2012年3月26日月曜日

がん新薬開発へ治験の費用を助成

がん新薬の実用化を後押しする28億円

有効な治療法がない前立腺がんに対する新薬の治験が、6月に開始される。患者の免疫力を活用してがん細胞だけを攻撃する「がんペプチドワクチン」の実用化が近い。治験を実施するのは、九州は久留米大の先端癌(がん)治療研究センター。

 研究段階にとどまっている難治性がんや希少がん治療薬の実用化を後押しするため、厚生労働省は2012年度から、大学などが始める新薬承認に向けた治験の助成に乗り出しているが、久留米大(福岡県久留米市)のがんワクチンの治験への助成が第一弾となる。

この助成制度は、患者の少ないがん治療薬の研究開発費を助成することで、新薬を早期に治験段階に引き上げるための、新たな取り組みなのだ。

この助成制度の対象は、難治性の膵臓がんや肺がん、肉腫、小児がん。厚生労働省では九州に患者が多い難治性血液がん、成人T細胞白血病(ATL)も対象として含める方針で、 2012年度予算案に関連予算28億6千万円を盛り込んでいる。

 難治性がんや希少がんの新薬開発は、患者が少なく研究投資に見合う収益が得られにくいことから民間の製薬会社では躊躇されがちだった。また、大学などが研究開発に取り組んでも、臨床データを収集する治験段階に進めず、足踏みしている研究が多いとされる。そこで、助成対象を企業だけでなく大学などの研究グループにも拡大。新薬承認に必要な3段階の治験のうち、安全性や有効性を確認する第2段階までの経費を厚生労働省の予算で負担する仕組みだ。第2段階の治験まで終えて有効性を確認できれば民間企業も開発へ参入し易い。 治療の成功率を調べる第3段階へは、大学から製薬会社へ引き継ぎ、新薬研究を実用化につなげる計画だ。

厚生労働省では がん細胞内の特定の分子だけ狙い撃つ「分子標的薬」を中心とした新型抗がん剤の実用化研究も対象として期待を寄せている。新薬を研究段階で終わらせず、治療新薬を待望する患者に届けることが目標の意欲的な取り組みだ。