2012年3月14日水曜日

海外の抗がん剤新薬を利用する制度を創設

がんなどの重病 海外承認薬の保険適用へ

厚労省が14年度にも新制度 で混合診療へ
海外で承認されていても、国内の保険承認を受けていないために、がん治療に使えない、もしくは高額の薬剤費を自己負担して困窮しているがん患者が多い。このドラッグラグと呼ばれる新薬の取り扱いに関して、厚生労働省は、がん等の重い病気の患者に関して、国内未承認の新薬を使いやすくする制度を2014年度を目処に創設する。
がんなどが進行し、新薬の保険審査・承認を待てない患者が多いが、がん新薬での投薬治療の機会を提供する狙いだそうだ。治療を受けるがん患者の経済的な負担を和らげるため、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を新制度に一部適用する方向で検討されている。がんなどの重度の病気で他に治療法の無い患者に対して、未承認薬を提供する。2013年の通常国会に薬事法改正案として提出し、早ければ2014年度から未承認薬と保険診療との混合診療が可能性なる算段だ。
この仕組みは、欧米で導入されている「コンパッショネート・ユース制度(CU制度)」という制度で、厚労省が日本版として詳細を詰めている。対象となる医薬品は、欧米など日本と同じ水準の規制がある国で承認済みで、日本の製薬会社が国内での開発・製造を検討している医薬品を想定している。がんなどの重度の病気にもかかわらず、製薬会社が新薬の安全性を最終確認する「治験」に参加できないような患者が対象となる。
対象の新薬は、製薬会社がまとめて輸入し、患者は「一定の条件を満たした医療機関」で治療を受ける。
これまでは、抗がん剤の新薬は日本で未承認のために治療に使えない薬が多かった。例えば、欧米でがん、腫瘍の治療に使われるザノザールは、日本では今だ臨床研究の段階だ。また、前立腺がんの治療薬のフィルマゴンも日本では、まだ未承認だ。
海外承認済みの新薬でも、最初に日本で治験に参加できるのは年間数万人。これは、米国の10分の1程度の患者数に留まっている。新薬の治験の参加基準に該当せず、重度の病気でも新薬による治療を受けられない患者は、非常に多く苦渋の闘病を余儀なくされてきた。
現在は、未承認薬で治療を行う場合には医師による厚労省に届出が不可欠で、さらに新薬の入手も患者が海外から個人輸入するケースが多かった。新薬の申請から承認までの期間が、日本では1~2年間と長かったためだ。しかし、国内で未承認薬での治療を行うと、治療全般に公的保険が適用されない事態となり、患者は薬代だけでなく検査費や入院費など全額を負担する必要に追い込まれたのだ。病気によっては、薬代や医療費で月100万円近く負担。
新制度では、患者の自己負担は薬代だけとして、それ以外の医療費には公的保険を適用する「混合診療」を認めることを検討している。「混合診療」は、現在は一部の大学病院などで先進的な医療を提供する場合に限り、例外的に認められている。新制度では一部に限られてきた「混合診療」の対象医療機関を広げる仕組みとして期待されている。
日本の新薬承認までの期間は、最近は短縮傾向と言われている。しかし、治験の開始までに時間がかかって承認が遅れる例もあることから、欧米に比べて薬の使用が可能になるまでの期間が長い薬もまだまだ多い。重度の病気では承認を待ち切れない患者が多く、政策対応を求める声が強かった。
混合診療は日本医師会が「貧富の差による医療格差が広がる」などと反対しているが、実際には、混合診療が認めらないために、富める者しか最新医療が受けられないという矛盾が生じている。
一部の先進治療(久留米大学のがん治療ワクチンなど)で緩和ははじまったが、対象はまだ約100例程度。患者団体からは「希望する治療を受けやすくなる」と解禁を求める声が高まっている。