2011年10月25日火曜日

糖尿病を完全に克服する根治療法へ

細胞シートで糖尿病根治 東京女子医大など治療法
膵臓の細胞培養し皮下移植


東京女子医科大学の大橋一夫特任准教授と福島県立医科大学の後藤満一主任教授らは、膵臓(すいぞう)の細胞(膵島細胞)をシート状に培養して移植する新しい糖尿病の治療法を開発した。マウスの実験で長期間、血糖値を正常に保つことを確認した。膵島細胞をじかに移植する治療法よりも効果が高いという。将来、iPS細胞(新型万能細胞)と組み合わせれば、糖尿病を完全に克服する根治療法の実現につながるとみている。


ラットの膵島細胞を採取し、特殊な培養皿の上で直径2センチメートル、厚さ15マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのシート状に培養した。糖尿病のモデルマウスの背中の皮膚の下に2枚のシートを重ねて移植し、約4カ月間、血糖値の変化をみた。


11匹すべてで移植後約3日目から血糖値が正常になり、エサを与えた後も糖尿病でよくみられるような異常な急上昇はなくなった。
移植したシートを調べると、膵島と同じように、β細胞が円の中心部分に集まり、外側をα細胞が取り巻いていた。β細胞は血糖値を下げるインスリンを、α 細胞は血糖値を上げるグルカゴンを出す。両細胞が規則正しく存在することで血糖値が高い時は下げ、下がると自然に正常値に戻し低血糖になりすぎるのを防いでいるとみられる。


膵島移植のように、膵島細胞を直接マウスの肝臓の血管に入れた場合、血糖値は少し下がるものの、正常値まではなかなか下がらなかった。「シート化することで一定量の細胞が塊となり、効果を高めた。臨床への応用が十分期待できる」(後藤主任教授)という。


東京女子医大はカナダのアルバータ大とも共同研究を進めており、ヒトの膵島細胞のシート培養に成功した。今後、動物に移植して安全性と有効性を確認した上で、臨床応用を目指す。
また、患者から採取した膵島細胞を一定量まで増やすのは難しいため、iPS細胞から膵島細胞を作製し、シート化していくことも検討する。


2011年10月24日 日本経済新聞

東京女子医科大学