2012年3月12日月曜日

大腸がんに「幹細胞」の新治療法

幹細胞1個から大腸組織再生 大腸がん治療に応用も

手術で傷ついた大腸本体を再生する技術の開発が成功した。

実験では、マウスの幹細胞を体外で大量に培養して、手法を適用した。大腸の上皮にある幹細胞1個を培養細胞し、傷ついた大腸に再び戻すと、大腸の傷を覆うようにくっつき正常な組織に育った。

実験で大量培養したのは、複数の種類の大腸上皮細胞に育つことができる「体性幹細胞」で、マウスの大腸上皮の細胞から「幹細胞」を取り出し、幹細胞を増やす因子をふりかけてコラーゲンなどと一緒に浮遊液の中で育てた。実験では、薬で腸炎を起こさせたマウスに対して、肛門から粘性のある液体と一緒に培養した「幹細胞」注入したところ、1週間で傷口にくっつき徐々に正常組織を作り出したのだ。6カ月後には傷は治り、懸念されたがん化も確認されなかった。「注入した大量の幹細胞が次々と上皮細胞を作り出し、組織を再生した」と結論付けられた。

この新治療法が、人間に応用できれば、難病の潰瘍性大腸炎やクローン病の治療、大腸がん手術後に大腸が狭くなる症状の緩和などに有効な治療法となる。

開発者は、東京医科歯科大学の渡辺守教授と中村哲也講師らで、研究論文は、米科学誌ネイチャー・メディスンに12日掲載された。