究員は「人のがんの種類はさまざま。その人に最適な抗がん剤が提供できるようになれば」とさらに研究を進めている。岡沢秀彦同センター長は「新しく開発した薬剤の実験が簡単にできるようになる。がん治療が飛躍的に進歩する可能性がある」と話している。

2011年5月25日 福井新聞